ライティング

論文執筆用の第二の脳をつくる

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー(Inger Mewburn)教授のお役立ち情報コラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回のテーマは、情報整理術。教授の「第二の脳」を大解剖します。 本題の前に、ビッグニュースです!長く読んでくださっている皆さんは、私が ANU のチームと PostAc という機械学習を利用した研究者のための求人検索エンジンの開発に何年も取り組んできたことをご存知かと思います。 オーストラリアでは7校にサービスを提供していますが、国際的な拡大を目指しています。まもなくイギリスの大学でもPostAcの注文の受付を開始予定です。とリリースの最新情報はこちらに登録してご確認ください。 さて、本題です! 私はアカデミックな仕事用のノートの取り方の問題に取り憑かれています。この問題については、このブログでもこちらの記事でお伝えしてきました。友人のジェイソンとは、Podcast On The Regで何度もこの問題について話しています。特に、この回とこの回、直近ではこの回です。…

論文の考察をクリエイティブに書くには?(前編)

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。インガー准教授が論文の考察(Discussion)の部分をクリエイティブに書くためのコツを紹介します。こちらの記事は、前編、後編の2回に分けてお届けします。前半は作家がクリエイティブになるための環境作りをどうしていたかと、インガー准教授が建築業界にいた当時どのように創作性を磨いたかの考察です。 さて、去年私は、How do I write the discussion section? という記事を投稿しました。 この記事を書いたのは、論文執筆に関する検索から「研究室の荒波にもまれて」のサイトを訪れる人の75%が、論文の「考察(Discussion)」の部分について知りたがっていることを示すトラフィック分析があったからです。創造性が必要な「考察」は論文の中でも特にやっかいです。去年の記事では「考察」で何をどのような順序で行うか書きましたが、創造性については触れませんでした。 創造性・クリエイティビティに関する研究はたくさんあり書籍も山ほど出ています。でも、創造性をもたらす万能薬などは今のところ発明されていません。 難しい問題ですね。 では、創造的な研究者になるにはどうすれば良いのでしょう。秘訣は、創造性を何かの出来事やインスピレーションと捉えるのではなく、プロセスとして捉えることなのだと思います。どんな研究者でも、訓練により、必要に応じて創造的になることができると私は考えています。…

分かりやすい論文を書くコツ-抽象度を用いた文章構造

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「THE THESIS WHISPERER」。今回は、情報を分かりやすく伝え、魅力的な文章や論文を書くコツを、ペンシルベニア州立大学のエリック・ハイオット教授の提唱する、抽象度を用いた文章構造という視点から解説いたします。 1、2か月前に投稿した‘The Uneven U’という記事で私は、ハイオット教授(Eric Hayot)の著書『The elements of academic style: writing for the…

アカデミックライティングが悪文になってしまう理由(そしてそれを修正する方法)

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授がお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回はアカデミックライティングが悪文になってしまう理由と修正方法や、PhD過程とそのキャリア形成に役立つ文章力を生かすべき場面を提案するお話です。 「研究職に進まなくてもPhD課程を有意義に過ごすには」という投稿はちょっとした物議を醸したようで、24時間でのサイト来訪者数も過去最多でした。 そして、残りのPhD期間をどう過ごすべきかという質問が数多く寄せられました。これについては、いろいろ思うところがありますが、最も悩ましい話しから始めましょう。それは、多くの学生が卒業時には入学時よりも文章力が劣化してしまうということです。これは私たち教員が、特殊な‘学術的’スタイルでのライティングをじっくりと指導するからです。そしてこの学術的なスタイル、アカデミックライティングこそが、悪文の元凶なのです。 アカデミックライティングは一般的に大仰で、時代がかった独特のスタイルで、一部の読み手に知識を伝えながら、それ以外の読者に対してその知識を隠してしまうものです。アカデミックライティングの修得は、自分の知見と同時に、自分がその集団の一員であることを発信する手段を手に入れることなのです。 例えばコンマの使い方を見てみましょう。 コンマがあれば意味の通る長いセンテンスが作れます。コンマなしの文は単文です。単文は従属節をもたない単純な構文です。単一のセンテンスのみです。単文を続けて文章を作ります。単文は直截的です。一文が短くなります。短すぎるかもしれません。 コンマを多用することで、従属構文ができあがります。従属節の後にさらに従属節を使用すれば、センテンスは非常に複雑になり、コンマの間で少し混乱することになるかもしれませんが、それでも読者は、冷静で注意深い性格の学者が入念に、非常に丁寧なセンテンスを作りあげているのだ、ということを確信し、いかめしく重なりあう文節と従属節を、飲み込みにくいなりに理解しようとします。この様に、従属節をもてあそべば、直截的な物言いとは違い、何かを熱烈に支持したり貶めたりすることがないために、無難な記述ができるのです。学者は受動攻撃的であることを好む(つまり、考えを直接的に伝えること避けがちな)ため、「まじめな」学術的文章がこうした様式で埋め尽くされているのは当然と言えるでしょう。学者マインドを示すのはコンマだけではありません。以前、academic writing can be like a…