研究者がベストセラー作家になるには
オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回はミューバーン准教授の知人、研究者であり、同時にベストセラー・ノンフィクション作家でもあるリン・ケリー博士が、どうやって博士課程の研究を元に「売れる本」を書いたのか、の紹介です。 私は、執筆や出版を生業とする人々に囲まれていますが、リン・ケリー博士は、私の知人の中でもとりわけ多くの本を執筆・出版している人です。私と彼女は公私ともに長い付き合いがあり、彼女が博士号取得前からノンフィクションを書いていたのを知っているので驚くべきではないのかもしれませんが、私の知る限り、博士課程の研究から学術書(『Knowledge and Power in Prehistoric Societies』)とベストセラーのノンフィクション(『 』)の両方を書いた唯一の人物です。 学術書は読む気にはなれなかったので『The Memory Code』を読んでみたところ、本当に引き込まれてしまいました。説明は難しいのですが、ストーンヘンジのような場所とオーストラリアのアボリジニに古くから伝わる記憶法を結びつけ、口承文化において知識がどのようにして物に記録されるかを示しています。恥ずかしながら、過去200年間にオーストラリアのアボリジニの知識や文化が計り知れないほど失われたことを私が本当に理解するには、誰かに自分たち(白人)の歴史と結びつけて示してもらう必要があったのです。リンがそれをやってくれました。自分たちの方法を惜しみなくリンに教えてくれたアボリジニの長老たちには頭が上がりませんし、逆境の中、人々が伝統を守り続けていることは本当に感謝すべきことです。 深い敬意を示さずにはいられません。 彼女の著書『The…