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リサーチギャップの役割とそれを探る手法

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。新規性があり有意義な研究を行うため、先行研究で解決されていない課題「リサーチギャップ」を見つけるのは、簡単な作業ではありません。今回は、メルボルン教育学大学院高等教育主任研究員、フェデレーション大学シニア・ラーニングスキル・アドバイザーのマーティン・デイヴィス准教授(Martin Davies)による、リサーチギャップを探る手法についての寄稿をお届けします。 「リサーチギャップ」とは、先行研究で解決されていない課題や、研究を行う余地が残されている課題のことです。とはいえ、何が「ギャップ」なのか特定するのに困ったことはありませんか?今回の記事は、メルボルン教育学大学院(Melbourne Graduate School of Education)の高等教育主席研究員でもあり、フェデレーション大学(Federation University)で若手研究者やスタッフへの指導を行うシニア・ラーニングスキル・アドバイザーでもあるマーティン・デイヴィス(Martin Davis)准教授による投稿を紹介するものです。デイヴィス准教授は、『Study Skills for International…

研究プロジェクトを終わらせるためのマインドセット

オーストラリア国立大学のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。博士課程で研究を続ける中で、研究が終わらないんじゃないか……と不安になったことがある人は少なくないはずですよね。今回は、ミューバーン准教授が研究プロジェクトを終わらせるために必要な考え方、マインドセットについてのヒントをご紹介します。 ざっくりと言って、人は3つのタイプに分類できると思います。 設定した時間内に終わらせるつもりで研究プロジェクトを始める人 終える時期を気にせずにプロジェクトを始める人 期限を過ぎるまでプロジェクトの期限を意識しない人 もしあなたが博士号取得を目指しているのに上の3つのタイプの2番目に当てはまると自覚されているのであれば、幸運を祈ります。頑張ってください!熱意を持ってじっくりと博士課程に取り組み、自分のスケジュールでそれを完了させるための十分な時間とリソースがあるという人も中にはいるでしょう。しかし普通の人はそれほど恵まれてはおらず、経済的な理由はもちろん、その他さまざまな理由で決められた時間内に研究を終えなければなりません。 昨年、私は「心で叫んでも、研究続行– プロジェクト管理と不確実性」という記事の中で、さまざまな種類のプロジェクトの不確実性に対処する方法を紹介しました。しかし、資金が尽きる前に研究プロジェクトを完了させるには、戦略だけでは足りません。必要なのは「研究プロジェクトを終わらせるためのマインドセット」と呼ぶべきものです。 経験豊富な研究者の多くはこうしたマインドセットを持ち合わせています。彼らは自分たちの仕事に情け容赦もなく実用的なアプローチをとります。生産性がないと判断すれば、躊躇せずに、その時点で行っているやり方を止めることができるのです。そして、こうした研究者の論文が学術雑誌(ジャーナル)に出版されます。というのも、彼らはジャーナルが求めることを過不足なく行っているからです。自分たちの「意見」あるいは視点にこだわらないため、バッサリと(かつ効果的に)自身の論文を編集できます。彼らの特徴は、ひとつの研究を効率的に終わらせ、すぐ次の研究に着手することです。もちろん次の助成を得ることにも抜かりありません。 私は学生の時に、こうした百戦錬磨の研究者たちが立ちはだかっているということに気づきました。私自身、彼らのことを理解していたとは思えませんし、正直かなり批判的でした。学部で成功していたひとりの研究者のことを、研究の手を抜いて、質に気を配っていないとひそかに思っていました。研究自体より、助成金獲得に関心があるように私の目には映っていたのです。実際の作業のほとんどは、働きすぎで不機嫌なリサーチアシスタントたちが担っていました。ところが、私自身10年以上にわたり、限られた予算で多くの関係者やリサーチアシスタントを抱えて研究プロジェクトを遂行してきた今では、この研究者のことが少し理解できるようになりました。彼ほど偏屈ではありませんが、研究について前よりも感情に左右されることなく、冷静で効率的に編集できるようになっています。 古代ローマにおける英雄ユリウス・カエサルが言ったとされる名言に、「経験することはすべてにおける教師である。(Experience is…

研究者がベストセラー作家になるには

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン(Inger Mewburn)准教授が、大学院で勉学に勤しむ学生さんにお役立ち情報をお届けするコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回はミューバーン准教授の知人、研究者であり、同時にベストセラー・ノンフィクション作家でもあるリン・ケリー博士が、どうやって博士課程の研究を元に「売れる本」を書いたのか、の紹介です。 私は、執筆や出版を生業とする人々に囲まれていますが、リン・ケリー博士は、私の知人の中でもとりわけ多くの本を執筆・出版している人です。私と彼女は公私ともに長い付き合いがあり、彼女が博士号取得前からノンフィクションを書いていたのを知っているので驚くべきではないのかもしれませんが、私の知る限り、博士課程の研究から学術書(『Knowledge and Power in Prehistoric Societies』)とベストセラーのノンフィクション(『 』)の両方を書いた唯一の人物です。 学術書は読む気にはなれなかったので『The Memory Code』を読んでみたところ、本当に引き込まれてしまいました。説明は難しいのですが、ストーンヘンジのような場所とオーストラリアのアボリジニに古くから伝わる記憶法を結びつけ、口承文化において知識がどのようにして物に記録されるかを示しています。恥ずかしながら、過去200年間にオーストラリアのアボリジニの知識や文化が計り知れないほど失われたことを私が本当に理解するには、誰かに自分たち(白人)の歴史と結びつけて示してもらう必要があったのです。リンがそれをやってくれました。自分たちの方法を惜しみなくリンに教えてくれたアボリジニの長老たちには頭が上がりませんし、逆境の中、人々が伝統を守り続けていることは本当に感謝すべきことです。 深い敬意を示さずにはいられません。 彼女の著書『The…