研究論文を執筆するにあたり、論文を学術雑誌(ジャーナル)に投稿し、受理・出版されるためには、特定の文章構成の型(スタイル)に準じて執筆する必要があります。そのうちのひとつがIMRAD型と称される形式で、学術論文の執筆でよく使われていますが、論文に限らず、研究発表のスライド、レポート、各種資料、成果報告などさまざまな文書の作成時にも有用です。
そもそもIMRADとは、序論(Introduction)、材料と方法(Materials and Methods)、結果(Results)、考察(Discussion)の頭文字をとった名称なので、多くの読者にとって内容を理解しやすい構成になっています。
一般的に馴染みのない研究内容であっても、IMRADの型に準じて論理的に整理することで、研究の内容を明確に伝えることができるようになります。
今回はIMRADの構成とそれぞれの要素を書く際に押さえておきたいポイントをあげておきますので、参考にしてください。
IMRADとは
IMRADの構成要素とそれぞれに書くべき内容を下表に示します。
| 構成要素 | 書くべき内容 |
|---|---|
| I: Introduction | 序論、導入。研究背景や研究目的。問題提起、研究の位置づけを示す。 |
| M: Materials and Methods | 材料と方法。研究に用いた調査手法や実験方法、実験手順、解析方法などの記述。 |
| R: Results | 結果。研究で得られた結果の説明。 |
| D: Discussion | 考察。得られた結果(Results)の意味の説明とその影響。 |
IMRADと書かれますがIntroduction, Methods, Results And Discussionの略なので「A」に該当する要素はありません。
一般的には、Introductionの前にAbstract(要旨)が入り、Discussionの後にConclusion(結論)が続き、さらに文章の末尾には謝辞(Acknowledgement)や参考文献一覧(References)などが続きます。
こうした構成からわかるように、IMRADは研究内容と成果を読者に論理的かつ検証可能な形で伝えるために効果的な形になっているので、分野を問わず幅広い学術論文の執筆に使われています。
IMRADの各セクション執筆のポイント
Introduction
Introduction(序論)の部分では、研究の全体像を示します。
総論的な概説から、徐々に自分の研究について書くとまとまりやすくなります。具体的な研究方法や結果は他のセクションに記述するので、序論に詳細を書く必要はありません。何を研究しているのか、なぜその研究をしているのか、なにがしたいのかを明確に伝えるようにします。
先行研究で分かっていること、まだわかっていないことを踏まえ、自分の研究で明らかにしようとしていること、研究の目的、実践で検証する仮説などを示します。ここで専門用語ばかり書き連ねると、読者の理解が得られないので、なるべく一般的な言葉や表現で記述するようにします。
Materials and Methods
研究に使用した材料や機材、研究の方法、手順を示します。
このセクションで留意すべきは「再現性」であり、他者が記述を読んで研究(実験)を再現できるように書くことです。材料・方法セクションは、研究結果の信憑性を左右しかねないので、その記述には細心の注意が必要です。
医学・薬学系の論文では、薬剤などの名称を国によって異なる製品名ではなく一般名で書くなど、分野によって異なる注意事項があることもあるので、自分の研究分野で確認しておいてください。
名称などでの括弧書きの使い方については、所属機関や投稿先ジャーナルのスタイルガイドで確認しておきましょう。また、研究を再現できるように記述する他、倫理面での記述も忘れないようにしてください。
書き方としては、時制は過去形で、受動態で書かれるのが一般的です。
Results
研究の結果、事実を書くセクションですので、実験結果の解釈、意見や考察は書きません。
序論で述べた研究課題を解決できたか、先行研究とのギャップを埋められたかを述べます。このセクションでどのように結果(データ)を見せるかが、論文の出来にも影響するので、最も重要な結果を強調するようにしてください。
Discussion
おそらく最も書くのが難しいセクションです。
Resultが実験で得られた結果のみを記述するのに対し、Discussionでは結果が何を意味するのかを記述します。逆に言えば、Resultに記載していない結果についてDiscussionで論ずることはできません。
このセクションは結果の要約や繰り返しになりがちですが、要約ではなく結果に対する意見をまとめるように注意しましょう。得られた結果が意味することについて論じ、結果がどのような影響を与えるのかを読者に伝えます。
他の研究成果を引用するような場合には、盗用・剽窃にならないように、正しく引用し、引用元を明記しておくことが不可欠です。さらに、ネガティブな結果(仮説通りの結果が得られなかった、データがうまく取れなかったなど)や、研究の限界、問題点なども書いておくようにします。
曖昧な記述にしておいて査読段階で指摘されるよりは、執筆の段階からきちんと書いておくのが得策です。
また、日本語では主語を明確にしないまま「~と考えられる」としがちですが、英語では「誰が考える」のか、著者が考えているのか、一般的に考えられているのか、主語によって意味が変わってしまいます。文章を作成する段階から主語を明確にするように注意してください。
IMRAD全体に共通する注意事項
どのセクションにも共通する注意事項も挙げておきます。
- 原則として1つのパラグラフには1つのトピックを書くようにする。
- セクション内にも小見出しを付けるなど、読みやすくするために配慮する。
- 研究あるいは他者の研究の結果や知見を引用するときには、適正な引用方法で記す。
- 文と文、パラグラフとパラグラフは論旨の流れを妨げないようにつなげる(接続詞や副詞の活用)。
- 実験結果や周知の事実など、書き表す内容に応じて時制(現在形、現在完了形、過去形など)を使い分ける。
おわりに
IMRAD形式では、順序だけでなく、それぞれのセクションで記述する要素も決まっており、そうした要素が書かれていないと論文として成り立たなくなってしまいます。
とはいえ、研究論文を書くとき、IMRADの順番通りに書き進める必要はありません。文章の構成を作ってから、自分が進めやすい順に肉付けするように書き進めていくとよいでしょう。
IMRADは、論文や報告書の基本的な枠組みなので、この形式で書くことに慣れておけば論文を組み立てやすくなります。主要なジャーナルの多くはIMRAD形式で論文が書かれていることを求めているので、投稿する際にもフォームを修正する手間をかけずにすみます。
論文の読者にとっても、文章の内容、論理的な展開などが理解しやすくなります。
IMRADと意識せずにこの形式で書いていたという人もいると思いますが、今後は是非、原稿の質を高めるためにもIMRADの各セクションをわかりやすく記述し、簡潔かつ効果的な研究論文に仕上げてください。
参考文献
マンチェスター大学作成の構文リスト:Academic Phrasebank
Academic Phrasebank | The University of Manchester
George Mason University, Writing Center : Scientific (IMRaD) Research Reports – Overview
The Writing Center | Scientific (IMRaD) Research Reports
IMRAD形式についてより深く学びたい方へ
IMRAD Format Research: Master The IMRAD Format For Publication Success
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