論文の書き方 & 助成金

論文タイトル作成で抑えておくべき4つのポイント!

特定の主題に関する論文を探している際、内容を興味深く説明したタイトルに目を引かれたことはありませんか?一方でタイトルから内容が分かりにくい論文は、なかなか目に留まりません。興味深い内容の優れた論文かもしれないのに、見過ごされてしまうのです。読者を引きつけて論文を読んでもらうには、タイトルで引き込まなければなりません。ここでは、タイトルを作る際に抑えておくべき重要なポイントを4つ紹介します。 論文の表題はなぜ重要なのか 論文のタイトルの作り方について述べる前に、タイトルによってどのように印象が異なるのか、なぜタイトルが重要なのかを考えてみましょう。 例えば、「瞑想と看護」についての研究をしているとします。瞑想によって看護師間のコミュニケーション力が向上する、ということを示す研究があるかどうかを見つけるために、「nursing」(看護)、「communication」(コミュニケーション)、「meditation」(瞑想) というキーワードを使って検索を行った結果、以下のような論文タイトルが出てきました。 Benefits of Meditation for the Nursing Profession: A Quantitative Investigation…

学位論文をジャーナル投稿論文にする

大学院生が課程を修了するのに必要な条件の一つが学位論文(Thesis)の発表です。しかし、研究者としての実績を得るためには、学術雑誌(ジャーナル)に掲載する投稿論文も出したいところです。大学院課程の間の研究成果をジャーナルで発表できれば、学術界に広くその内容を共有できますが、学位論文とジャーナルに投稿する研究論文では構成・フォーマットが異なります。 優れた学位論文を書くには、緻密な作業の積み重ねが必要です。学位論文の要件は多くの場合、大学が定めています。どのような学位論文であっても、研究課題を究明するために自分が取った方法、アプローチを詳述する必要があります。学位論文に基づいた学術論文をジャーナルで発表する際には、往々にして修士論文も引用されます。学位論文と訳されることの多い「Thesis」と「Dissertation」の定義は地域によって異なり、ヨーロッパでは、Thesisは一般的に博士号に関わる独自の研究成果を記述した博士論文で、Dissertationは、通常、修士号取得のための研究プロジェクトを記述した修士論文です。米国では、Thesisは修士号に関わるもので、Dissertationは博士号取得のためのものです。呼称がいずれでも、Theis、 Dissertationともに自分の研究分野への理解を示すため、しっかりと取り組むことが必要です。 学位論文には、一般的にアブストラクト(要旨)、メソッド(方法)、結果およびディスカッション(考察)のセクションが必要です。アブストラクトは、研究課題、方法、主な発見を簡潔にまとめたもので、通常300語以内で記述します。メソッドのセクションは、同じ分野の他の研究者たちが研究を再現できるように実験方法を詳細に記述します。ここで、研究デザイン、サンプルサイズ、材料と器具、データ収集と分析のテクニックなどを説明するのです。結果とディスカッションのセクションでは、主な発見とその重要性、そして研究結果の新規性についても記述します。 学位論文とジャーナル投稿論文の違い ジャーナルに掲載される投稿論文にも似たようなセクションがありますが、学位論文をそのままジャーナルで発表することはできません。ジャーナル投稿論文にするためには、多くの工程が必要です。まず大きな違いは、ジャーナルに掲載される論文には文字数/ページ数に制約があるため、必要な情報を簡潔にまとめることが要求されます。結果として投稿論文は、学位論文よりはるかに短くなるということです。そのため、学位論文をジャーナル投稿論文にするには、単純にコピー&ペーストすれば良いという訳ではありません。学位論文のデータを元に、新たに論文を書いていく必要があるのです。 他にも学位論文と、一般的な投稿論文には多くの違いがあります。 投稿論文では、学位論文よりもアブストラクトが短い。 学位論文の序論(Introduction/イントロダクション)では、著者がその分野の文献に精通していることが示される。投稿論文では、読者が研究内容を理解するために必要な背景を熟知していることを前提とするため、序論はずっと短く、論文内で発表するデータや研究成果の説明に重きを置くことになる。 学位論文の結果では発見したすべての事柄が記載される一方、投稿論文ではそのような詳細な記述は求められない。投稿論文の結果は、研究課題や仮説を裏付けるのに必要なデータの記述のみに絞る必要がある。1本の学位論文の結果に記される内容が、複数の投稿論文の結果に相当することもある。 投稿論文のディスカッション(考察)は、学位論文よりもはるかに焦点を絞ったもので、その論文の結果で示された内容に基づいた記述になる。また、投稿論文では、実際に引用した論文のみが引用文献欄に記載される。 学位論文をジャーナル投稿論文にする 研究者であれば、キャリアアップや研究への貢献のため、自分の研究を広く公にする必要があります。上述のとおり、学位論文と投稿論文ではさまざまな点で違いがありますが、実際にどうすれば学位論文から投稿論文を作ることができるでしょうか。例えば、投稿先のジャーナル選択から始めてみるのも良いでしょう。まず、自分の参考文献リストを見てみます。おそらく参考にした論文のうち複数の文献が、自分の研究分野と同じジャンルのジャーナルに掲載されているでしょう。そうしたジャーナルの中から投稿先を選ぶことで、そのジャーナルの要件に合わせて論文を整えていくことができます。 論文全体を短くするためには、一つの研究課題に応じたデータだけを抽出します。それにより、学位論文で提示した内容よりも、より的を絞った情報になるはずです。投稿論文の焦点、つまり問題提起との関連で結果の考察を行います。適切な言葉選びと構成も大切です。重要なデータが含まれていたとしても、理解しにくいというだけで投稿論文が受理されない(リジェクトされてしまう)かもしれないのです。データに基づく首尾一貫したストーリーを語り、データによる裏付けのない結論を記述することは避けましょう。そして論文の内容に合わせてタイトルを付けます。 学術界全体の利益のため、研究成果を広く公にすることは研究者としての責務です。ジャーナルで出版される論文は学位論文とは構造が異なるため、違いを理解した上で、投稿先ジャーナルの規定を順守して形を整えましょう。論文を簡潔にまとめ、体裁を整えてからジャーナルに投稿するにはそれなりの作業が必要になります。しかし、そうした労力を費やすことで、ジャーナルへの論文掲載という業績を手に入れることができるのです。…

査読を論文執筆のスキルUPに生かす

※この記事は「査読は、論文執筆の練習になりますか?」というタイトルで2015年6月18日に公開した記事ですが、リライトにあたり情報を追記、修正して2021年6月2日に再度公開しました。 論文執筆のスキルを上達させたければ、出版された一流の論文を読んで、洗練された英語表現と頻繁に接することが必要不可欠です。しかし、単に読者として読むだけで終わってしまっては、なかなか論文執筆のスキルUPにはつながりません。 そこで、査読者の目線で他者、そして自分自身が書いた論文を読んでみることをお勧めします。査読とは、投稿された論文をその学問分野の専門家である査読者が評価・検証して学術雑誌(ジャーナル)への掲載可否を判断するものであり、研究分野の進展に寄与することを目的として実施されるものです。したがって、当該分野でそれなりの実績が認められていなければ、実際の査読の依頼がくることはありません。 しかし、一度書かれた論文を「査読者」の視点から熟読することで、単なる「読者」として論文を読むのとは異なる気付きを得ることができます。読者として他者の論文を読むと、どうしても「自分の研究に役立つ情報があるか?」とか「自分の興味を惹くか?」といった目線のみで論文を評価しがちです。また、自分自身で書いた論文を著者として読み返してみても、論理の欠点や研究デザインの瑕疵に気づくことはそう簡単ではありません。 ところが、査読者の視点を意識して論文を読めば、「その論文には十分な信頼性があるか?」とか、「読者に説得力を持って主張をアピールできているか?」というような点にも注目し、より客観的に論文を評価する目線が自然と生じてくるのです。 また、査読者の視点で論文を精査することは、より良い論文を書くための糧にもなります。というのは、査読とは対象論文の内容を評価するだけでなく、その論文が執筆ルールに準じて書かれているかを審査する作業でもあるからです。既に公開されている論文を熟読することで執筆スキルの向上につながると同時に、執筆ルールを含めた査読者のチェックポイントを踏まえて論文を執筆できるようになれば、アクセプトされやすい論文を書くことができるようになります。 査読者として論文を読む 査読者の役割と責務を明確に定めている学会などもありますが、基本的には査読者に求められるのは、投稿論文をジャーナルに掲載する是非を判断するための専門家としての意見(コメント)です。投稿論文に不十分な箇所や倫理的な問題などがある場合には、論文を良くするための助言や指摘も必要です。以下に大まかな査読の手順とそこで注意すべき点を示しますので、これらを念頭に置いて論文を読んでみてください。 1. 論文全体をつかむ 最初から細かく読んでコメントを書こうとすると、全体を見失います。まずは論文全体の構成に目を通し、わかりやすくまとまっているか、提示された研究目的がすべて論じられているかなどを確認しながら、一通り読み通して全体をつかみます。自分なりに論文の要約をしてみるのも論文全体を把握するのに役立つでしょう。 2.構成の内容や論旨の流れを見る 論文の構成要素が具体的に書かれているかを確認します。例えば、論文を理解するために必要な基礎知識や背景はきちんと説明されているか、研究デザインや研究方法は適切で十分か、裏付けとなる情報(エビデンス、データなど)は正確に示されているか、提示されたデータに信憑性はあるか、結果に裏付けられた結論となっているかなど、各項目に適切な情報が記載されているかを見ます。さらに、全体の流れはわかりやすく書かれているか、論文の構造も確認します。研究の意義、新規性、当該研究分野への貢献度を確認しておくことも重要です。 3. 投稿規程に沿っているか確認する…

論文のRunning Head(ランニングタイトル)の書き方

Running Headとは、日本語にはランニングタイトル、ランニングヘッド、ショートタイトル、欄外表題などと訳されており、各ページの上部欄外に見出しとして表示する短縮された論文タイトルのことです。論文のタイトルを短く表示するため、ランニングタイトルには略語の使用が認められる場合もありますが、文字数の制限も含め、投稿先の学術雑誌(ジャーナル)の投稿規程や指定されたスタイルガイドによって異なるので確認しておきましょう。記載位置などもさまざまで、文書の上部にページ番号を表示する場合は、ページ番号の前、もしくはページの番号の反対側の端に記載します。学術論文の執筆で標準的なフォーマットとされているアメリカ心理学会(APA)のガイドライン「APAスタイル」は、ランニングタイトルをページの左上に配置するように記しています。 ジャーナルの出版社がランニングタイトルの記入を求めるのは、多くの場合、実用的な理由によります。すべてのページに、それがどの論文の一部であるかが明示されていることが望ましいのです。プリントアウトした論文がバラバラになったとしても、各ページにランニングタイトルとページ番号が記載されていれば正しい順番に戻せます。また、電子版で閲覧する読者にとっても、複数の論文を同時に読んでいるような場合には、閲覧しているファイルそれぞれのタイトルが明確に分かれば混乱を防げます。 ランニングタイトルの書き方 ランニングタイトルの書き方として最初に言えるのは、簡潔であることです。「APAスタイル」には、ランニングタイトルはスペースも含めて50文字以内と定められています。このAPAのガイドラインも改訂されることがあるので常に最新の情報を確認しておくようにしましょう。以下は一般的に注意すべき点です。 すべて大文字で表記する 文字数の制限や略語の使用などは指定に準ずる ページ上部、ヘッダー部分に記入することが一般的だが、挿入位置、余白や間隔、フォントなどの詳細についても確認する APAのスタイルでは、 “Running head”と記載後にコロンをつけてから大文字のランニングタイトルを続けて記載します。最初のページに“Running head: SHORT VERSION OF…

論文を書いた後に自分でする英文校正のポイント

※2016年1月18日に「論文を書き上げた後にチェックしたいこと」という記事名で公開した記事ですが、リライトにあたり情報を追記、修正して2021年5月10日に再度公開しました。 論文の書き方にはいろいろなルールがあり、書き終えた時には一安心となるのではないでしょうか。しかし、論文を書き終わった後のチェックも大切です。特に英語論文を執筆した場合には、学術雑誌(ジャーナル)に投稿する前に、必ず英語を母国語とする人で、かつ、その論文の内容をある程度理解できる人に英文校正をお願いしたいものです。 とはいえ、論文は数十ページにおよぶこともあるため、該当分野の研究者であっても完璧に校正することは難しく、複数名に見てもらうか、プロに英文校正を依頼するのが現実的でしょう。最終的に誰かに頼むにせよ、まずは自分で論文の英語をチェックすることをお勧めします。 論文をやっと書き終えたら、すぐに英文校正を依頼し、ジャーナルに投稿したいという気持ちはよくわかります。英語に自信がない場合には、自分で英語論文のチェックをしても意味がないように思えるかもしれませんが、ここで時間をかけて英語の校正を行うことは大切です。日本人にとって些細に見える間違いでも、 英語を母国語とする人にとっては例えば1つの冠詞がないだけで分かりにくくなったり、まぎらわしくなったりするものもあります。日本人特有の英語のミスを最小限に減らすことで、最終的には論文の質を向上させ、投稿可能なレベルにすることができます。 今回は、特に日本人の英語論文に多く見られる幾つかのミスを考えてみます。論文を書いた後、自分で英文校正を行う際のチェックポイントとして参考にしてください。 a、an、theのような冠詞の誤用 日本語にはないため、ちょっと気を緩めると注意を怠りがちになるのが冠詞です。しかし英語では、冠詞の有無およびその種類によって意味が通じなくなるだけでなく、意味がまったく変わってしまう場合があります。そのため、元の論文に冠詞の誤用が多いと、プロに英文校正を依頼したとしても校正作業に時間がかかり、校正者が前後の意味が通るようにする作業に終われて、洗練された英語にする作業がおろそかになってしまうこともあります。急がば回れと言われますが、より効率よく英語のチェックをしてもらうためには、論文を書き終えた後、すべての名詞に対して適切な冠詞が使われているか、自分でも2〜3回確認し、それから英文校正を依頼したいものです。 接続詞の多用 英語で書かれる論文では、簡潔な文章が好まれます。目安としては、論文を書き終えたあと、1文が3行以上にわたる文章を探し、分割できないか検討することをお勧めします。また、1文が長すぎないことを確認するのと同時に気をつけたいのが、接続詞の乱用です。日本語の文章では、各文の最初に「そのため」とか「しかし」などの接続詞を用いて、文のつながりを明確にする傾向が多々ありますが、英文では、すべての文を接続詞で始めると、かえって目障りになります。接続詞は、文の流れがわかりづらいとき、その接点を接続詞で補うためにのみ使いましょう。特に「on the other hand(一方)」や「consequently(その結果)」など、理論の流れを示す言葉を乱用すると、焦点を当てたい理論の展開やその解釈がぼやけてしまいますので、気をつけてください。 単数系と複数形 たとえば「研究」という言葉を、「research」と単数形にした場合と「researches」と複数形にした場合とでは意味が変わってきます。論文の結果部分で、「results」と複数形で書いたにもかかわらず、1つしか書かれていなければ、読者が混乱します。名詞をひとつずつ、単数形にすべきか複数形にすべきかを確認してください。…

論文での動植物の学名の記載方法

動植物を使用した研究を行い、それを論文にするときには、世界共通の名前である学名で記載する必要があります。読者の誰にでも理解されるという点では便利なのですが、ほとんどの学名はラテン語で記されるため、かなりやっかいなものでもあります。研究で使った動植物を特定しつつ正確に示すため、ここでは動植物の名前にしぼって学名の書き方とその際の注意を記します。 学名とは 通常、動植物には、一般的に使われている通称名とは別にそれぞれの国の言語でつけられた名前(日本であれば和名/標準和名)がついていますが、通称名でも和名でも他の国では通じません。そのため論文には学名で記す必要があります。 マグロを例にとると 一般的には「マグロ」で通じますが、マグロにもいろいろな種類があり、絶滅危惧種に指定されているマグロの和名は「クロマグロ」です。これが鮨屋では「本マグロ」とも呼ばれ、英語圏ではBluefin Tunaとなり、国よって名称が異なります。いずれも世界共通の名前とは言えません。そこで、種を正確に識別するための学名「Thunnus thynnus」と記すことで、どの国の人が読んでも同じ生物の話であると分かるようにするのです。 国際的な命名規約 学名は国際的な分類学の基準に従って命名されており、生物は大きく分けて3つの分野(動物/植物/細菌・古細菌)に分けて命名規約が決まっています。種の学名は、分類学の父と呼ばれるスウェーデンの植物学者カール・リンネによって1700年代に体系化されました。リンネの「二名法」は、属名と種名(種小名/種形容語)で構成され、イタリック体(斜体文字)で表記されます。 現在、以下の三大命名規約により動物、植物、細菌の学名について詳細な規定が設けられています。(注:栽培植物およびウイルスについては別の命名規定が適用されますが、ここでは割愛します。) • 国際藻類・菌類・植物命名規約(日本語版は国際植物命名規約邦訳委員会が作成) • 国際動物命名規約(ICZN)(日本語版[追補]は日本分類学連合が作成) •…

研究論文の背景の書き方

優れた研究論文にはさまざまな要素がありますが、読者にとって最も重要なものの1つは研究の背景、つまり研究論文を通して議論された情報のコンテクストです。研究論文の背景には、その分野の主要な研究と、関連する研究についての説明も含めて書き記すので、先行研究を自分の研究の根拠としたり、先行研究に反論したりする場合には特に重要です。 そこで今回は、効果的な研究論文の背景の書き方と背景とイントロダクションの違いをご紹介します。 研究の背景で、問題提起を行い、理論的根拠や研究上課題について議論します。それを研究テーマのイントロダクションにつなげ、研究題材に関する論理的な流れを作ります。つまり、研究を行う理由を読者に理解してもらうのが背景の役割です。 研究論文の背景を書くときに留意すること 繰り返しになりますが、論文の背景は、研究テーマとその重要性を理解してもらう重要な箇所です。研究の背景の文章量やいかに詳しく書くかは、自分のテーマについての理解度をどの程度示す必要があるかによっても決まりますが、読者に記載内容を理解してもらうために、論文の背景を書くときには以下のような点に注意しましょう。 対象読者にとって馴染みのない、説明しなければ理解が困難な理論や概念、用語、知見などが書かれていないか 現在の問題が生じた背景を説明する上で、共有すべき過去のデータはあるか、ある場合にはきちんと示されているか 読者にとって馴染みのない、説明しなければ理解が困難な他の分野から借用した概念は含まれていないか 背景は、研究の意義や目的を明確に記す部分なので、該当研究で全く新しい手法を使用しているなどの研究の独自性が、その研究がなぜ重要なのかにつながる場合には、追加的な説明をするなどして読者に分かりやすく示しておくことも大切です。 研究の流れ(文脈)を設定し、先行研究を基に研究の重要性を示すものの、先行研究については概要を述べるに留めて詳細は書きません。 イントロダクション(序論)と背景の違い 背景を書くことと、イントロダクション(序論)に書くこととの区別をどうするか迷ったときは、背景とイントロダクションの以下の違いを見直してください。 イントロダクションでは、読者がまずは目を通す研究テーマに関する予備的なデータを示し、背景では論文の重要性を示す。 イントロダクションでは研究の概要のみを説明し、背景では研究テーマ自体についての深い議論を行う。 イントロダクションでは、研究課題、研究目的、研究目標をまとめるが、背景にそれらは含まれない…

略語と頭字語について押さえておくべきこと

最近では、日本語にも文章の先頭のローマ字や数字を組み合わせた略語「KY語」が蔓延していますが、分かる人にはすぐ分かるとは言え、分からない人にはまったく意味が伝わりません。そして、略語や頭字語を使いこなすには慣れが必要です。略語(abbreviation)と頭字語(acronym)は、両方とも特定の語の一部を省略あるいは簡略にしたものですが、略語とは、ある語の一部を何らかの方法で省略または簡略したもの。頭字語は、略語の一種で、一連の単語の最初の文字をつなげて作られたものです。すべての頭字語は略語ですが、反対にすべての略語が頭字語とは言えません。 略語や頭字語をうまく使えば、原稿を読みやすく、かつ分かりやすくすることができます。長い名称や特定の語句が繰り返し出てくる場合に略語や頭字語を使えば、読みやすく表記できるだけでなく、文字制限に余裕を持たせることにもつながります。特に、新しく発見・発明した技術や解析方法を紹介しようとするとき、著者はその名称や手法を示す略語で表記することが多々あります。略語にすることによって、読者の目を引き、その技術を認識してもらうチャンスを増やし、浸透していくことができると考えるからです。既に使われている略語としては、Nuclear Overhauser Effect Spectroscopy(NOE(核オーバーバウザー)現象や化学交換を観測するための二次元NMR(核磁気共鳴))の略語であるNOESYや、Correlation Spectroscopy(二次元NMR測定手法)の略語のCOSYなどが挙げられます。これらの例でも見られるように、略語を説明する際にも別の略語が登場することから技術の積み重ねで研究が進んでいると察せられますが、これらの略語を使わずに表記した場合、論文の中でどれほど字数を取るのか……。しかも、毎回スペルアウトされたところで覚えられません。略語は記憶の助けとなります。とはいえ、略語を使いすぎても読みやすさを損なうことになりかねません。特に、関連技術や該当分野の知識を持たない読者にとって、略語の多用は理解の妨げになってしまいます。「この略語の説明、前に出てたはず」とページを行ったり来たりしなければ内容が分からないとなると、なかなか読み進められないものです。また、略語を誤って小文字表記してしまうと、略語なのか何なのか区別が付かなくなってしまったりするので表記上の注意も必要です。 どんなときに略語にするか 論文執筆中、どんなときに略語にするかの判断基準のひとつは、該当語句の頻出度合いです。その言葉が原稿の中に何度も出てくるものでなければ、略語を使う必要はありません。代表的なスタイルガイドである「The Chicago Manual of Style」には、文章中に同じ語句が5回以上出てくるような場合にのみ略語を使用すると書かれています。学術雑誌(ジャーナル)によっては、固有の略語の使い方、導入方法や定義付けの仕方が定められています。省略の仕方にまで言及しているジャーナルもあるので、投稿先ジャーナルの規定を確認しておきましょう。例えば、PLOS ONEは、略語として一般的に知られていないものについては、論文中に最低でも3回出て来なければ略語にすべきではないとしています。また、引用文献をリストする際にジャーナルの名前を書くことがありますが、生物医学分野でよく使われている論文の出典・引用の示し方ガイド「Vancouver referencing style」には、ジャーナルのタイトルの略称表記については、アメリカ国立医学図書館(NLM)のNCBI(アメリカ国立生物工学情報センター)のデータベース「Journals…

論文の被引用率を上げるための工夫とは

公開される学術論文の数は増加する一方で、論文を発表したからと言って安心してはいられません。研究者としての評価は、公開論文の質はもちろん本数、さらに該当論文がどれだけ引用されたかにも左右されるのです。 引用されることによって、その研究成果を発見し、最初に公開した研究者として認知されます。その上で、膨大な数の公開論文の中からどのぐらいの数の研究者があなたの論文を見つけ出し、引用しているかが、学術的貢献度の目安となるのです。論文が引用されることで、後続の研究者に発見したことを伝え、その成果の上に新たな研究を重ねることができるようにし、結果としてあなたの分野における研究を促進するのに役立てるということでもあります。クラリベイト(Clarivate plc)が発表している「高被引用論文著者(Highly Cited Researchers)」リストのような報告は、学術的な競争の励みとなる一方で、学術研究者間の競争をあおるといった側面も持ち合わせていますが、被引用率を高くしたいというのは多くの研究者の希望でしょう。 高被引用論文著者リスト クラリベイトが毎年公表している「高被引用論文著者リスト」は、同社が提供する世界最大級のオンライン学術データベースWeb of Scienceを使用して分析したものです。Web of Scienceは、科学情報の検索が可能な有力な検索エンジンに掲載されたさまざまな情報を網羅しており、高被引用論文著者リストは、Web of Scienceにおける特定の出版年、特定の分野で発表された全論文のうち、引用された回数が上位1%に入る論文を発表している研究者を選出したものです。このリストに名前が掲載されるということは、大きな影響を与える研究を成し遂げた、研究者として成功を収めたことの証となり、大変名誉なことなのです。 研究者は引用を操作できるのか しかし、研究者の競争的状況が厳しくなる中で被引用率の重要度が増すにつれ、人為的な操作を行って引用数を増やしていることが示されました。そもそも研究は厳しい競争にさらされています。研究者は、研究助成金を獲得できるチャンスを高めるためにも、研究成果を一流の学術雑誌(ジャーナル)に発表しようと競っています。論文の引用ランクが研究の実績や研究における貢献度の指標のひとつとなっていることは否めません。論文発表数が多く、被引用数が多くなるほど、研究者としてのキャリアを高めることにつながります。かといって操作して引用数を増やすことは認められません。では、どのような研究が「高被引用論文」と認識されるのか、どうすれば操作することなく引用数を引き上げられるのかを見てみましょう。…

論文共同執筆者の探し方

分野にもよりますが、学術論文を共同で執筆することが増えています。多くの研究者がチームとなって研究を行うことで知識の共有を広げているのです。他の研究者と共同研究をしたり、共著で論文を執筆したりすることにはいくつかのメリットがあります。さまざまな論文共同執筆者(論文共著者)が自身の知識や経験を持ち寄ることで、研究活動自体をより効率的に、生産的に行うことができるようになるのです。さらに、異文化間、部門間をまたいだチームが協力することで、さらなる創造力や推察力を研究活動にもたらす可能性もあります。たくさんの研究者が協業すれば、研究作業を共有して進めるとともに、チーム内で特定の役割を分担することが可能です。それぞれ異なる研究グループがひとつの研究プロジェクトで助け合うことは、より多くの研究成果を得る助けとなります。そして、実務的なことだけでなく、研究チームに共著者として参加する研究者が増えれば、性別や人種の多様性も増し、さまざまな視点で研究に豊かさをもたらすこともできるでしょう。 もちろん、研究者が協力して科学研究を行うことには責任も伴います。共著者と共に研究を行うことは、多面的な点でやりがいのある仕事です。しかし、共著者は、研究デザインや作業の流れについて異なる見解を持っているかもしれませんし、それぞれの課題に対する取り組み方もさまざまです。論文執筆について相反する意見を持っている可能性もあります。協業がうまくいかなければ、研究プロジェクトが遅延したり、もっと悪ければ失敗したりする可能性も捨てきれません。共同研究で最善の結果を得るためには、戦略的なアプローチが不可欠なのです。 論文共著者に求めること 思い通りの、かつ満足できる協力体制を構築するためには、まず自分自身の強みと弱みに真摯に向き合うことから始めます。自分に不足している部分・スキルが何か分かっていれば、どのような部分で自分をサポートしてくれる共著者が必要なのか分かるはずです。 スキルを相補う論文共著者を探す 例えば、自分が統計ツールを使うことがうまいのであれば、実験作業を概念化したりデザインしたりするのが得意な共著者がいればいいと思いませんか?研究分野で豊かな経験があり、問題解決を助けてくれそうな共同研究者は?補完的な強みを持つ共著者がいれば、作業と分野専門的な作業を分けることによって、より大きく進展させることができます。共著者がいることで、新しい考え方が生まれ、さまざまな手助けを得ることができるでしょう。 研究倫理の理解も含めて気になること 共著者は研究倫理をきちんと把握していますか?メールでのコミュニケーションはタイムリーに行えていますか?約束は守る人ですか?研究について構想し、デザインを構築して分析を行うことなどに時間と労力を惜しまない人ですか?そして、もうひとつ共著者を選ぶときに考慮すべきことは、その共著者は、あなたが最善を尽くすための意欲をかき立ててくれるような人かどうかという点です。 候補者のキャリアと分野 さまざまな段階のキャリアにいる研究者や、異なる分野の研究者を引き込むことで、共著者の多様性が得られます。多様性は、研究全体の質を高めるのに不可欠な要素です。経験レベルの異なる研究者には、それぞれ異なる強みがありますし、異なる分野の研究者は、あなたの研究分野に「異分野からの視点」を持ち込んでくれるでしょう。さらに、読者の幅を自分の研究分野以外に広げることにもつながります。計量書誌学的分析には、著者の人種的多様性が高い出版論文は、より多く引用されていることが示されています。 執筆スキルのある論文共著者 執筆スキルの高い著者を見つけたいものです。共著者と諸条件の交渉をする前に、その候補者が共同研究者として適任かを検討するために、研究業務を例示してもらうか、過去の出版物を聞いておきましょう。 論文共著者の選考 共著者の選考には、その人の知識と経験が不可欠な要素とは言え、もっと重要なことは、あなた自身がその共著者候補と楽しんで研究を進められるかどうかです。共著者になるからには、やる気と共に、研究プ プロジェクトのガイドラインに従って時間と労力を費やす覚悟が必要です。そして、学術分野における評価が悪くないことも大切な要素です。科学研究に対する貢献度合いが高く評価され、評判もよく、名声もある研究者を共著者に迎えることはどんな時でも素晴らしいことです。彼らは、あなたの研究の信頼性と信憑性を高めることに一役を担ってくれるでしょう。…