研究の効率化

サイテーションインデックス(引用検索)SCIE

クラリベイトの提供するScience Citation Index(SCI)とScience Citation Index Expanded(SCIE)は同じなのか違うのか?何が違うのか?という疑問が寄せられたので、この2つについて見てみます。 SCIとSCIE Science Citation Index(SCI)は、もともとInstitute for Scientific Information (ISI)によって作成され、現在はクラリベイト(旧トムソン・ロイター)によって管理されている科学技術分野のサイテーションインデックス(引用索引)で、学術界の実績評価基準として活用されてきました。 Science…

盗用・剽窃チェックツール iThenticate を使いこなそう

今回は特別に盗用・剽窃チェックツールiThenticate(アイセンティケイト)の専門チームによる解説をお届けします。 iThenticateは、影響力の高い学術雑誌(ジャーナル)の93%をカバーしており、その数は約7千万本の購読契約、1.3億本以上のオープンアクセスで公開されている学術論文や著作物に及びます(2020年12月時点)。さらに700億以上の現在公開中およびアーカイブ済のウェブページも網羅する膨大なデータベースと照合することで、盗用や剽窃の可能性を検証するオンラインツールです。研究論文や書籍だけでなく、ネット上の情報まで網羅的に検索することで、投稿論文の独自性を検証することができます。研究者は、iThenticateを使って盗用や剽窃と見なされるような記載がないかを事前に確認することができるので、出版できるかできないか先の不安な出版プロセスにも自信をもって望むことができます。学術出版において、いかにiThenticateが有用かをみていきましょう。 学術研究者には今でも「Publish or Perish(出版か死か)」のプレッシャーが重くのしかかっています。研究者としての評価やキャリアを進めるかどうかの見極めは、論文出版能力に大きく依存していると言っても過言ではありません。しかし、学術出版のプロセスはとても複雑で、出版できる見込みは不透明な上、出版にはリスクも伴います。些細なミスが、研究者のキャリアに大きな汚点となったり、研究者個人だけでなく所属大学または研究機関の評判を落としかねないことになったり、あるいは研究資金の調達に影響を及ぼすことも考えられるのです。 2020年は、コロナ禍で研究活動が停滞していたとはいえ、多くの政府出資および民間財団による研究資金の提供は継続されています。オープンアクセスの広がりにより研究者が論文を出版できるチャンスは増えるとも言えますが、論文数の増加スピードに追いつくほどではないことを踏まえれば、学術出版における競争は厳しくなると予想されます。実際、科学技術振興機構(JST)の経営企画部エビデンス分析室が行っている分析で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連論文数の発表件数が2020年1月以降急増し、年後半になっても依然として増加傾向にあること、さらに論文引用数も増え続けていることが判明したと発表されました。今後も発表論文数はますます増えていくことでしょう。 このような状況の中で学術論文を発表する研究者は、研究作業の初期の段階からあらゆる手段を使って投稿論文が盗用や剽窃となってしまう可能性を排除し、自分の研究成果が分野に貢献できるように努めなければなりません。そこで活用すべきものが、盗用・剽窃チェックツールです。 世界中の研究者が自分の研究の独自性を検証するためにiThenticateを信頼し、利用しているのには理由があります。 大手出版社が標準的なスクリーニングと査読プロセスでiThenticateを利用している。 研究者にとって、大手学術出版社のElsevier(エルゼビア)、Taylor & Francis、Nature、Springer(シュプリンガー)、Wiley-Blackwellや、学位論文のデータベースProQuest Dissertations and Theses(PQDT)、などが採用しているのと同じツールを利用することで、同じコンテンツにアクセスできることのメリットは大きい。…

学術ジャーナルの検索データベースを使いこなそう

共同学術研究や分野をまたいだ研究が増えるにつれ、世界中で行われている重要な研究が迅速に利用できるようになることが求められる中、学術データベースの利便性への要求が高まってきました。論文や学術雑誌(ジャーナル)を探したい研究者は効率よく検索したいと思いますし、研究論文を発表しようとしている研究者は、認知度の高いジャーナル、あるいは自分の研究内容に最適なジャーナルを探し出したいと思っています。主要なデータベースにはインデックス(索引)が付与され、検索しやすいようになっていますが、インデックスの付け方はジャーナルの信頼性、拡散力、評価にとって重要であり、最終的にはそのジャーナルの影響度を示すIF(インパクトファクター)だけでなくそのジャーナルに掲載されている論文の引用率などにも影響を及ぼすことになります。 インデックスの重要性 インデックスとは、収録されている多数の論文から特定の対象を素早く探し出すための識別情報などを固有の原則やルールに従って付与するものです。一般的には、データベース固有の基準やルールに準拠したインデックス化が行われ、特定の機関や出版社が慎重な情報収集・整理の後に選出したジャーナルにインデックスを付与した後にデータベースに収録されます。インデックスは、出版倫理を維持し、論文の信頼性、可視性を高め、さらに読者数を増やす助けとなります。インデックスを付与されPubMed、Scopus(エルゼビア)、Web of Science(クラリベイト)、EBSCO、Google Scholarといった評判の高いデータベースに収録された論文・ジャーナルは、幅広い読者に読まれ、影響力を高めることができるのです。 Institute for Scientific Information (ISI) が学術雑誌に関する最初のサイテーションインデックス Science Citation Index…

コロナ禍でも学術研究を続けるために

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で、世界の多くの国ではロックダウン(都市封鎖)や外出禁止となりました。国によって多少の差がありますが、多くの大学や研究機関が閉鎖され、研究者は予定していた調査や実験を継続できず、多くの学会も開催できなくなりました。感染拡大が収まって移動制限が緩和されたとしても社会的距離またはソーシャルディスタンス(Social distance)を取るように求められる中、どのように学術研究を進めればよいのでしょうか? ソーシャルディスタンスを保ちながら研究データ収集する ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(London School of Economics and Political Science, LSE)のAdam Jowettは、社会的距離戦略下でも研究者がデータを集めるための方法は幾つかあるとした上で、データ収集が不可だから研究計画を再検討すると言い出す前に、別の調査方法が倫理的に可能かを考えるように示唆しています。 多くの研究者は、データの収集中断や、研究計画の再検討を余儀なくされています。特に、対面でのインタビューやフォーカスグループへの調査、フィールドワーク(現地調査)などによってデータを収集することが一般的な定性的研究では、進め方の変更が必要なものも出ていることでしょう。オンライン経由でデータを集めたり、既存のテキストデータを収集したりする方法としては、社会学者であるVirgina Braun、Victoria Clarke、Deborah…

研究と出版に eラーニング を役立てよう

博士課程に入ると、たくさんの新しい課題に直面します。博士課程のコースは難しい上に、研究や論文執筆も進めなければなりません。学術論文の執筆と出版には、書く技術、学術的な文章を書く能力、首尾よく論文を発表するノウハウが必要ですが、博士課程以前にはこの技能を磨く機会があまりありませんでした。研究の指導にあたる教授や教官から学ぶこともできますが、さらに深く学ぶために、自分で独自の取組をすることも考えてみてはいかがでしょうか。eラーニングを活用することも一つの方法です。 eラーニングとは eラーニングとは、インターネットを利用する学習形態ですが、今では、さまざまな教材やコンテンツが揃っています。通常は、LMS(Leaning Management System)という学習管理システムを使い、テキスト、画像やビデオなどの教材を配信します。LMSは受講者に学習しやすい環境を提供することを主目的としたシステムであり、ウェビナー(webinar)とも呼ばれるウェブセミナーの開催や、指導者と学習者の相互コミュニケーションの提供も可能にします。 eラーニングは、1990年代のパソコンとインターネットの普及に従って発展してきました。この頃に学校がインターネットを利用した通信教育を始め、当時は「遠隔教育」とも呼ばれ、広範な地域の幅広い層に学習機会を提供したのです。eラーニングという言葉が広まったのは2000年代になってからですが、教材やプログラムをもネット上で管理できるようになると、誰もがいつでもどこでも学習することができるようになりました。そして、さらなる技術の発展により、双方向学習やメール、チャットなどを使った双方向のコミュニケーションも可能となりました。今では、ライブ授業の配信など多様な学習機会がインターネット上で提供されています。 eラーニングの長所・短所 一番の長所は、時間の自由度が大きいことです。誰もが何時でも都合の良い時に学ぶことができるのです。日々、仕事に忙殺されている人にとっては、スキマ時間などに学習できることは、とてもありがたいことでしょう。また、eラーニングは何回でもアクセスできるので、重要な点を何度も履修しなおすことができます。時間が指定された授業だと、出られないことや、その分の振替を調整することなどがストレスになったりしますが、eラーニングであればそんなことはありません。好きな時間に簡単に、必要なコースを受講することができるため、学習時間を従来の通学型の授業に比べて25-60%に短縮できるとの説もあります。 一方、eラーニングには短所もあります。eラーニングをより効果的に活用するためにはこれらの短所も把握しておく必要があります。一つは、理論の学習と実際的な技術の習得は異なるため、eラーニングが実技を伴う内容の学習には適さない場合があることです。eラーニングで学んだ知識や技術を、実際に使おうとした場合、ある程度の困難が伴うことが予想されます。もう一つは、eラーニングは一人で受講するため、指導者や他の学習者と顔を合わせて学ぶ従来型学習のような社会的・人的ネットワークを構築することができません。これらは、知識それ自体より大事な場合もあるとはいえ、eラーニングでは難しいのが現実です。また、単独で学習する受講者が学習意欲(モチベーション)を維持するのが難しいという点も挙げられます。幸い、SNSやビデオ付きチャットなどのコミュニケーションツールが普及しているので、こうした交流手段をうまく活用することにより、eラーニングの弱点を補うことを意識すると良いでしょう。 論文発表の手順もeラーニングで学習 博士課程の大学院生にとって論文の発表が大事なことは改めて言うまでもありませんが、発表までの実際的な手順についてわからないこともあるでしょう。そのようなときには、論文発表までの手順を学べるeラーニングのコースが役立ちます。 例えば、研究者のためのeラーニングプログラムであるEnago Learn(Choosing the Right…

SNSは被引用数増加に効果があるか?

世界のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のユーザー数と普及率はとどまるところを知らず、2019年の世界全体のSNSの利用者数は34億8,000万人を突破、前年比9%増となっています。日本のSNS利用者数も、2018年末に7,523万人、2019年末に7,764万人、2020年に7,937万人と見込まれており、着実に増加しています。もはやコミニケーションツールとして欠かせなくなっているSNSですが、自撮写真や、観光やグルメの写真のアップ、友人同士のおしゃべりの道具として利用する以外にも、情報を効果的に共有する有力な道具としての利用法もあります。 学術界でもSNSが情報発信、情報共用して研究成果を広める手段として多用されるようになってきています。一方で、それが本当に役立つのかという疑問の声もあります。SNSによる研究成果の周知・拡散をめぐる調査などを紹介します。 SNSの種類 SNS には、いろいろな機能があるので、適切に活用すれば効果を上げることができます。そのためにはそれぞれの特徴を理解して、自分の目的に適したSNSを利用することをお勧めします。 Facebook(フェイスブック):自分の研究成果を発表したり、他のSNSや学術ジャーナルのリンクをつけたりすることができます。 Twitter(ツイッター):短い文章を写真や動画などと一緒に投稿できる代表的SNSです。自分の研究成果や学会発表、ブログなどにリンク付けが容易で情報発信の窓口になります。リツイート機能による拡散力が魅力です。 LinkedIn(リンクトイン):ビジネス特化型のSNSです。転職活動や採用、ビジネス上のネットワーク作りのために活用されることも多く、特定のグループ向けだけでなく、まったく異なる分野の人たち向けて広く情報発信することができます。 ResearchGate(リサーチゲート):研究者のためのSNSです。研究者間のつながりを促進し、研究のアイデアや成果を共有することを目的としています。論文のアップロード/ダウンロードができるので、論文についてのディスカッションも可能です。他の研究者をフォローして、最新の研究成果を見ることもでき、研究成果を議論する新しい場として活用されています。 Mendeley(メンデレー):文献管理ツールとして利用可能な研究者のためのSNS。グループを作成して文献を共有したり、論文を公開したりできます。自分の関心がある分野のグループに参加したり、気になる研究者をフォローしたりすることで、人的ネットワークを広げることもできます。 上にあげたSNS以外のコミュニケーションツールとしてBlog(ブログ)も挙げられます。SNSがフロー型のメディアであるのに対し、ブログはストック型のメディアと言えますが、最近のブログは読者が返信することやディスカッションすることを可能にするSNS機能を搭載しているものが増えているので、SNSの範疇に入るとされることもあるようです。フェイスブックの「シェア」やツイッターの「リツイート」のような拡散性や速報性はありませんが、長文や論文の投稿が可能で、投稿した記事がウェブ上に残るというメリットがあるので、使い分けをするとよいでしょう。 SNSの効果に関する調査 SNS利用のメリットに関する調査の結果は、他の人と繋がり、情報交換が容易になるという点では一致しています。それでも、研究成果の普及に本当に役立つのかについては議論されています。 英国の研究者が行った調査から主な分析結果を3つ挙げておきます。 研究者は自分の論文のアップロード先として、所属する研究機関や大学のウェブサイトより学術分野のSNS(Academia.edu、ResearchGate、Mendeley)を選択する傾向がある…

研究室で効率化をアップするコツ

研究活動は忙しいものです。日々新しいことに取り組みつつ研究を進め、期限通りに成果をまとめ、研究資金提供者への報告も行わなければなりません。特に研究を助成金に頼っている場合、研究成果をきちんと提出しなければ次の助成金獲得にも影響するため、計画的に研究プロジェクトを進めることは必須です。そのためには、効率的に研究をすることが求められるので、スケジュール(時間)やリソースをうまく管理できるように努めるべきでしょう。今回は、納期を守り、ワーク・ライフ・バランスを保つためにも有用な時間およびリソースの管理、実験時間の短縮につながるコツをご紹介します。 有能な研究責任者(PI)の効率化術 研究責任者(PI)は、研究活動と同時並行で研究室の管理業務や研究室メンバーの管理指導をバランスよく進めることが求められます。負担は大きいかもしれませんが、次のようなコツに留意しておくと助けになるでしょう。 計画を立てる:スケジュールを立て、研究室メンバーと共有する。資料などを読む、ものを書くための時間もきちんと配分することが大切です。詳細かつ合理的にスケジュールを立てることが、一日の時間を効率的に使うことにつながります。 テンプレート(ひな型)を用意する:実験経過や結果の報告など研究室で作成する資料のテンプレートを用意しておくと、PIを含めて研究に関わるすべての人の作業の効率化が図れます。 情報共有の仕組みを標準化:ファイリングシステムを整備し、その分類法や命名法を標準化しておくことで、情報を共有し、誰もが素早く必要な情報にアクセスできるようになります。 会議の集約:会議は貴重な時間を奪うとともに、集中を途切れさせる要因にもなります。会議を週の決まった日にまとめると、他の日は本来の仕事に集中することができます。 計画の見直し:週の半ばに計画の確認・見直しを行い、必要に応じて計画を調整すると、時間のロスを抑制できます。 読書時間の確保:あらかじめ計画しておかないと資料や研究動向の情報などをタイムリーに読めなくなってしまうので、日次または週次で読書時間を確保するように決めておきます。 研究企画会議:研究に関するアイデアや方向性などを議論する企画会議は長い時間がかかるものです。こうした会議は月次開催とし、研究室メンバーにはしっかりした準備を求めておきます。 対応時間の確保:学生や若手研究員から指導を求められることが多々あるでしょう。それらに対応するための時間枠を設けておきます。学生や研究室のスタッフが簡単な質問をする時間を設けることで、他の手間(やらなければと予定していたこと)をやらずに済むかもしれません。 余裕をもつ:スケジュールには多少の余裕を持たせておき、計画した仕事が予定以上に時間を要する場合や、やりそこなった作業のフォローに充てられるようにしておきます。 自分に合わせて調整する:時間管理の仕組みを、自分や一緒に働く人たちの事情にあわせて微調整していき、自分なりにやりやすい形に整えます。 研究メンバー向けのコツ PI以外の研究室のメンバーの主たる業務は研究に従事することですので、以下のような点に注意することが研究時間を節約し、効率性と正確性を高めることにつながります。…

剽窃盗用チェックツールはどこまで信頼できるか

学術研究における誠実性(Academic integrity)は重要です。研究者は、科学研究の発展を促進する独自性のある発想や研究成果を示すことで学術界に貢献することが求められていますが、同時にその研究が信頼に足るものであることを示すため、不正を疑われる行為は避けなければなりません。 研究不正にはいろいろありますが、対策の一環としてできることのひとつに、学術論文の剽窃・盗用などを事前に検知することが挙げられ、盗用・剽窃検出ツールを導入する学術雑誌(ジャーナル)が増えています。 盗用・剽窃チェック(plagiarism detection)ツールの過剰依存は問題 盗用・剽窃チェックツールとは、投稿論文の中に剽窃または盗用が疑われる内容が含まれているかどうかを確認するものです。とはいってもツールの利用は一長一短です。盗用・剽窃チェックツールに頼りすぎた査読により投稿論文が却下(リジェクト)された経験を持っている研究者もいることでしょう。ベルリン技術経済大学(HTW Berlin)のDebora Weber-Wulff博士は、学術ジャーナルの編集者は、自ら注意を払うことなく盗用・剽窃ツールの報告に依存しすぎると問題視しています。別の意見(セカンドオピニオン)を参照することが少ないとの指摘もあります。 Weber-Wulff博士は、盗用・剽窃チェックの報告書の解釈は時として難しく、不正確であることすらあると述べています。明確に文脈を理解すること抜きに論文の「斬新さ」あるいは「独自性」を評価するのは難しいものです。しかも、チェックツール(ソフトウェア)は、翻訳箇所や複数から取得した情報の剽窃を正しく検知できません。もうひとつ、チェックツールが単純な言葉の重複を剽窃と判断する場合があることも覚えておくべきでしょう。これはチェックツールが別々の論文原稿に書かれている3~5の文字列を検索していることで起こりえますが、逆に本来見つけ出すべき盗用・剽窃箇所を見落とし、正当な判定が出ないこともあり得えるのです。 人の目によるチェックの重要性 盗用・剽窃ツールを使っても、発想段階での盗用を検出したり、内容を特定することなしに既存の発見かどうかを判定したり、または許可なく転用された図表やデータを指摘することは不可能です。しかし、このような不正であっても、論文を注意深く読み、論文全体の整合性を確認する人(編集者)であれば見つけ出すことは可能です。 フランス国立科学研究センター(CNRS)の行動科学者Jean-François Bonnefon氏は、盗用・剽窃ツールに論文をリジェクトされてしまいました。彼が投稿した論文がリジェクトになった理由は、研究内容ではなく、方法や参考文献、著者略歴に対する指摘によるもので、これはソフトウェアによる重大な評価ミスであり、編集者が論文を見ればすぐに間違いであると分かるはずのものでした。にもかかわらず、人の目が介在しなかったために、彼の論文はリジェクトされてしまい、これは明らかに盗用・剽窃チェックツールの限界を示す事例だと述べています。人(編集者)を介在させないということは、アルゴリズムに依存するツールに判断を委ねることになってしまうのです。同様の事例は、他にも報告されています。 よく使われている盗用・剽窃チェックツール 現在、学術ジャーナルでよく利用されている盗用・剽窃チェックには4種類あります。それぞれ独自の特性を有していますが、限界があることは頭に留めておくべきです。…

GRIMとSPRITE:論文のエラーを探すツール

あなたが優秀な若手研究員で、ある研究に日夜取り組んでいるとします。 作業の合間にちょっと一息と、自分と同じ研究分野の最新動向を検索し始めると、自分の研究によく似た論文に関する記事が目に留まりますが、その論文は研究不正を理由に取り下げられたとのこと。そのような記事を見てしまうと、自分の研究は大丈夫だろうか?同様に論文が却下される事態をどうすれば避けられるのか?などと不安になってしまうことでしょう。 研究不正と疑われることを防ぐ対応策のひとつとして、自分のデータはもちろん、引用する出版済み論文のデータの正確性についても確認しておくことが不可欠です。科学研究データの信頼性が揺らぐことで生じる「再現性の危機(replication crisis)」は、学術コミュニティにおいて大きな問題です。今回は、研究不正を防ぐのにも役立ちそうな研究論文のエラーを探し出すための2つの方法をご紹介します。 GRIM(グリム)とSPRITE(スプライト) 再現性の危機への認識が高まる中、2016年にポーランドのPoznań University of Medical Sciences のポスドク(当時)だったJames HeathersとオランダのUniversity Medical Center Groningen…

研究の品質管理の重要性

品質管理により、科学研究の良し悪しに違いが生じます。では、研究における品質管理とは何でしょうか?答えは簡単です。研究室における「規準」を監視・維持することです。ここでは研究における品質管理がいかに重要かを見直してみましょう。 品質管理に関わる基準 品質管理とは、研究室内のあらゆる問題を見つけ出し、これによる影響を弱めて許容誤差範囲内に収めるよう、修正や調整、あるいは改善を行うことです。また、研究方法に一貫性があるようにしたり、実験結果の正確性を確保したりすることも含まれます。学術研究の品質には、正確性、信頼性、安全性、有効性など、さまざまな意味が含まれます。品質管理(Quality Control)と似ているものに品質保証(Quality Assurance)がありますが、この2つは品質マネージメント(Quality Management)の一環でありながら、若干意図が異なります。品質管理が、「どのように改善するのか」といった問題への対応として必要な変更を提案するための監視を行うプロセスなのに対し、品質保証は、適切な基準にのっとって研究が行われたか、品質管理における要求事項と結果を確かめるプロセスです。ただし、いずれも研究の「質」の確保に重要な役割を担うものです。 品質管理にあたって目安となる基準のひとつに、Good Laboratory Practice(GLP)があります。日本語では「優良試験所基準(規範)」や「優良研究所基準」などと呼ばれている、医薬品や医療機器、化学物質などの承認申請や登録申請のために行われる非臨床安全性試験実施に関する基準です。GLPは製薬会社の不正に対する査察を経て、米国医薬食品局(FDA)が定めた基準であり、該当する被臨床安全性試験データの信頼性の確保を目的として1979年から米国で適用されました。1981年に経済協力開発機構(OECD)がGLP基準を制定したことで国際基準として認識され、1982年には日本でもGLP基準が文書化、翌年から適用されています。さらに1997年には薬事法に基づいたGLP省令が定められ、その後も適宜改正されています。GLP省令には、「運営管理者は、試験施設の運営管理、計画書等や標準操作手順書(SOP)の作成・記録・保存を行う」といった基本的な事項から、生データの管理まで幅広く記載されています。他にもGood Manufacturing Practice(GMP)と称される医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準などもあり、研究室の品質管理においてこれらの法的な基準(法令・規制要求基準)を満たすことも大変重要です。 品質管理のベスト・プラクティス 基準について把握できたら、次は実際の品質管理です。品質管理のベスト・プラクティス(模範的な活動)として参照になるのがLaboratory Quality Management(LQM)です。LQMは、研究室の活動の一貫性を阻害する要因を管理・制御する仕組みを組織内に実現するのに役立ちます。ほとんどのLQMは、国際標準化機構によって策定された試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項(General…