研究に役立つツール

【寄稿記事】生成AIがあれば、人間による英文校正は必要ないのか?

今回は、バイアスのない公平かつプロフェッショナルな視点で生成AI登場後の英文校正の必然性というテーマを考えるため、水本篤教授(関西大学 外国語学部・外国語教育学研究科 教授)にご寄稿をいただきました。水本教授のプロフィールは記事の末尾からご覧いただけます。 私は外国語教育(特に英語教育)を専門とする研究者です。テキストを大量に収集し、データベース化した言語資料「コーパス」を用いた教育が研究テーマです。これまでに、英語論文執筆サポートツール(https://langtest.jp/awsum/)を開発したり、多様な分野の研究者に対して、コーパスを活用した英語論文執筆のテクニックを教えるワークショップやセミナーを実施してきました。 他の分野で活躍する研究者と交流する中で、多くの方が「英語論文の執筆にかかる時間を減らし、研究内容に専念したい。しかし、英語で論文を書くと大量の時間が必要で困っている」と口を揃えて言います。実際に、英語が母国語でない研究者が研究を行う際、英語は大きな障壁となることが Amano et al. (2023) によって数値で示されています。 自分自身の例でいうと、英語教育に関する研究を長年行っており、英語で論文を書くことも継続しているため、自分自身の専門知識と英語の運用能力は高いと自負しています。しかし、英語で論文を書くたびに、伝えたいことが完全には伝わっていないと感じ、これがいつまでもつらいのです。 今回は、「生成AIがあれば、人間による英文校正は必要ないのか?」という疑問について、言語教育の専門家として考察します。一部の人々は、「生成AIが存在する現在、人間による英文校正は不要だ」と極言しています。その結果、生成AIの学術論文執筆への適用に関する情報には非対称性が存在し、「真実は何かわからない」と感じている方も多いでしょう。 まず、「生成AIがあれば、人間による英文校正は必要ないのか?」に対する私の答えは「Yes and No」です。専門分野の英語論文を多数執筆してきた方で、自分の分野の論文の英語表現に自信を持っている方は、生成AIを使った英文校正でも十分に論文を完成させられるでしょう。英文校正会社に原稿のチェックを依頼すると、高価であったり、納期まで数日必要だったり、校正の品質が不均一であったりする問題があります。しかし、専門知識が豊富で、かつ英語運用能力が高い方にとっては、これらの問題を考慮する必要がありません。…

ChatGPTに「できない」9つのこと

急速に広まっているChatGPTですが、万能というわけではありません。ChatGPTは、アメリカのOpenAI社が2022年11月に公開した対話型AIサービスです。チャットで質問したことに対し、膨大なデータから情報を収集して答えてくれるわけですが、GPTが「Generative Pre-trained Transformer」の略であることからも察せられるとおり、回答を出力するためには事前学習(pre-training)が必要です。2023年6月時点での普及モデルGPT-3.5の事前学習データセットが2021年9月までのものであるため、2022年以降の情報が含まれていないことが指摘されていますが、プラグイン機能を追加することでChatGPTが新しい情報にもアクセスできるようにするといった対策や、深層学習アルゴリズムを使ってインターネット上の大規模なデータセットから情報収集した後に後学習(post-training)することで微調整を行ってから出力する機能の開発なども進められています。ChatGPTは、日々進化を続けている一方で、誤った情報に基づく誤った回答が出力される危険性も含め、使用の際には注意が必要です。 ChatGPTやその他の生成AIツールを使うことで調べ物の時間を短縮したり、テキストを作成させたりできるといった利便性が注目されていますが、研究者がChatGPTを使う際には、ChatGPTが「できないこと」、つまりAIツールの限界を知っておく必要があります。ここでは、研究活動においてChatGPTができない9つのことを取り上げます。 ChatGPTができない9つのこと 1- 独創的な研究アイデアの発案 独創的な研究アイデアは科学の進歩の原動力であり、イノベーションを生み出し、知識を広げ、画期的な発見への道を開くものです。、ChatGPTは研究アイデアを作成することはできません。 試しにChatGPTに化学分野の研究における独創的な研究アイデア/テーマをいくつか提案するよう入力したところ、この分野では基本的な3つの既存の研究について出力してきました。以下がその際の画面(スクリーンショット)です。 ChatGPTのアルゴリズムには、独自の批判的な分析能力がないので、情報の正否は判断できません。 ChatGPTが分野に特化した専門知識を習得し、最新の動向を把握しているわけではありませんし、各分野独自の複雑な内容を深く理解しているわけではありません。 研究者の専門的知識は、研究を進めるべき方向性を特定し、既存の知識を基に革新的なアプローチを提案し、その分野を発展させることができます。一方、ChatGPTには、人間の研究者のような豊富な知識の集積や経験はありません。 AI言語モデルをベースとするChatGPTの能力は、既存のトレーニングデータに制限され、生き生きした会話や協業に積極的に参加する能力は有していません。 2- 複雑なデータ分析の解釈…

記述的研究の攻略法

記述的研究(descriptive study)は、特定の集団や現象に関する情報を収集するために使用する強力な研究手法です。記述的研究とは、研究対象の「理由」に焦点を当てるのではなく、現象を説明することに終始する比較対象群をおかない調査研究の方法です。具体的には、症例報告やケースシリーズなどがこれに相当します。記述的研究の根幹である観察とデータ収集は、研究の主題の特徴や行動についてより深く、詳細に理解するのに役立ち、後続の研究のためにも貴重な洞察を提供します。 この記事では、記述的研究の定義、特徴、方法を踏まえ、質の高い研究成果を出すために避けるべき7つの失敗の攻略法を紹介します。経験豊富な研究者であれ、これから研究に取り組む学生であれ、科学研究を成功させるためには記述的研究の基本を理解することが不可欠です。 記述的研究とは 記述的研究とは、特定の現象の因果関係、つまり「理由」に焦点を当てるのではなく、与えられたテーマについて観察、データ収集を行うものです。記述的研究の目的は、研究対象の母集団や現象の特性を包括的かつ正確に把握し、データ内に存在する関係性、パターン、傾向を説明することです。 記述的研究の方法には、調査研究、観察研究、ケーススタディ研究(症例研究)などがあり、収集されるデータは質的・量的に関わらず多岐にわたります。記述的研究から得られた知見は、貴重な洞察を与え、将来の研究に役立てられますが、特定の現象が生じる因果関係を立証するものではありません。 記述的研究の重要性 1.母集団や現象の特性の理解 記述的研究は、特定の母集団や現象の特性や行動を包括的に把握することができるので、研究者はそのテーマについてより深く理解することができます。 2.基本的情報の入手 記述的研究によって集められたデータは研究の基礎となり、さらなる研究につながります。 3.情報提供(収集されたデータの活用) 特定のテーマに関する貴重な情報源となるため、将来の研究、政策決定、研究プログラムなどに洞察を提供し、広く役立てることができます。 4.多様なサンプリング方法の検証 記述的研究では、さまざまなサンプリング方法を検証し、研究に最適なアプローチを決定するために使用することができます。…

読むべき論文の選別・優先順位付けに文章要約AIツールを活用

研究者1:ノートPC開く度に大量の論文が届くんだ、勘弁してよ。 研究者2:なんでダウンロードするデータを分類しておかないの? 研究者1:やってるよ。でも、情報量がすごくて、どこから手を付ければいいのかわかんないよ。 どこかで聞いたような会話ですか?学術研究のデータの照合を始めたばかりの研究者によくある困りごとかもしれません。大量の情報が恩恵をもたらすことが多々ある一方で、研究論文に関連する情報過多は必要な情報を特定することを困難にします。必要な情報をすべて見つけ出せたとしても、どの論文を優先して読めばよいのか分らなくなることもあります。例えば、学術雑誌(ジャーナル)掲載論124本、書籍の中の該当する章27章、プレプリント論文45本、卒業論文内の章8章を一度にダウンロードしたとしても、すべてを読むにはどれほどの時間を要するか、見当も付きません。すべての研究論文をセクションごとに要約すれば、相当な時間短縮ができるでしょう。この記事では、研究者が自分の研究テーマに関連する情報源を見つけ出す方法と、研究記事をセクションごとに要約することで時間を有効に使う方法をご案内します。 ダウンロードした膨大な研究データを手作業で照合・要約するのは難しい 文献レビューを行う際には、複数の情報源からダウンロードされた大量のデータを利用し、関連するデータだけを使って最大の有用性を引き出すことが大切です。膨大な研究情報を照合し、管理するには、体系的なアプローチで取り組む必要があります。情報管理がうまくできれば、文献レビューの洞察を導き出し、読むべき論文の優先順位を付けるのに役立ちます。しかし、情報過多になってしまうと、論文の要約を行うどころか、研究データを管理し、分析する段階で混乱してしまうでしょう。 研究論文をセクションごとに正確に要約する秘訣は、要点を押さえることです。論文をひとつひとつ自力で要約するのは大変な作業です。要約するためには、論文を徹底的に読み込まなければなりませんが、すべての論文を最初から最後まで読み、注釈、小見出し、さらに参考文献にまで注意を払うのは途方もない作業です。しかも、重要なことが常に明白に書かれているとは限らないので、重要な点を見逃さないように各セクションを個々に読み進めなければなりません。研究が続く限り、この要約の作業は続きます。さらに、どの論文から読むかの優先順位を決めるには、入念に計画された照合作業と関連度に基づくデータの要約が必要です。 情報過多のほかにも、文献レビューの体系的なアプローチを妨げる問題は以下のようなものがあります。 選択バイアス:キーワードだけで、関連性のある情報と判断すべきではありません。 包括性の欠如:リサーチクエスチョンの理解があいまいで、誤った用語や関連性の低い用語で情報を検索するために発生します。 論文のエビデンス(証拠)を検証していない:証拠を検証しないと結論を誤る恐れがあります。 透明性/再現性の欠如:レビュー手法の再現性は、科学的方法論の中心となる基本的な考え方です。レビュー手法に透明性がなく再現できない場合には、信頼できると見なされません。 どの文献から読むべきかの優先順位の付け方 論文のタイトルだけでは、論文を読み進める決定打とはなりません。通常、研究者は、アブストラクト(要旨)、結果、結論を読んで、その論文をさらに読み進める価値があるか、研究テーマに関連性があるかを判断します。しかし、情報が氾濫している現在、今までと同じやり方をすると、時間と労力を費やすことになってしまいます。 大量にダウンロードした情報から適切な文献を見つけるのは時間と手間のかかる作業です。論文のアブストラクトと結論だけを読んで、その文献が有用な情報かの判断を下したいところですが、自分の研究テーマに関連する重要な情報が、論文のアブストラクトや結論のセクションに記載されているとは限りません。そこで、AIの助けを借りて読むべき論文に正しく優先順位を付けるための新しい技術が模索されるようになりました。AIが研究論文の重要なポイントを強調し、すべてのセクションを要約してくれるのであれば、読み落としの潜在的な解決策となります。この技術により、研究者は関連性のある文献だけを読めるので、時間の節約となるだけでなく、最も大切なことは、適切な情報を引用することが出来るようになります。…

研究者におすすめの盗用・剽窃チェッカー4選

語彙の選択、句読点の間違い、文法上の誤りといった一般的な英文を書く時の問題は、校正ツールや英文校正サービスを利用することで対処できますが、盗用・剽窃を防ぐことは別の問題です。盗用・剽窃とは研究倫理に反する行為であり、論文著者、学生、研究者およびさまざまな学術関係者にとっては深刻な懸案事項です。そこで、研究不正を防ぎ、学術論文を比類ないものにするために、盗用・剽窃チェッカーの需要が高まっているのです。 盗用・剽窃チェッカーを利用すべき理由 盗用・剽窃は、特に学術界では許されない不正行為です。実際には盗用・剽窃チェッカーを使用すれば盗用は簡単に見つかってしまいます。このような不正が発覚すれば、研究者としての評判が落ちるだけでなく、所属大学から免職処分を受けたり、解雇されたりする危険性すらあります。 研究論文やあらゆる種類の学術文書は、研究内容を徹底的に調べ、構成を整え、指定のガイドラインに準拠する必要があります。誰でも面倒な作業は避けたいところですが、それこそが問題の原因です。盗用・剽窃とは、必ずしも意図的に行われるのではなく、むしろ、無知(不正行為だと知らなかった)、確認不足、盗用・剽窃の定義に関する混乱(その行為が盗用・剽窃に該当するとは思わなかった)などが原因となって起こってしまうものです。だからこそ、オンラインの盗用・剽窃チェッカーを利用して、簡単に防いでしまいましょう。 盗用・剽窃チェッカーを活用するメリットは以下の通りです。 1. 公開されている情報リソースを包括的に検出できる 2. 盗用・剽窃された箇所が強調表示されるので、簡単に見分けられる 3. 類似率が表示されるツールもある 4. 不正確に言い換えたコンテンツも検出が可能 5. ツールを使用することで著者の誠実さを示すことになる…

学術研究におけるパイロットスタディの有用性

新しい研究プロジェクトに取りかかる時は、ワクワクするものですが、プロジェクトに着手する前に、その計画が実現可能かどうかを確認しておくことは重要です。準備が不十分だったために、一度に大量のサンプルを処理するはめになったり、アンケートに重要な質問を加えるのを忘れたりすることは避けたいものです。 パイロットスタディとは パイロットスタディとは、研究プロジェクトを開始する前に、その研究デザインの実現性を見極めるために行う予備的な小規模調査です。研究プロジェクトに使用する手法をパイロットスタディで試し、その結果を踏まえて大規模なプロジェクトの方策を確定できます。質的・量的研究のいずれにおいてもパイロットスタディは有用です。パイロットスタディを通して研究課題や方法を特定または具体化することで、エラーの発生を防ぎ、リスクを軽減できるだけでなく、プロジェクトに要する時間とコストを見積り、余計な手間や費用を削減することができるのです。 アフリカの格言に「You never test the depth of a river with both feet.(仮訳:川の深さを測るのに両足を入れるな)」というものがありますが、いきなり川に両足を入れてしまうと水深を測るどころか、足が付かずに溺れる危険性もあるから慎重に行動せよとの警告です。大規模プロジェクトをいきなり開始するのではなく、それに先立って小規模のパイロットスタディを行うことで慎重に進めるのが得策です。パイロットスタディの小さなサンプル数で、大規模プロジェクトで予定している方法を試してみれば、計画の問題を見つけるのに役立つでしょう。大規模プロジェクトに多大な時間とお金を投入する前に、問題を修正できます。少ないサンプルであっても、実際に見てみればサンプル数を増やした場合の結果を推測することもでき、サンプル収集にどの程度のコストがかかるのかを見積もることも可能です。 パイロットスタディの構成要素…

WHO推奨:研究プロトコルに書き込む21項目

ある学生は研究プロトコルについて頭を悩ませているようです。 研究主宰者(Principal Investigator : PI):研究プロトコル(研究計画書)は書きましたか? 学生:まだです。分らないことだらけで…そもそも、研究プロトコルを作成することがなぜ重要なのでしょうか?研究プロポーザル(研究提案書)と同じようなことを書けばいいのか、何を書かなければならないのか、どのような構成にしたら良いのか…所定の書式に従って書けばよいものですか? 経験の浅い研究者は、研究プロトコルを作成する目的や重要性だけでなく、どうやって書けばよいのかも理解できていないようです。この記事を通して、研究プロトコルの書き方について理解を深めていきましょう。 研究プロトコルとは 研究プロトコルとは、臨床試験の背景、理論的根拠、目的、デザイン、方法、統計的考察および実施機関(団体)について説明する文書です。臨床研究の計画の概要を示すだけでなく、研究課題に対して満足できる答えを示すように作成する必要があります。研究プロトコルは、研究を実施するための試料と手順を示す文書なのです。 なぜ研究プロトコルが重要なのか 治験や臨床試験において、研究プロトコルは最も重要なものであり、臨床研究の基盤となるものです。臨床試験の被験者の安全と収集するデータの完全性を保証するための文書でもあります。拘束力を持つ文書である研究プロトコルには、臨床試験の一環として許可されていること、あるいは許可されていないことを記載します。さらに、自分が所属する研究機関の研究倫理審査委員会(IRB)に申請を提出する際、最も重要な文書と見なされるものです。 研究プロトコルは、医療専門家、統計の専門家、薬物動態の専門家、臨床研究コーディネーター、研究プロジェクトマネージャーなどからの情報を基に作成します。研究のあらゆる側面が最終的な文書に網羅されていることを確認しましょう。 研究プロトコルと研究プロポーザルの違い 混同されることが多々ありますが、研究プロトコルと研究プロポーザルは、異なる文書です。下表に二つの相違点を並べてみます。 研究プロポーザル(Research…

質的研究の長所と短所

質的研究とは、端的に言えば、研究対象を測定して質的データを採取し、それを用いて、言語的・概念的な分析を行い、結論を得る研究―となりますが、全てのデータに意義があるわけでもなければ、データに意義があっても分析方法が適切でなければ意義のある結論は得られません。質的データには、観察記録やインタビューなどの言語データなどが含まれ、こうしたデータから社会的・文化的な意味を汲み取っていく研究が「質的研究」または「定性的研究」と呼ばれます。数値による記述が多くなるか、言語による記述が多くなるかなどは扱うデータの性質によって異なりますが、収集されたデータを分析し、客観的に説明し、傾向を理解すること、そこから導き出される新しい理論を構築することを目指す点では、どのようなデータ、分野にも概ね共通していると言えます。質的研究がよく使われている分野としては、臨床心理学、看護学、社会学といった人文社会科学系の研究が挙げられます。 質的研究が重視するもの 人間とは、常に研究対象でありながら、把握が困難な存在です。事象が生じる頻度をとらえ、どうすれば他の研究者が実験を再現することで同じ結果を得ることができるかを重視する自然科学系の研究では数量的な手法(量的研究/定量的研究)が好まれるのとは異なり、人文社会系の研究では再現性を求めず、客観的な観察と文書化を重視する質的な手法(質的研究/定性的研究)が多用されます。 演繹法でなく帰納法によるアプローチ 飛躍や矛盾なく情報を整理して筋道を考える論理的思考には、複数の事実を足し合わせて結論を導き出す「演繹法」と、物事や事例などの現象に共通する情報やパターンを抽出し、共通項を踏まえて結論を推論する「帰納法」がありますが、質的研究は帰納法によるアプローチです。 質的研究(定性的研究)が最適なのに使われていない場合、質的アプローチを試みることによって、変数を操作してコントロール(対照群)と比較し、再現可能な解答を得るために、複数のシナリオで分析してみなければ―といった量的アプローチに必要な作業は不要になります。 帰納法では、前提となる現象や事例の質や量が大切なので、共通項を見つけ出す際のデータに誤りや偏りがあると、正しい結論を導き出すことができません。また、前提とするデータの数が多いほど精度の高い推論を導き出すことが可能になります。こうした特徴は、後述する「質的研究における限界」にも関連してきます。 説明して理解することを目的に観察を重視することは、意見、感情、経験(従来の定量的研究だと混乱を生じさせる変数)に関する研究を促進させます。さらに、調査環境を操作しないように、インタビューあるいはグループディスカッション過程で動的な性質を保つことができます。研究者は、事前に承認された質問に縛られることなく、リアルタイムでさらなる質問をすることで、当初予定していた質問への回答よりも踏み込んだ調査を行うことができます。また、研究者が直接立ち会うことで (観察者が隠れていることも場合も、フォーカスグループの司会者として参加する場合も考えられます)、非言語的なコミュニケーションも観察できます。 質的研究の手法(アプローチ) 質的研究とは、現象に関する質的データを用いて帰納的に探求する研究であるとされ、幾つかの手法(アプローチ)があります。代表的なものを以下に示します。 現象学的アプローチ : いろいろな学問分野で用いられているアプローチ。特定の出来事を経験した人や、特定の期間を生きた人といった研究協力者から話を聞き取り、語られる「生きられた経験(lived experience)」を分析し、解釈していく記述的研究手法。現象学的アプローチには、マニュアルや決まった手順がない。…

研究者向け おすすめ英文チェックツール6選

文法とは言語において文章を書く上でのきまりです。コミュニケーションの中で新しい俗語(スラング)が生まれ、それが世界中に拡散するにつれ、文法の正しい使い方に影響が出ることで、研究者が効果的な学術文章を書く際にも悩ましい問題となってきています。学術文章は知識を広げるための基本的情報を提供するものですので、文法的にも表現においても正しく書かれていなければなりません。幸いなことに、AIベースの英文チェックツールを活用することで、正しい文章の執筆を少しでも楽に、時間をかけず、間違いなく行うことが可能です。研究者は学術文書の英語をチェックするのに最良の英文チェックツールを用いることが重要です。 この記事では、オンラインで利用できるツールの中から、言語スキルの向上や文法・スペルチェックができるツール6つを選出し、特徴を解説していきます。 英文チェックツールを使用することの大切さ 学術文章のあるべき姿は、客観的かつ正確な内容がしっかりとした構成で、かつ改まった(フォーマルな)表現で書かれていることです。学術雑誌(ジャーナル)に学術論文を投稿する際にオンライン英文チェックツールを使って文法やスペルをチェックすることは、最終的な公表に必要な具体的要件を満たすことにつながります。こうしたことから、各研究分野における適切な言葉遣いや文法の改善だけでなく、学術ジャーナルの様式に関するガイドライン(スタイルガイド)や単語数の制限(字数制限)といった要件を満たすのに役立つチェックツールの需要はますます増えています。さらに、オンライン英文チェックツールには、学術英語の執筆、専門用語や科学的表現のチェック、出版に向けた諸々の準備において的確なサポートを提供することも期待されています。こうした機能を有するツールを使いこなすことができれば、研究者が学術文書を執筆するのに大いなる助けとなるでしょう。 研究者におすすめの英文チェックツール6選 原稿の質を向上させるための拡張機能を搭載したオンライン英文チェックツールが幾つか公開されていますが、ここでは研究者向けにおすすめのチェックツール6選を紹介します。 1. Trinka AI Trinka AIは、世界各国の研究者に論文英文校正サービスを提供しているエナゴを運営するクリムゾンインタラクティブが開発した世界初の学術論文・テクニカルライティングに特化したAI搭載の英文校正ツールです。学術文章や専門用語が用いられる原稿の改善や、投稿原稿を公開可能な形に整える際に役立つように開発されました。また、英語の文法やスペルチェックだけでなく、論文著者と連携し、全体的な言語の改善を確実に行うという機能が特徴的です。原稿の修正を提案しつつ、学術的なスタイルガイドに合わせていきます。さらに、学術的な文体、適切な言葉遣い、概念の明確化、文構造、単語の代替え提案といったカスタム機能も付いています。修正提案の理由についても詳しい説明が付きますし、文脈を変えずに別の表現を提案してくれるので単語数を削減することにも役立ちます。世界各地の研究者が論文にアクセスしやすいように、米国式か英国式を選択することができることも学術論文にとっては重要な点です。 言語学者、ITエンジニア、そしてデータサイエンティストのチームが開発したこのツールは、学術関連から日常生活まで、あらゆる人、あらゆる種類のコミュニケーションをサポートするツールです。 2. Grammarly Grammarlyは、世界的IT企業であるGrammarly社が開発した人工知能と自然言語処理を用いたライティングツールで、文法チェック、スペルチェック、盗用・盗作検出サービスを提供しています。ウェブ上だけでなく、Google…

文献レビューを成功させる論文マッピングとツール

多くの時間と労力をつぎ込み、何とか研究テーマが決まったのであれば、研究の成功に向けた第一歩を踏み出せたことに安堵しているかもしれません。次に取り組むべきは、文献レビューです。何人かで知恵を出し合ったとしても、研究論文あるいは卒業論文を書くのに十分な文献の量とはどの程度なのかを把握するのは難しいものです。図書館で何時間もページをめくって資料を探していた頃とは違い、インターネット上でオープンアクセスの論文やその他の出版社のプラットフォームが閲覧できるようになったおかげで、文献検索の作業は遙かに楽になりました。しかし、ITの普及と文献の検索および閲覧の利便性が格段に向上した反面、重要なデータのみを収集することがより難しくなってしまったのです。そこで、必要なデータを収集するための解決策、論文マッピングを紹介します。 論文マッピングとは 論文マッピングとは、自分の研究に必要な情報(文献)を探す方法のひとつです。過去の研究のまとめと言える文献レビューを執筆するには、同じ分野の論文を特定し、その研究成果を検討、批評、および解釈する必要があります。そのためには体系立てられた方法を取らなければならないことから、論文マップの作成が役立ちます。文献の主題(テーマ)、主張、および概念をマッピングすることは、文献レビューに不可欠な工程です。また、知識や思考のプロセスを外面化するための確立された方法でもあります。論文マップは、論文の著者、分野、テーマなどの項目に応じてそれぞれの関係性を図式、あるいは地図のように視覚的に表わしたものです。 研究者は、膨大な量の情報に圧倒され、自分の研究に必要な情報を特定したり整理したりするのが難しいと感じるようです。研究者は自分の分野において知識だけでなく、知識間の関連性においても、より豊富な知識を培っておくことが推奨されます。この知識の関係性をまとめることを、論文マッピングと言います。 論文マッピングのメリット 論文マッピングがどのような場面で研究に役立つかを挙げておきます。 研究分野について、どのぐらい学生が理解しているか、どのように解釈しているかを具体的に示すものとして、同僚や教授と共有するとき。 別の視点に切り替えることでパターンを形成し、それまで研究領域に隠されていた可能性を確認するとき。 関連する研究におけるギャップを特定するとき。 研究者が本来の研究領域の可能性やそれらの研究の限界を特定するとき。 論文マッピングへのアプローチ 論文マッピングは組織的なツールであるだけでなく、再帰的なツールでもあります。さまざまな分野の研究機関の特定に焦点を当てたアプローチをとることで、理論的かつ整然と、または根本的なマッピングをすることができます。 論文マッピングには2つのアプローチがあります。 主要な考えまたはディスクリプタ(キーワード文書の要約や文書中の重要な語句など)によるマッピング:研究テーマにおけるキーワードを使ってマッピングを作成する。 著者によるマッピング:該当分野における主要な研究者・専門家を特定する引用マッチングとも呼ばれ、引用を使ってそれらを相互に関連付けることも含むことがある。著者名で検索し、研究分野や作成した論文をマッピングする。…