研究を推進する

ポジションペーパー作成に大切な10のポイント

一言で学術論文といっても、研究成果を記す原著論文や学会などで発表するためのポスター発表など、種類や長さによる違い、査読の有無によってさまざまな種類に分けられます。その中のひとつ、ポジションペーパーとは、見解論文と呼ばれることもあるように、比較的短めかつ早めに新しい問題やアイデアに関する見解をまとめるものです。ポジションペーパーを上手に書くには、研究スキルだけでなく、研究を進める間に収集した情報を分析するスキルも必要です。今回は、ポジションペーパーの基本的な構成と、作成するときに押さえておきたい10のポイントを紹介します。 ポジションペーパーとは ポジションペーパーは、ある問題やアイデアに対して、賛成あるいは反対いずれであれ意見を述べるものです。特定の問題(トピック)について議論したり、再考を求めたりするために書かれます。よって、ポジションペーパーの著者は、取り上げる研究論文やデータが何を伝えているかを読者に伝えた上で、問題や論争となっている点をどのように解釈するか、議論の的となっている理由を説明した上で、自分の見解や論点、解決策についてわかりやすく示す必要があります。 ポジションペーパーの構成 通常、ポジションペーパーは数ページで、取り上げたトピックの概要(議論の論点)、議論の背景、結論(解決策の提示)を1-3段落に分けて記載します。取り上げるトピックを決めたら、それに関する見解と可能な解決策を提案するため、関連する情報、データを収集する必要があります。概要を述べる際に主要な関連用語(キーワード)を特定しておくと背景が書きやすくなるでしょう。また、情報を収集する際には、その情報がトピックに関連性のあるもの、信頼性の高いものであることが不可欠です。ページ数については、4-6ページ程度が目安のようですが、フォントサイズや行間、挿入する図表の数などが指定されていることもあるので、大学や出版社がポジションペーパー用の執筆ガイドラインを定めている場合には、それを参照してください。 トピックの選択(判断基準) まず、ポジションペーパーを書くのに適したトピックをどうやって選択するかが重要です。面白くないもの、議論の余地のないことについて書いても誰の興味も引けません。自分の研究分野との関連性が高いもの、社会に影響を及ぼす可能性の高いものなど、賛否両面からの議論が展開できるものを選びます。トピックを選別するための判断基準として、以下を考えてみてください。 実際に議論されている、あるいは疑念がもたれているなど明確な論点があるか 説得力のある議論ができるか、賛否両面から論点を説明できるか(議論の異なる側面の長所と短所を挙げられるか) 賛否いずれかの意見を支持、主張ができるか 議論の絞り込みは可能か これらの問いかけを満たすトピックを選択したら、自分の意見を固めるために、論点の裏付けを行うための研究調査を進めます。賛否両面の証拠を示し、論点や意見を比較することにより、対立する議論の弱い部分への指摘も含め、議論に対して明確に意見することができるようになります。 ポジションペーパーの構成 一般的な構成に沿って考えをまとめてるようにします。 1.…

コロナ禍でも学術研究を続けるために

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で、世界の多くの国ではロックダウン(都市封鎖)や外出禁止となりました。国によって多少の差がありますが、多くの大学や研究機関が閉鎖され、研究者は予定していた調査や実験を継続できず、多くの学会も開催できなくなりました。感染拡大が収まって移動制限が緩和されたとしても社会的距離またはソーシャルディスタンス(Social distance)を取るように求められる中、どのように学術研究を進めればよいのでしょうか? ソーシャルディスタンスを保ちながら研究データ収集する ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(London School of Economics and Political Science, LSE)のAdam Jowettは、社会的距離戦略下でも研究者がデータを集めるための方法は幾つかあるとした上で、データ収集が不可だから研究計画を再検討すると言い出す前に、別の調査方法が倫理的に可能かを考えるように示唆しています。 多くの研究者は、データの収集中断や、研究計画の再検討を余儀なくされています。特に、対面でのインタビューやフォーカスグループへの調査、フィールドワーク(現地調査)などによってデータを収集することが一般的な定性的研究では、進め方の変更が必要なものも出ていることでしょう。オンライン経由でデータを集めたり、既存のテキストデータを収集したりする方法としては、社会学者であるVirgina Braun、Victoria Clarke、Deborah…

研究と出版に eラーニング を役立てよう

博士課程に入ると、たくさんの新しい課題に直面します。博士課程のコースは難しい上に、研究や論文執筆も進めなければなりません。学術論文の執筆と出版には、書く技術、学術的な文章を書く能力、首尾よく論文を発表するノウハウが必要ですが、博士課程以前にはこの技能を磨く機会があまりありませんでした。研究の指導にあたる教授や教官から学ぶこともできますが、さらに深く学ぶために、自分で独自の取組をすることも考えてみてはいかがでしょうか。eラーニングを活用することも一つの方法です。 eラーニングとは eラーニングとは、インターネットを利用する学習形態ですが、今では、さまざまな教材やコンテンツが揃っています。通常は、LMS(Leaning Management System)という学習管理システムを使い、テキスト、画像やビデオなどの教材を配信します。LMSは受講者に学習しやすい環境を提供することを主目的としたシステムであり、ウェビナー(webinar)とも呼ばれるウェブセミナーの開催や、指導者と学習者の相互コミュニケーションの提供も可能にします。 eラーニングは、1990年代のパソコンとインターネットの普及に従って発展してきました。この頃に学校がインターネットを利用した通信教育を始め、当時は「遠隔教育」とも呼ばれ、広範な地域の幅広い層に学習機会を提供したのです。eラーニングという言葉が広まったのは2000年代になってからですが、教材やプログラムをもネット上で管理できるようになると、誰もがいつでもどこでも学習することができるようになりました。そして、さらなる技術の発展により、双方向学習やメール、チャットなどを使った双方向のコミュニケーションも可能となりました。今では、ライブ授業の配信など多様な学習機会がインターネット上で提供されています。 eラーニングの長所・短所 一番の長所は、時間の自由度が大きいことです。誰もが何時でも都合の良い時に学ぶことができるのです。日々、仕事に忙殺されている人にとっては、スキマ時間などに学習できることは、とてもありがたいことでしょう。また、eラーニングは何回でもアクセスできるので、重要な点を何度も履修しなおすことができます。時間が指定された授業だと、出られないことや、その分の振替を調整することなどがストレスになったりしますが、eラーニングであればそんなことはありません。好きな時間に簡単に、必要なコースを受講することができるため、学習時間を従来の通学型の授業に比べて25-60%に短縮できるとの説もあります。 一方、eラーニングには短所もあります。eラーニングをより効果的に活用するためにはこれらの短所も把握しておく必要があります。一つは、理論の学習と実際的な技術の習得は異なるため、eラーニングが実技を伴う内容の学習には適さない場合があることです。eラーニングで学んだ知識や技術を、実際に使おうとした場合、ある程度の困難が伴うことが予想されます。もう一つは、eラーニングは一人で受講するため、指導者や他の学習者と顔を合わせて学ぶ従来型学習のような社会的・人的ネットワークを構築することができません。これらは、知識それ自体より大事な場合もあるとはいえ、eラーニングでは難しいのが現実です。また、単独で学習する受講者が学習意欲(モチベーション)を維持するのが難しいという点も挙げられます。幸い、SNSやビデオ付きチャットなどのコミュニケーションツールが普及しているので、こうした交流手段をうまく活用することにより、eラーニングの弱点を補うことを意識すると良いでしょう。 論文発表の手順もeラーニングで学習 博士課程の大学院生にとって論文の発表が大事なことは改めて言うまでもありませんが、発表までの実際的な手順についてわからないこともあるでしょう。そのようなときには、論文発表までの手順を学べるeラーニングのコースが役立ちます。 例えば、研究者のためのeラーニングプログラムであるEnago Learn(Choosing the Right…

論文レイサマリー(要約)の書き方のポイント

毎年、何百万本もの学術論文が発表されており、毎日のように飛躍的な発見も生まれています。科学研究が現代の生活にすっかり溶け込んでいるにもかかわらず、一般の人にとって研究内容を理解することは容易でなく、まして最新の研究動向を把握するのはことさら難しいことです。たいていの場合、科学的な論文には専門用語が多く、一般的には分かりにくい書き方となっていることも一因です。しかし、研究者にとっては研究資金提供者やメディアの関心を集めると同時に、多くの人に成果を知ってもらうことが重要です。そのためにできることのひとつは、一般の人にも分かりやすい要約「レイサマリー(lay summary)」を書くことです。ここでは、レイサマリーの書き方と注意すべきポイントをみていきましょう。 レイサマリー(要約)とは 「レイサマリー」とは、誰でも理解できる簡易な言葉で研究の内容を説明するものです。研究論文の冒頭の「要旨(アブストラクト)」が研究者などを対象として研究概要を書くものであるのに対し、レイサマリーは専門知識を持たない人でも研究の内容を理解できるように書くものです。多くの学術雑誌(ジャーナル)がレイサマリーをウェブサイトのトップページに掲載することで、たくさんの人が科学論文に接することができるように配慮しています。例えば、Elsevierの学術ジャーナル「Epilepsy and Behavior Case Report」や「Journal of Hepatology」がレイサマリーを掲載しています。また、欧州連合における臨床試験制度であるEuropean Union Clinical Trials Regulationのように、レイサマリーの提出を求めている機関もあります。レイサマリーは、一般の人だけでなく、ジャーナリストや研究資金提供者など、該当分野の専門家ではない人にも研究内容を理解してもらうのに役立ちます。研究成果を一般にも広く知らしめ注目されることは、研究者としての影響力を高め、研究資金を確保することにもつながるので、非常に重要なことです。レイサマリーは、これらを可能にする手段のひとつと言えるでしょう。 レイサマリーの書き方のポイント…

失敗から学ぶ-論文却下を招く15のミス

研究者である以上、誰もが自分の研究論文が高インパクトな学術誌(ジャーナル)に掲載されることを目指していることでしょう。しかし、論文がジャーナルに掲載されるというのは簡単なことではなく、却下(リジェクト)されることも少なくありません。論文が却下されるのは辛くても、その経験は次に原稿が受理(アクセプト)されるためのコツを学ぶチャンスとなります。そこで今回は、「失敗から学ぶ」として、論文却下を招く15のミスを紹介します。 1.誤解を招く恐れのあるタイトル 見当違いなタイトルは論文の即時却下につながります。タイトルは、自分の論文テーマを正確に表すものであることが大切です。研究範囲に収まっていない内容を想起させるようなタイトルを付けるのは問題です。 2.整合性の取れていない要旨(アブストラクト) 要旨(アブストラクト)が論文に書かれた内容と整合性が取れていない場合もリジェクト要因となります。要旨において紹介する研究結果や結論が、本文で述べられている内容ときちんと一致し、的確にまとめられている必要があります。 3.不十分な序論(イントロダクション) 序論の内容が不十分であると、論文本文に読み進む前の段階でジャーナル掲載に値せずと見なされかねません。序論には、研究課題と仮説、研究の目的が分かりやすく述べられていなければなりません。序論は、上手に自分の研究の価値を伝え、本文につなげることが重要です。 4.研究方法(メソッド)の不正引用 複数の論文を執筆していると、つい同じ研究方法(メソッド)を複数の論文で反復して記述しがちです。しかし、たとえ自分の論文に書いたメソッドであっても、過去に出版された論文に記載された内容や研究方法を原典の引用なしに掲載した場合には、自己盗用とみなされます。データの収集方法や解析方法についても同様です。さらに、研究方法は常に状況を踏まえた内容でなくてはなりません。新しい技術や技法が現れた時点で、今までの方法は時代遅れとみなされます。 5.結果の記載の過不足 結果には、研究の結果のみを簡潔かつ明確に記さねばなりません。ジャーナルから指定された字数制限に気を取られるあまり、重要な情報を取りこぼしてしまったり、反対に説明が過剰になったりすると却下される原因となります。 6.非論理的な内容 当然ですが、議論が非論理的な論文は、容赦なく却下の対象となります。研究テーマに関連がない、結果に焦点を合わせないまま広がりすぎている、見解が偏っている(バイアス)、他の研究者による重要な発見を踏まえていない、研究の限界を見落としている――といった考察は、非論理的であると見なされます。 7. 投稿先ジャーナルの選択ミス 論文の内容が、ジャーナルの目的と研究領域(Scope)に一致していない場合、投稿原稿が受け入れられることはありません。ジャーナルによって、投稿論文への要求は異なるため、投稿先ジャーナルの「Aims…

SNSは被引用数増加に効果があるか?

世界のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のユーザー数と普及率はとどまるところを知らず、2019年の世界全体のSNSの利用者数は34億8,000万人を突破、前年比9%増となっています。日本のSNS利用者数も、2018年末に7,523万人、2019年末に7,764万人、2020年に7,937万人と見込まれており、着実に増加しています。もはやコミニケーションツールとして欠かせなくなっているSNSですが、自撮写真や、観光やグルメの写真のアップ、友人同士のおしゃべりの道具として利用する以外にも、情報を効果的に共有する有力な道具としての利用法もあります。 学術界でもSNSが情報発信、情報共用して研究成果を広める手段として多用されるようになってきています。一方で、それが本当に役立つのかという疑問の声もあります。SNSによる研究成果の周知・拡散をめぐる調査などを紹介します。 SNSの種類 SNS には、いろいろな機能があるので、適切に活用すれば効果を上げることができます。そのためにはそれぞれの特徴を理解して、自分の目的に適したSNSを利用することをお勧めします。 Facebook(フェイスブック):自分の研究成果を発表したり、他のSNSや学術ジャーナルのリンクをつけたりすることができます。 Twitter(ツイッター):短い文章を写真や動画などと一緒に投稿できる代表的SNSです。自分の研究成果や学会発表、ブログなどにリンク付けが容易で情報発信の窓口になります。リツイート機能による拡散力が魅力です。 LinkedIn(リンクトイン):ビジネス特化型のSNSです。転職活動や採用、ビジネス上のネットワーク作りのために活用されることも多く、特定のグループ向けだけでなく、まったく異なる分野の人たち向けて広く情報発信することができます。 ResearchGate(リサーチゲート):研究者のためのSNSです。研究者間のつながりを促進し、研究のアイデアや成果を共有することを目的としています。論文のアップロード/ダウンロードができるので、論文についてのディスカッションも可能です。他の研究者をフォローして、最新の研究成果を見ることもでき、研究成果を議論する新しい場として活用されています。 Mendeley(メンデレー):文献管理ツールとして利用可能な研究者のためのSNS。グループを作成して文献を共有したり、論文を公開したりできます。自分の関心がある分野のグループに参加したり、気になる研究者をフォローしたりすることで、人的ネットワークを広げることもできます。 上にあげたSNS以外のコミュニケーションツールとしてBlog(ブログ)も挙げられます。SNSがフロー型のメディアであるのに対し、ブログはストック型のメディアと言えますが、最近のブログは読者が返信することやディスカッションすることを可能にするSNS機能を搭載しているものが増えているので、SNSの範疇に入るとされることもあるようです。フェイスブックの「シェア」やツイッターの「リツイート」のような拡散性や速報性はありませんが、長文や論文の投稿が可能で、投稿した記事がウェブ上に残るというメリットがあるので、使い分けをするとよいでしょう。 SNSの効果に関する調査 SNS利用のメリットに関する調査の結果は、他の人と繋がり、情報交換が容易になるという点では一致しています。それでも、研究成果の普及に本当に役立つのかについては議論されています。 英国の研究者が行った調査から主な分析結果を3つ挙げておきます。 研究者は自分の論文のアップロード先として、所属する研究機関や大学のウェブサイトより学術分野のSNS(Academia.edu、ResearchGate、Mendeley)を選択する傾向がある…

クラリベイト・アナリティクス高被引用論文著者2019

学術誌(ジャーナル)評価分析データベースJournal Citation Reports(JCR)で有名なクラリベイト・アナリティクスですが、毎年、高被引用論文著者や引用栄誉賞の発表も行っています。この引用栄誉賞に選ばれた研究者がノーベル賞を受賞することも多いようです(2019年までに50名の引用栄誉賞受賞者がノーベル賞を受賞)。 2019年11月に発表されたHighly Cited Researchers 2019(高被引用論文著者2019年版)は、同年において影響力の高かった研究者をリストしています。これは科学研究の分野において過去10年以上にわたって出版された論文の引用データから、影響力の高い研究者を分析してリスト化したもので、この名誉あるリストに名前が掲載されるには、引用される回数の高い論文を多数出版し、それらが論文データベースWeb of Scienceに収録された全論文のうち、特定出版年および特定分野において引用された回数が上位1%にランクされている必要があります。2019年は、約60か国から6261名の研究者が選出されました。このうち、3571名が特定分野での功績を、2492名が複数分野を合算(クロスフィールド)した業績を評価されての選出となっています。分野を横断して評価されるようになったのは2018年からですが、複数の分野に影響を与えた論文がわかりやすくなっています。 2019年版の傾向 高被引用論文著者2019年版には、同年にノーベル賞を受賞した3名を含め、計23名のノーベル賞受賞者が含まれています。また、世界7か国19名の研究者が、研究成果が非常に多くの回数(2000回以上)引用された研究者に送られるCitation Laureates 2019(引用栄誉賞)に選出されました。2000回以上引用されるような論文は、収録された論文全体の0.01%にすぎないので、「ノーベル賞クラス」と見なされる研究者のみが引用栄誉賞に選ばれていると言えます。選出された研究者の論文は頻繁に引用されていることが明らかで、該当分野における貢献は極めて大きく、社会にイノベーションをもたらすものと言えるでしょう。 高被引用論文著者は世界60か国に分散していますが、約85%の研究者は上位10か国に集中しています。高被引用論文著者を最も多く輩出した国は米国で2737名。この人数は、今年選出された全著者の44%を占めていました。最も多く輩出した大学は、ハーバード大学で人数は203名に及んでいます。一方、中国から選出される研究者の数は、2018年の482名から636名と引き続き増えていることが示されていました。この結果、国別の人数では中国が英国(2019年で516名)を抜いて2位に浮上。英国同様、ドイツやオランダの高被引用論文著者数が2018年よりも減少しているのとは対照的です。中国と並んで著しい伸びを示しているのはオーストラリアで、2014年の80名から2019年の271名と6年間に3倍以上の増加となり、5位に入っています。オーストラリアの研究機関が、世界各地から高被引用論文著者を採用したことに加え、自国内の研究者育成に力を入れたことが功を奏したようです。高被引用論文著者の72%は上位5か国(米国、中国、英国、ドイツ、オーストラリア)の大学・研究機関に所属しており、優秀な人材が特定の国に集中している傾向は続いています。このような世界動向の中、日本からの選出は98名で、昨年の13位から11位に順位を上げていました。輩出が多い分野は、植物・動物学、免疫学、物理学、化学。輩出数の多い組織としては東京大学などの39の大学や研究機関が含まれています。 研究者の活躍に期待…

研究室で効率化をアップするコツ

研究活動は忙しいものです。日々新しいことに取り組みつつ研究を進め、期限通りに成果をまとめ、研究資金提供者への報告も行わなければなりません。特に研究を助成金に頼っている場合、研究成果をきちんと提出しなければ次の助成金獲得にも影響するため、計画的に研究プロジェクトを進めることは必須です。そのためには、効率的に研究をすることが求められるので、スケジュール(時間)やリソースをうまく管理できるように努めるべきでしょう。今回は、納期を守り、ワーク・ライフ・バランスを保つためにも有用な時間およびリソースの管理、実験時間の短縮につながるコツをご紹介します。 有能な研究責任者(PI)の効率化術 研究責任者(PI)は、研究活動と同時並行で研究室の管理業務や研究室メンバーの管理指導をバランスよく進めることが求められます。負担は大きいかもしれませんが、次のようなコツに留意しておくと助けになるでしょう。 計画を立てる:スケジュールを立て、研究室メンバーと共有する。資料などを読む、ものを書くための時間もきちんと配分することが大切です。詳細かつ合理的にスケジュールを立てることが、一日の時間を効率的に使うことにつながります。 テンプレート(ひな型)を用意する:実験経過や結果の報告など研究室で作成する資料のテンプレートを用意しておくと、PIを含めて研究に関わるすべての人の作業の効率化が図れます。 情報共有の仕組みを標準化:ファイリングシステムを整備し、その分類法や命名法を標準化しておくことで、情報を共有し、誰もが素早く必要な情報にアクセスできるようになります。 会議の集約:会議は貴重な時間を奪うとともに、集中を途切れさせる要因にもなります。会議を週の決まった日にまとめると、他の日は本来の仕事に集中することができます。 計画の見直し:週の半ばに計画の確認・見直しを行い、必要に応じて計画を調整すると、時間のロスを抑制できます。 読書時間の確保:あらかじめ計画しておかないと資料や研究動向の情報などをタイムリーに読めなくなってしまうので、日次または週次で読書時間を確保するように決めておきます。 研究企画会議:研究に関するアイデアや方向性などを議論する企画会議は長い時間がかかるものです。こうした会議は月次開催とし、研究室メンバーにはしっかりした準備を求めておきます。 対応時間の確保:学生や若手研究員から指導を求められることが多々あるでしょう。それらに対応するための時間枠を設けておきます。学生や研究室のスタッフが簡単な質問をする時間を設けることで、他の手間(やらなければと予定していたこと)をやらずに済むかもしれません。 余裕をもつ:スケジュールには多少の余裕を持たせておき、計画した仕事が予定以上に時間を要する場合や、やりそこなった作業のフォローに充てられるようにしておきます。 自分に合わせて調整する:時間管理の仕組みを、自分や一緒に働く人たちの事情にあわせて微調整していき、自分なりにやりやすい形に整えます。 研究メンバー向けのコツ PI以外の研究室のメンバーの主たる業務は研究に従事することですので、以下のような点に注意することが研究時間を節約し、効率性と正確性を高めることにつながります。…

剽窃盗用チェックツールはどこまで信頼できるか

学術研究における誠実性(Academic integrity)は重要です。研究者は、科学研究の発展を促進する独自性のある発想や研究成果を示すことで学術界に貢献することが求められていますが、同時にその研究が信頼に足るものであることを示すため、不正を疑われる行為は避けなければなりません。 研究不正にはいろいろありますが、対策の一環としてできることのひとつに、学術論文の剽窃・盗用などを事前に検知することが挙げられ、盗用・剽窃検出ツールを導入する学術雑誌(ジャーナル)が増えています。 盗用・剽窃チェック(plagiarism detection)ツールの過剰依存は問題 盗用・剽窃チェックツールとは、投稿論文の中に剽窃または盗用が疑われる内容が含まれているかどうかを確認するものです。とはいってもツールの利用は一長一短です。盗用・剽窃チェックツールに頼りすぎた査読により投稿論文が却下(リジェクト)された経験を持っている研究者もいることでしょう。ベルリン技術経済大学(HTW Berlin)のDebora Weber-Wulff博士は、学術ジャーナルの編集者は、自ら注意を払うことなく盗用・剽窃ツールの報告に依存しすぎると問題視しています。別の意見(セカンドオピニオン)を参照することが少ないとの指摘もあります。 Weber-Wulff博士は、盗用・剽窃チェックの報告書の解釈は時として難しく、不正確であることすらあると述べています。明確に文脈を理解すること抜きに論文の「斬新さ」あるいは「独自性」を評価するのは難しいものです。しかも、チェックツール(ソフトウェア)は、翻訳箇所や複数から取得した情報の剽窃を正しく検知できません。もうひとつ、チェックツールが単純な言葉の重複を剽窃と判断する場合があることも覚えておくべきでしょう。これはチェックツールが別々の論文原稿に書かれている3~5の文字列を検索していることで起こりえますが、逆に本来見つけ出すべき盗用・剽窃箇所を見落とし、正当な判定が出ないこともあり得えるのです。 人の目によるチェックの重要性 盗用・剽窃ツールを使っても、発想段階での盗用を検出したり、内容を特定することなしに既存の発見かどうかを判定したり、または許可なく転用された図表やデータを指摘することは不可能です。しかし、このような不正であっても、論文を注意深く読み、論文全体の整合性を確認する人(編集者)であれば見つけ出すことは可能です。 フランス国立科学研究センター(CNRS)の行動科学者Jean-François Bonnefon氏は、盗用・剽窃ツールに論文をリジェクトされてしまいました。彼が投稿した論文がリジェクトになった理由は、研究内容ではなく、方法や参考文献、著者略歴に対する指摘によるもので、これはソフトウェアによる重大な評価ミスであり、編集者が論文を見ればすぐに間違いであると分かるはずのものでした。にもかかわらず、人の目が介在しなかったために、彼の論文はリジェクトされてしまい、これは明らかに盗用・剽窃チェックツールの限界を示す事例だと述べています。人(編集者)を介在させないということは、アルゴリズムに依存するツールに判断を委ねることになってしまうのです。同様の事例は、他にも報告されています。 よく使われている盗用・剽窃チェックツール 現在、学術ジャーナルでよく利用されている盗用・剽窃チェックには4種類あります。それぞれ独自の特性を有していますが、限界があることは頭に留めておくべきです。…

剽窃盗用チェックツールはどこまで信頼できるか

学術研究における誠実性(Academic integrity)は重要です。研究者は、科学研究の発展を促進する独自性のある発想や研究成果を示すことで学術界に貢献することが求められていますが、同時にその研究が信頼に足るものであることを示すため、不正を疑われる行為は避けなければなりません。 研究不正にはいろいろありますが、対策の一環としてできることのひとつに、学術論文の剽窃・盗用などを事前に検知することが挙げられ、盗用・剽窃検出ツールを導入する学術雑誌(ジャーナル)が増えています。 盗用・剽窃チェック(plagiarism detection)ツールの過剰依存は問題 盗用・剽窃チェックツールとは、投稿論文の中に剽窃または盗用が疑われる内容が含まれているかどうかを確認するものです。とはいってもツールの利用は一長一短です。盗用・剽窃チェックツールに頼りすぎた査読により投稿論文が却下(リジェクト)された経験を持っている研究者もいることでしょう。ベルリン技術経済大学(HTW Berlin)のDebora Weber-Wulff博士は、学術ジャーナルの編集者は、自ら注意を払うことなく盗用・剽窃ツールの報告に依存しすぎると問題視しています。別の意見(セカンドオピニオン)を参照することが少ないとの指摘もあります。 Weber-Wulff博士は、盗用・剽窃チェックの報告書の解釈は時として難しく、不正確であることすらあると述べています。明確に文脈を理解すること抜きに論文の「斬新さ」あるいは「独自性」を評価するのは難しいものです。しかも、チェックツール(ソフトウェア)は、翻訳箇所や複数から取得した情報の剽窃を正しく検知できません。もうひとつ、チェックツールが単純な言葉の重複を剽窃と判断する場合があることも覚えておくべきでしょう。これはチェックツールが別々の論文原稿に書かれている3~5の文字列を検索していることで起こりえますが、逆に本来見つけ出すべき盗用・剽窃箇所を見落とし、正当な判定が出ないこともあり得えるのです。 人の目によるチェックの重要性 盗用・剽窃ツールを使っても、発想段階での盗用を検出したり、内容を特定することなしに既存の発見かどうかを判定したり、または許可なく転用された図表やデータを指摘することは不可能です。しかし、このような不正であっても、論文を注意深く読み、論文全体の整合性を確認する人(編集者)であれば見つけ出すことは可能です。 フランス国立科学研究センター(CNRS)の行動科学者Jean-François Bonnefon氏は、盗用・剽窃ツールに論文をリジェクトされてしまいました。彼が投稿した論文がリジェクトになった理由は、研究内容ではなく、方法や参考文献、著者略歴に対する指摘によるもので、これはソフトウェアによる重大な評価ミスであり、編集者が論文を見ればすぐに間違いであると分かるはずのものでした。にもかかわらず、人の目が介在しなかったために、彼の論文はリジェクトされてしまい、これは明らかに盗用・剽窃チェックツールの限界を示す事例だと述べています。人(編集者)を介在させないということは、アルゴリズムに依存するツールに判断を委ねることになってしまうのです。同様の事例は、他にも報告されています。 よく使われている盗用・剽窃チェックツール 現在、学術ジャーナルでよく利用されている盗用・剽窃チェックには4種類あります。それぞれ独自の特性を有していますが、限界があることは頭に留めておくべきです。…