研究を推進する

研究論文の背景の書き方

優れた研究論文にはさまざまな要素がありますが、読者にとって最も重要なものの1つは研究の背景、つまり研究論文を通して議論された情報のコンテクストです。研究論文の背景には、その分野の主要な研究と、関連する研究についての説明も含めて書き記すので、先行研究を自分の研究の根拠としたり、先行研究に反論したりする場合には特に重要です。 そこで今回は、効果的な研究論文の背景の書き方と背景とイントロダクションの違いをご紹介します。 研究の背景で、問題提起を行い、理論的根拠や研究上課題について議論します。それを研究テーマのイントロダクションにつなげ、研究題材に関する論理的な流れを作ります。つまり、研究を行う理由を読者に理解してもらうのが背景の役割です。 研究論文の背景を書くときに留意すること 繰り返しになりますが、論文の背景は、研究テーマとその重要性を理解してもらう重要な箇所です。研究の背景の文章量やいかに詳しく書くかは、自分のテーマについての理解度をどの程度示す必要があるかによっても決まりますが、読者に記載内容を理解してもらうために、論文の背景を書くときには以下のような点に注意しましょう。 対象読者にとって馴染みのない、説明しなければ理解が困難な理論や概念、用語、知見などが書かれていないか 現在の問題が生じた背景を説明する上で、共有すべき過去のデータはあるか、ある場合にはきちんと示されているか 読者にとって馴染みのない、説明しなければ理解が困難な他の分野から借用した概念は含まれていないか 背景は、研究の意義や目的を明確に記す部分なので、該当研究で全く新しい手法を使用しているなどの研究の独自性が、その研究がなぜ重要なのかにつながる場合には、追加的な説明をするなどして読者に分かりやすく示しておくことも大切です。 研究の流れ(文脈)を設定し、先行研究を基に研究の重要性を示すものの、先行研究については概要を述べるに留めて詳細は書きません。 イントロダクション(序論)と背景の違い 背景を書くことと、イントロダクション(序論)に書くこととの区別をどうするか迷ったときは、背景とイントロダクションの以下の違いを見直してください。 イントロダクションでは、読者がまずは目を通す研究テーマに関する予備的なデータを示し、背景では論文の重要性を示す。 イントロダクションでは研究の概要のみを説明し、背景では研究テーマ自体についての深い議論を行う。 イントロダクションでは、研究課題、研究目的、研究目標をまとめるが、背景にそれらは含まれない…

AI研究の現状と日本のAI戦略

いつの世も技術の発展は科学研究の飛躍的な進歩を後押ししてきました。AI(人工知能)の進歩も見逃せません。近年は世界中、あらゆる分野でAIの導入が進んでいますが、昨年のConsultancy.asiaの記事(記事へのリンクは後述)に、日本企業のAI導入が米中より抜きん出ていると掲載されていました。とはいえ、一方では日本全体のIT化の遅れの深刻さが指摘されています。今回は、日本政府のAI戦略も含めてAI研究の現状を探ってみました。 AIツールの浸透が学術研究を後押し 今やAIツールは研究活動に不可欠な存在となっています。研究者自身が膨大なデータを分析するために四苦八苦するのではなく、AIを含めた新しい技術を駆使することにより、効率良く研究を推進し、科学研究のさらなる発展と新たなレベルへの引き上げにつながっているのです。具体例を挙げれば、研究論文発表数が急増し、年100万本近い論文が発表されているとも言われる中、研究者は効率良く文献を検索するために検索機能を活用しています。膨大な情報(論文)の中から必要な情報を検索、フィルタリング、コンテンツの抽出を行うことを可能とするAIを搭載した最先端のツールの利用は、もはや必須となっています。研究に関連するキーワードなどを入力するだけで関連する論文を見つけ、さらにその論文の著者の他の論文まで検索できる機能は、研究効率を上げるのに大いに役だっているのです。 学術出版側にとってもAIは力を発揮しています。ツールを使い査読段階で論文に盗用・剽窃などの不正がないかを検出することが可能となっています。AIツールは人間のようなバイアスを受けにくいので、データを読み込ませて有益な結果を探し出すような客観的な分析・検出を行うにも適しています。 このようなAIツールの助けにより、研究者は研究のより本質的な部分に注力することができる時代となりました。多くの研究者が文献調査や検索などの単純作業に要していた時間を研究に費やし、生産性を向上させることができるようになっています。技術革新によって生まれたAIが、さらなる発見、イノベーションの発展につながるだけでなく、研究プロセス自体の底上げ、スピードアップを可能にしているのです。 社会生活にも浸透するAI AIを利用した研究成果は、さまざまな分野における新しいサービスとなって展開されています。この点では、企業の高い技術開発力も鍵となっています。画像認識・画像分析、音声認識、自然言語処理・機械翻訳、ビッグデータ解析などは、すでに日常生活に浸透しており、企業はさらなる開発を進めています。昨今話題の自動運転システムには画像認識の技術が、iPhoneのSiriやAmazonのAlexaなどの音声アシスタントには音声認識の技術が活用されています。コロナ感染拡大防止の緊急事態宣言下での外出状況把握は、通信会社がスマホの膨大な位置情報データを分析したものです。AIの利用は急速に拡大しており、これからも新たな活用法や事例が生み出されることでしょう。 日本のAI導入が米中を凌ぐ?! 2020年10月にConsultancy.asiaに掲載された記事には、米中と比較しても日本企業のAI導入がかなり進んでいると書かれています。これは米国に拠点を置く調査会社ESI ThoughtLabがコンサルティング会社などと共に15カ国、1,000社以上の企業を対象に行った調査をまとめたものです。マイクロソフト、グーグル、その他のシリコンバレー企業の躍進により、アメリカがリードしていると見られるのが一般的ですが、その米国をも凌ぎ日本がAI導入においてトップに立っていることが驚きと共に示されています。順位としては日本がトップ(24%)で、米国、英国、シンガポールが同列二位(18%)で続いています。AIの推進は日本が目指すSociety5.0(ソサエティ5.0)の中核を成すものであることから、AI導入を後押しする日本政府の姿勢もこの結果に影響していると見ています。また、日本企業がリターンを生み出すのに時間を要する、つまり現時点ではまだ投資収益率(ROI)の低いAIに対しても投資をする流動性を有していることにも注目しており、いくつかの要因が重なって日本のAI導入率が高くなったと記しています。実際、世界中のあらゆるAIへの投資の40%は利益を得るまでに至らず、利益が得られたとしてもその数は少なく平均で1%程度しかありません。AIはツールなので、導入規模が大きくなればそのメリットは高まり、ROIを引き上げることが可能とはいえ、企業がAI投資の元を取るには平均で17ヶ月を要するのが一般的としています。 この調査では上位に位置づけた日本ですが、コロナ対策において日本の現代社会の構造的な弱さ、デジタル化・IT化の遅れが露呈することとなりました。では、日本のAI戦略、Society5.0とはどのようなものなのでしょうか。 日本のAI戦略 日本政府は、日本が目指すべき未来社会の姿として「Society5.0」を提唱しています。これは、AIや5Gなどの最新技術を活用することで便利な社会を実現し、人々が快適に暮らせるようにすることを目的とするものです。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させるシステムを構築し、経済発展と社会的課題の解決を両立させることを目指すSociety5.0の実現には、技術基盤となるAIの研究開発および投資の推進が必要です。そこで政府は、2019年6月にAI政策における基本方針「AI戦略2019」を公表しました。この戦略は、AIの多様性と可能性を認識した上で、今後のAIの利活用の環境整備・方策を示すものであり、基本理念として①人間の尊厳が尊重される社会、②多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会(インクルージョン)、③持続性ある社会の3つを定め、そのもとに「人材の育成」「産業競争力の強化実現」「技術体系の確立」「国際的なネットワーク構築」の4つの戦略目標を定めています。 Society5.0の実現には、研究開発、データ、人材という3つの要素が不可欠ですが、日本も他の国々と同様、AI関連技術の専門技能を有する人材の不足という課題を抱えています。長期的には、学校教育にプログラミングを導入するなどの教育制度改革や、学習環境作り(ネットワークインフラの整備やタブレット端末の配布など)、既存の労働力の活用を促進しようとしています。Society5.0の社会が新技術を活用して都市や地域の抱える社会課題を解決し、自然との共生を目指す持続可能な社会を目指すものであることから、国連が採択したSDGsの達成にも貢献するとして、官民を含む多くの機関や企業が取り組んでいます。 Society5.0の実現に向けて、安心してAIが活用できるようにするための原則の整備やプライバシー保護、セキュリティ対策が急務であるとともに、技術開発に必要なリソース(資金・人材)の投入、研究開発の拠点となる大学や研究機関の研究力再生が急がれています。…

サイテーションインデックス(引用検索)SCIE

クラリベイトの提供するScience Citation Index(SCI)とScience Citation Index Expanded(SCIE)は同じなのか違うのか?何が違うのか?という疑問が寄せられたので、この2つについて見てみます。 SCIとSCIE Science Citation Index(SCI)は、もともとInstitute for Scientific Information (ISI)によって作成され、現在はクラリベイト(旧トムソン・ロイター)によって管理されている科学技術分野のサイテーションインデックス(引用索引)で、学術界の実績評価基準として活用されてきました。 Science…

略語と頭字語について押さえておくべきこと

最近では、日本語にも文章の先頭のローマ字や数字を組み合わせた略語「KY語」が蔓延していますが、分かる人にはすぐ分かるとは言え、分からない人にはまったく意味が伝わりません。そして、略語や頭字語を使いこなすには慣れが必要です。略語(abbreviation)と頭字語(acronym)は、両方とも特定の語の一部を省略あるいは簡略にしたものですが、略語とは、ある語の一部を何らかの方法で省略または簡略したもの。頭字語は、略語の一種で、一連の単語の最初の文字をつなげて作られたものです。すべての頭字語は略語ですが、反対にすべての略語が頭字語とは言えません。 略語や頭字語をうまく使えば、原稿を読みやすく、かつ分かりやすくすることができます。長い名称や特定の語句が繰り返し出てくる場合に略語や頭字語を使えば、読みやすく表記できるだけでなく、文字制限に余裕を持たせることにもつながります。特に、新しく発見・発明した技術や解析方法を紹介しようとするとき、著者はその名称や手法を示す略語で表記することが多々あります。略語にすることによって、読者の目を引き、その技術を認識してもらうチャンスを増やし、浸透していくことができると考えるからです。既に使われている略語としては、Nuclear Overhauser Effect Spectroscopy(NOE(核オーバーバウザー)現象や化学交換を観測するための二次元NMR(核磁気共鳴))の略語であるNOESYや、Correlation Spectroscopy(二次元NMR測定手法)の略語のCOSYなどが挙げられます。これらの例でも見られるように、略語を説明する際にも別の略語が登場することから技術の積み重ねで研究が進んでいると察せられますが、これらの略語を使わずに表記した場合、論文の中でどれほど字数を取るのか……。しかも、毎回スペルアウトされたところで覚えられません。略語は記憶の助けとなります。とはいえ、略語を使いすぎても読みやすさを損なうことになりかねません。特に、関連技術や該当分野の知識を持たない読者にとって、略語の多用は理解の妨げになってしまいます。「この略語の説明、前に出てたはず」とページを行ったり来たりしなければ内容が分からないとなると、なかなか読み進められないものです。また、略語を誤って小文字表記してしまうと、略語なのか何なのか区別が付かなくなってしまったりするので表記上の注意も必要です。 どんなときに略語にするか 論文執筆中、どんなときに略語にするかの判断基準のひとつは、該当語句の頻出度合いです。その言葉が原稿の中に何度も出てくるものでなければ、略語を使う必要はありません。代表的なスタイルガイドである「The Chicago Manual of Style」には、文章中に同じ語句が5回以上出てくるような場合にのみ略語を使用すると書かれています。学術雑誌(ジャーナル)によっては、固有の略語の使い方、導入方法や定義付けの仕方が定められています。省略の仕方にまで言及しているジャーナルもあるので、投稿先ジャーナルの規定を確認しておきましょう。例えば、PLOS ONEは、略語として一般的に知られていないものについては、論文中に最低でも3回出て来なければ略語にすべきではないとしています。また、引用文献をリストする際にジャーナルの名前を書くことがありますが、生物医学分野でよく使われている論文の出典・引用の示し方ガイド「Vancouver referencing style」には、ジャーナルのタイトルの略称表記については、アメリカ国立医学図書館(NLM)のNCBI(アメリカ国立生物工学情報センター)のデータベース「Journals…

盗用・剽窃チェックツール iThenticate を使いこなそう

今回は特別に盗用・剽窃チェックツールiThenticate(アイセンティケイト)の専門チームによる解説をお届けします。 iThenticateは、影響力の高い学術雑誌(ジャーナル)の93%をカバーしており、その数は約7千万本の購読契約、1.3億本以上のオープンアクセスで公開されている学術論文や著作物に及びます(2020年12月時点)。さらに700億以上の現在公開中およびアーカイブ済のウェブページも網羅する膨大なデータベースと照合することで、盗用や剽窃の可能性を検証するオンラインツールです。研究論文や書籍だけでなく、ネット上の情報まで網羅的に検索することで、投稿論文の独自性を検証することができます。研究者は、iThenticateを使って盗用や剽窃と見なされるような記載がないかを事前に確認することができるので、出版できるかできないか先の不安な出版プロセスにも自信をもって望むことができます。学術出版において、いかにiThenticateが有用かをみていきましょう。 学術研究者には今でも「Publish or Perish(出版か死か)」のプレッシャーが重くのしかかっています。研究者としての評価やキャリアを進めるかどうかの見極めは、論文出版能力に大きく依存していると言っても過言ではありません。しかし、学術出版のプロセスはとても複雑で、出版できる見込みは不透明な上、出版にはリスクも伴います。些細なミスが、研究者のキャリアに大きな汚点となったり、研究者個人だけでなく所属大学または研究機関の評判を落としかねないことになったり、あるいは研究資金の調達に影響を及ぼすことも考えられるのです。 2020年は、コロナ禍で研究活動が停滞していたとはいえ、多くの政府出資および民間財団による研究資金の提供は継続されています。オープンアクセスの広がりにより研究者が論文を出版できるチャンスは増えるとも言えますが、論文数の増加スピードに追いつくほどではないことを踏まえれば、学術出版における競争は厳しくなると予想されます。実際、科学技術振興機構(JST)の経営企画部エビデンス分析室が行っている分析で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連論文数の発表件数が2020年1月以降急増し、年後半になっても依然として増加傾向にあること、さらに論文引用数も増え続けていることが判明したと発表されました。今後も発表論文数はますます増えていくことでしょう。 このような状況の中で学術論文を発表する研究者は、研究作業の初期の段階からあらゆる手段を使って投稿論文が盗用や剽窃となってしまう可能性を排除し、自分の研究成果が分野に貢献できるように努めなければなりません。そこで活用すべきものが、盗用・剽窃チェックツールです。 世界中の研究者が自分の研究の独自性を検証するためにiThenticateを信頼し、利用しているのには理由があります。 大手出版社が標準的なスクリーニングと査読プロセスでiThenticateを利用している。 研究者にとって、大手学術出版社のElsevier(エルゼビア)、Taylor & Francis、Nature、Springer(シュプリンガー)、Wiley-Blackwellや、学位論文のデータベースProQuest Dissertations and Theses(PQDT)、などが採用しているのと同じツールを利用することで、同じコンテンツにアクセスできることのメリットは大きい。…

学術ジャーナルの検索データベースを使いこなそう

共同学術研究や分野をまたいだ研究が増えるにつれ、世界中で行われている重要な研究が迅速に利用できるようになることが求められる中、学術データベースの利便性への要求が高まってきました。論文や学術雑誌(ジャーナル)を探したい研究者は効率よく検索したいと思いますし、研究論文を発表しようとしている研究者は、認知度の高いジャーナル、あるいは自分の研究内容に最適なジャーナルを探し出したいと思っています。主要なデータベースにはインデックス(索引)が付与され、検索しやすいようになっていますが、インデックスの付け方はジャーナルの信頼性、拡散力、評価にとって重要であり、最終的にはそのジャーナルの影響度を示すIF(インパクトファクター)だけでなくそのジャーナルに掲載されている論文の引用率などにも影響を及ぼすことになります。 インデックスの重要性 インデックスとは、収録されている多数の論文から特定の対象を素早く探し出すための識別情報などを固有の原則やルールに従って付与するものです。一般的には、データベース固有の基準やルールに準拠したインデックス化が行われ、特定の機関や出版社が慎重な情報収集・整理の後に選出したジャーナルにインデックスを付与した後にデータベースに収録されます。インデックスは、出版倫理を維持し、論文の信頼性、可視性を高め、さらに読者数を増やす助けとなります。インデックスを付与されPubMed、Scopus(エルゼビア)、Web of Science(クラリベイト)、EBSCO、Google Scholarといった評判の高いデータベースに収録された論文・ジャーナルは、幅広い読者に読まれ、影響力を高めることができるのです。 Institute for Scientific Information (ISI) が学術雑誌に関する最初のサイテーションインデックス Science Citation Index…

論文の被引用率を上げるための工夫とは

公開される学術論文の数は増加する一方で、論文を発表したからと言って安心してはいられません。研究者としての評価は、公開論文の質はもちろん本数、さらに該当論文がどれだけ引用されたかにも左右されるのです。 引用されることによって、その研究成果を発見し、最初に公開した研究者として認知されます。その上で、膨大な数の公開論文の中からどのぐらいの数の研究者があなたの論文を見つけ出し、引用しているかが、学術的貢献度の目安となるのです。論文が引用されることで、後続の研究者に発見したことを伝え、その成果の上に新たな研究を重ねることができるようにし、結果としてあなたの分野における研究を促進するのに役立てるということでもあります。クラリベイト(Clarivate plc)が発表している「高被引用論文著者(Highly Cited Researchers)」リストのような報告は、学術的な競争の励みとなる一方で、学術研究者間の競争をあおるといった側面も持ち合わせていますが、被引用率を高くしたいというのは多くの研究者の希望でしょう。 高被引用論文著者リスト クラリベイトが毎年公表している「高被引用論文著者リスト」は、同社が提供する世界最大級のオンライン学術データベースWeb of Scienceを使用して分析したものです。Web of Scienceは、科学情報の検索が可能な有力な検索エンジンに掲載されたさまざまな情報を網羅しており、高被引用論文著者リストは、Web of Scienceにおける特定の出版年、特定の分野で発表された全論文のうち、引用された回数が上位1%に入る論文を発表している研究者を選出したものです。このリストに名前が掲載されるということは、大きな影響を与える研究を成し遂げた、研究者として成功を収めたことの証となり、大変名誉なことなのです。 研究者は引用を操作できるのか しかし、研究者の競争的状況が厳しくなる中で被引用率の重要度が増すにつれ、人為的な操作を行って引用数を増やしていることが示されました。そもそも研究は厳しい競争にさらされています。研究者は、研究助成金を獲得できるチャンスを高めるためにも、研究成果を一流の学術雑誌(ジャーナル)に発表しようと競っています。論文の引用ランクが研究の実績や研究における貢献度の指標のひとつとなっていることは否めません。論文発表数が多く、被引用数が多くなるほど、研究者としてのキャリアを高めることにつながります。かといって操作して引用数を増やすことは認められません。では、どのような研究が「高被引用論文」と認識されるのか、どうすれば操作することなく引用数を引き上げられるのかを見てみましょう。…

コロナ禍での研究再開に向けたチェックリスト

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックは、学術界に予期せぬ大混乱をもたらし、学術出版システムや実験室における作業プロセスは大きな変更を余儀なくされました。世界は徐々にこの状態に適応しつつあり、研究活動も再開され始めています。しかし、感染を防ぐために物理的な距離をとらなければならないならない中、研究者の間の競争力を保ちながら、研究の生産性を維持することについて懸念が高まっている状況です。研究および研究室の管理に関するあらゆる物事を喫緊に再考する必要性に迫られていると言っても過言ではありません。 COVID-19パンデミックの状況下でも研究室での作業を続けていますか?もしくは、自宅待機で研究が中断したままですか?エナゴはパンデミックにおける研究室の再開と機能についての世界的な調査「Enago Global Survey on Research Labs」を行っています(期日2021年1月31日まで)。回答所要時間は3-5分程度ですので、よろしければご参加下さい。 前例のない中断状況から円滑に研究活動を再開させたいと考えているのであれば、この記事の下部に掲載したチェックリストを参照して準備を進めることをお勧めします。研究再開に向けた前向きな計画を立てるのに役立つとともに、COVID-19パンデミック対策にも役立つことでしょう。 あなたの研究室はコロナ禍でも働ける環境ですか? 研究者は自分の研究室に戻って研究を再開したいと切望していることでしょう。出勤時間をずらした作業スケジュールを組むなどして段階的な再開に向けた検討を進めている研究室もあります。研究室での作業を再開するには、十分なスペースが確保された上で、安全基準に準拠していることが重要です。 まず、重要度や状況に応じて優先すべき研究や実験を特定することが不可欠です。指導教官とシニアラボマネージャーらは、研究業務のどの作業が自宅からでも効率的にできるかを慎重に評価しなければなりません。作業を振り分けることによって、社会的距離(ソーシャルディスタンス)を保ちつつ、自宅では作業できない研究者が研究室で作業できるようにします。研究責任者(PI)は、久々に研究室での作業を再開する際に感じるかもしれないストレスや不安を念頭におきつつ、作業スケジュールを決めていく必要があります。コロナ禍のような不確実な状況下では、研究メンバーやスタッフの減少による遅延を防ぐためにも慎重に研究計画を作成しておくことが重要です。また、ラボマネージャーは、研究室のメンバーが必要に応じてサポートを受けられるように、メンバーが担当する作業やクロストレーニング(研究スキルを高めるための補助的なトレーニング)の割り当てを再考慮することが求められるかもしれません。 さらに、ロックダウンや移動制限処置がサプライチェーンにも多大な影響を及ぼしていることにも注意しておかなければなりません。特に、医学やヘルスケア関連の研究は厳しい状況に置かれているかもしれません。入手が難しくなる試薬や消毒薬、個人用保護具(PPE)といった消耗品、そのほかの実験機器を計画的に入手することが賢明です。 研究者は、予期せぬ緊急事態によって再び研究室での作業実施に規制がかかる場合に備えて、あらゆる研究再開手順をどちらの状態にも対応できるように心に留めておくべきでしょう。 パンデミックの渦中で作業を行う研究者のための予防策 コロナウイルスは感染力が高いため、感染が収まらない現状では研究室および研究者を感染から守り、安全を確保することが最優先です。そのためには、研究従事者全員が、感染の拡大リスクを最小限に留め、表面汚染を防ぐための処置を慎重に講じる必要があります。研究室に入室する前にコロナ感染リスクに関する適切な自己評価を行うことで、自身と同僚の安全を守らなければなりません。…

論文共同執筆者の探し方

分野にもよりますが、学術論文を共同で執筆することが増えています。多くの研究者がチームとなって研究を行うことで知識の共有を広げているのです。他の研究者と共同研究をしたり、共著で論文を執筆したりすることにはいくつかのメリットがあります。さまざまな論文共同執筆者(論文共著者)が自身の知識や経験を持ち寄ることで、研究活動自体をより効率的に、生産的に行うことができるようになるのです。さらに、異文化間、部門間をまたいだチームが協力することで、さらなる創造力や推察力を研究活動にもたらす可能性もあります。たくさんの研究者が協業すれば、研究作業を共有して進めるとともに、チーム内で特定の役割を分担することが可能です。それぞれ異なる研究グループがひとつの研究プロジェクトで助け合うことは、より多くの研究成果を得る助けとなります。そして、実務的なことだけでなく、研究チームに共著者として参加する研究者が増えれば、性別や人種の多様性も増し、さまざまな視点で研究に豊かさをもたらすこともできるでしょう。 もちろん、研究者が協力して科学研究を行うことには責任も伴います。共著者と共に研究を行うことは、多面的な点でやりがいのある仕事です。しかし、共著者は、研究デザインや作業の流れについて異なる見解を持っているかもしれませんし、それぞれの課題に対する取り組み方もさまざまです。論文執筆について相反する意見を持っている可能性もあります。協業がうまくいかなければ、研究プロジェクトが遅延したり、もっと悪ければ失敗したりする可能性も捨てきれません。共同研究で最善の結果を得るためには、戦略的なアプローチが不可欠なのです。 論文共著者に求めること 思い通りの、かつ満足できる協力体制を構築するためには、まず自分自身の強みと弱みに真摯に向き合うことから始めます。自分に不足している部分・スキルが何か分かっていれば、どのような部分で自分をサポートしてくれる共著者が必要なのか分かるはずです。 スキルを相補う論文共著者を探す 例えば、自分が統計ツールを使うことがうまいのであれば、実験作業を概念化したりデザインしたりするのが得意な共著者がいればいいと思いませんか?研究分野で豊かな経験があり、問題解決を助けてくれそうな共同研究者は?補完的な強みを持つ共著者がいれば、作業と分野専門的な作業を分けることによって、より大きく進展させることができます。共著者がいることで、新しい考え方が生まれ、さまざまな手助けを得ることができるでしょう。 研究倫理の理解も含めて気になること 共著者は研究倫理をきちんと把握していますか?メールでのコミュニケーションはタイムリーに行えていますか?約束は守る人ですか?研究について構想し、デザインを構築して分析を行うことなどに時間と労力を惜しまない人ですか?そして、もうひとつ共著者を選ぶときに考慮すべきことは、その共著者は、あなたが最善を尽くすための意欲をかき立ててくれるような人かどうかという点です。 候補者のキャリアと分野 さまざまな段階のキャリアにいる研究者や、異なる分野の研究者を引き込むことで、共著者の多様性が得られます。多様性は、研究全体の質を高めるのに不可欠な要素です。経験レベルの異なる研究者には、それぞれ異なる強みがありますし、異なる分野の研究者は、あなたの研究分野に「異分野からの視点」を持ち込んでくれるでしょう。さらに、読者の幅を自分の研究分野以外に広げることにもつながります。計量書誌学的分析には、著者の人種的多様性が高い出版論文は、より多く引用されていることが示されています。 執筆スキルのある論文共著者 執筆スキルの高い著者を見つけたいものです。共著者と諸条件の交渉をする前に、その候補者が共同研究者として適任かを検討するために、研究業務を例示してもらうか、過去の出版物を聞いておきましょう。 論文共著者の選考 共著者の選考には、その人の知識と経験が不可欠な要素とは言え、もっと重要なことは、あなた自身がその共著者候補と楽しんで研究を進められるかどうかです。共著者になるからには、やる気と共に、研究プ プロジェクトのガイドラインに従って時間と労力を費やす覚悟が必要です。そして、学術分野における評価が悪くないことも大切な要素です。科学研究に対する貢献度合いが高く評価され、評判もよく、名声もある研究者を共著者に迎えることはどんな時でも素晴らしいことです。彼らは、あなたの研究の信頼性と信憑性を高めることに一役を担ってくれるでしょう。…

研究助成金情報と申請で抑えておきたいポイント

研究者にとって、学術研究を続けるためには資金(= 研究助成金 )の確保が切実な問題です。しかし、資金を獲得したい研究者はたくさんいるので、潤沢な資金の確保は容易ではありません。当然、卓越した研究、社会に役立つ研究でなければ資金獲得競争には勝ち抜けません。 多くの研究資金は、大学や研究機関、政府機関、または民間企業やファンド(資金提供者)のいずれかから提供されています。官民かかわらず公募によって募集し、選考を経て、資金提供対象者・研究を選ぶのが一般的ですが、民間企業の場合には、会社の利益につながる研究、社会に直接的に役立つ研究などが選出において優先される傾向が強いということはあるでしょう。研究資金を得るには、まず自分の研究にあった助成金を見つけてから申請書を作成します。いかに自分の研究を「売り込むか」が重要です。手始めに、どのようなところで助成金応募の情報が見つけられるかを紹介します。人文学、社会科学、自然科学まで全ての分野を対象とした研究費の助成を行うものや、分野に特化したものなどさまざまな助成金公募があるので、見比べてみてください。 助成金募集ニュースの紹介や助成金情報の検索ができるサイト 研究助成・奨学金検索サイト コラボリー/Grants(研究助成):クラウドファンディング ウォッチング 研究開発の助成金、奨学金ポータルサイト:GRANT SQUARE 科学新聞:公募情報 日本学術振興会:公募情報 公益財団法人 助成財団センター:助成金情報>助成プログラム検索、助成金募集ニュース 大学病院医療情報ネットワークセンター(UMIN):FIND各種助成(研究助成、海外留学助成、留学生受入助成等)公募情報 海外の研究機関で働きたい研究者を支援するための経済的なサポート制度(フェローシップ)…