研究を推進する

論文マッピングとは?VOSviewerなど可視化ツール5選

多くの時間と労力をつぎ込み、何とか研究テーマが決まったのであれば、研究の成功に向けた第一歩を踏み出せたことに安堵しているかもしれません。 次に取り組むべきは、文献レビューです。 何人かで知恵を出し合ったとしても、研究論文あるいは卒業論文を書くのに十分な文献の量とはどの程度なのかを把握するのは難しいものです。図書館で何時間もページをめくって資料を探していた頃とは違い、インターネット上でオープンアクセスの論文やその他の出版社のプラットフォームが閲覧できるようになったおかげで、文献検索の作業は遙かに楽になりました。 しかし、ITの普及と文献の検索および閲覧の利便性が格段に向上した反面、重要なデータのみを収集することがより難しくなってしまったのです。 そこで、必要なデータを収集するための解決策、論文マッピングを紹介します。 論文マッピングとは 論文マッピングとは、自分の研究に必要な情報(文献)を探す方法のひとつです。 過去の研究のまとめと言える文献レビューを執筆するには、同じ分野の論文を特定し、その研究成果を検討、批評、および解釈する必要があります。そのためには体系立てられた方法を取らなければならないことから、論文マップの作成が役立ちます。 文献の主題(テーマ)、主張、および概念をマッピングすることは、文献レビューに不可欠な工程です。また、知識や思考のプロセスを外面化するための確立された方法でもあります。 論文マップは、論文の著者、分野、テーマなどの項目に応じてそれぞれの関係性を図式、あるいは地図のように視覚的に表わしたものです。 研究者は、膨大な量の情報に圧倒され、自分の研究に必要な情報を特定したり整理したりするのが難しいと感じるようです。研究者は自分の分野において知識だけでなく、知識間の関連性においても、より豊富な知識を培っておくことが推奨されます。 この知識の関係性をまとめることを、論文マッピングと言います。 論文マッピングのメリット 論文マッピングがどのような場面で研究に役立つかを挙げておきます。 研究分野について、どのぐらい学生が理解しているか、どのように解釈しているかを具体的に示すものとして、同僚や教授と共有するとき。…

レイサマリーの作成時に抑えておくべき9ポイント

学術論文を出版することは、研究成果を伝達するためのコミュニケーションは不可欠です。研究に多くの時間を費やしたなら、その結果を出版することを計画すべきでしょう。研究者は、学術界の壁を越え、同僚や他の研究者といった学術関係者だけでなく一般の人々にも分かるようにコミュニケーションを取る必要があるとのプレッシャーが高まっているのを感じています。研究者が、興味はあるものの学術的知識を持たない一般の人たちに研究内容を伝える策のひとつが、「レイサマリー」を書くことです。 レイサマリーはなぜ必要なのか?理由のひとつは、研究を支える資金が一般的に財団や公的機関からの助成金、つまり納税者(多くは科学者ではない一般の人々)による支援によって行われているからです。支援者は、研究内容やその研究が実社会に及ぼす影響を理解したいと思うでしょうから、誰が読んでもわかりやすい言葉でサマリーを書くことが必要なのです。また、研究者にとっても、競争の激しい学術界で生き残るには成果を公表するだけでなく業績を広く知らしめることが重要です。特定の読者向けに研究結果を公表するだけでなく、その研究が与える影響を多くの読者に知ってもらうことが大切です。この記事には、優れたレイサマリーとはどのようなものかと、レイサマリーを作成するときに抑えておくべきポイント、レイサマリーを作成するメリットをまとめました。 レイサマリーとは? レイサマリーとは、研究論文の最も重要なポイントを一般の人にも分かるように簡潔に伝えるために作成するものです。 専門用語を多用し、理論や実験の結果を含む高度に専門的な内容を記す研究論文は、その分野の研究者なら理解できても、一般読者が理解することは困難です。同僚や投稿先の学術雑誌(ジャーナル)の読者なら、研究テーマや論文についての知識があるかもしれませんが、一般の人が同じような知識を有しているとは限りません。そこで、研究の大まかな内容を理解したいと望む一般読者に向けて、研究内容を簡単に説明するものがレイサマリーです。 また、研究者は、大学や資金提供者から特定の分野の研究者以外の一般の人向けにも研究の影響力を伝えられるように、概要をまとめるよう依頼されることも少なくありません。こうした際にも、レイサマリーは有用です。 研究の概要を示すという点では、論文の要旨(要約、妙録、アブストラクト)と似ていますが、論文の要旨がテーマに関わる知識を有する読者向けに書かれているのに対し、レイサマリーは一般の人に分かるように書くものです。専門用語を使用せず、研究の重点を約200~250語(ワード)程度の短い文章で示します。 レイサマリーを作成するときに抑えておくべき9つのポイント 1.4W1Hに答える すべての読者が理解しやすいように、文章を書くときの主要な要素である4W1H(what, where, when, why, how –…

研究方法の種類と選び方

研究の成功は、適切な計画と実施にかかっています。研究を無事に終了させるには数々の要因や要素がありますが、最良の研究方法を選ぶことは、最も困難かつ悩ましいことのひとつです。研究は取るべきアプローチの種類に従って進められるものなので、研究を実証するための研究方法と、データを収集する方法を選ぶのは非常に重要です。研究において的確な研究方法を選択することで、求められている情報を照合し、研究の最終目的に到達することが可能となるのです。 この記事では、さまざまな研究方法(研究方法の種類)とその中から最適な方法を選択するための基準について論じます。 最適な研究方法を選択することの重要性 研究方法は、研究を実施する前に決定しておきます。的確な研究方法を選ぶことは、研究内容および文章をうまくまとめ、全体を良質なものにすることに役立ちます。さらに、自分の研究分野で使われている研究方法に精通しておくことで、より実質的に理解することができるようになります。 研究方法の種類 自分の研究の性質、研究分野における標準的状況、実用性により、自分の研究に最適な研究方法を選択しましょう。研究方法には、定性的研究と定量的研究という2つのアプローチと、その混合アプローチがあります。 定性的研究(質的研究)では、数値で計れないデータを使用します。言い方を変えれば、定性的研究とは、言葉、説明、概念、信念、思考(アイデア)やその他の実体のないものに焦点を置く研究です。 定量的研究(量的研究)では、数値と統計データを使用します。変数(可変要素)を測定し、既存の学説または仮説を検証するものです。通常、定量的研究で得られるデータは数値やグラフなどの形で事実情報を示されます。 定性・定量融合法研究とは、定性的研究と定量的研究の両方を組み合わせた研究です。混合研究法とも、ハイブリッドメソドロジーとも呼ばれています。定性的研究で状況調査を行い、理解していることのポテンシャルモデルを開発します。これは概念フレームワークとも呼ばれ、定量的方法を用いて、そのモデルを実験的に試験します。定性的研究で得られた新しい知見について、より大規模な知見を検証するために定量的研究を行うといったものです。 また、研究は大まかに下の3つに分類できます。 探索的研究:問題についてのより深い理解を示し、その問題に関する理論を潜在的に発展させます。そのため、このタイプの研究では定量的研究アプローチを取る傾向があります。 確認研究:経験的試験によって潜在的な理論または仮説の確認を行うものです。定性的研究を取る傾向があります。 両方を混合した研究:ポテンシャル理論または仮説を構築し、定性・定量融合法のアプローチを使って経験的な試験を行います。 最良の研究方法を選択する前に考えるべきこと 研究の性質…

共用ラボ使用時のマナー – 暗黙のルール10

ラボ(実験室)のドラフトチャンバー(ドラフト装置)を使いたい?順番待ちをしているのは、あなただけではないはずです。誰もが自分専用の実験設備や機器を持てる幸運に恵まれているわけではありません。なので、共用ラボで作業をするためには、そこでのルールに従うことが不可欠です。マグネチックスターラー(攪拌機)、ガスクロマトグラフ(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを使っている時は、こうした機器をいつでも好きなだけ使えたら……と誰もが思うことでしょう。 なぜラボ・ルールを守る必要があるのか あえて書き記されていなくても、共用ラボを使う研究者であれば誰でもそこでの礼儀を守るためのルールに従うべきです。そうすることで、パンデミックのような状況下で実験を続ける際にも、共同研究者間の相乗効果を高めるだけでなく、マナー違反が起こることを防ぎ、誰もが実験を計画通りに完了できるようにするのです。 共用ラボで作業する際の暗黙ルール10 1.自分の物以外は触らない これはラボに限ったことではなく、生活していく上でも言えることです。一番初歩的かつ最も重要なルールは、他の研究者の酵素、プライマー、液体培地、それ以外のさまざまな溶液、特に汚染されやすい溶液は絶対に触らないことです。どうしても使いたい場合には、許可を取りましょう。そして、使用許可を取っても、コンタミネーション(汚染)を防ぐため、常に必要な量だけを滅菌フード下で別の容器に移し替えて使いましょう。このルールは、化学物質や培地に限らず、ピペットなどの実験器具にも言えることです。 2.他人にしてもらって嬉しいことを他人にする このルールにおいては例を挙げておきます。保存溶液を作る際、ラボ内で作業している別の研究者も必要かどうか聞いてみると良いでしょう。ラボの他の作業者に、自分が使っているのと同じような機器(重量計、ガラス機器など)や化学薬品が必要かどうか尋ねてみることもお勧めします。いつか、同僚が同じようにあなたを助けてくれるはずです。 3.自分のミスは自分の責任 保存液を誤ってこぼした?気づかないうちに培地をコンタミさせた?落ち込む必要はありません、誰でもミスはするものです。ミスをすることが問題なのではなく、自分の過ちを認めず、他の研究者に汚染された溶液や培地を使わせてしまうことは問題です。なので、自分が起こしてしまったミスを認め、自分だけでなく、他の研究者が行う実験でもはっきりした結果が得られなくなることを避けるための対策を講じることが大切です。小さなミスを隠すことの影響は計り知れません。特に、他者の研究を台無しにしてしまったり、他の人を危険にさらしたりしてしまうことになれば大問題です。自分の過失を認め、問題を起こすのを回避することを意識すれば、同僚はあなたの正直さに感謝することでしょう。とはいえ、いつも同じミスを犯すのではなく、失敗から学ぶように意識的に努力してください。 4.ため込まない 自分の後ろのロッカーに数十枚ものペトリ皿をため込んで何をするつもりですか?誰もが使いたいと思っている実験器具の利用予約をするシートがなければ、それを作っておきましょう。サインアップシート(使用予約用紙)があれば、誰もが必要な実験装置や器具を必要なときに確保することができるようになり、誰かが使っていないものをため込みすぎていることが原因で、他の人が実験を行えないという事態は避けられるはずです。 5.在庫確認を行う あなたが在庫棚からマイクロピペットを取って、残りが1つとなった場合には、ラボの管理者に残りがひとつであることを伝えましょう。そうすれば、ラボの管理者は他の研究者の使用に備えて棚の在庫を補充しておき、研究者が新しい品の入荷を待つことなく実験を続けることができるようになります。 6.クリーンなラボでこそクリアな考えがまとまる…

引用と参考文献におけるDOIの書き方

DOI(Digital Object Identifier)とは、電子化された学術雑誌(ジャーナル)または出版物に付与されるデジタルオブジェクト識別子です。この国際的な識別子は、2000年に国際DOI財団(IDF)によって制定・導入され、出版社によって割り当てられています。登録機関固有の「10.」に続く英数字と4つ以上のプレフィックス(接頭辞)と、コンテンツを特定するサフィックス(接尾辞)をスラッシュ「/」でつなげます。このときのプレフィックスは出版社ごとに付与されている識別子で、サフィックスは出版社が個別のコンテンツに与える識別子となっています。コンテンツごとに番号が異なるDOIを付与することで、一貫した管理を可能にするのです。 https://www.youtube.com/watch?v=ILHV4fbEhpQ&list=PLSEcBUIQgVpvU0tvcfUWdn1vv1JhwmHNI&index=37   DOIが付与されたコンテンツは、DOIの前に「https://doi.org/」を付けることで固有のURLを持つことができるようになります。つまり、「https://doi.org/DOI番号」がURLとして機能することで、コンテンツにリダイレクトされる仕組みになっているのです。例えば、「https://doi.org/10.1086/679716」と入力すれば、2015年5月にModern Philologyから出版された、Robert Mayerによる論文「Scott’s Editing: History, Polyphony, Authority」にアクセスすることができます。DOIをコンテンツへの電子リンクとして使用することで、コンテンツ(論文)を識別するのに役立つのです。電子化されたコンテンツがリンク切れなどすることなく持続的にアクセスできるようにしておくため、印刷物やデジタルコンテンツ、その他のどのような出版物にもDOIを付けておく必要があります。掲載先ジャーナルのサイトが変わってリンクが切れたとしても、DOIを管理するデータベースには情報が保管されているので、DOIが分かれば目的のコンテンツにたどり着けるのです。ジャーナル掲載論文の場合、DOIは最初のページに記入されるのが一般的です。 DOIは、DOI財団が認定しているDOI登録機関(RA: Registration Agency)によって登録が行われます。こうした登録機関は複数存在しており、日本の機関としては、科学技術振興機構…

3つの文献検索方法で研究者の時間を節約

文献検索や情報収集に苦手意識を持つ大学院生や若手研究者は少なくないようですが、研究者として活躍するためには、情報収集のスキルを磨くことが不可欠です。研究室で過ごすのと同じぐらい多くの時間を図書館で過ごす研究者もいますが、必要な情報収集であっても、実質的な研究や執筆により多くの時間を割くためには、情報収集をできるだけ効率的に行うことが求められます。ここでは、情報収集を効率的に行うために活用してもらいたい3つの検索方法を紹介します。 キーワード検索 キーワードを使った検索術-ブーリアン(Boolean)検索と呼ばれるような基礎的な型―を把握しておけば効果的な検索を行うことができるようになります。複数の条件を同時に満たす情報を探す「AND検索」や複数の条件のいずれかを満たす情報を探す「OR検索」などの検索型を把握した上で使いこなせるようになれば、文献検索は飛躍的に楽になります。 AND検索:検索対象を狭めるためにANDでキーワードを区切って入力することで、ヒット数の多い検索結果を絞り込むことができます。 OR検索:関連性のある論文にどのキーワードが使われているかわからない場合など検索対象を広げたいとき、ORで条件を区切って入力することで、より多くの情報を拾い上げることができます。著者名をキーワードの1つとすることもできるでしょう。 他にも検索結果の中から特定の条件を除外させたい場合の「NOT検索」などもあるので、様々な組み合わせを駆使した高度な検索オプションを試しながら、関連性の高い記事を引き出すのに最適な方法を見つけてください。 引用検索 キーワード検索だけで思うように文献を見つけ出すことができない場合には、引用文献を検索するのが効果的です。特定の分野における重要な論文であれば、後続の研究者たちはその論文を参照しているものです。引用されている文献を検索すれば、研究のヒントだけでなく、自分の研究論文に引用できる論文がヒットすることもあるでしょう。この方法は、先行研究をリストアップする上でも有効な手段です。本当に重要な論文は被引用数も多いため、「AND検索」で絞り込んだり、より狭めた分野で引用されている文献を探し出したりするといった工夫が必要かもしれません。 抄録誌・文献データベース 抄録誌や文献データベースを利用すれば、最新の文献情報を短時間で入手することが可能になります。例えば、米国化学会(ACS)の下部組織であるChemical Abstracts Service(CAS)が発行している化学および関連分野の文献抄録誌であるChemical Abstracts(CA)や、世界の化学および関連する科学分野の出版物(学術雑誌、学会会議録、学位論文など)を収録しているCASのデータベースCAplusを利用すれば、最新情報を効率良く収集することができます。Chemical Abstractsデータベース版には検索時に役立つ統制語や化学物質名、CAS登録番号をはじめとするさまざまな索引情報が登録されていますし、収録データをオンラインで検索できる「CAS SciFinder」の利用も普及しています。検索した論文をすべて読んでいたのでは時間がいくらあっても足りません。まず、論文の重要な部分を抜き出した抄録や要旨を読んで全体像を把握し、精読が必要な論文を絞り込むといった作業の効率化に抄録誌や文献データベースを活用しましょう。…

研究論文の構成: 論文原稿作成に役立つヒント

長い時間をかけて行ってきた研究を学術雑誌(ジャーナル)に投稿する論文としてまとめることが非常に苦痛だと思う人がいるかもしれません。執筆に着手することさえ難しい人もいるでしょう。それでも、考えを整理して書き留めることができれば、論文執筆という作業が少し楽になるはずです。 ここでは、論文原稿を作成するためのヒントをご紹介します。 考えを整理する 原稿を執筆し始める前の最も重要な作業の一つは、考えを整理することです。この時点で、研究データのまとめと分析が行われたことになります。研究を続ける中で、おそらく大量の「メモ」などの記録がたまっているでしょうから、それらも整理していきます。幸いなことに、かつて全てを手書きしていた頃に比べれば、記録の整理ははるかに簡単になっています。考えが整理できたら次に進みます。 「考えを整理する」段階で頭に入れておくべきは、自分の考えをまとめるためには「自分がまとめたものを客観視する」必要があるということです。読者に何を伝えたいのか、自分自身に問いかけてください。自分の研究の最も重要なメッセージは何か?研究の結果が人々にどう影響するのか?研究をさらに進める必要はあるのか?などです。 そうした問いに対する答えを書き出し、原稿を執筆中、目に付くところに置いておきます。そうしておけば自分が何を目指して書いているのかを見失わずにすむことでしょう。 明確な文章にする 読者に研究を理解してもらうために、論文は可能な限り明確でなければなりません。専門用語だらけの文章や回りくどい表現で書かれた論文は、読者の理解を妨げるだけでなく、読者を限定してしまうことになります。 学術ジャーナルに発表する論文は、世界中の人々の目にさらされることになります。さまざまな言語を母国語とする読者が読むことになるわけです。研究者であっても言葉の違いは内容理解の壁となります。こうしたことを念頭に、原稿執筆の際には以下の点に留意してください。 明確さ:用語の定義を明確にし、関連性のない情報の記述を避ける。 シンプルさ:文章の構成は、シンプルで直接的なものにする。 正確さ:すべてのデータやイラストは正確に示す。 書き方の例をあげてみます。 化学物質Xは代謝に影響を与えた。 この文は漠然としすぎているので、読者に具体的な情報が伝わりません。では、以下はどうでしょう。…

レビュー論文(文献レビュー)の目的と書き方

レビュー論文(文献レビュー、総説論文)は、様々な研究成果の概要を一度に知ることのできる貴重なツールです。レビュー論文とは、特定のテーマに関する研究論文などの著作物の概要や評価をまとめて記述するもので、優れたレビュー論文は、該当分野の研究についての偏りのない情報や、有効な研究結果と無効な研究結果を理由とともに提示することで学術研究に貢献しています。また、研究資金を助成する機関では、さらなる研究が必要かどうかを判断するためにレビュー論文を利用する傾向があります。レビュー論文で重視するのは、研究の目的が達成されたか、さらにその結果がどのように伝えられたかです。 レビューの目的は、「選択したテーマに関する過去の研究を収集、統合し、最新の既存の知識体系に新たな知見を蓄積させ、統合することを促進する」ことです。端的に言えば、過去に行われた研究結果を集めて再検討・評価することで概観をまとめることです。重要なのは結果を明確かつ正確に提示することであり、優れた文章であるだけでなく、厳格なルールに従ったものでなければなりません。 1996年、科学者、臨床医、統計学者の国際研究グループが参加した会議で、ランダム化比較試験のメタ分析(メタアナリシス)に焦点を当てたQUOROM(Quality of Reporting of Meta-analyses:メタアナリシス報告の質)声明が作成されました。この声明は、チェックリストとフローチャートから構成され、研究者たちが必要な基準に従った分かりやすいレビューを行うために利用されてきました。その後の継続的な検討を経て、2009年に新しいPRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)声明が発表されました。この声明には文献検索の方法から内容の統合、要約プロセスまで詳細が示されており、システマティックレビューおよびメタ分析の国際的規範とされています。 https://youtu.be/Mp_bddA4LRo…

論文でのバクテリアの学名の記載方法

※これは、別記事「論文での動植物の学名の記載方法」に続いてバクテリア(細菌)の学名の記載方法を記したものです。国際的な命名規則などについては、論文での動植物の学名の記載方法をご参照ください。 研究は本当に大変な作業ですが、バクテリアをはじめとする微生物の学名の扱いも、なかなか骨の折れる仕事です。ラテン語の表記は紛らわしいですし、学名が変更されたり、新種が発見された際などに命名規約自体が改定されたりするので、学名を論文に記載する際には細心の注意が必要です。 論文での動植物の学名の記載方法では動植物の学名の記載方法について取り上げましたが、今回はバクテリア(細菌)の学名を使用する際の注意点についてご紹介します。 バクテリアの学名はどのように決まるのか? バクテリアの学名は、国際原核生物命名委員会(ICSP: International Committee on Systematics of Prokaryotes)による細菌命名規約(Bacteriological Code)に従って命名されています。 この規約は、別記事でも紹介したように、国際藻類・菌類・植物命名規約、国際動物命名規約とあわせて生物の学名の基準となっています。バクテリアの学名も「二名法」に従い、「属名」と、さらに下位の分類を表す「種名」から構成されます。 属名、種名など分類学的な学名はラテン語あるいはラテン語化した語で、種名にはその種固有の性状または由来を表すような語を付けます。発見場所や発見者、発見に貢献した研究者の名前に由来することも多々あります。 バクテリアの名前(菌名)は、ICSPで分類されているように、門…

学術出版の動向-電子化を出版社の目線で考える

※この記事は「学術雑誌の電子化において検討すべきこと」というタイトルで2015年1月29日に公開した記事ですが、リライトにあたり最新の情報を追記、修正して2021年7月6日に再度公開しました。 近年、学術出版社は大きな変化への対応を迫られています。1990年代から学術雑誌(ジャーナル)の電子化が加速度的に進んだだけでなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、様々な学術イベントもオンラインへの移行を余儀なくされてきました。さらに、投稿論文の増加や、出版までのワークフローの効率化、ジャーナルの電子化(オープンサイエンス)の推進など数々の変化に継続的な対処が求められています。今回は、学術ジャーナルの電子化の動向を取り上げてみます。 ジャーナルの電子化がもたらす変化 学術出版社は、ジャーナルを電子化することによって読者層を広げ、知識の共有を促進することができるようになります。さらに、査読・編集過程に要する時間を短縮して出版までのワークフローを効率化することができるだけでなく、動画挿入やハイパーリンクによる誘導など、かつて主流であった紙媒体への印刷形式ではできなかった情報提供も可能になります。印刷・製本、配送といった物理的コストが削減できることも出版社にとってはひとつのメリットです。COVID-19パンデミックは学術ジャーナル出版プロセスの迅速化、電子化を後押ししました。引き続き、学術情報のさらなるオープン化、迅速化、入手しやすさの改善が求められることでしょう。 ワークフローの効率化 従来の学術雑誌は、投稿論文の数が揃わなければ印刷・出版できませんでしたが、電子化によって印刷ページ数の制限がなくなり、出版までの時間を短期化することができるようになりました。一方で、投稿論文の数が増加する中、論文発表の更なるスピードアップを図るため、投稿論文の査読方法や出版課程の管理方法を変えていく必要に迫られています。 学術出版社は、論文の投稿、査読、編集管理といった一連のワークフローをシステム化することで、著者が投稿論文をアップロードしてからのプロセスを早め、公開までの時間を短縮させています。パンデミックが変化を後押しし、学術出版のさまざまな段階に影響を及ぼした一例を挙げると、急増したCOVID関連の論文投稿の査読を急ぐべく、複数のオープンアクセス(OA)出版社がオープンアクセス学術出版社協会(OASPA)の承認のもと、査読迅速化のためのイニシアチブを立ち上げたことが挙げられます。ボランティア査読者に対して、迅速な査読に対応可能な査読者リストに登録し、COVID-19研究に有用なプレプリントを可能な限り迅速に識別することや、迅速な査読を完了することへの同意を求めたところ、多くの研究者が登録しました。出版社に対しては、著者に論文のプレプリントサーバーへの投稿を促すことなどが盛り込まれています。 ジャーナル電子化の拡大 2018年10月に国際STM出版社協会(STM)がSTM(科学・技術・医学)出版界における傾向と出版およびその関連情報に関する情報をまとめた『STMレポート第5版』には、2018年に約300万本の論文が査読付き英文ジャーナル33,100誌で出版され、毎年3.5%の成長率で増えていると記しています。さらに、OAジャーナルの出版も増えており、「今や、事実上すべてのSTMジャーナルがオンラインで入手可能となっており、その結果、ジャーナルの大半の利用は電子的に行われている」と記載しています。実際、オープンアクセス学術誌要覧(DOAJ)に収録されているジャーナルの数は16,463誌にのぼっており(2021年6月現)、今後も上昇する傾向にあると見られています。 査読前であってもCOVID関連の新しい見解をいち早く公開することで治療に役立てようとの動きにより、正式な出版前に論文を投稿するプレプリントサーバーの使用も急拡大しました。さらに最近は、査読前論文の共有プラットフォームとしてのプレプリントサーバーの機能を広げ、Green OA論文をアーカイブする、つまり査読前のプレプリントと査読後の論文の両方を掲載するオーバーレイ公開モデルも登場しています。オーバーレイ学術誌(オーバーレイジャーナル)は、プレプリント論文のアーカイブに重ねて査読の仕組みを持つ学術ジャーナルの出版スタイルで、ジャーナルのウェブサイトに論文を掲載するのではなく、プレプリントサーバー等リポジトリに蓄積された論文へのリンク情報のみを示すものです。このようにOA化はさらなる広がりを見せています。 ファイル形式の多様化 ジャーナルの電子化が進むとともに膨大な数の論文が公開される中、動画や音声、インフォグラフィックなど多様なメディアの活用も広がっています。HTML/ビデオアブストラクト(動画)や音声ファイル、論文の内容を分かりやすく表示するためのインフォグラフィック(画像)を付けることは、投稿された論文の差別化や、論文の内容をより広範な読者に届きやすく、また理解しやすいものにするために役立ちます。出版社は、これらの多種多様なファイルを投稿論文の一部として提出する方法について、投稿規程などに書き記しておく必要があります。 アクセスしやすさの改善 ジャーナルの電子化は、論文へのアクセスのしやすさを大きく改善します。読者は、キーワードやタイトル、著者名、要旨などをオンライン検索することで、効率的に読みたい内容の論文を探すことができます。J-STAGEのような複数のジャーナルや会議録等の刊行物を横断的に検索できるような機能を持ったサービスも有用です。また、論文の根拠となるデータをリポジトリに収録し公開する動きも進んでおり、研究内容の信頼性を高め、再利用を可能とすることにつながっています。…