研究を推進する

ICMJE Recommendationsアップデート2025年版ー倫理的研究出版は新たな局面に

研究インテグリティ(研究における健全性・公正性)とは、研究者が守るべき倫理・規範の基本的な概念です。医学・科学の研究実施、報告、出版にとって国際的な倫理基準に従うことは、研究結果の信頼性を確保するために極めて重要です。 医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE: International Committee of Medical Journal Editors)は、1978年に「生物医学雑誌への統一投稿規定(Uniform Requirements for Manuscripts Submitted to Biomedical Journals)」を公表して以来、生物医学分野で重要な役割を果たしてきました。ICMJEのICMJE…

英語の大文字の使い方のルール

大文字にする意味 英語で文章を読み書きしている際、「この単語の頭はなぜ大文字になっているのだろう?」「これは大文字にすべき?」と疑問に思った経験があることでしょう。 文頭が大文字になることは理解しているものの、文中で特定の単語を強調したい場合、太字にする、下線を引く、斜体にする、大文字にするという選択肢の中から、どれを採用すべきか迷むかもしれません。文章の最初の文字だけ大文字にしておけば良さそうですが、 残念ながら、その判断は間違っています。ここでは、大文字と小文字の使い分けを見てみましょう。 まず、英語の文章では、新しい文の始まり(文頭)の文字は必ず大文字になります。他には、固有名詞(人名、都市名、ブランド名、言語、会社名など)と固有名詞が形容詞となった固有形容詞、日にち(曜日、月、日)を表す単語も必ず大文字を使います。大文字・小文字のルールに反して文中の単語をランダムに大文字にしてしまうと、それがどんなに意図的なものであったとしても、文法上の誤りが生じ、読者を混乱させ、文章を読みづらくすることになってしまいます。 件名やタイトル、見出しなどは、一般的に冠詞や前置詞以外の単語の頭が大文字になっていますが、出版社などによっては異なるルールを設けている場合もあるので、違う表記を目にすることがあるかもしれません。見出しの単語の頭を大文字にするのは見やすくするのが目的です。一方で、論文タイトルのように長いものは普通の文章と同様に表記されることが多いようです。 ライティングの目的に応じて、類似の事例をもとにシンプルなチェックリストを作っておいたり、大文字・小文字のルールに準じたより具体的なチェックリストを作っておいて、参照することも有用です。 また、昨今は多くの方が何らかの英文チェッカーを使用されていると思いますが、その様なツールの多くには、特定の単語を登録する辞書機能がついています。専門分野特有の用語や略称を誤りなく表記し、表現に一貫性を与えるためにも、その様な辞書機能の活用は有効でしょう。 事例から学ぶ(類推) 大文字にするかどうかは、ブランド名なのか一般的な名前を指しているのかで変わります。書籍名や映画のタイトルのような「題名」も固有名詞と考えられるので、単語の1文字目が大文字表記になりますが、申請書などのフォーム名のように全て大文字で書かれているものもあります。 大文字のルール 以下の単語では、最初の文字は大文字になります。 固有名詞:人名、地名、商号、会社名など 敬称:名前の前に来る肩書きや敬称(Dr.、Mr.、Mrs.、Miss.など) 。ただし、名前の後に役職が来る場合は小文字(Barack…

研究者にとってのバックトランスレーション(逆翻訳)の目的とメリット

日本語で「逆翻訳」とも呼ばれるバックトランスレーションとは、一度翻訳した文章を、当該文書に関する事前知識を持っていない別の翻訳者が元文を参照することなく、元の言語に翻訳し直す作業です。バックトランスレーションが良く使われる分野は医学、心理学、社会学、看護学などですが、なぜこんな面倒な二度手間をするのでしょうか?それだけのメリットとは?研究者にとってのバックトランスレーションの目的とメリットを紹介します。 バックトランスレーションが有効なケース 例えば、アンケートや研究調査を複数の地域や国、言語で実施したい場合、翻訳されたアンケートの設問が言語によって不整合であれば、当然結果の正確性が損なわれ、その結果を基に行う分析や比較の信頼性にも影響を及ぼしかねません。また、アンケートの質問だけでなく回答も翻訳することになりますが、回答者、つまり研究対象者の意見や趣向を読み違えてしまうと結果として研究の目的に合致した調査結果を得ることができなくなってしまいます。元のテキストの内容を忠実に翻訳することはできても、文化や状況を踏まえつつ必要な情報を引き出すための翻訳ができるかは難しいこともあります。そのような時に、原文と逆翻訳テキストを比較することで翻訳テキストの精度を客観的に検証するバックトランスレーションを行うことで、複数言語調査の品質と均一性をより高めることが可能です。 また、翻訳会社を選ぶ顧客目線でバックトランスレーションを見たとき、翻訳会社の品質管理レベルの目安とすることも可能です。複雑なプロジェクト管理を要するバックトランスレーションへの対応が可能であれば、質の高い翻訳サービスを提供できる体制が整っていると言えるからです。 とはいえ、バックトランスレーションは費用も時間もかかるので、あらゆる文章に同じように有効とは言えません。即時に情報を公開・更新していくことが主目的で後から修正が許されるWeb サイトの記事等をバックトランスレーションするのは無駄でしょう。専門性の高い文章や、医薬関連文書のように正確性と信頼性が必須な書類、情報収集を目的とした市場調査やアンケート、特許書類のように言葉の意味の伝達における正確性が極端に高い文章であればバックトランスレーションを行うメリットが高まります。つまり、バックトランスレーションを行うことで効果が得られるものと得られないものがあるとの認識の上での判断が必要なのです。 バックトランスレーションで行うこと 一般的な翻訳が、原文と翻訳済のテキストを比較するのに対し、バックトランスレーションでは、原文と逆翻訳されたテキストを比較します。この作業によって訳文の正確性を高め、意思疎通におけるミスを回避することができます。バックトランスレーションの流れは以下のようになります。 翻訳されたテキストを元に、再翻訳する(元の言語に翻訳し直す) 逆翻訳されたテキストと元テキストを比較する 翻訳品質に関わる部分、双方の差などを摘出・検証し、逆翻訳との比較から翻訳テキストで修正が必要な場合にはそれを報告する 最終的に翻訳テキストの正確性や修正の必要性について判断するのは、バックトランスレーションを発注した側である顧客の役目になります。バックトランスレーションは、翻訳テキストと逆翻訳テキストの違いを確認し、その違いが、本来テキストが伝えたい概念、機能、効果において重要かどうかを判断する材料を提供するものです。必要に応じて翻訳テキストの修正を推奨することがあるとしても、判断は顧客によって行われるべきです。バックトランスレーションは、あくまでも翻訳の正確性を確認し、品質を判断するのに役立つ手法のひとつなのです。 バックトランスレーションは万能? バックトランスレーションは、訳文全体の品質を確認し、元のテキストと訳文に意味やニュアンスに違いがないか、欠落している部分はないかなどを特定することが目的です。通常の翻訳工程でもダブルチェックやネイティブチェックが含まれることがありますが、バックトランスレーションは、元テキストではなく翻訳されたテキストそのものから作業が始まる点で異なります。元テキストを見ていない翻訳者が、訳文のコンテキスト(文脈)に集中して翻訳を行うことで、翻訳テキストの妥当性、恣意的な訳になっていないかなどを見極めることができます。「訳文として適切か」と合わせて、「対象言語の読者に違和感がなく伝わるか」との見極めにも役立つのです。 また、顧客側でターゲット言語が理解できない場合のチェックやレビューのためにバックトランスレーションを行うこともあります。例えば、教科書を翻訳したい場合、読み手に正しい情報を伝えるための翻訳が必要になりますが、発注した出版社や著者が翻訳テキストのチェックを社内・学内で行うことができない場合、元の言語にバックトランスレーションをして逆翻訳を見ることによって、内容がきちんと翻訳されているかの確認を行うことが可能となります。…

句読点(Punctuation)の重要性―例文で使い方を説明

もしも句読点(Punctuation)がなくなったら…と想像したことはありますか? Netflix、Instagram、Wi-Fiや、スマートフォンがなかったらと想像するのは難しいかもしれませんが、突然、英語の文章からカンマ(,)、アポストロフィ(’)、ピリオド(.)などの句読点や、括弧、疑問符、ダッシュなどが消えてしまったら? はじめに - 句読点は重要か? 作家のジーテ・タイル(Jeet Thayil)のデビュー小説『ナルコポリス(Narcopolis)』は、2012年にイギリスの文学賞であるマン・ブッカー賞(Man Booker Prize for Fiction)にノミネートされていますが、この小説は、ピリオドなしの7ページ(2,309ワード)に及ぶ文章で始まっています。 ミレニアル世代とZ世代は、テキストメッセージにピリオドを入れるのは信じられないほどかっこ悪いので、何が何でも使わないようにしており、それが原因で句読点ぬきの英文が増えているとも言われています。日本語でも「マルハラ」などという言葉が出てきましたね。句読点がハラスメントにつながるなんて、なんとも驚くべきことです。 アメリカには「National Punctuation Day(仮訳:全国句読点の日。毎年9月24日)」という、句読点の正しい使い方を促進するための祝日があります。…

アカデミック・ライティングにおける言葉の選択と注意点

「言葉の選択」とは 文章を書く際、効果的で的確な言葉を選択することにより、読者に正確な情報を伝えることができます。効果的な「言葉の選択」、つまり、状況に応じていかに適切な言葉を選ぶかがとても重要なのです。同じことを伝えるにしても、選ぶ言葉によって読み手が受け取る印象は異なり、意図とは異なる意味が伝わってしまうことすらあります。アカデミック・ライティングの場合には、専門用語を多用しすぎると分かりにくくなってしまいます。専門用語や紋切り型の表現(定型表現)を使いすぎることなく、明示的な意味や含意を伝えられるようにすることが大切なのです。また、語彙が多ければ良いというものでもありません。 文章を書く上では避けて通れない「言葉の選択」 自分の研究内容をきちんと伝えるためには、論文で適切な言葉を選ぶことが極めて重要です。アカデミック・ライティングに限ったことではありませんが、文章の執筆とは、言葉の選択の連続です。自分のアイデアを明確に表現できる単語を注意深く選ぶだけでなく、それらの単語をどのようにフレーズ、センテンス、さらにはパラグラフとして配置するかを判断しなければなりません。説得力のある言葉の選択は、読者の内容理解につながります。それが、研究アイデアを明確にし、拡散するのす。 言葉を吟味する際には、読者に正しい情報を伝えることを妨げる要素のないように注意することも重要です。 言葉の選択における一般的な注意点につき、例文を示しつつ説明していきます。 誤った単語 あまり深く考えずにライティングを行う、あるいは単語の意味を間違って覚えているなど、さまざまな理由で間違った言葉を使ってしまうことがあります。特に、意味や品詞を混同しやすい英単語には注意が必要です。 例1:There were averse effects. 修正1:There were adverse…

論文翻訳で加速する科学の進歩

文献レビューは、論文執筆において不可欠です。研究題目に関する基礎知識だけでなく、研究を裏付けし、促進するための論拠を特定し、重複を避けるのにも役立ちます。技術革新により、かつてないほど簡単に情報共有ができるようになりました。また、英語で出版される論文数が増え、世界の研究が共有されることで科学の進歩は加速しています。 なぜノンネイティブ研究者による文献レビューに論文翻訳が有効なのか? ポーランド出身のマリー・キュリーはフランス語で論文を出版し、ドイツ出身のアルベルト・アインシュタインは最初の論文をドイツ語で書き、イングランド出身のアイザック・ニュートンは『プリンシピア 自然哲学の数学的原理(原題:Philosophiæ Naturalis Principia Mathematica)』をラテン語で記しましたが、今では、どのような分野の研究論文を発表するのにも英語が使われるようになっています。 英語以外の言語の使用割合は年々低下し、近年では英語がネイティブか否かに関わらず、出版されている科学論文の98%は英語で書かれているとのことです。これは裏を返せば、英語を母語としないノンネイティブの研究者の中には、情報に「アクセス」できても研究内容を「理解することが難しい」人もいる可能性を示します。その場合、公開されている論文にアクセスし利用するために、翻訳が有効なのです。 機械翻訳の進歩は論文翻訳の精度向上につながったか 機械翻訳とは、米科学者ウォーレン・ウィーバーが1947年に提起した概念であり、以降、日々進歩してきました。最新技術であるニューラル機械翻訳(NMT)は、ニューラルネットワーク、ディープラーニング(深層学習)といった人間の脳のニューロンの活動を単純化したモデルを採用することで、それまでの機械翻訳では難しいとされていた翻訳精度を飛躍的に向上させました。単語ではなく文全体を1つとして捉えることで、より高い精度の翻訳を実現したのです。世界の研究にアクセスし、自分の研究の基礎固めをするために英語論文翻訳を必要とするノンネイティブ研究者にとって、ニューラル機械翻訳の自動かつ迅速な論文翻訳は大いに役立っています。 なぜ論文翻訳が研究にとって重要なのか 簡単に言うと「1つの発見は別の発見につながる」からです。新型コロナウイルスは、知識の共有と協力する努力が対策を進めるための道筋となることを示したひとつの例です。1つ1つの研究成果は、それが成功したかしないかにかかわらず、後続の研究を成功に導く糧となるのです。つまり研究者にとって、自分の活動地域や言語に制限されることなく、あらゆる先行研究にアクセスし、内容を理解することが非常に重要なのです。ほとんどの論文が英語で出版される中、論文翻訳は英語に不慣れな研究者の言語ギャップを埋めることに役立っています。機械翻訳は、どのような言語で書かれた論文であってもそれを翻訳し、参照するための便利なオプションのひとつであり、研究者がより広範な文献レビューを行う助けとなります。研究者が自分の研究成果を向上させられる可能性のある幅広い参考文献にアクセスできることを意味しているのです。 論文翻訳において翻訳者と機械翻訳をどう使い分けるのが得策か 機械翻訳がいつか人間の翻訳者よりも優先される日が来るのでは―という話はよく話題にされますが、それぞれの翻訳には特有の長所と短所があり、いろいろな意味で双方が補い合うことが可能です。例えば翻訳者はコストとスピードでは機械翻訳に勝てませんが、機械翻訳は正確さと、あまり使われない言葉や研究分野に特化した言い回しの翻訳において完璧ではありません。そのため研究者は、翻訳者と機械翻訳の両方の利点を使いこなすことが最適解と言えるでしょう。既存の研究論文の大まかな概要把握には機械翻訳を利用し、学術雑誌(ジャーナル)に投稿するための翻訳には専門的なサービスを提供している翻訳会社に依頼するのが、時間とコストの削減につながるでしょう。 参考文献 Does…

研究者のためのイラスト作成ツール

報告書や論文を書くことは研究業務の大きな部分を占めるものです。研究者は、ほとんどの時間を研究自体か研究について書くかに費やしています。 研究者が論文を書くのは、仲間や学術関係者あるいは一般の人々など、さまざまな読者に自分の研究内容を伝えるためですが、論文や報告書には普段あまり意識していない別の要素を含めることも必要です。それは、科学的な図表やイラストです。報告書や論文を読んだことのある人なら誰でも目にしたことがあるであろう、イラスト、図表、グラフ、インフォグラフィックは、研究のアイデアを明確に示すための貴重なコンテンツです。デジタル技術やグラフィック機能の進歩により、見た人に興味を持ってもらえ、わかりやすく内容を伝える科学的なイラストを簡単に作画できる優れたツールが入手できるようになっています。 この記事では、研究のアイデアや内容をより良く提示するために、詳細かつ有用なイラストを作成する方法を見ていきます。研究者が科学的なイラストを作成するのに便利なツールも紹介しますので、是非参考にしてみてください。 科学的なイラストの作成 科学的なイラストを作成するには、まずそのテーマを明確にすることから始めます。何かを描き出す前に、何を描こうとしているのか具体的にイメージしておく必要があります。 まず対象を部分ごとに分けて観察し、最適な表現方法を考えることが役立ちます。必要な情報がすべて揃ったら、紙に下絵を描いていきますが、この作業は、論文を執筆する際にアウトラインを作成するのと同じようなものだと考えれば良いでしょう。デジタル・イラスト作成ツールを使い始める前に、自分のイラストをどのように見せたいかをよく考えておきます。 イラストを作成するときは、ターゲットとする読者を念頭に置くことも大切です。そのイラストを、研究内容を理解している研究仲間や他の研究者に向けて作成するのか、それとも一般の人々に向けて作成するのか――対象を定めることで、どのような情報を盛り込み、どのような情報は省いてもよいかが明確になります。 デジタルツールに頼る前に、科学的なイラストの目的は、新しい資料を紹介することではないと覚えておいてください。 科学的なイラストや図解は、論文の情報を読者に分かりやすく提示するために使うものですので、研究の題材を分かりやすく示すものでなければなりません。例えば、閉塞した心臓の動脈にステントを挿入して広げる処置について図解するのであれば、主要な構成要素を示し、ステントの機能を強調したイラストを作成するようにします。 ここで留意しておきたいのは、科学的なイラストには大きく分けて以下の3つがあり、用途によって使い分ける必要があるということです。 平面図や地図、簡単な線図、視覚的な説明図 対象を正確に描写しつつ、色や模様など特定の表面的なディテールを取り入れたイラスト 上2つを含むが科学的な視点よりも美的な視点を重視したイラスト 科学的なイラスト作成デジタルツール どのようなイラストを作成するかのアイデアが固まったら、次はデジタルツールを利用してみます。ほとんどの研究者は、MicrosoftのPower…

コンセプトペーパーとは?~構成要素と書き方のポイント~

コンセプトペーパーは、学術研究やその他の分野においても、本格的なプロジェクトの計画書を作成する前に、取り組もうとしているプロジェクトの概要を説明するための重要な文書です。コンセプトペーパーの特徴や意義を理解することは、研究のための強固な基礎を築くことを目指す研究者にとっても非常に重要です。 今回は、学術研究におけるコンセプトペーパーとはどのようなものか、その構成と書き方のポイントを解説します。 コンセプトペーパーとは コンセプトペーパーとは、研究を実施するための承認申請や、助成金申請を行う際、研究の基本的な内容を概説する簡潔な文書です。取り組もうとしている研究プロジェクトの当初のアイデア、目的、理論的枠組みに関する説明を、数ページ程度の長さにまとめるのが一般的です(修士や博士課程で書く場合と助成金申請で書く場合などによっては長さが異なるので、指定の書式を確認するようにしてください)。研究計画書のように特定の研究の詳細な計画や方法論を書く必要がなく、原著論文のように完璧な研究プロジェクトの結果や分析の記載も不要である点がコンセプトペーパーの特徴です。基本的なアイデア、対象とするリサーチクエスチョン、研究の指針となるフレームワークを紹介することに主眼を置いて作成します。 コンセプトペーパーの目的 ビジネスにおいては、正式な提案書を提出する前に、上長らの承認や賛同を得るためにプロジェクトの目的や想定される成果について説明するいわゆる「企画書」がコンセプトペーパーに該当しますが、学術研究では、実施を予定している研究のプロジェクトの概要や研究の目的、実施方法について説明するための文書としてコンセプトペーパーが作成されます。コンセプトペーパーを書くことで、研究の方向性を明確にし、一貫性を持たせるためのロードマップの役割を果たすだけでなく、非公式に意見を聞くためのツールとしても活用できます。所属部署などにおける意思決定、承認、共同研究者からの参加の約束などを得るために使用され、関係者間での意思疎通を促進し、共同研究において私的なやりとりよりもフォーマルかつ丁寧なコミュニケーションをはかるツールとして機能するものです。 つまりコンセプトペーパーとは、研究の中核となる目的、理論的裏付け、潜在的な方法論に焦点を当てる助けとなるものであり、これを作成することによって、研究者は詳細な研究に取りかかる前に、フィードバックを得てアイデアを洗練させることができるのです。 コンセプトペーパーの主な構成要素 コンセプトペーパーの主な構成は、タイトルページ、背景説明、文献レビュー、問題提起、方法論、タイムライン、参考文献リストなどです。コンセプトペーパーは、助成金の申請において、提案する研究の妥当性と実現可能性を評価するのにも使われるので、研究者にとっては極めて大切なものです。 学術研究において効果的なコンセプトペーパーを書くには、必要不可欠な要素を理解し、それらの情報を上手く取り入れることが必要です。 上手く構成されたコンセプトペーパーは、上に挙げた要素をまとめ、提案する研究の概要を明確かつ包括的に概説し、研究テーマへの深い理解と、研究を実行するための構造化された計画を示すことができます。 コンセプトペーパーの書き方 コンセプトペーパーを効果的に仕上げるには、魅力的な研究テーマを選び、多数のリサーチクエスチョンを投げかけ、プロジェクトの根拠を裏付けるデータや数字を盛り込むことをお勧めします。内容を調整し、書式要件に従って簡潔な文書(長くても)に整える必要があります。さらに、インフォグラフィックや科学的な図解を用いれば、インパクトを高め、内容を読者に分かりやすく伝えることができます。以下にコンセプトペーパーを書く手順を記します。 1.簡潔なタイトルをつける 主要なアイデアを要約した、明確で説明的なタイトルをつけます。タイトルはペーパーの内容を直接的に表現するものである必要があります。読者に対してペーパーのプレビューとしての役割を果たします。…

AffectとEffectの違い:どう使い分ける?

投稿前に何度も原稿を見直したはずなのに論文で「その指標が器官に与える影響(effect of the indicator on the system)」と書くべきところを、「器官内で影響を受けた指標(the affected indicator on the system)」と書いてしまった、という経験をお持ちの人はそれほど多くないかもしれませんが、「affect」と「effect」は紛らわしいですね。 しかし紛らわしい英単語の意味や使い方をしっかりと把握し使い分けられるようになることが、研究者が研究成果を正しく世界に発信する上で欠かせません。 英語の中でもとりわけ混同される2つの単語-「affect」と「effect」 アカデミックな英語の中には、英語がネイティブでない読み手だけでなく、ネイティブスピーカーたちをも混乱させるような表現が少なくありません。…

盗用・剽窃の8つの種類

論文発表における盗用および剽窃とは、他人の研究に関する考え方や文章を許可なく使用し、自分の著作物・論文の一部として発表することです。残念ながら、盗用・剽窃は、研究において目新しい問題ではありませんが、盗用・剽窃を検出できるソフトなどの出現により見つけ出すことが容易になったため、より注目されるようになりました。   盗用・剽窃には偶発的なものから悪質な不正行為まで様々なタイプがあります。意図したものはもちろん、意図しないものも許されませんが、すべての盗用・剽窃が不正行為かどうかと、その重要性を分析する際には、どのような盗用・剽窃なのかの判断が必要です。だからこそ、大学のような教育機関において盗用・剽窃に関する知識を学び、その重要性を知った上で対策を講じることができるようになることが重要です。この記事では、基本的な8種類の盗用・剽窃を紹介します。 盗用・剽窃の種類 盗用・剽窃の問題は昔からありますが、近年は、インターネットが普及したことでこの問題が一層表面化してきました。きちんと引用すれば盗用・剽窃とはみなされないのですが、意図的に行う盗用・剽窃は犯罪です。さまざまな盗用・剽窃の種類と、それらがどのように発生するかを考慮し、研究倫理上も重大な問題であると理解しておくことが非常に重要です。その上で、非倫理的行為を行ったと指摘、非難されるのを避けるための対策を講じなければなりません。 完全な盗用・剽窃 完全な盗用・剽窃とは、他の研究者の研究や原稿を、自分の名前で投稿するという最も悪質なものです。これは、知的財産権侵害に相当します。ネットで見つけたものをコピーする、誰かにお金を払って論文を書いてもらう、自分あるいは他者が何年も前に提出した古い論文を再投稿することなども含まれます。 ソースベースの盗用・剽窃 ソースベースの盗用・剽窃とは、存在しない、あるいは虚偽の出典を参照する行為です。ソースベースの盗用・剽窃は、出典の種類が異なることでも起こりえるので、判断が難しいこともあります。例えば、研究者が誤って、間違った情報源や存在しない情報源を引用した場合、読者に誤解をもたらすことになります。意図的であろうとなかろうと、出典を完全かつ正確に引用していなければ、盗用・剽窃となります。 また、研究者が二次的なデータや情報源を参照したにも関わらず、二次的な情報のなかに示されている一次的な情報源のみを引用して二次的な情報に言及しない場合も、盗用・剽窃に該当することになります。このタイプは、単なる見落としやミスということもありますが、意図的に参考文献リストを補強したり、引用文献の数を増やしたりすることも含まれています。 ソースについてさらに言えば、データの捏造と改ざんも盗用・剽窃の一種類です。データの捏造とはデータや研究結果をでっち上げることであり、データの改ざんとはデータを変更したり省略したりして誤った印象を与えることです。特に医学研究の場合、こうした盗用・剽窃がもたらす結果は、臨床判断に悪影響を及ぼす可能性があるため、重大です。 直接的な盗用・剽窃 完全な盗用・剽窃と似ていますが、直接的な盗用・剽窃とは、コピペ盗用とも呼ばれるように、他人の言葉や文章をそのまま引用符も使わず、発言者の断りも書かずに(帰属表示なしに)一字一句そのままコピーし、自分の創作として利用してしまうことです。二つの違いは、完全な盗用・剽窃が文章全体を使用するのに対し、直接的な盗用・剽窃は他人の作品の一部をコピーペーストすることです。特定の段落や文章をコピーすることもあります。いずれにせよ不正行為とみなされ、勧告や厳しい処分を受けることになります。 自己盗用・自己剽窃 自己盗用・自己剽窃とは、著者が以前に発表した自分自身の論文のかなりの部分を帰属表示なしに再利用する場合に起こる盗用・剽窃の一種です。また、ひとつの論文を複数の学術雑誌(ジャーナル)に投稿する二重投稿も自己剽窃の一種とみなされます。そのため、このタイプの盗用・剽窃は、学生よりもむしろ、出版経験のある研究者がやりがちですが、既に出版されている論文を新しいもののように主張することは、研究倫理的な違反となります。…