研究を推進する

アカデミック・ライティングにおける言葉の選択と注意点

「言葉の選択」とは 文章を書く際、効果的で的確な言葉を選択することにより、読者に正確な情報を伝えることができます。効果的な「言葉の選択」、つまり、状況に応じていかに適切な言葉を選ぶかがとても重要なのです。同じことを伝えるにしても、選ぶ言葉によって読み手が受け取る印象は異なり、意図とは異なる意味が伝わってしまうことすらあります。アカデミック・ライティングの場合には、専門用語を多用しすぎると分かりにくくなってしまいます。専門用語や紋切り型の表現(定型表現)を使いすぎることなく、明示的な意味や含意を伝えられるようにすることが大切なのです。また、語彙が多ければ良いというものでもありません。 文章を書く上では避けて通れない「言葉の選択」 自分の研究内容をきちんと伝えるためには、論文で適切な言葉を選ぶことが極めて重要です。アカデミック・ライティングに限ったことではありませんが、文章の執筆とは、言葉の選択の連続です。自分のアイデアを明確に表現できる単語を注意深く選ぶだけでなく、それらの単語をどのようにフレーズ、センテンス、さらにはパラグラフとして配置するかを判断しなければなりません。説得力のある言葉の選択は、読者の内容理解につながります。それが、研究アイデアを明確にし、拡散するのす。 言葉を吟味する際には、読者に正しい情報を伝えることを妨げる要素のないように注意することも重要です。 言葉の選択における一般的な注意点につき、例文を示しつつ説明していきます。 誤った単語 あまり深く考えずにライティングを行う、あるいは単語の意味を間違って覚えているなど、さまざまな理由で間違った言葉を使ってしまうことがあります。特に、意味や品詞を混同しやすい英単語には注意が必要です。 例1:There were averse effects. 修正1:There were adverse…

論文翻訳で加速する科学の進歩

文献レビューは、論文執筆において不可欠です。研究題目に関する基礎知識だけでなく、研究を裏付けし、促進するための論拠を特定し、重複を避けるのにも役立ちます。技術革新により、かつてないほど簡単に情報共有ができるようになりました。また、英語で出版される論文数が増え、世界の研究が共有されることで科学の進歩は加速しています。 なぜノンネイティブ研究者による文献レビューに論文翻訳が有効なのか? ポーランド出身のマリー・キュリーはフランス語で論文を出版し、ドイツ出身のアルベルト・アインシュタインは最初の論文をドイツ語で書き、イングランド出身のアイザック・ニュートンは『プリンシピア 自然哲学の数学的原理(原題:Philosophiæ Naturalis Principia Mathematica)』をラテン語で記しましたが、今では、どのような分野の研究論文を発表するのにも英語が使われるようになっています。 英語以外の言語の使用割合は年々低下し、近年では英語がネイティブか否かに関わらず、出版されている科学論文の98%は英語で書かれているとのことです。これは裏を返せば、英語を母語としないノンネイティブの研究者の中には、情報に「アクセス」できても研究内容を「理解することが難しい」人もいる可能性を示します。その場合、公開されている論文にアクセスし利用するために、翻訳が有効なのです。 機械翻訳の進歩は論文翻訳の精度向上につながったか 機械翻訳とは、米科学者ウォーレン・ウィーバーが1947年に提起した概念であり、以降、日々進歩してきました。最新技術であるニューラル機械翻訳(NMT)は、ニューラルネットワーク、ディープラーニング(深層学習)といった人間の脳のニューロンの活動を単純化したモデルを採用することで、それまでの機械翻訳では難しいとされていた翻訳精度を飛躍的に向上させました。単語ではなく文全体を1つとして捉えることで、より高い精度の翻訳を実現したのです。世界の研究にアクセスし、自分の研究の基礎固めをするために英語論文翻訳を必要とするノンネイティブ研究者にとって、ニューラル機械翻訳の自動かつ迅速な論文翻訳は大いに役立っています。 なぜ論文翻訳が研究にとって重要なのか 簡単に言うと「1つの発見は別の発見につながる」からです。新型コロナウイルスは、知識の共有と協力する努力が対策を進めるための道筋となることを示したひとつの例です。1つ1つの研究成果は、それが成功したかしないかにかかわらず、後続の研究を成功に導く糧となるのです。つまり研究者にとって、自分の活動地域や言語に制限されることなく、あらゆる先行研究にアクセスし、内容を理解することが非常に重要なのです。ほとんどの論文が英語で出版される中、論文翻訳は英語に不慣れな研究者の言語ギャップを埋めることに役立っています。機械翻訳は、どのような言語で書かれた論文であってもそれを翻訳し、参照するための便利なオプションのひとつであり、研究者がより広範な文献レビューを行う助けとなります。研究者が自分の研究成果を向上させられる可能性のある幅広い参考文献にアクセスできることを意味しているのです。 論文翻訳において翻訳者と機械翻訳をどう使い分けるのが得策か 機械翻訳がいつか人間の翻訳者よりも優先される日が来るのでは―という話はよく話題にされますが、それぞれの翻訳には特有の長所と短所があり、いろいろな意味で双方が補い合うことが可能です。例えば翻訳者はコストとスピードでは機械翻訳に勝てませんが、機械翻訳は正確さと、あまり使われない言葉や研究分野に特化した言い回しの翻訳において完璧ではありません。そのため研究者は、翻訳者と機械翻訳の両方の利点を使いこなすことが最適解と言えるでしょう。既存の研究論文の大まかな概要把握には機械翻訳を利用し、学術雑誌(ジャーナル)に投稿するための翻訳には専門的なサービスを提供している翻訳会社に依頼するのが、時間とコストの削減につながるでしょう。 参考文献 Does…

研究者のためのイラスト作成ツール

報告書や論文を書くことは研究業務の大きな部分を占めるものです。研究者は、ほとんどの時間を研究自体か研究について書くかに費やしています。 研究者が論文を書くのは、仲間や学術関係者あるいは一般の人々など、さまざまな読者に自分の研究内容を伝えるためですが、論文や報告書には普段あまり意識していない別の要素を含めることも必要です。それは、科学的な図表やイラストです。報告書や論文を読んだことのある人なら誰でも目にしたことがあるであろう、イラスト、図表、グラフ、インフォグラフィックは、研究のアイデアを明確に示すための貴重なコンテンツです。デジタル技術やグラフィック機能の進歩により、見た人に興味を持ってもらえ、わかりやすく内容を伝える科学的なイラストを簡単に作画できる優れたツールが入手できるようになっています。 この記事では、研究のアイデアや内容をより良く提示するために、詳細かつ有用なイラストを作成する方法を見ていきます。研究者が科学的なイラストを作成するのに便利なツールも紹介しますので、是非参考にしてみてください。 科学的なイラストの作成 科学的なイラストを作成するには、まずそのテーマを明確にすることから始めます。何かを描き出す前に、何を描こうとしているのか具体的にイメージしておく必要があります。 まず対象を部分ごとに分けて観察し、最適な表現方法を考えることが役立ちます。必要な情報がすべて揃ったら、紙に下絵を描いていきますが、この作業は、論文を執筆する際にアウトラインを作成するのと同じようなものだと考えれば良いでしょう。デジタル・イラスト作成ツールを使い始める前に、自分のイラストをどのように見せたいかをよく考えておきます。 イラストを作成するときは、ターゲットとする読者を念頭に置くことも大切です。そのイラストを、研究内容を理解している研究仲間や他の研究者に向けて作成するのか、それとも一般の人々に向けて作成するのか――対象を定めることで、どのような情報を盛り込み、どのような情報は省いてもよいかが明確になります。 デジタルツールに頼る前に、科学的なイラストの目的は、新しい資料を紹介することではないと覚えておいてください。 科学的なイラストや図解は、論文の情報を読者に分かりやすく提示するために使うものですので、研究の題材を分かりやすく示すものでなければなりません。例えば、閉塞した心臓の動脈にステントを挿入して広げる処置について図解するのであれば、主要な構成要素を示し、ステントの機能を強調したイラストを作成するようにします。 ここで留意しておきたいのは、科学的なイラストには大きく分けて以下の3つがあり、用途によって使い分ける必要があるということです。 平面図や地図、簡単な線図、視覚的な説明図 対象を正確に描写しつつ、色や模様など特定の表面的なディテールを取り入れたイラスト 上2つを含むが科学的な視点よりも美的な視点を重視したイラスト 科学的なイラスト作成デジタルツール どのようなイラストを作成するかのアイデアが固まったら、次はデジタルツールを利用してみます。ほとんどの研究者は、MicrosoftのPower…

コンセプトペーパーとは?~構成要素と書き方のポイント~

コンセプトペーパーは、学術研究やその他の分野においても、本格的なプロジェクトの計画書を作成する前に、取り組もうとしているプロジェクトの概要を説明するための重要な文書です。コンセプトペーパーの特徴や意義を理解することは、研究のための強固な基礎を築くことを目指す研究者にとっても非常に重要です。 今回は、学術研究におけるコンセプトペーパーとはどのようなものか、その構成と書き方のポイントを解説します。 コンセプトペーパーとは コンセプトペーパーとは、研究を実施するための承認申請や、助成金申請を行う際、研究の基本的な内容を概説する簡潔な文書です。取り組もうとしている研究プロジェクトの当初のアイデア、目的、理論的枠組みに関する説明を、数ページ程度の長さにまとめるのが一般的です(修士や博士課程で書く場合と助成金申請で書く場合などによっては長さが異なるので、指定の書式を確認するようにしてください)。研究計画書のように特定の研究の詳細な計画や方法論を書く必要がなく、原著論文のように完璧な研究プロジェクトの結果や分析の記載も不要である点がコンセプトペーパーの特徴です。基本的なアイデア、対象とするリサーチクエスチョン、研究の指針となるフレームワークを紹介することに主眼を置いて作成します。 コンセプトペーパーの目的 ビジネスにおいては、正式な提案書を提出する前に、上長らの承認や賛同を得るためにプロジェクトの目的や想定される成果について説明するいわゆる「企画書」がコンセプトペーパーに該当しますが、学術研究では、実施を予定している研究のプロジェクトの概要や研究の目的、実施方法について説明するための文書としてコンセプトペーパーが作成されます。コンセプトペーパーを書くことで、研究の方向性を明確にし、一貫性を持たせるためのロードマップの役割を果たすだけでなく、非公式に意見を聞くためのツールとしても活用できます。所属部署などにおける意思決定、承認、共同研究者からの参加の約束などを得るために使用され、関係者間での意思疎通を促進し、共同研究において私的なやりとりよりもフォーマルかつ丁寧なコミュニケーションをはかるツールとして機能するものです。 つまりコンセプトペーパーとは、研究の中核となる目的、理論的裏付け、潜在的な方法論に焦点を当てる助けとなるものであり、これを作成することによって、研究者は詳細な研究に取りかかる前に、フィードバックを得てアイデアを洗練させることができるのです。 コンセプトペーパーの主な構成要素 コンセプトペーパーの主な構成は、タイトルページ、背景説明、文献レビュー、問題提起、方法論、タイムライン、参考文献リストなどです。コンセプトペーパーは、助成金の申請において、提案する研究の妥当性と実現可能性を評価するのにも使われるので、研究者にとっては極めて大切なものです。 学術研究において効果的なコンセプトペーパーを書くには、必要不可欠な要素を理解し、それらの情報を上手く取り入れることが必要です。 上手く構成されたコンセプトペーパーは、上に挙げた要素をまとめ、提案する研究の概要を明確かつ包括的に概説し、研究テーマへの深い理解と、研究を実行するための構造化された計画を示すことができます。 コンセプトペーパーの書き方 コンセプトペーパーを効果的に仕上げるには、魅力的な研究テーマを選び、多数のリサーチクエスチョンを投げかけ、プロジェクトの根拠を裏付けるデータや数字を盛り込むことをお勧めします。内容を調整し、書式要件に従って簡潔な文書(長くても)に整える必要があります。さらに、インフォグラフィックや科学的な図解を用いれば、インパクトを高め、内容を読者に分かりやすく伝えることができます。以下にコンセプトペーパーを書く手順を記します。 1.簡潔なタイトルをつける 主要なアイデアを要約した、明確で説明的なタイトルをつけます。タイトルはペーパーの内容を直接的に表現するものである必要があります。読者に対してペーパーのプレビューとしての役割を果たします。…

AffectとEffectの違い:どう使い分ける?

投稿前に何度も原稿を見直したはずなのに論文で「その指標が器官に与える影響(effect of the indicator on the system)」と書くべきところを、「器官内で影響を受けた指標(the affected indicator on the system)」と書いてしまった、という経験をお持ちの人はそれほど多くないかもしれませんが、「affect」と「effect」は紛らわしいですね。 しかし紛らわしい英単語の意味や使い方をしっかりと把握し使い分けられるようになることが、研究者が研究成果を正しく世界に発信する上で欠かせません。 英語の中でもとりわけ混同される2つの単語-「affect」と「effect」 アカデミックな英語の中には、英語がネイティブでない読み手だけでなく、ネイティブスピーカーたちをも混乱させるような表現が少なくありません。…

盗用・剽窃の8つの種類

論文発表における盗用および剽窃とは、他人の研究に関する考え方や文章を許可なく使用し、自分の著作物・論文の一部として発表することです。残念ながら、盗用・剽窃は、研究において目新しい問題ではありませんが、盗用・剽窃を検出できるソフトなどの出現により見つけ出すことが容易になったため、より注目されるようになりました。   盗用・剽窃には偶発的なものから悪質な不正行為まで様々なタイプがあります。意図したものはもちろん、意図しないものも許されませんが、すべての盗用・剽窃が不正行為かどうかと、その重要性を分析する際には、どのような盗用・剽窃なのかの判断が必要です。だからこそ、大学のような教育機関において盗用・剽窃に関する知識を学び、その重要性を知った上で対策を講じることができるようになることが重要です。この記事では、基本的な8種類の盗用・剽窃を紹介します。 盗用・剽窃の種類 盗用・剽窃の問題は昔からありますが、近年は、インターネットが普及したことでこの問題が一層表面化してきました。きちんと引用すれば盗用・剽窃とはみなされないのですが、意図的に行う盗用・剽窃は犯罪です。さまざまな盗用・剽窃の種類と、それらがどのように発生するかを考慮し、研究倫理上も重大な問題であると理解しておくことが非常に重要です。その上で、非倫理的行為を行ったと指摘、非難されるのを避けるための対策を講じなければなりません。 完全な盗用・剽窃 完全な盗用・剽窃とは、他の研究者の研究や原稿を、自分の名前で投稿するという最も悪質なものです。これは、知的財産権侵害に相当します。ネットで見つけたものをコピーする、誰かにお金を払って論文を書いてもらう、自分あるいは他者が何年も前に提出した古い論文を再投稿することなども含まれます。 ソースベースの盗用・剽窃 ソースベースの盗用・剽窃とは、存在しない、あるいは虚偽の出典を参照する行為です。ソースベースの盗用・剽窃は、出典の種類が異なることでも起こりえるので、判断が難しいこともあります。例えば、研究者が誤って、間違った情報源や存在しない情報源を引用した場合、読者に誤解をもたらすことになります。意図的であろうとなかろうと、出典を完全かつ正確に引用していなければ、盗用・剽窃となります。 また、研究者が二次的なデータや情報源を参照したにも関わらず、二次的な情報のなかに示されている一次的な情報源のみを引用して二次的な情報に言及しない場合も、盗用・剽窃に該当することになります。このタイプは、単なる見落としやミスということもありますが、意図的に参考文献リストを補強したり、引用文献の数を増やしたりすることも含まれています。 ソースについてさらに言えば、データの捏造と改ざんも盗用・剽窃の一種類です。データの捏造とはデータや研究結果をでっち上げることであり、データの改ざんとはデータを変更したり省略したりして誤った印象を与えることです。特に医学研究の場合、こうした盗用・剽窃がもたらす結果は、臨床判断に悪影響を及ぼす可能性があるため、重大です。 直接的な盗用・剽窃 完全な盗用・剽窃と似ていますが、直接的な盗用・剽窃とは、コピペ盗用とも呼ばれるように、他人の言葉や文章をそのまま引用符も使わず、発言者の断りも書かずに(帰属表示なしに)一字一句そのままコピーし、自分の創作として利用してしまうことです。二つの違いは、完全な盗用・剽窃が文章全体を使用するのに対し、直接的な盗用・剽窃は他人の作品の一部をコピーペーストすることです。特定の段落や文章をコピーすることもあります。いずれにせよ不正行為とみなされ、勧告や厳しい処分を受けることになります。 自己盗用・自己剽窃 自己盗用・自己剽窃とは、著者が以前に発表した自分自身の論文のかなりの部分を帰属表示なしに再利用する場合に起こる盗用・剽窃の一種です。また、ひとつの論文を複数の学術雑誌(ジャーナル)に投稿する二重投稿も自己剽窃の一種とみなされます。そのため、このタイプの盗用・剽窃は、学生よりもむしろ、出版経験のある研究者がやりがちですが、既に出版されている論文を新しいもののように主張することは、研究倫理的な違反となります。…

研究論文を効果的にプロモーションする方法

学問の世界において、研究論文は発表してそれで終わりではありません。出版された後、しかるべき読者に届き、ふさわしいインパクトを与えられるようにする必要があるのです。研究のプロモーションは、認知度や被引用数の向上と、共同研究の機会拡大につながります。ここでは、研究論文をプロモーションするための効果的な戦略をご紹介します。 ソーシャルメディアの活用: X(旧Twitter)、LinkedIn、ResearchGateのようなソーシャルメディアプラットフォームは、研究をより多くの人々と共有するための強力なツールです。以下のような使い方をします。 • X(旧Twitter)関連するハッシュタグをフォローし、学術的な会話に参加し、研究成果についてポストする。研究分野のインフルエンサーや機関をタグ付けして認知度を上げる • LinkedIn: 研究論文をプロフィールに掲載し、要約を書き、研究テーマに関連する専門家グループに参加する • ResearchGate:論文をアップロードし、同じ分野の研究者をフォローし、ディスカッションに参加して、自分の研究を紹介する 自分の学術ウェブサイトやブログの作成: ウェブサイトやブログを立ち上げれば、それを自分の研究プロモーションのハブとすることができるでしょう。発表済みの論文や書籍の一覧、現在進行中の研究、ブログなどのセクションを設け、わかりやすい言葉で研究成果について論じたり、解説したりします。それにより、研究のプロモーションだけでなく、研究者としてのブランディングにも役立ちます。なお、発表済み論文のどの版なら公開してもよいか(プレプリント/ポストプリント)、エンバーゴ(公開までの猶予)期間などは、出版社と交わす著作権譲渡に関する合意書の内容によりますので留意してください。 オンラインの学術コミュニティへの参加: Academia.eduやGoogle Scholarのようなプラットフォームには、論文をアップロードして他の研究者とつながることのできる機能があります。自分の研究分野に関連したフォーラムやディスカッショングループに参加することでも、コミュニティ内での自分の知名度を上げられます。…

調査研究に適した統計的仮説検定を選ぶ際の7つの重要項目

実験などから得られたデータの統計処理を行う場合、どの統計手法を用いればよいのか、この方法でよいのか分からないということも多いと思います。統計的仮説検定の選択を誤ると、研究結果への信頼性に疑問を持たれたり、論文が不採用にされたりすることになりかねません。この記事では、母集団の分布の型(パラメトリック/ノンパラメトリック)の違いから、統計的仮説検定の手法を選択するために重要な項目について解説します。 統計的仮説検定とは 統計検定(hypothesis testing)、あるいは統計的仮説検定(statistical hypothesis testing)とは、ある仮説が正しいのか否かを統計学的に検証する方法です。2つのデータセットが互いに有意に異なるかどうかを数学的に検定するもので、母集団分布の母数に関する仮説を標本から得た情報(データ)に基づいて統計学的な方法で検証し、対象となる変数の母集団に関する条件になんらかの差があるといえるかどうかについて確率論的な分析を行うものです。統計的仮説検定では、平均、標準偏差、変動係数などいくつかの統計的尺度を用いて計算し、それらをあらかじめ決められた基準のセットと比較します。もしデータが基準を満たせば、2つのデータセット間に有意差があると結論づけることができます。 分析するデータの種類によって、使用できる統計的仮説検定は異なりますが、一般的な手法としては、t検定、カイ二乗検定、分散分析(ANOVA)などが挙げられます。 統計的仮説検定の種類 統計的仮説検定にはいくつかの手法があり、解析の種類 や母集団の分布などに適した手法を選択する必要があります。最初に母集団のデータ分布を事前に仮定している(パラメトリック検定)か、仮定していない(ノンパラメトリック検定)かを大別して、解析の種類を狭めていきます。 1.パラメトリック検定 パラメトリック検定とは、データの母集団が何らかの分布に従っていると仮定している場合に用いられる検定手法です。分布を決める際の重要な要素(パラメータ)を持っており、事前にデータの分布が仮定できるものに用いられます。特定の分布に従っていると想定できる観測値(データ)に対して実施することで、データの分布が想定したモデルと一致しているか否かを主張する際の定量的な根拠となります。一般的なパラメトリック検定としては、回帰分析、比較分析、相関分析が挙げられます。 1.1.回帰分析 回帰分析とは、データにおける関係性や影響力を調べる統計的な手法で、主に原因と結果の関係を推測する際に利用されます。回帰分析には、単回帰分析と、その応用ともいえる重回帰分析、さらにロジスティック回帰分析があります。 単回帰分析は、従属変数と独立変数の間の関係を直線で示すもので、2つの量的変数の関係、つまり目的の変数に対して説明の変数がどのように影響を与えているかを示す式(回帰式)を導き出されます。…

【寄稿記事】生成AIがあれば、人間による英文校正は必要ないのか?

今回は、バイアスのない公平かつプロフェッショナルな視点で生成AI登場後の英文校正の必然性というテーマを考えるため、水本篤教授(関西大学 外国語学部・外国語教育学研究科 教授)にご寄稿をいただきました。水本教授のプロフィールは記事の末尾からご覧いただけます。 私は外国語教育(特に英語教育)を専門とする研究者です。テキストを大量に収集し、データベース化した言語資料「コーパス」を用いた教育が研究テーマです。これまでに、英語論文執筆サポートツール(https://langtest.jp/awsum/)を開発したり、多様な分野の研究者に対して、コーパスを活用した英語論文執筆のテクニックを教えるワークショップやセミナーを実施してきました。 他の分野で活躍する研究者と交流する中で、多くの方が「英語論文の執筆にかかる時間を減らし、研究内容に専念したい。しかし、英語で論文を書くと大量の時間が必要で困っている」と口を揃えて言います。実際に、英語が母国語でない研究者が研究を行う際、英語は大きな障壁となることが Amano et al. (2023) によって数値で示されています。 自分自身の例でいうと、英語教育に関する研究を長年行っており、英語で論文を書くことも継続しているため、自分自身の専門知識と英語の運用能力は高いと自負しています。しかし、英語で論文を書くたびに、伝えたいことが完全には伝わっていないと感じ、これがいつまでもつらいのです。 今回は、「生成AIがあれば、人間による英文校正は必要ないのか?」という疑問について、言語教育の専門家として考察します。一部の人々は、「生成AIが存在する現在、人間による英文校正は不要だ」と極言しています。その結果、生成AIの学術論文執筆への適用に関する情報には非対称性が存在し、「真実は何かわからない」と感じている方も多いでしょう。 まず、「生成AIがあれば、人間による英文校正は必要ないのか?」に対する私の答えは「Yes and No」です。専門分野の英語論文を多数執筆してきた方で、自分の分野の論文の英語表現に自信を持っている方は、生成AIを使った英文校正でも十分に論文を完成させられるでしょう。英文校正会社に原稿のチェックを依頼すると、高価であったり、納期まで数日必要だったり、校正の品質が不均一であったりする問題があります。しかし、専門知識が豊富で、かつ英語運用能力が高い方にとっては、これらの問題を考慮する必要がありません。…

論文で仮定法“if-then”を使うときの注意

英文法で「仮定法」を学んだとき、「もし~ならば、~であろう」と訳すように習ったifを使った条件文に「仮定法」と呼ばれる動詞の活用が入ってきた途端に英文法につまずいたという経験をした人も少なくありません。 条件文とは、"if-then "または "unless-then "で書き表すような状況(実際には"then "と書かれずに具体的な状況を説明する文言が入る場合が多い)、あるいは起こりそうな状況・出来事を表す文です。ある条件における状況や起こりうる結果を示すもので、研究論文の中でも、調査研究の結果について論じるときや、仮説文の一部として条件文がよく使われます。ifを使った文章において仮定法はConditionalと呼ばれ、表現する対象の違いによって4種類に分けられています。ここでは、その4種類に混合型を加えた5種類のConditionalを概説します。 多くの場合、ある状態およびその条件下で得られる結果を述べるのには条件文が必要です。科学論文の著者の多くは、要約(アブストラクト)の中で、研究を実施する理由を論じるために条件文を使っています。条件文を正しく組み立てることは重要ですので、まずはその違いを理解しておきましょう。 条件(Conditional)の種類 条件文は、if節(またはunless節)と主節の2つの節を使って構成されます。以下に説明する5つの条件(Conditional)は対象が異なるので、それぞれの使い方を理解しておくことが重要です。あるConditionalは、一般的な真理に言及し、他の条件文は仮定の状況に言及するというような違いがあるので、例文を読み比べてみてください。いずれの種類の文章でもif節と主節の順序の入れ替えが可能ですが、if節が冒頭に来た場合には、主節の前に「,(コンマ)」を入れます。また、ここでは否定の例文を挙げていませんが、if節で否定的な条件を表わしたい場合には、if+notの変わりにunlessを使うことができます。 5つのConditional ・Zero Conditional Sentence (普遍的な状況を表す仮定法で書く、必ず起きる状況が対象)高度な文法エラーを修正する ・First…