研究を推進する

第15回 色覚バリアフリーを示すCUD認証マークとは?

より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい、色覚バリアフリーなスライドを作るために覚えておきたい「CUD: カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズ。第15回目の今回は、色覚バリアフリーの検証に合格した製品に添付される、CUD認証マークについてご紹介します。 日本国内にCUD (カラーユニバーサルデザイン)検証に合格した製品が増えています。「CUD認証マーク」の認知度はまだまだ高くありませんが、見つけたときには色やデザインに注目してみましょう。 エコマークのような認証マーク 環境保全に役立つ商品につけられるエコマークのように、CUDO (Color Universal Design Organization: カラーユニバーサルデザイン機構) によりCUDの要件を満たしていると認められた製品には「CUD認証マーク」(図15)をつけることができます。対象は、各種印刷物、機器類、公共物、ウェブサイト、その他文具・教材・調理器具など多岐にわたります。 企業や自治体からCUDOに申し込みがあると、訓練を受けた各色覚型の検証員が検証を行います。パソコンのシミュレータは簡易なチェックには役立ちますが、色弱者が実際に感じている色を再現するものではないため、認定には当事者による検証が必須となっています。 検証のポイントとなるのは、1: 多くの人に見分けやすい配色をしているか、2:…

第14回 動物における色覚の多様性 – 光の受容と種の保存

より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい、色覚バリアフリーなスライドを作るために覚えておきたい「カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズ。第14回目の今回は、我々ヒトを含めた、動物における色覚の多様性についてご紹介します。 生物にとって「色」とは、物体を検出、認識する手がかりであるとともに、信号としての役割を持ちます。生物はそれぞれ一定の光の波長を 受容 することにより独自の色の世界を持っているようです。 チョウにはお尻にも「目」が! 昆虫の眼は複眼でヒトの視覚とシステムが異なります。色覚についても、ミツバチの仲間は赤の光受容体がなく、紫外線、青、緑の3色型色覚を持つことが知られています。アゲハチョウやモンシロチョウは、ヒトより多い、紫外線、紫、青、黄、赤の5色型色覚に加え、さらに、お尻にもう1つの「目」(眼球外光受容器)を持つといいます。お尻の「目」では、交尾や産卵を確実に行えるように紫外線から青にかけての光を利用していることが確かめられています。 夜行性だったヒトの祖先 脊椎動物は魚類からヒトまで左右一対のカメラ眼を持ちますが、色覚は魚類、は虫類、鳥類の多くで4色型色覚を持っていたのが、ほ乳類で2色型に減少し、その中からヒトなどの霊長類が再び3色型色覚を持つようになりました。約2億年前、ほ乳類がは虫類から分岐した頃、地球は恐竜の全盛期で、ほ乳類の祖先は夜間行動をしていたために4種類のうち2種類の視細胞を失ったと考えられています。 霊長類が今から約4〜3千万年前に再び3色型色覚を持つようになった理由については、恐竜の絶滅後に昼行性の樹上生活を始めたため視覚への依存度が高まったことによると考えられています。3色型は木の葉のなかから若葉や果実を見つけ出すのに適していたほか、仲間とのコミュニケーションにおける役割も果たしたことが指摘されています。 現代人において高い2色型色覚の頻度 3色型色覚を持つサルの世界にも2色型(P型、D型)のサルが共存していることが知られています。また、それら「色弱」のサルを遺伝子型で特定して追跡した研究において、色弱のサルにおいても食べ物が異なるということはなく、一方的に弱いということはないことが観察されています。 ヒトは長い進化の過程を経て3色型色覚を持つようになりましたが(C型)、男性の5〜8%は2色型色覚を持ちます(P型、D型)。現代人における2色型色覚の頻度は、サルやチンパンジーにおけるその頻度と比べて極めて高いことがわかっています。 その理由として、ヒトの現代社会においては樹上生活に適した3色型の優位性が失われたか、あるいは2色型のほうが有利な場合も生じたために3色型に対する選択圧が緩和されたという説があります。そのほかに、ヒトが狩猟採集生活をしていた時代には2色型は輝度コントラストから獲物を見つけるのが得意で、3色型は果実の採取などに適しているために、相互利益により維持されたという考え方もあります。遺伝子構造によるとの見方もあり、はっきりとした理由は明らかではありません。 多様性を担うオプシン遺伝子の多型 このような色覚の多様性を担う視細胞は、364個のアミノ酸からなるタンパク質のオプシンに、ビタミンA誘導体であるレチナールが結合したものです。そして、ヒトにおいてC型、P型、D型を分けるのは、このオプシンのなかの15個のアミノ酸の違いです。…

第13回 色弱者にもやさしい信号機の色

より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい、色覚バリアフリーなスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン (CUD)」について迫る連載シリーズ。第13回の今回はプレゼンテーションから少し離れて、安全な社会構築に欠かせない「信号機」とCUDにまつわるエピソードをご紹介します。 色弱者と社会基盤の関係が話題になるとき、まず持ち上がるのが「信号機の色は見分けられるのか」という質問です。色と情報のシンボルともいえる信号機にまつわる歴史や、知らなかった工夫を紹介します。 「青信号」は見分けやすい「青みどり色」 信号機の色の見え方は個人差が大きいので一様には言えませんが、少数派であるP型、D型の当事者によれば、信号機の色は「見分けられます」。自動車運転免許の取得においても色覚型が欠格の理由になることもありません。 「青信号」はかつて「緑色」で、赤信号や黄信号と見分けがつきにくかったのですが、1970年代以降、 色弱者 に見分けやすい「青みどり色」に変更されました。電球式信号機においては、赤色を黄色より暗くして見分けやすくするなどの工夫もなされていました。また、横型の車両用信号機は通常、左から青・黄・赤の順に並んでいるので、位置関係からも判断できます。   進むLED化と新たな試み 平成25年の警察庁資料によれば、全国の車両用信号機の約40%、歩行者用信号機の35%がLED化されています。LED信号機には、コストパフォーマンスの良さや、太陽光の反射による疑似発光がないなどのメリットがあります。 すべての色覚型の人に見やすいように「青信号」は電球式と同様に「青みどり色」にしてあります。また、LED信号機が小さなLED電球の集まりであることを利用して、赤の信号灯にP型、D型色覚者に見やすい×印を組み込んだ信号機が提案され、社会実験として実際に使用された例もあります。 歩行者用の信号機は、従来から形状による表現が採用され、電球式の歩行者用信号機は色バックに人型の白抜きというデザインでした。LED化にあたり、学識者、色弱者、高齢者などにアンケート調査や視認試験を行った結果、黒バックに人型を光らせるタイプが高評価を得て採用されました。この変化に気づいていましたか?…

第12回 カラーユニバーサルデザイン・日本から世界へ

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン」について迫る連載シリーズです。 世界に先駆ける日本の「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」の取り組みはどのような背景から生まれてきたのか、CUDO副理事長の伊賀公一氏と同副理事長の田中陽介氏にお話を伺いました。 色が「使える」条件 色をなぜ使うのか?色が「使える」から使うのだ、と伊賀氏は言います。モノクロが当たり前だった状況からカラー化を進めるには一定のコストがかかりますが、日本にはその経済力がありました。 また、日本には教育上の共通インフラのようなものがあり、色で情報を伝えることのできる素地がありました。色に意味を持たせる場合に必要な一定レベルの印刷技術や塗装技術もありました。つまり日本には、いろいろな意味で色を使える条件が(色弱者以外には)そろっていました。海外旅行に行くと、言語、文化、宗教の多様性を実感します。そのようななかで、公共のサインなどにはアイコンを使うのが最も確実であって、色分けしておけば情報が伝わるという認識はほとんどないといいます。 「左利きと何が違うの?」 一方、日本の小学校では2002年まで全員に色覚検査を行っていました。これは世界に類をみないものです。また、色弱者にはかなりの職業の制限があり、身内からも黙っておくように言われることが普通でした。ひと昔前は左利きも修正されたことを考えれば、皆と同じであることがそれほどに重要だったということです。 田中氏によれば、米国では鉄道・航空など交通系や警察官の就職試験時に色覚検査が行われるものの、消防では行われなかったり、学校での一斉検査もないため、問題意識は低いといいます。特に西洋の文化は個人主義で、色覚についても個人の問題と捉えられているようです。実際、伊賀氏は 色弱 のイギリス人科学者に「左利きと何が違うの?」と言われたことがあるそうです。 日本発の成功事例になれば…

第11回 デジタル画像 作成時のひと工夫

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン」について迫る連載シリーズです。 学術発表におけるデジタルカラー画像の使用頻度が高まっています。第11回の今回は、医学生物学領域で使用頻度の高い蛍光多重染色画像を例にとり、多くの色覚型に伝わりやすい“ほんの一工夫”を紹介します。 単色画像はグレースケールで 今日、蛍光顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡の画像はデジタルカメラで撮影して、パソコン上で疑似カラーを用いて表現します。単色の画像を黒バックに赤や緑や青で提示しているものが多くありますが、この場合、色には意味がありません。むしろデメリットの方が多くなります。特にP型の人には黒い背景に赤い色は見にくく、一般型の人にとっても黒い背景に青色などは見にくいものです。 また、ポスターや論文などの印刷物においてカラー画像は不鮮明になる欠点があります。特に緑色はトラブルが多いと言われます。これは、顕微鏡で取得された画像がRGB 形式であるのに対し、印刷は一般的にCMYK方式であるため、変換により階調が飛んでしまうためです。白黒画像であれば、細かいシグナル強度の差も鮮明に表現でき、印刷時のトラブルが少なくなります。単色画像はぜひ白黒のグレースケールで提示しましょう。 2重染色画像では「赤―緑」を「マゼンタ―緑」に 蛍光2重染色では、黒い背景に「赤」と「緑」で表現し、赤と緑が共存する部分が「黄色」で表現されるのが一般的です。ところが、この色の組み合わせは、P型、D型の人には非常に見づらいものです。P型色覚の見え方をシミュレーションしたものが図11-1下段の一番左の画像です。赤が暗く、緑と黄色が見分けにくいことがわかります。 そこで、岡部正隆氏(東京慈恵会医科大学解剖学講座)は、P型、D型のみならず一般型のC型の人も含め、ほぼすべての人に理解できる蛍光二重染色画像の提示方法として、赤のシグナルをマゼンタ(赤と青を1対1で混ぜた赤紫色)に変更することを提唱しています。こうすれば、もともと赤かった部分は青寄りに見え、マゼンタと緑が共存する部分は「白色」で表現されるため、3つの色が明確に区別できます(図11-1下段の一番右の画像)。 Photoshop上で赤チャンネルの絵を青チャンネルにコピーするだけ! では、「赤―緑」から「マゼンタ―緑」への変更はどのようにすればよいのでしょうか。多くの顕微鏡では疑似カラーとしてマゼンタを選択できますので、それを活用するのが最も簡単ですが、すでに撮影した赤緑画像についても、RGBモードの画像であればPhotoshopで簡単に変更できます。…

第10回 プレゼンに有効な色の組み合わせを知ろう

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン」について迫る連載シリーズです。 12色や24色のクレヨンや色鉛筆のセットのように、CUD(カラーユニバーサルデザイン)に配慮した色のセットがあれば・・・そのような要望に応えて、CUD推奨配色セットができました。印刷業界や塗装業界では、導入に向けてすでに動き始めています。 多くの色覚型に対応 色弱の人にも見やすいオレンジ色寄りの赤色はRGB3原色の表現で(R:255, G:40, B:0)の色であると第7回で紹介しました。色の見え方や感じ方には個人差があるため、このような明確な指定はとても便利です。そこで、CUDO (カラーユニバーサルデザイン機構)では、赤色のみならず全部で20色(代替色を含めて22色)の「CUD推奨配色セット」を公開しています。 CUD推奨配色セット https://www.cudo.jp/resource/CUD_colorset 伊藤啓氏(東京大学分子生物学研究所)によるCUD配色セットの詳細 https://jfly.iam.u-tokyo.ac.jp/colorset/…

第9回 正しく情報が伝わるグラフ作成のコツ

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン」について迫る連載シリーズです。 情報を一目瞭然に伝えるためのグラフも、色の使い方によっては逆にわかりにくいものとなります。ほんの少し工夫するだけで、多様な色覚の人に見やすくなりますので、次の2点を是非取り入れましょう! 折れ線グラフ - 線の種類を変えましょう Excelなどの表計算ソフトを用いれば、表の形で入力した統計データをクリックひとつで グラフ に変換できます。表9-1左に最もシンプルな例を紹介します。線の太さや色はデフォルトで決まっており、何も考えないうちにこのようなカラフルな折れ線グラフが出来上がります。これをVischeckというシミュレーションソフト(第17回で紹介)を用いてP型色覚のシミュレーションとして写してみると、表9-1右のようになります。黄緑とオレンジ、あるいは青・紫・水色の区別が難しいことがわかります。 図9-1 折れ線グラフ例①[左:Excelのテンプレートからプレーンな折れ線グラフを選択、右:P型色覚のシミュレーション(Vischeck使用)]  …

第8回 スライド作成で気をつけたい配色のポイント

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン」について迫る連載シリーズです。 前回(第7回)紹介したように、国際学会でのプレゼンにおいて、「赤いレーザーポインターを使わず」、「赤色はオレンジ色寄り」にして、「色の名前を言うときに注意」することは、CUD(カラーユニバーサルデザイン)への大きな一歩です。今回は、さらに配慮したい2つのポイントを紹介します。 使う色の数を少なくする プレゼンテーションソフトウェアの発達により、多くの人が気軽に色をつけてカラフルなスライドを作るようになりました。一般型色覚のC型の人にとって色は便利な情報伝達手段ですが、使いすぎれば見づらい場合もあります。P型、D型などの人にとってはなおさら、重要な部分で見分けにくい色の組み合わせが増えてしまいます。また、意外なことに、重要ではない演出的な色使いにも問題があります。例えばデータの一部に、特に必要ではない背景色がついていたとすると、P型、D型などの人は「何か色がついているようだが意味があるのだろうか」と不安を抱いてしまいます。 したがって、なるべく多くの色覚型の人にわかりやすいスライドを作るためには、本当に必要でない色は使わないのが賢明です。そのようにシンプルを極めつつ、デザイン性の面でも満足のゆくスライド作りをめざしましょう。画面を動かすアニメーション効果も当初は多用されましたが、かえってわずらわしいという考え方が広まって、以前ほど多用されなくなりました。色についても多用しない効果的な使い方が広まっていくと考えられます。 色の組み合わせに気を配る―色相、明度、彩度とは? 赤色の選び方に代表されるように、色はそれ自体の問題もありますが、P型、D型の人にとっては、識別しにくい色の「組み合わせ」が問題となるケースが多くあります。第3回で紹介したように、「赤と緑」、「淡い水色とピンクと灰色」、「黄色と黄緑」、「紫と青」は特に判別が困難なため、重要な色分けの組み合わせにはなるべく用いないようにしましょう。 色には、色合い(色相)のほかに、明るさ(明度)、鮮やかさ(彩度)といった要素があります。P型、D型の人は色合い(色相)の識別が困難な場合が多いですが、色の明るさ(明度)や鮮やかさ(彩度)はよくわかります。そこで、色相のみならず、明度、彩度に変化をつけると、色弱者の人にも区別しやすい色の組み合わせが増えます。少し踏み込んだテクニックになりますが、これを意識してスライド作りに反映させれば、多彩な色使いも維持しつつ、ユニバーサル 化に配慮したプレゼンテーションを行うことができます(図8)。 図8 色相のみならず明度・彩度の差をつけた色の組み合わせの例[上:調整前、下:調整後](CUDOおよびハート出版より許可を得て転載)…

シンプルなアブストラクトの論文はより多く引用される

学術論文には必ずアブストラクト (要約)が付きます。そして論文は一般的にいって、引用される回数(被引用回数)が多ければ多いほど評価されます。では、アブストラクトの書き方はその論文の評価にどのような影響を与えるのでしょうか? 英国のワーウィック大学のデータ・サイエンティスト、エイドリアン・レッチフォード氏らは、論文の要約のスタイルが、その論文の被引用回数に影響するかどうかを調べ、その結果を『情報学ジャーナル(Journal of Informetrics)』で公表しました。 レッチフォード氏らは、オンラインデータベース「Web of Science」から、1999年から2008年までの各年について、最も引用された論文3万本の計量書誌学的データ(bibliometric data)をダウンロードしました。合計30万本のデータが集まったことになります。彼らはその中からアブストラクトや題名などが欠けている論文を取り除き、残りの21万6280本の論文について、それぞれのアブストラクトにある文字数や単語数、センテンス数をカウントして分析しました。その結果、アブストラクトでより頻繁に使われる言葉を使う論文を掲載するジャーナルは、論文1本あたりで見て、より多く引用される傾向があることが明らかになりました。また、アブストラクトでより頻繁に使われる言葉を使う論文は、同じジャーナルに掲載されるほかの論文と比較しても、より多く引用される傾向があることもわかりました。 さらに、アブストラクトの長さと論文が引用される回数との間にも関係があることもわかりました。レッチフォードらの分析では、アブストラクトがより短い論文を掲載するジャーナルは、論文1本あたりで見て、わずかに多く引用される傾向があることを示しました。また、アブストラクトがより短い論文は、同じジャーナルに掲載されるほかの論文と比べて、より多く引用される傾向があることもわかりました。彼らの計算モデルでは、5文字の言葉を1つ加えると、引用数が0.02%減るという結果が出ました。 レッチフォードらは、アブストラクトがより短くて、より頻繁に使われる言葉を含む論文がより多く引用される理由について、3つの可能性を述べています。第1に、インパクトファクターの高いジャーナルは、論文のアブストラクトの長さを制限し、より広い読者に適した書き方を要求しているのかもしれないこと。たとえば、『サイエンス』のアブストラクトは125語に制限されています。第2に、大きな科学的進歩を報告する論文は、より短いアブストラクトで書かれ、あまり専門的でない言葉を使うのかもしれないこと。第3に、より一般的な言葉を使ったより短いアブストラクトは読みやすく、それゆえにより多く引用されるのかもしれないこと。 ということは、より頻繁に使われる言葉で、より短いアブストラクト、つまりよりシンプルなアブストラクトを書くようにすれば、より多く引用される論文を書けるような気がしてきます。しかしもちろん、研究内容自体が優れていることが大前提でしょう。

第7回 色覚バリアフリーのスライド・3つのポイント

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。 より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズです。 忙しくて余裕がない?―ポイントさえおさえれば、CUDはすぐに実践できます! CUDO副理事長の伊賀公一氏に、PowerPointなどを用いたプレゼンテーションでこれだけは実践してほしいこと3つを伺いました。 赤色のレーザーポインターを使わない 図7-1 緑色のレーザーポインターの例(CUDOおよびハート出版より許可を得て転載) 「赤色」はP型、D型の人には目立つ色ではありません。 赤いレーザーポインターの光は長波長の光を使用しているために、特にP型の人には“赤外線”になってしまい、見えにくいか全く見えません。そこで、2000年代になって、P型、D型の人にも見えやすい緑色のレーザーポインターが開発されました(図7-1)。 緑色のレーザーポインターは、開発当初、種類が少なく高価なものでしたが、現在では種類が増えて入手しやすくなっていますので、買い替えの際には是非導入を検討しましょう。 なぜなら、緑色のレーザーポインターの光はC型の人にとっても赤色より明るく見やすいのです。 最近は、PowerPointなどのアニメーション機能を用いてスライドの特定箇所を強調する方法もあるため、レーザーポインターを使わない人も増えています。それも赤色のレーザーポインターの使用を避ける方法の1つと言えます。 赤色の代わりにオレンジ色(朱赤)を使う…