研究を推進する

論文の構成要素 – 本論

論文の「本論」はイントロダクションとコンクルージョンに挟まれ、研究内容の徹底的な記述を行う部分です。分野やジャーナルによって、「Methods」と「Results」、または「Materials and Methods」と「Results and Discussion」、あるいは「Methods」と「Results」と「Discussion」などという決まったセクションから構成される形式もありますが、セクションの数、見出し、内容に関しては規定がないことがより一般的です。 研究は、やり方が様々ですが、いかなる場合でも基本的には何らかの研究過程を通して結果を入手する、というプロセスになります。論文の本論では、研究過程とそれによって得られる結果を詳細に報告します。 本論は、ターゲット・オーディエンス(読者)が研究過程の各部分を再現できるほど微細、正確、かつ明確な説明と議論から成るべきです。例えば、研究が理論的なものであれば、結論が明確な出発点から切れ目のない論理の連鎖によって導き出されていることが必要です。また、論文で報告される実験、調査、数値計算、臨床試験などは、読者が(少なくとも原理的には)同等の条件の下で同等のプロセスによってデータを集めることができるように説明されているべきです。さらに、収集されたデータを出発点とした議論が、論理的に研究結果に到達することを明確に示す必要があります。 日本人学者による英語論文の中では、議論の出発点と到達点をつなぐ論理が明確でないことがしばしば見受けられます。多くの場合、問題の原因は論文が日本語的な考え方で表現されたことだと思われます[1]。 [1] 関連した議論についてはグレン・パケット:『科学論文の英語用法百科〈第2編〉 冠詞用法』(京都大学学術出版会,2016)の前書きをご参照下さい。 ※ 次回は「コンクルージョン」の構成についてお伝えします。

論文の構成要素 – イントロダクション

論文のイントロダクションは、本文の最初の部分であり、論文全体の内容を理解するために必要とされる予備知識を提供する部分です。個別のセクションに区切られる論文であれば、イントロダクションは「Introduction」という見出しの一つのセクションになることが一般的です。 イントロダクションが果たす主な役割には以下の項目があります。 (i) 論文の背景を示します。つまり、当研究が、どの分野に分類されるのか、そしてその分野においてどこに位置付けられるかを明確にします。 (ii) 研究の動機を述べます。要するに、なぜこの研究を行う意味があるかを説明するのです。 (iii) 研究の目標を示します。つまり、今回の研究でどのような進展を目指しているかを明らかにします。 (iv) 研究法を簡潔に記述します。具体的には、目標を達成するためにどのような方法によって解を与えようとするかを概説します。 (v) 結果を簡潔に述べます。 (vi) 結果の重要性を手短に論じます。特に、この結果が研究分野の進展にどのように貢献するかを明らかにします。 概して、これらの項目の記載順は上の通りになります。以下にそれぞれの役割について、もう少し細かく説明します。…

間違いやすい用語や表現 – against

前置詞「against」は日本人学者によって過度に使用され、最もよく誤用される語の一つです。誤用の原因として、「against」が「に対して」の誤訳になっていることが多いと思われます。実は、「に対して」が「against」に対応する場合もありますが、「against」が訳語として全く不適切とされる場合が多いです。 以下は「against」の典型的な誤用を示します。 [誤] (1) These are “slowly” varying effects, against the previously described “rapidly” [誤]…

名詞付加語の形

名詞付加語(noun adjunct)とは限定形容詞の働きをする名詞のことです。日本人学者が書いた論文では名詞付加語が誤用されていることをしばしば目にします。ここでその誤用の原因となる誤解を晴らします。 まず、以下を見てみましょう。 [正] I used to work in a shoe store. この用例中の「shoe」は名詞付加語となっています。ここで注目すべき点は、「shoe」が複数の靴を表しているにも関わらず単数形になっているということです。この文は名詞付加語の通常の用法を例示します。一般に、 名詞付加語 は、たとえそれが複数のものを表しているとしても、必ず単数形になるのです。…

限定修飾語句と非限定修飾語句

一般に、修飾語句には「限定」と「非限定」という二種類があり、両者間の違いを理解することは英語の基礎知識として不可欠です。 その違いとは、限定修飾語句が修飾される語句の意味に影響を与えるのに対し、非限定修飾語句はその意味に影響を与えないということです。 例えば修飾される語句が名詞であれば、非限定修飾語句はその名詞が指す対象について情報を加えることはありますが、修飾によってその対象自体を変えることはありません。 文法的には、限定修飾語句と非限定修飾語句はコンマの使用によって区別されます。つまり、非限定修飾語句の場合には、修飾語句と修飾される語句との間にコンマが入りますが、限定修飾語句の場合はコンマが入りません。 例文を見てみましょう。 (1) My dog, Cleo, is sleeping. (1') My dog Cleo…

integralとintegration

名詞「integral」と「integration」は日本人学者によってよく混同され、誤用されることが多いです。「integral」は「積分」に当たり、積分法の対象となる量を表し、一方、「integration」は「積分すること*」に相当し、積分を求める操作を意味します。 以下はしばしば見受けられる誤用を例示するものです。 (1) [誤] Here, we can evaluate the time integration of the propagator using…

間違いやすい用語や表現 – solve

動詞「solve」は、数学的な議論においてよく誤用されます。その多くの場合には、「solve」は「解明する」の誤訳になっていると思われます。「解明する」を「solve」と訳すことが適切な場合もありますが、「解明する」は比較的広い意味で用いられ、「solve」と訳すことができない場合もあります。 一般に、「solve」が意味する操作の対象となりうるものは、例えば、問題、謎、方程式、積分など、解くことを必要とされるもののみです。それらを解くことによって得られるものは「solve」の対象となりえないのです。つまり、そのようなものを表す名詞が「solve」の直接目的語となってはいけません。特に、数学的な議論においては、導出や解析などの結果となるものに対して「solve」を用いるのは誤りです。 以下の例文を見てみましょう。 (1) [誤] As proven above, this equation has two solutions. Below, we…

間違いやすい用語や表現 – on

「on」は日本人学者がしばしば誤用する前置詞の一つです。以下はその典型的な誤用を示します。 (1) [誤] This behavior is independent on the factors discussed above. (1) [正] This…

間違いやすい用語や表現 – from

「from」は日本人学者によってしばしば誤用される前置詞の一つです。ここでは、特によく見られる誤用の典型例を列挙し、その修正文を挙げます。 (1) [誤] The behavior described in the previous section is constrained from the (1)…

such thatとso thatの違い【意味と構文を解説】

「such that」と「so that」はよく混同されます。ここでそれぞれの表現の正しい用法を説明します。 so that の意味と使い方 「so that」は、副詞として「for that purpose」や「in order that」のように意図を示す場合と、「with the consequence that」や「and…