研究を推進する

カバーレター

カバーレターとは論文を投稿する際、原稿に添えて編集者宛に書く手紙のことです。カバーレターは編集者にその研究を紹介する役割を果たし、研究の重要性やそのジャーナルへの適合性を訴える機会となります。論文採用の成否に大きく影響を与えるものですので、軽い気持ちで書くべきものではなく、内容をよく考えたうえで、論文と同じくらい念入りに作成すべきです。

投稿規定、論文の様式

各学術ジャーナルには、それぞれ独自の 投稿規定 があります。大抵の場合、それらの規定はジャーナルのウェブページに「Instructions for Authors」、「Information for Authors」、「Instructions for Contributors」などのような表題で記載されています。論文を投稿する前には必ず一度確認してください。 通常は投稿規定の中に論文の書式についての指示があります。書式は分野によって大きく変わり、同じ専門分野の中でもジャーナル間に様式の多少の違いはあります。しかしそれでも、それぞれの分野の標準的な様式に従う場合が多いです。 以下のウェブサイトには主要な様式やスタイルのリストが記載され、役に立つウェブサイトへのリンクもさまざまな種類のものがあります。中にはそれぞれの様式のマニュアルへのリンクもあり、場合によっては無料でダウンロードできる、あるいはウェブ上でご覧になれるものもあります。 Know Which Style To…

論文の出版にかかる費用はいくら?

ジャーナルの出版には、膨大な時間と多大な経費がかかります。投稿されてきた論文が規程に沿ったものかを調べる事務的な作業から、査読者を探したり、複数の査読者の論評をまとめて著者へ連絡を取ったり、最終的にジャーナルへの掲載が決まれば、細かなフォーマットや誤字脱字を確認したり・・・。大学によっては、ジャーナルの編集にかかわることも職務の一環と見なし、編集長を任された教授に対して学内業務の削減などの援助を行っているところもあるようです。また、大学院生や学部の事務員が無償で手助けをしているケースも多く見られます。 それでも、印刷物を発行するジャーナルでは、印刷代だけでかなりの費用がかかります。そのため、多くのジャーナルが会員制を取ったり、会員以外の人への年間購読を斡旋したり、特定号のバラ売りしたりするなど、その経費を賄おうと必死です。このようなジャーナルの利点は、投稿する研究者へ掲載費を請求することが少ないということでしょう。しかしその反面、せっかく掲載されてもジャーナルの定期購読者(学会誌であれば学会員)以外には読まれる機会が少ないという弱点があります。 そのうえで昨今ではジャーナルの購読料が高騰しています。『Library Journal』の調査では、どの分野でもジャーナルの購読料は2013年から2014年にかけて6〜7%値上げされています。また日本の大学の図書館では、2004年から2012年にかけて電子ジャーナルの購入費が1000万円弱から3000万円近くへと激増していることが文部科学省の調査でわかりました。 そのため、たとえば名古屋大学を含む複数の大学が、大手出版社が出しているジャーナルをまとめて読める「パッケージ契約」を解約し、研究者個々人が必要とするジャーナルだけを購入するように方向転換しています。2012年には、著名な研究者たちが学術出版最大手のエルゼビア社へのボイコット−−投稿しない、査読しない、編集協力しない−−を呼びかけたことが話題になりました。 一方、読者を定期購読会員に限定することを基本とする伝統的なジャーナルとは別に、「オープンアクセス・ジャーナル(open-access journals)」といって、インターネット上で誰でも閲覧ができるジャーナルも激増しています。このようなジャーナルには、掲載されれば多くの人に読んでもらえるという魅力があります。しかしその反面、掲載時に、出版費(publication fee)またはAPC (article processing charge)と呼ばれる手数料を投稿者へ課すこともありますので要注意です。これらの費用の額は雑誌によってかなり違いますが、たとえばSpringer(シュプリンガー)社では3000ドル、『分子システム生物学(Molecular Systems Biology)』では3500ドル、BioMedCentralが出版するジャーナルでは1600ドルから1800ドル程度という数値が出ています。 また、『大気化学・物理学雑誌(Journal of…

カバーレターの長さについて

すばらしいカバーレターを書いても論文がジャーナルに掲載されるとは限りませんが、悪いカバーレターを書いたためにすぐに却下されることはあります。カバーレターの内容については、以前「論文の原稿に添えるカバーレターの書き方」で少しお話ししました。また、“manuscript cover letter”というキーワードを使ってインターネット検索をすれば、サンプルがいくつも見つかるはずです。 しかしながら、内容もさることながら大切なことはダラダラと書かずに、簡潔に1枚にまとめることです。2枚目の半分を過ぎてしまったら書き過ぎです。それでも研究が複雑で、簡単な説明だけでも1枚を超えてしまう場合はどうしたらいいのでしょうか? ここでちょっと裏技を紹介させていただきます。 1. 余白を狭くする 最初に日付を書き、最後にサインをするというアメリカのカバーレターのフォーマットでは、用紙の上下の余白が多少狭くなってもあまり不自然に感じられません。余白は通常、上下左右1インチ(2.54センチ)といわれていますが、上下の余白を0.7インチ(1.78センチ)に変えてみてください。それでも1枚に収まらない場合は、左右の余白を0.8インチ(2.03センチ)にしてみましょう。上下左右ともこれ以上狭くなると不自然に見えますので注意してください。 2. 文字を小さくする 文字の大きさは通常の12ポイントですが、これを11.5ポイントに変えてみてください。最小で11ポイントまで小さくしても大丈夫でしょう。 3. 一行ずつ確認する 行末に“accomplishments”のような長い言葉が来ると、その行に入りきれずに、次の行に押し出されてしまうことがあります。行末にかなりの余白ができますので、一目で見つけることができるでしょう。このような場合は、該当の行頭から問題の言葉までを選択し、文字間をほんの少し縮めてみてください。 最悪の場合、カバーレター全体の文字間を縮めることも可能ですが、これはかなり目立ちますし、目の悪い編集者には「読みづらい」という悪い印象を与えますのであまりお勧めできません。 4.…

論文執筆で泣かないために―英語表記の注意

研究者にとって自分の論文が学術雑誌(ジャーナル)に掲載・出版されることは、意義があるだけでなく、自信につながることです。だからこそ、せっかく書いた論文が、英語表記の間違いで却下(リジェクト)されるのは避けたいところです。今回は、リジェクトされないために注意すべき、よくある英語表記の間違いをご紹介します。 はじめに、論文を執筆する際の注意点を確認しておきましょう。以下の3点はいずれも怠るとリジェクトにつながりかねない重要事項です。 ・不適切な文献選び 研究者の中には、論文作成においてとても大切な文献選びに無頓着な人がいます。原稿を執筆する際には、先行研究や既存知識についてしっかりと調べて考察することが不可欠であり、その際に、古い、いわば鮮度の落ちた文献を引用した論文は、容赦なくリジェクトされかねません。 ・研究に適した方法論の採用 研究を行うにあたり、しっかりとした研究方法が明示され、それをふまえた分析が行われることが必須です。データ分析が複雑になればなるほど、間違いのリスクも高まりますが、不適切なデータは原稿の信頼性を損ねるので注意が必要です。 ・盗用・剽窃 盗用・剽窃は、学術界において非常に問題視されている不正行為です。既存の文献を逐語的にコピー&ペーストしたような文章が含まれている場合は盗用・剽窃とみなされます。盗用・剽窃と判断された場合、該当の原稿は即リジェクトされるのがほとんどです。どのような場合に盗用・剽窃となるのかをしっかり理解しておきましょう。 では次に、よくある英語表記の間違いを説明します。 英語表記の間違い   スペルミス スペルミスのある原稿は、印象がよくないものです。場合によっては、そのスペルミスのせいで文章の意味そのものが変わってきてしまうこともあるので要注意です。しっかり校正をして、ミスを防ぎましょう。 コロン ある事柄を列挙する場合は、コロンで文を区切ってから、その後に続ける形で記します。…

論文の原稿に適したファイル形式とは?

Adobe Acrobat, Microsoft, Excel, Microsoft Word, Microsoft Works, Notepad, Portable Document Format, Rich Text Format,…

プロシーディングと学術雑誌-その違いは

学術界では“Publish or Perish(出版か死か)”という言葉がよく聞かれます。これは、論文が学術雑誌(ジャーナル)に掲載されないと、研究実績として認められないので、研究を続けるため、つまり研究者であり続けるためにはよい論文を書いて出版しなければならない――ということです。特に、研究者はインパクトの高い査読付きの学術雑誌に論文を掲載することを目指し、日々の努力を重ねています。研究が評価されれば、昇進、終身在職権、資金調達も夢ではなくなるからです。 論文投稿と並んで研究成果を広める場となるのが学会(学術会議)です。プレゼン発表だけでなく、配布される プロシーディング (講演要旨集)に論文を掲載するという方法で研究を広めることができます。プロシーディングは、学会が出版する学術雑誌ではなく、あくまでもその会議で発表する予定原稿をまとめたものです。そのため、掲載への査読がない、またはあってもそれほど(査読付き学術ジャーナルほど)厳しくないことが多いので、査読付き論文とは別の出版物として扱われます。では、プロシーディングに論文を掲載することは、研究者にとってどのような意味を持つのでしょうか。 ■ 学会発表とプロシーディング 研究者が学会で発表を行うには、学会主催者に事前に論文などを提出し、研究発表として、また該当分野の研究者間の情報交換として価すると承認されなければなりません。学会での発表方法としては、ポスター発表、口頭発表(プレゼン)、またはワークショップ形式のディスカッションなどがあります。これらの発表方法は会議によってさまざまです。そして、提出された論文などを学会主催者側の編集チームが確認を行った後に、会議論文をまとめて冊子にしたものがプロシーディングです。学会開催前後に参加者や希望者に配布されます。 分野や学会によっては、学会後に査読付きのプロシーディングを書籍やジャーナルとして刊行することもあるようです。また、発表者自身が、学会後にプロシーディング用に執筆した原稿(proceedings paper)/会議論文(conference paper)を原著論文(full paper)にまとめ、学術ジャーナルに投稿することも可能です。ただ、その際には必要な許可を確認しておくことが重要です。前述のようにプロシーディングが学会によって学術ジャーナルの形で刊行される場合や、プロシーディングとまったく同じ内容で学術雑誌に投稿した場合には二重投稿となる危険がありますので注意しましょう。 プロシーディングに採録する会議論文に査読を行っている学会もありますが、査読システムや採択率は学会によって多様です。査読の有無は学会への申込み時点で確認できるはずですが、いずれの場合でも会議論文を書くときには、以下のことに気をつけましょう。 会議論文を書くときの注意 ・表題:表題は、論文が何に重点を置いて書かれたものかを明確に伝え、かつ人の興味を引くものにする。…

研究論文における結果と考察

研究成果を伝えるための研究論文は、序論(問題提起・仮説・目的)・方法・結果・考察・結論で構成されることが一般的です。学術論文の代表的な構成とされる「IMRAD形式」では、序論・方法・結果・考察となっていますが、論文を書くためには基本的な枠組みを理解しておくことが重要です。その上で、投稿する学術雑誌(ジャーナル)によっては書式に多少の差があるので、論文を執筆する前に投稿先の投稿規程を確認しましょう。中には、結果と考察を1つのセクションで書くよう指示しているものもありますが、今回は、結果と考察を分けて書く方法を見てみます。 ■ 「結果」と「考察」の違いと書き方 まず、「結果」は実験などの結果または観察記録などであるのに対し、「考察」は結果に基づく分析や議論です。結果は、淡々と事実を述べればよいのに対し、考察は論理的な組み立てが必要です。そのため論文の評価では、考察が重要視される傾向にあります。結果と考察をまとめるか、分けて書くかは投稿規程に順ずるべきですが、どちらの形式にも長所・短所があります。結果と考察をまとめた場合、結果に応じた考察が続けて書かれるため、読者は流れをつかみやすくなります。結果と考察を分けた場合、考察が連続的に書かれるので読者は研究全体を俯瞰し、把握しやすくなる反面、何度も考察に関連する結果の箇所に戻って読み直さなければならないかもしれません。結果と考察の書き方としては、いずれも間違いではありません。 ここでは、結果と考察を2つに分けて書くときのチェックポイントを並べてみます。 ■ 結果と考察を効果的に分けるために 結果と考察を分ける場合には、以下のことに注意します。 1.結果には、実験の結果、データを提示することに徹する。 2.結果の説明は、考察に記す。 3.結果で提示した情報を考察で繰り返さない。 結果は簡潔に伝える 結果は、論文の要であり、実験の結果あるいはデータを簡潔に示す部分です。 結果に書くべきこと 1.重要な研究結果…

目指せ!効率的なタイムマネジメント

1日24時間。誰もが限られた時間をいかに効率的に使うかに頭を悩ませていることでしょう。かのベストセラー『7つの習慣』(1996年、スティーブン・R・コヴィー、キングベアー出版)でも「緊急度」と「重要度」を指標としたタイムマネジメントの重要性が提唱されています。そして、タイムマネジメントが重要なのは研究者も同じ。雇用契約や研究助成金の支給期間に限りがある場合には一層、時間は貴重です。今回は、限られた時間をいかに有効に使うか、効率的なタイムマネジメントについて考えてみます。 ■ タイムマネジメントは何故必要か 研究者は、実験、レポート作成、論文執筆、出版、助成金申請といった研究関連業務に加え、学生や後進への教育指導、さらに職員/教員としての事務作業といった異なるタスクをこなすことが求められます。諸業務をこなしながら、自分自身も研究者として成長し、成果を残さなければならない――このような状況で業務を遂行し、よい研究成果を出すためには、効率的なタイムマネジメントが不可欠です。タイムマネジメントがうまくできれば、生産性を向上させ、業務上の時間の無駄を最小限に留め、さらにはストレスの軽減にもつながり、結果としてより大きな研究の成功につながることが期待できます。 ■ 効率的タイムマネジメントの5つのポイント 緊急度と重要度。効率よく研究の結果を出すには、作業の優先付けが重要です。そして、成果が得られる(であろう)作業に時間と労力をつぎ込むことも必要です。では、そのためのタイムマネジメントで注意すべきポイントはどこでしょう。 ① 脳の働きに合わせたワークスケジュール 人によって最も生産性が高くなる時間は異なります。最近は「朝活」をする人も増えていますが、脳科学的に見ても朝は最も脳が効率よく働く「ゴールデンタイム」そうです。1日の時間帯によって脳の活性も違うので、脳科学を意識しつつ1日のワークスケジュールを考えるのもよいでしょう。集中できるサイクルに合わせた“to-do list”(すべきことのリスト)を作成しておくのも一案です。もうひとつ注意すべきは、集中力です。人間の集中力の持続時間には限りがありますので、適宜休憩を入れることで集中力を維持した方が効率はよいでしょう。 ② 中長期プランニング 研究を行う上で中長期のプランニングも大切です。実験を行う場合、実験計画を事前にしっかり立てて準備しておくことは、失敗を防ぎ、作業ロスを減らし、安全を確保する意味でも重要です。また、実験の結果をいつまでにどんな形で成果としてまとめ、発表するかまでプランニングしておくべきでしょう。学会参加申込みや学術ジャーナルへの投稿には、決まったスケジュールがあるものです。大枠を把握した上で、作業全体をプランニング・管理するようにします。 ③ スキマ時間を有効活用 作業の合間に違うことをすれば気分転換になるということもありますが、時間のムダ使いは避けたいところです。SNSなどの情報ツールは便利な反面、仕事が中断されがちです。一日のうちコミュニケーションに対処する時間をあらかじめ割り当ててしまうなどの工夫が必要でしょう。一度作業の流れが止められてしまうと、集中力を取り戻すのに30分程度が必要になるとも言われていますので、侮れません。実験の待ち時間や移動中などのスキマ時間をメールチェックなどに利用するのも一案です。ところで、朝一でメールをチェックしてから仕事を開始――まさにやりがちなことですが、先述の脳科学の話によれば、1日のうちで脳が一番冴えている「ゴールデンタイム」をメールチェックに使うのはもったいないそうです。この時間こそ、創造性を発揮する作業に適しているそうなので、自分の行動を見直してみてください。…

学術論文を書くときは句動詞に注意

動詞の後に副詞や前置詞などが付く 句動詞 を使いこなすのは難しいものです。英語などの会話では、2-3語から成る句動詞(phrasal verb)がよく使われますが、もとの動詞と違う意味になることも多い上、より広い意味で解釈されることもあるので、誤った意味に取られる可能性もあります。そのため、学術論文では句動詞より、単体動詞(single verb)を使うほうがよいとされているのです。 ■ 句動詞と単体動詞の違い 例えば、「carry」という単語は、「何かをある場所から別の場所に運ぶ」ことを意味します。そして、「out」という単語には、「ある場所から出て行く、どこかから一定の距離離れている、明らかになる、終わる」など、いくつかの意味があります。しかし、この2つがつながって「carry out」という句動詞になると、それは「実行する、成し遂げる」という、別の意味になります。また、句動詞になることで意味が広がったり強調されたりすることもあります。一方の単体動詞は限定的に意味で使われることから、誤解されるのを避けることができます。会話では、句動詞を上手に使いこなせたほうが、表現力がアップするとも言われますが、学術論文では、句動詞がインフォーマル(くだけた)な印象を与えるのに対し、単体動詞のほうがフォーマル(改まった)な印象を与えることも、論文で句動詞を避けて単体動詞で表現することが推奨される理由でしょう。多数の名言を残した第3代アメリカ合衆国大統領のトーマス・ジェファーソンが”The most valuable of all talents is that…