研究を推進する

ジャーナル編集部とのコミュニケーションマナー

あなたが論文をジャーナル投稿して、幸いにもジャーナルの査読者がその採択を決定したとしても、「後は掲載されるのを待つだけ」というわけではありません。あなたが書いた論文がそのままのかたちで掲載されることはまずないと言っていいでしょう。必ず査読者や編集者から何らかの加筆・修正を求められるはずです。また掲載料などについて、事務的な連絡も少なくありません。そのため研究者には、論文執筆だけでなく、メールなどでの連絡においても、英語力が求められます。 今回は、ジャーナル編集部との英語でのメールのやりとりのさいに気をつけることを考えてみたいと思います。「5つのP (Precise, Polite, Passive Aggressive, Punctual, Patience)」と覚えて、編集部との円滑なコミュニケーションに役立ててください。 Precise(正確に) 日本語では、ていねいに書こうとすればするほど婉曲表現を多用する傾向があります。そのため、日本人が英語でメールを書くと長くなりがちで、英語を母国語とする人にとっては、要点をつかみにくくなる傾向があります。編集部への質問、依頼、提案などは、端的にまとめましょう。とくに英語力に自信がない人は、だらだらと書くのではなく、用件を箇条書きにするのも1つの方法です。表現に自身がなければ、英語を母国語とする友人にネイティブチェックしてもらったり、大事な内容であれば英文校正会社に仕上げを依頼したりしてもいいかもしれません。 Polite(丁寧に) しかし、端的に書くことと、英語を簡単なものにすることは同意ではありませんので、注意が必要です。あくまでもプロとしての距離を保ったコミュニケーションを心がけてください。とくに、英語やアメリカ文化に多少慣れてきたと思ったときには、この点を常に注意する必要があります。というのも、英語でのコミュニケーションは、日本語に比べてカジュアルな印象があるため、日本人のなかには、英語に慣れてくるとその違いに過剰反応し、表現を異常に簡単なものに省略し、フレンドリーになる人が見られるからです。日本語ほどではないかもしれませんが、英語でも敬語はコミュニケーションを円滑に運ぶための大切な表現方法だということをお忘れなく。 Passive Aggressive(受動的で攻撃的) メールを端的にかつ丁寧な文で仕上げるコツの1つとしてあげられるのが、「Passive Aggressiveな表現を削除する」ことです。「受動的で攻撃的(Passive…

データ利用可能性ステートメント(DAS)の重要性

公開された研究論文の根拠となっているデータの公開は、学術研究にとって不可欠なのか?そもそも、データは公開されるべきなのか?論文のオンライン化が広がるにつれ、研究データのオープン化に関する議論も活発化しています。知識の共有を促進することにより新たな知見を生み出し、科学の発展に大いに寄与することができる――との考え方を背景に、学術界でもデータ共有と利用促進が進められており、Data Availability Statement(データ利用可能性ステートメント、以下DAS)が注目されています。今回は、このDASについてご紹介します。 データ利用可能性ステートメント(DAS)とは DASとは 公開された研究論文のオリジナルデータを著者以外がどのように入手および利用可能かを示すものです。ここでいうオリジナルデータには、生データや加工データも含まれ、また状況に応じてデータへのリンク情報や引用情報(識別番号など)も対象となります。 なぜ論文中にDASを記載する必要があるのか 著者がDASを論文中に記載することで、研究に使用したデータセットを著者以外も効率的に再利用・再分析することが可能になり、研究の再現性が高まり、ひいては研究分野の更なる発展へとつながっていくことが期待できます。 DASの掲載箇所 DASの掲載箇所は学術雑誌(ジャーナル)の書式にもよりますが、たいていは参考文献の前に記載されることが多いようです。 DAS情報の形式 著者にはデータの登録を促進し、利用者には再利用しやすいよう、DASによる情報公開はFAIR原則と呼ばれるデータ共有の基準に従って行われます。FAIRとは、Finable(見つけられる)、Accessible(アクセスできる)、Interoperable(相互運用できる)、Reusable(再利用できる)の頭文字を取ったもので、データ公開の実施方法を示しています。基本的に、研究データは誰もが簡単にダウンロードして再利用・再分析しやすいように管理・共有されていることが求められており、DASは以下のような形式で表すことができます。 ・要請に応じてデータを提供する 倫理的な理由から、公開に適さないデータは、要請に応じてのみ利用可能とすることができます。例えば、被験者から入手した情報をすべて開示することができなくても、病院などの第三者から入手した情報によっては開示できるものもあるような場合、情報提供が可能な人について情報開示が制限される理由と詳細を明記する必要があります。 ・データを補足文書や論文中に記載する データを補足文書あるいは論文中に記載します。ジャーナルでは、補足文書にデータをまとめるのが一般的です。 ・データを公開リポジトリに登録する…

科学における仮説を立てるときの注意

科学における仮説とは、研究における「問い(命題)」を設定し、予想される「結論」を記述するものです。仮説の設定は、科学実験の基盤をなす研究手法に組込まれているものなので、注意深く厳密に行う必要があります。仮説に、たとえ小さくとも不備な点や欠陥があると、実験に悪い影響が生じかねません。よって、堅固で検証可能な仮説を立てることが重要です。検証可能な仮説とは、実験によってその仮説が正しいか間違っているかを証明することができることを意味します。 検証可能な仮説の重要性 科学的な方法に基づいて、実験を計画して実行するには、検証可能な仮説が必要です。科学的な仮説が検証可能であると判断するためには、次のような基準を満たしていることが不可欠です。 1. 仮説が正しいことが証明される可能性があること(検証可能であること)。 2. 仮説が誤りであることが証明される可能性があること(反証可能であること)。 3. 仮説の結論に再現性があること。 こうした基準を満たしていなければ、仮説とその結論は曖昧なものとなってしまい、実験の結果としても、なんら有意義なことを立証も反証もできないことになってしまいます。 有効な仮説をどのように設定するか 検証可能な仮説を立てることは、簡単ではありません。科学的な実験の目的と、予測される結果について、明確に示すものであることが求められます。的確で説得力がある仮説を組み立てるために、考慮すべき重要なことがいくつかあります。 1. 答えを導こうとしている問題を定義する 仮説によって、実験の命題と注目点が明確に定義されている必要があります。…

アンケート調査を行うときの要点

ほとんどの調査研究では、データの分析が必要です。アンケート調査は、必要な情報を収集するために有効な方法です。例えば、薬物治療の効果を調べるための臨床研究や、人々がアレルギーにどのように対処しているかを知るための統計分析などに利用されます。こうしたアンケート調査によって新しい事象が見つかり、新規の研究に繋がり、ひいては新たな解決策が開発されることになるかもしれません。 アンケート調査を行うときに留意すべきこと 適切な科学的調査のためのアンケートを作成するには、次の点に留意することが必要です。 1. 調査のテーマと収集すべきデータの項目を明確にすること 2. 明瞭で、一貫性を備えた調査様式を準備すること 3. 回答者に対する説明、依頼は明瞭かつ簡潔に行うこと 4. 質問は簡明な文書で記すこと 5. 質問および説明文に書き込む用語の定義は明確に示すこと こうした点を心がけることで、調査を円滑かつ回答におけるミスを少なく進めることができるでしょう。 アンケート調査の強みと弱み…

カバーレター

カバーレターとは論文を投稿する際、原稿に添えて編集者宛に書く手紙のことです。カバーレターは編集者にその研究を紹介する役割を果たし、研究の重要性やそのジャーナルへの適合性を訴える機会となります。論文採用の成否に大きく影響を与えるものですので、軽い気持ちで書くべきものではなく、内容をよく考えたうえで、論文と同じくらい念入りに作成すべきです。

投稿規定、論文の様式

各学術ジャーナルには、それぞれ独自の 投稿規定 があります。大抵の場合、それらの規定はジャーナルのウェブページに「Instructions for Authors」、「Information for Authors」、「Instructions for Contributors」などのような表題で記載されています。論文を投稿する前には必ず一度確認してください。 通常は投稿規定の中に論文の書式についての指示があります。書式は分野によって大きく変わり、同じ専門分野の中でもジャーナル間に様式の多少の違いはあります。しかしそれでも、それぞれの分野の標準的な様式に従う場合が多いです。 以下のウェブサイトには主要な様式やスタイルのリストが記載され、役に立つウェブサイトへのリンクもさまざまな種類のものがあります。中にはそれぞれの様式のマニュアルへのリンクもあり、場合によっては無料でダウンロードできる、あるいはウェブ上でご覧になれるものもあります。 Know Which Style To…

論文の出版にかかる費用はいくら?

ジャーナルの出版には、膨大な時間と多大な経費がかかります。投稿されてきた論文が規程に沿ったものかを調べる事務的な作業から、査読者を探したり、複数の査読者の論評をまとめて著者へ連絡を取ったり、最終的にジャーナルへの掲載が決まれば、細かなフォーマットや誤字脱字を確認したり・・・。大学によっては、ジャーナルの編集にかかわることも職務の一環と見なし、編集長を任された教授に対して学内業務の削減などの援助を行っているところもあるようです。また、大学院生や学部の事務員が無償で手助けをしているケースも多く見られます。 それでも、印刷物を発行するジャーナルでは、印刷代だけでかなりの費用がかかります。そのため、多くのジャーナルが会員制を取ったり、会員以外の人への年間購読を斡旋したり、特定号のバラ売りしたりするなど、その経費を賄おうと必死です。このようなジャーナルの利点は、投稿する研究者へ掲載費を請求することが少ないということでしょう。しかしその反面、せっかく掲載されてもジャーナルの定期購読者(学会誌であれば学会員)以外には読まれる機会が少ないという弱点があります。 そのうえで昨今ではジャーナルの購読料が高騰しています。『Library Journal』の調査では、どの分野でもジャーナルの購読料は2013年から2014年にかけて6〜7%値上げされています。また日本の大学の図書館では、2004年から2012年にかけて電子ジャーナルの購入費が1000万円弱から3000万円近くへと激増していることが文部科学省の調査でわかりました。 そのため、たとえば名古屋大学を含む複数の大学が、大手出版社が出しているジャーナルをまとめて読める「パッケージ契約」を解約し、研究者個々人が必要とするジャーナルだけを購入するように方向転換しています。2012年には、著名な研究者たちが学術出版最大手のエルゼビア社へのボイコット−−投稿しない、査読しない、編集協力しない−−を呼びかけたことが話題になりました。 一方、読者を定期購読会員に限定することを基本とする伝統的なジャーナルとは別に、「オープンアクセス・ジャーナル(open-access journals)」といって、インターネット上で誰でも閲覧ができるジャーナルも激増しています。このようなジャーナルには、掲載されれば多くの人に読んでもらえるという魅力があります。しかしその反面、掲載時に、出版費(publication fee)またはAPC (article processing charge)と呼ばれる手数料を投稿者へ課すこともありますので要注意です。これらの費用の額は雑誌によってかなり違いますが、たとえばSpringer(シュプリンガー)社では3000ドル、『分子システム生物学(Molecular Systems Biology)』では3500ドル、BioMedCentralが出版するジャーナルでは1600ドルから1800ドル程度という数値が出ています。 また、『大気化学・物理学雑誌(Journal of…

カバーレターの長さについて

すばらしいカバーレターを書いても論文がジャーナルに掲載されるとは限りませんが、悪いカバーレターを書いたためにすぐに却下されることはあります。カバーレターの内容については、以前「論文の原稿に添えるカバーレターの書き方」で少しお話ししました。また、“manuscript cover letter”というキーワードを使ってインターネット検索をすれば、サンプルがいくつも見つかるはずです。 しかしながら、内容もさることながら大切なことはダラダラと書かずに、簡潔に1枚にまとめることです。2枚目の半分を過ぎてしまったら書き過ぎです。それでも研究が複雑で、簡単な説明だけでも1枚を超えてしまう場合はどうしたらいいのでしょうか? ここでちょっと裏技を紹介させていただきます。 1. 余白を狭くする 最初に日付を書き、最後にサインをするというアメリカのカバーレターのフォーマットでは、用紙の上下の余白が多少狭くなってもあまり不自然に感じられません。余白は通常、上下左右1インチ(2.54センチ)といわれていますが、上下の余白を0.7インチ(1.78センチ)に変えてみてください。それでも1枚に収まらない場合は、左右の余白を0.8インチ(2.03センチ)にしてみましょう。上下左右ともこれ以上狭くなると不自然に見えますので注意してください。 2. 文字を小さくする 文字の大きさは通常の12ポイントですが、これを11.5ポイントに変えてみてください。最小で11ポイントまで小さくしても大丈夫でしょう。 3. 一行ずつ確認する 行末に“accomplishments”のような長い言葉が来ると、その行に入りきれずに、次の行に押し出されてしまうことがあります。行末にかなりの余白ができますので、一目で見つけることができるでしょう。このような場合は、該当の行頭から問題の言葉までを選択し、文字間をほんの少し縮めてみてください。 最悪の場合、カバーレター全体の文字間を縮めることも可能ですが、これはかなり目立ちますし、目の悪い編集者には「読みづらい」という悪い印象を与えますのであまりお勧めできません。 4.…

論文執筆で泣かないために―英語表記の注意

研究者にとって自分の論文が学術雑誌(ジャーナル)に掲載・出版されることは、意義があるだけでなく、自信につながることです。だからこそ、せっかく書いた論文が、英語表記の間違いで却下(リジェクト)されるのは避けたいところです。今回は、リジェクトされないために注意すべき、よくある英語表記の間違いをご紹介します。 はじめに、論文を執筆する際の注意点を確認しておきましょう。以下の3点はいずれも怠るとリジェクトにつながりかねない重要事項です。 ・不適切な文献選び 研究者の中には、論文作成においてとても大切な文献選びに無頓着な人がいます。原稿を執筆する際には、先行研究や既存知識についてしっかりと調べて考察することが不可欠であり、その際に、古い、いわば鮮度の落ちた文献を引用した論文は、容赦なくリジェクトされかねません。 ・研究に適した方法論の採用 研究を行うにあたり、しっかりとした研究方法が明示され、それをふまえた分析が行われることが必須です。データ分析が複雑になればなるほど、間違いのリスクも高まりますが、不適切なデータは原稿の信頼性を損ねるので注意が必要です。 ・盗用・剽窃 盗用・剽窃は、学術界において非常に問題視されている不正行為です。既存の文献を逐語的にコピー&ペーストしたような文章が含まれている場合は盗用・剽窃とみなされます。盗用・剽窃と判断された場合、該当の原稿は即リジェクトされるのがほとんどです。どのような場合に盗用・剽窃となるのかをしっかり理解しておきましょう。 では次に、よくある英語表記の間違いを説明します。 英語表記の間違い   スペルミス スペルミスのある原稿は、印象がよくないものです。場合によっては、そのスペルミスのせいで文章の意味そのものが変わってきてしまうこともあるので要注意です。しっかり校正をして、ミスを防ぎましょう。 コロン ある事柄を列挙する場合は、コロンで文を区切ってから、その後に続ける形で記します。…

論文の原稿に適したファイル形式とは?

Adobe Acrobat, Microsoft, Excel, Microsoft Word, Microsoft Works, Notepad, Portable Document Format, Rich Text Format,…