論文投稿の基礎知識

研究論文が却下される10の理由(1)

研究のデザインから投稿まで、寝る暇も惜しんで書き上げた論文。それが「残念ですが…」という型通りの手紙といっしょに却下されてしまうと、本当にガッカリしますね。でも、名誉挽回のチャンスはそのときにこそあります。研究自体に欠陥があったのか、それとも発表の仕方に問題があったのか? それがわかれば、次の投稿では採択される可能性を高めることができます。 本コーナーでは、これから4回に分けて論文が却下される10の理由を紹介します。論文の出版をあきらめる前に、もう一度見直してみてください。 1. ジャーナルの投稿規程を確認しましたか? 論文を投稿するさい、郵便を使う場合でもメールを使う場合でも、ほとんどのジャーナルには独自の(長い)投稿規程があります。「研究者の名前は論文から削除し、他の紙に書いて添付してください」とか「メールのタイトル欄に研究者の名前を書いてください」など、論文の質にはまったく関係のないルールも少なくありません。しかしながら、これらのルールを守らないと、論文審査以前にリジェクトされることが多々あります。 2. 誤字や脱字はありませんか? 毎日何十もの論文が送られてくる世界的なトップジャーナルの編集長によれば、投稿時の注意点として、「アブストラクト(要約)に一字でも誤字脱字があったら、 査読者 にまわさないで却下する」とのことです。 誤字脱字は本文だけの問題ではありません。他のジャーナル編集者は「アブストラクトを読む前に表組やグラフを見て、少しでもおかしかったら査読者へまわさない」といいます。 誤字脱字や数字の写し間違いがないか、再度確認しましょう。 3. タイトルに魅力がないのでは? 「読んでみたい!」と思わせるのもタイトルならば、「つまらなそう…」と思わせるのもタイトルです。…

盗用 を防止するための編集者の役割

第2言語としての英語で執筆する論文著者は、英文校正者を雇う場合がよくあります。そうした論文を担当する編集者(エディター)や英文校正者がよく体験する問題として、こうした論文著者は他人が発表した論文から文章を抜き出して、それをそのまま自分の論文に取り込んでしまうケースがあります。こうした第2言語としての英語で論文を書く著者たちが、なぜ盗用をしてしまうのか? それについては、MacDonnell が優れた概論をまとめています(参考資料1)。西側諸国とそれ以外の諸国では文化的な違いがあることは明らかで、英語を第2言語として書いている著者の多くは、言葉を少し拝借しても、大した問題とは考えていないのではないか、という指摘もあります(参考資料2)。 それがまさしく証明されてしまったのが、2014年に発覚したSTAP細胞の研究不正事件でした。『ネイチャー』で発表されたその論文の一部には、海外の研究者が書いた論文とそっくりの文章がありました。また、その研究者が大学院時代に書いた博士論文には、NIH(米国立衛生研究所)のウェブサイトをそのままコピー&ペースト−−いわゆるコピペ−−した部分がきわめて多くあることが発覚しました。後者は大学の調査委員会によって研究不正(盗用)とみなされました。 出版倫理委員会(Committee on Publication Ethics)は、この問題について突っ込んで論じた文書を発表しています(参考資料3)。 盗用を招く要因については、ここでは詳しく論じません。むしろ、編集者が盗用を発見するにはどうすればよいのか、また盗用を発見したら、どうすればよいのか? ここではそれを以下で論じます。 (1)盗用を発見するには? 英語を第1言語としない著者が書いた英語であれば、どうしても英語の文法面での誤りは多数あります。したがって編集者は、そうした論文の中のある箇所だけが英語としてはよくできており、その他の箇所の英語に誤りが多ければ、そのよく書けている箇所が盗用ではないかと疑うことができます。さらに編集者は、論文の中からランダムにセンテンスを選んでGoogleで検索し、どこかからのコピー&ペーストではないかと探ることもできます。さらに論文の著者があげている引用文献を調べることによっても、テキストの複製がないか確認することができます。 また、盗用をチェックするための各種ソフトウェアやウェブサービスもあります(参考資料4)。よく知られたものとしては、iThenticate や eTBLAST といったものがあります。前述のSTAP細胞の問題で、当該の研究者が書いた博士論文の盗用は、「difff(デュフ)」というテキスト比較ツールで明らかにされました。 (2)著者とていねいにやり取りを行うこと こうして盗用を発見した場合、次は、そのことをその論文の著者に伝えることが大切です。このさいには決して非難しないでください。たいていの論文著者はそれなりの業績を積んできた学者であり、たとえ盗用が行われていても、それが悪いことだと自覚していなければ、非難の口調で伝えられると、バカにされたように感じてしまいます。さらに、盗用がどこまで行われているかという範囲の問題によっても、編集者の取るべき行動は変わります。他人の著作から段落を丸ごとコピーしたような場合には、編集者はその盗用をした著者に敬意を払いながらも、その編集の仕事を断るべきです。このさいには、その盗用された段落がある原著の箇所を示し、該当する箇所の書き直しをまず求めてください。また、文をいくつかコピーしただけであれば、編集者が当該箇所をパラフレーズ(いい換え)して「修正」…

研究論文での盗用を未然に防ぐには?

現在、学術出版界における重大な問題となっており、研究論文撤回の大きな理由の1つとなっている“盗用”。2014年に日本で大きな騒動となった「STAP細胞事件」においても、問題となった論文の一部に別の論文からのコピー&ペーストが疑われたほか、当該の研究者が大学院生時代に書いた博士号でも大量の盗用が見つかったことが大問題になりました。すでに確立されているアイデアや数値に基づいて論文を書くことは大事なステップですが、盗用に陥らないように慎重に作業をしなければなりません。 世界では、論文の正当性を証明するさい、ある語句やアイデアの引用元を示すことが必要とされないケースが存在します。しかし、「引用」という形で論文の正しさを実証するやり方は、国際的な学術界の中ではいまや必要条件です。非ネイティブの研究者たちはそうした倫理的なルールの遵守に加え、英語による専門的な内容の説明が要求され、敷居はより高くなっています。論文の作成や投稿にデジタル技術が深くかかわる時代になったことも、盗用の問題に影響を及ぼしています。いまや研究者はインターネット上で容易に資料やデータにアクセスでき、それらの情報を簡単にコピー&ペーストできてしまう時代になっているのです。 研究者は盗用を他人事として捉えることなく、自分自身で大切な情報を守らなければなりません。ここでは盗用を避けるために効果的なヒントをいくつかご紹介します。 1. 言い換え 参照資料から文章などをそのままコピー&ペーストしてはいけません。その代わり、著者自身の言葉で考えを言い換えるのです。正しく言い換えるためには参照資料の内容をあらかじめよく理解しておくことが大切です。 たとえば以下のサイトで、よい言い換えの例を参照することができますので、参考にしてください。 Successful vs. unsuccessful paraphrases 2. 引用符 別の論文から文章をそのまま引用していることを示すためには、引用符を使用します。引用箇所は、引用元の文章中で表記されていた形とまったく同じ形で表記されなければなりません。 3.…