論文の盗用・剽窃を避けるコツ-後編
本記事の前編で、盗用・剽窃の定義や、他人の文献を引用する際のコツをご紹介しました。しかし、研究者が注意しなければならない盗用・剽窃は、単なる文字のコピーに限りません。後編では、盗用・剽窃と捉えられかねない、直接引用と間接引用、パッチライティングについて見てみます。 ■ これも盗用・剽窃?-直接引用と間接引用 他人の文章を、それが他人の文章であることを示すことなく書き写すことさえしなければ問題にならないと思いがちですが、盗用・剽窃とは「テキスト」のコピーだけではありません。他人の発想や考え方、データをコピーすることも含まれます。そもそも文章とは発想や考えをまとめたものであるため、その「考え」自体を真似たり、それを記した文章を適切に引用することなく自分の文章に書き写したりすることは、許されません。 では文章や「考え」を引用するにあたって取るべき適切な対応とは、どのようなものでしょうか。引用の仕方である「直接引用」と「間接引用」のそれぞれで見てみましょう。 直接引用 直接引用とは、他人の文章を自分の論文中に、該当文章が引用であることが明確になるように引用符を付けて「原文どおりに」再現することです。引用により定義付けをしたり、明確化させたり、あるいは主張を裏付けたりする場合に有効です。 以下の例文のカッコの中の文章が、他人の文章から引用した部分です。 象は、地上で一番大きな哺乳類で、体重は8トンぐらいあります。象は、「巨大な体と、大きな耳と、長い鼻を持っていて、その鼻で、手のように物を掴んだり、ホルンのように警笛を鳴らしたり、腕のように上げて挨拶をしたり、ホースにして水を飲んだり、シャワーを浴びたりします。」(出典:https://www.worldwildlife.org/species/elephant) この引用部分は、象の外見を言葉で説明したものです。視覚的イメージを維持したまま書き換えるのは困難なので、カッコを付けて示すとともに、出典を書き添えることによって、外部からの引用であることを明確にしています。英文の場合はカッコの代わりに引用符(“”)を使って外部からの引用であることを示します。 間接引用 間接引用(言葉の書き換え)とは、他人が書いた文章を自分の言葉に書き換えて記述することです。言葉を置き換えるのだから盗用・剽窃にはあたらないと考えがちですが、直接引用と同様に、書き換えた場合も出典元を明示しなければなりません。また、元の文章の意味するところ、基本的な考え方を変えないように注意する必要があります。 例えば、以下のような表現です。 象は、地上で一番大きな哺乳類で、体重は8トンぐらいあります。その大きくて、ひらひらした耳は、体を冷やしたり、虫をよけたりするのに役立ちます。頭から地面まで伸びた長い鼻は、道具として使われるほか、水を飲んだり、シャワーを浴びたりするのに使われます。(参照:https://www.worldwildlife.org/species/elephant) ここでは、情報が別の言葉に書き換えられていますが、2つの例文を比較すると直接引用の文のほうが、象の描写がより明確に表現されていることがわかります。 これらの引用方法は一長一短です。直接引用は、考えを説明したり、明確にしたりするのに有効ですが、頻出すると、文章の独自性が薄れてしまいます。一方の間接引用は便利ですが、うまく書き換えなければ明確に内容を伝えることができません。間接引用をする際には、引用文の背景にあるメッセージをしっかりつかみ、引用文を参照せずに書き換え文を作ってみて、元文と書き換えた文の意味が同じ内容となっているか読み比べてみる――という手順を経ることで、よりわかりやすい文章となり、盗用・剽窃を防ぐことができるようになるでしょう。…