ワールドアカデミックニュース

米国大学が臨床試験の公表で法令違反

研究不正は研究者でなくとも見逃せない問題です。とくに臨床試験に関する不正は、患者の健康に直接的な影響を及ぼすので注目されますが、医薬品や治療法の評価にも大きく影響します。 臨床試験の結果の公表については、多くの国で議論されていますが、米国では臨床試験の結果は1年以内に公開しなければならないと法で定められています。同様に、欧州委員会もヨーロッパで行われる医薬品開発に関する臨床試験は、終了後12ヶ月以内にEU Clinical Trials Register(EUCTR)に結果を報告するよう義務付けています。臨床試験を実施する研究者は倫理的責任を有するにも関らず、臨床試験の結果が否定的な場合などに結果を公表しない傾向があることに対処するためですが、実際には多くの臨床試験の結果が報告されていないことが指摘されています。そして、今年3月に発表された報告書でも、米国の大学が支援した臨床試験の結果が、政府の定める公表期限を守っていないことが明らかになりました。 法令整備―FDAによる臨床試験の登録義務付けとHHSによる臨床試験情報開示規則 米国食品医薬品局(FDA)は、臨床試験の登録、有害事象や副作用情報、試験結果の登録を促すための法改正(FDAAA Section 801)を行い、臨床試験の登録を義務付けました。この法令に基づき、さらに詳細な規則を米国保健福祉省(HHS)が作成し、2016年9月16日には臨床試験結果の公表範囲を拡大する規則(42CFR Part11)を発行。この新規則は、米国国立衛生研究所(NIH)の運営する臨床試験情報のレジストリClinicalTrials.govに公開する臨床試験情報の公開範囲を拡大するもので、原則として臨床試験の完了から1年以内に結果情報を提供しなければならないとしています。これらの新規則は2017年1月18日から施行され、FDAへの事前登録や結果報告義務を順守しない場合には、最大1万USドルの罰金や研究資金の差し止めなどの罰則が課せられることも明記されています。これにより、以前は任意であった臨床試験の情報登録が義務付けられた上、医薬品の販売承認が得られなかったものも含め、あらゆる結果を登録することが求められることとなりました。公表義務を免れるのは、安全性に関するフェーズ1の臨床試験(少人数の健常者ボランティアを対象とする初期の試験)などで、ごく一部に限られています。 法令違反―公表されなかった試験結果 2019年3月、「米国大学における臨床試験の透明性(原題:Clinical trial transparency at…

Nature誌の一部論文 全文公開の試行プログラム

研究者向けのSNSであるResearchGateと学術出版社は、論文の著作権をめぐり対決してきましたが、その関係に動きが出始めています。 2019年3月1日、Springer Nature社が、2017年11月以降にNature誌に掲載された論文の中から一部を抜粋し、その全文をResearchGateに公開する試行プログラムを開始しました。研究者個人のプロフィールをResearchGateに公開するとともに、論文の閲覧・ダウンロードを可能にすることで、学術成果を露出させ、論文が読まれる確率を高めようとの試みでした。当初は3月7日までの期間限定でしたが、良好な結果を受け、7月11日にこの試行プログラムの延長を発表しました。延長期間となる第2フェーズでは、公開対象が広がり、ResearchGateで公開される記事の数が第1フェーズと比較して4倍となっています。より多くのResearchGateを利用する研究者がSpringer Natureのコンテンツにアクセスできるようになるだけでなく、著者にとっても自署の論文へのアクセスおよびダウンロードが増えるチャンスとなります。 ResearchGateと出版社の関係 ResearchGateは、原著論文の共有や質問・回答、協力者の募集などを可能にする学術研究者のネットワーク・プラットフォームです。2017年には国際STM出版社協会から著作権侵害の申し立てをされたこともあり、オープンアクセス化が進む中での動向が注視されてきました。通常、論文の著作権は出版社に帰属するため、著者が自分の研究成果であっても出版した論文をResearchGateのような研究者向けプラットフォームで共有することは許されていません。2017年10月には、米国化学会(ACS)とエルゼビアが、ResearchGateの法的責任を問うためにドイツの裁判所への訴訟を起こし、翌年4月18日には裁判が始まったと報じられています。さらに10月2日にはアメリカでも同様の提訴を行っています。このような動きがある中で、Springer NatureがResearchGateと協力して論文公開に取り組んでいることは、異例のアプローチとも言えます。状況に関するデータ収集の結果を踏まえて期間が延長されたことで、この試験的なプログラムが今後どのような影響をもたらすかが注目されています。 ResearchGateでの論文公開 試行プログラムが目指すもの Springer NatureとResearchGateは、学術研究成果を閲覧する際の障害を取り除き、アクセスを向上させることを目標に掲げており、この連携を「研究コミュニティをこれまで以上に支援していくための重要なステップ」と位置付けているようです。研究者にとっては、研究者間のネットワーク上に論文へのスムーズなアクセスが確保されることは大きなメリットであり、自身の論文の認知度が高まり、ダウンロード数が増えることは歓迎されるものでしょう。 第1フェーズの結果調査からは、両者の協力が研究者に好意的に受け入れられたこと、Nature誌の記事全文がResearchGateに追加されたことに満足と答えた利用者が90%を超えたことなど、非常に肯定的な結果が得られました。ResearchGateにとっては、プラットフォームに掲載される論文が増えたことで、学術成果へのアクセスを向上させるとの目標達成への一歩となり、利用者の満足も得られるものでした。Springer Natureにとっては、購読料の収集を逃しているとはいえ、研究者のプラットフォームにおける存在感を高めることには成功しています。発表した研究論文の発見しやすさを向上させ、学術研究を一層発展させる上で役立つ新たな方法を探求する出版社にとっては、研究者のプラットフォームとの論文共有は一つの回答になると考えられます。学術研究にとってよりよい環境を構築したいとする両者の思惑が、試行プログラムにうまく反映されていると言えそうです。 プログラム延長 第2フェーズ 試行プログラムの第2フェーズでは、共有するコンテンツを4倍に増やしつつ、アクセスの改善に向けたソリューションの検討を行うと記されています。また、科学研究や論文へのアクセス提供者としての図書館員が果たす役割を実証することにも焦点を当てるとしています。図書館や研究機関が購読契約していることで、研究者が論文や記事にアクセスできる場合には、そのことをResearchGate上で研究者に対して通知するという、積極的なアプローチの追加も予定されており、研究者にとっての利便性はますます向上しそうです。 オープンアクセスが加速する流れの中、出版社はどう新しビジネスモデルを構築していくのか、一方の研究者はどう対応していくのか、また両者はどのように折り合っていくのか――Springer…

過去最大の論文撤回が発生

投稿された研究論文に不正が発覚した場合など、すでに発表された論文であっても撤回されることがありますが、研究不正の撲滅に向けた取り組みが強化されるのに伴い、撤回される件数も増えてきました。そして、従来の事例を大きく上回る極めて大規模な論文撤回が発生しました。一体何が起きたのでしょう。 JFASにおける大規模撤回 査読付きオープンアクセス学術雑誌(ジャーナル)のJournal of Fundamental and Applied Science (JFAS)で、434本の論文が撤回されたのです。このジャーナルは、アルジェリアのエル・ウェッド大学(El-Oued University)科学技術学部が発行しているものです。 これまでの大規模撤回としては、シュプリンガー社が、2017年にがん研究を扱うオープンアクセスジャーナルTumor Biologyに掲載された107本の論文を、査読プロセスに不正が認められたことを理由に撤回した事例や、2016年に同誌で25本の論文が撤回された事例があります。(シュプリンガー社とTumor Biologyの契約は終了となり、現在はSAGE社が出版している。)2017年当時の107本は、ひとつのジャーナルが撤回した論文の数としては史上最多でしたが、今回の事例の434本は記録を大きく上回り過去最大となっています。 学術論文の撤回・訂正などを報告・分析する学術情報サイト「Retraction Watch」に今回の大規模撤回の経緯が記されています。2018年6月に引用文献データベース…

米の科学工学分野における女性・マイノリティ・障害者

日本にいると、女性・マイノリティ・障害者が、自分たちの能力を活かして活躍できる社会について深く考える機会は少ないかもしれません。最近では職場でのセクハラやパワハラ問題を以前より訴えやすくなっているようですが、安倍政権が成長戦略の柱のひとつに「女性の活躍推進」を掲げる一方で、女性に対する政治家のとんでもない失言がまかり通っています。最近では、6月に根本匠厚生労働大臣による「パンプス強制の容認」、その前は5月末の桜田義孝議員による「子どもを最低3人産むようにお願いしてもらいたい」発言――働く女性は、セクハラや育児・子育て、別姓使用のトラブルなどさまざまな課題に対応していかなければなりません。本当に女性の働きやすい環境が整うまでには、まだ時間がかかりそうです。そして障害者については、7月の参議院選挙で「れいわ新選組」から立候補した重度障害者の2人が当選し、議員となって初登院したことが大きな話題となりました。彼らが日本の障害者雇用に風穴を開けてくれるかもしれません。 では、女性や障害者、マイノリティの職業参画に対する他の国の状況はどのようになっているのでしょうか。今回は、米国における女性・マイノリティ・障害者の科学工学教育機関(大学/大学院)の在籍状況および雇用状況などを分析した報告書を紹介します。 科学工学分野の女性・マイノリティ・障害者報告書 3月28日、米国科学財団(NSF)傘下の米国科学工学統計センター (NCSES)は、女性・マイノリティ・ 障害者による科学工学教育及び職業への参加に関する調査結果をまとめた 報告書「2019年科学工学分野における女性・マイノリティ・障害者(原題:2019 Women, Minorities, and Persons with Disabilities in Science…

学術界における母親業を巡るジェンダー格差

学術界におけるジェンダー格差への対策が必要と叫ばれつつ、女性研究者に対する社会的障壁が取り除かれたとは言えない状況が続いています。 女性が博士号を習得するために懸命に勉強し、希望通りの研究員・教育職員としての職に就き、数年間勤務したところで子供を生む決心をしたとします。彼女は、出産・育児という大仕事と共に学術界のジェンダー格差という現実に直面することになるのです。 学術界においても家庭と仕事の両立は困難 一般企業に比べて学術界の職業環境は柔軟で堅苦しくないと思う人もいるでしょう。しかし、必ずしもそうとは言えません。60名ほどの女性科学者へのインタビューをまとめて2015年にオックスフォード大学出版から発刊された“Woman Scientists: Reflections ,Challenges, and Breaking Boundaries”の著者であるMagdolna Hargittaiは、この調査に協力した女性科学者はほぼ例外なく、それまでの人生で最大の問題として家庭と仕事のバランスをとることの難しさを挙げていると語っています。また、カリフォルニア大学デービス校で神経生物学の準教授を務めるRebecca Calisiは、Scientific AmericanのVoicesに寄稿した文章の中で、現在の学術界の制度がいかに育児をしながらキャリアを積もうとする女性研究者に不公平であるかを訴えています。成果が求められる研究者という職で、出産・育児のために研究の中断を余儀なくされるという状況は、予想以上に厳しいのです。 ジェンダー格差と母親業 ジェンダー格差とは男女間の社会的不平等ですが、数ある原因のひとつは、出産・育児といった母親業による負担が女性に偏っていることです。現在でも育児における伝統的な男女の役割分担が厳然として存続しているため、母親は仕事をせずに育児に専念すべきとの意見も根強く、キャリアを断念して子育てすることを期待されるのは、男性ではなく女性なのです。こうした社会的役割分担を受け入れようとすれば、母親業とキャリア追求の両立は難しくなります。…

STEM分野で顕著なジェンダー格差

Science(科学)、 Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとってSTEMと略称される分野での男女の格差(ジェンダー格差)の問題は広く知られているところです。1990年代初頭に比べると格差が縮小しているとの調査報告があるように、確かに以前よりはSTEM分野の学位を取得して同分野の職に就く女性の数は増加していると言われています。しかし、現実には厳しいジェンダー格差が依然として残っているようです。 STEM分野の女性比率 今でもSTEM分野を専攻したり、学位を取得したり、同分野の職業に就く女性の人数は、男性より低い傾向にあります。STEM分野で男性と同等、あるいは男性以上に優秀な女性もいますが、全体的な数で言えば少数派です。特に、物理学、コンピュータ科学、数学、工学の分野で人数比が顕著であり、米国におけるこれらの学科の学生数における女性の割合は20%程度に留まっています。日本でも同様です。文部科学省の平成30年度学校基本調査の公表数字によると、大学における女性学生の割合は、学部で45.1%、修士課程31.3%、博士課程33.6%と、それぞれ過去最高を更新。しかし、このうち理学と工学における女子学部生の割合は、理学27.8%、工学15%と非常に低くなっています。薬学が59.5%と健闘するものの、人文科学(65.3%)や教育(59.2%)との圧倒的な差は明らかです。 ジェンダー差別による影響 そもそもSTEM分野を専攻する女子学生数が少ないので、当然、大学卒業後に同分野で就職する女性の数も少なくなります。その上、米国のシンクタンクの調査によると、この分野で働く女性のうち多くがジェンダー差別を受けていると訴えています。男性が圧倒的優位な職場で、差別を経験した女性は78%に達し、セクシャルハラスメントを受けた女性も36%に及びます。 STEM分野におけるジェンダー差別の影響は広い範囲に及んでいます。スコットランド王立協会(Royal Institute of Scotland)がスコットランド青年アカデミー(Young Academy of Scotland)と共同で2012年から2018年にかけて実施した調査では、教育課程が進むにつれて女性がSTEM分野から離脱していく傾向が明確になり、それが産業界におけるSTEM分野の人材不足の大きな要因になっていること、ひいては経済発展の原動力であるイノベーションの足かせとなっていることなどが指摘されています。 経済的な影響だけではありません。ジェンダー差別による影響としてもう一つ重大なのは、負のループに陥ってしまうことです。STEM分野に女性が少ないため、後続の女子学生にとって自分の将来の模範となる同性のロールモデルが少ないことになります。また、STEM分野に女性が少ないことに人々が慣れっこになり、それが常態化してしまう結果、学術においても男女の役割が違うと考える社会ができ上がってしまいます。これでは不公正で不平等な社会です。 STEMにおける女性差別-ジェンダー格差の原因…

学術界の根深い男女格差

1940年代には、欧米では「天才」は男性に特有な性質だという考えが広くあり、女性は種々雑多な仕事をこなすことに向いていると思われていました。しかし、戦時下で女性が重要な役割を担うケースが増え、特に信号傍受や暗号解読の分野での活躍は大きなものがありました。性別に関らず個人の特質に合わせた活躍の場を与えるというInclusion(インクルージョン)を通じて優れた才能の参画を促すことが、連合国側の勝利の一因となったことを歴史は示しているのではないでしょうか。 インクルージョンとガラスの天井 「インクルージョン」は、直訳では「包括・包含」の意味ですが、「ダイバーシティ」を発展させた組織における人員構成の有り方を意味する言葉として使われるようになってきました。多様な文化や背景、個人的特質をもった人を組織に受け入れること指す「ダイバーシティ」をさらに進めて、受け入れた多様な人が支障なく活躍できるために「異なる社会文化、個人的特質などさまざまな要素から生じる暗黙的な排斥や区別を取り払い、誰もが対等な関係で関わり合い、社会や組織に参加する機会を提供することを目指す」取り組みです。15年ほど前から米国を中心に使われるようになりました。 しかし顧みると、戦時下のインクルージョンは一時的なものだったようです。現に、暗号解読や計算機の発展に貢献した女性たちに対する社会的評価は続かず、間もなく忘れさられてしまいました。第二次世界大戦の終結後、約60年を経て『The Inclusion Breakthrough』(Frederick. A.Miller他著、2002年)、『The Power of Inclusion』(Michael C. Hyter他著、2005年)が出版されるなど、インクルージョンが再び注目を集めています。それでも、女性は科学技術などの先端で活躍しないという思い込みが依然として根強く社会に蔓延していると思われます。こうした思い込みは、学術界、IT業界、金融界などに広く浸透しているようです。学術界では性差による偏見が大きな話題になっています。女性研究者の割合が増加していることは事実ですが、女性が組織の上位職やトップに就くことに繋がっていません。女性がトップの米国の研究関連の組織は、国立小児保健発達局(NICHD)、国立科学財団(NSF)、アメリカ科学振興協会(AAAS)など僅かです。いわゆる「ガラスの天井」があるようです。 日本の女性研究者のプレゼンス 日本でも同じ状況です。研究関連の主要組織に女性トップが見られないだけでなく、女性のノーベル賞受賞者は未だ出ていません。内閣府男女共同参画局の調査によると、研究者全体に占める女性研究者の割合は徐々に増えているものの、2017年3月時点では15.7%に留まっています。諸外国と見るとアイルランドの47.2%を筆頭に、英国38.6%、米国の33.4%などであり、日本は大幅に下回っています。同2017年の大学等などに所属する研究者に占める女性の割合をみると、薬学・看護などの分野では女性が半数以上を占める一方、工学分野は10.6%、理学分野は14.2%に留まっていると記されています。 2017年11月に内閣府が発表した別の調査『科学技術と社会に関する世論調査』によると、女性科学者の割合が少ない理由の上位3つとして、「出産や育児による研究の中断からの復職が難しいと思うから」(68.2%)、「科学者の職場では、女性は孤立・苦労しそうだから」(36.8%)、「女性は、理科、数学、科学などに向かない、というイメージがあるから」(25.1%)が挙げられています。これは、一般の人たちを対象にした調査であり、必ずしも現場の実情を認識した上での回答ではありませんが、こうした理解が家族、友人、教育現場などに浸透している社会では理系の研究者を目指す女性が増えにくいのも事実でしょう。…

指標に関するレポート『Profiles not Metrics』

クラリベイト・アナリティクスの学術情報部門である科学情報研究所(Institute of Scientific Information:ISI)は、2019年1月30日、『Global Research Report – Profiles, not Metrics』を発表しました。 研究の影響力(インパクト)を探ることは、学術出版社だけでなく研究者自身にとってもきわめて重要です。そこで、学術雑誌(ジャーナル)または出版された研究の影響力を計測するために、定量的な指標「メトリクス」が使われます。例えば、出版された論文が他の研究に引用された回数を計測するのはメトリクスのひとつです。学術出版および研究において広く利用されているメトリクスには、学術雑誌ベースと著者ベースの2種類があります。学術雑誌ベースのメトリクスは、掲載論文の平均引用回数を長年にわたって算出しているもので、学術界における学術雑誌の影響力を計測するのに役立ちます。一方、著者ベースのメトリクスは、学術界における著者の影響力を計測するものです。しかし、学術界はこれらのメトリクスが正しく利用されているか疑問を呈しており、今回発表されたレポートには、メトリクスについての考察が記されています。 『Profiles, not Metrics』が示すメトリクスの有効性 本レポートは、学術出版におけるメトリクスの有効性を取り上げると共に、学術雑誌または著者の学術界への影響力を測定することの短所について考察しています。…

オーサーシップにまでジェンダー格差が!?

学術雑誌(ジャーナル)には、 オーサーシップ についての倫理的な問題が常に存在しつづけており、特に論文著作者が適正に公表されない「不適切なオーサーシップ」問題が顕著です。さらに、女性研究者を著者に加えないなどの不平等も問題視されています。オーサーシップにまでジェンダー格差があるのでしょうか?

外国人留学生は日本の大学を救えるのか

日本人の少子化傾向対策として、積極的に外国人留学生の受け入れを行っている大学もあり、外国人留学生の数は確実に増加しています。独立行政法人日本学生支援機構による平成29年度外国人留学生在籍状況調査結果によれば、2018年5月1日現在の留学生数は298,980人で、前年比 31,938人(12.0%)増でした。この調査は、大学院、大学、短期大学などの高等教育機関および日本語教育機関を対象に行われたもので、特に増加率が高かったのは、短期大学(27.4%)。次に専修学校(専門課程)(14.8%)と日本語教育機関(14.5%)が続いています。高等教育機関の留学生数は、前年比増加数は20,517人(10.9%)となっており出身地域の割合ではアジアが突出しています(93.4%)。 留学生30万人計画 外国人留学生増加の背景には、政府の政策による後押しもあります。日本政府は2008年に「留学生30万人計画」を発表しました。これは、少子高齢化、人口減少の進む中で優秀な人材を呼び込み、日本の国際的な人材強化につなげることを目指し、留学生の数を2020年までに30万に増やそうとするものです。日本学生支援機構の調査結果を見ると、昨年5月時点で該当計画の政府目標はほぼ達成したことになりますが、留学生の実態が報道され、新たな社会問題と化しています。政府の政策が、教育政策というより産業政策だったのではないかとの指摘もあり、この計画が当初目指していたような「世界により開かれた国」にはなっていない現状が明らかとなっています。とにかく来る者を拒まずの受け入れを推奨した結果とも言われ、その割には留学生が学位取得後に日本で活躍できる仕組みが整っていないために、せっかく育てた人材が欧米などの他国に移って行ってしまうという事態に陥っています。 日本国内の大学で外国人留学生の受入数が多い大学 国際教養大学や国際基督教大学のように国際性を重視し、特殊なカリキュラムを有する特色のある大学以外にも、積極的に外国人留学生を受け入れている大学は多数あります。日本学生支援機構の外国人留学生受入数の多い大学を上位から並べると、早稲田大学(私立)5,412人、東京福祉大学(私立)5,133人、東京大学(国立)3,853人、日本経済大学(私立)3,348人、立命館アジア太平洋大学(私立)2,867人となっていました。 しかし、残念ながら外国人留学生を受け入れている大学のすべてが勉学に集中できる環境を提供しているとは言えないようです。大半の学生が授業料や渡航費を支払うためにアルバイト漬けになって授業に出ていない大学もあることが分かっています。受入数上位に入っている東京福祉大学は、2019年4月に大量の外国人研究生が行方不明になっている実態が明らかになったと報道されました。2016年度から昨年度までの3年間に1400人の行方が分からなくなっていたため、文部科学省の調査が進められています。日本に留学してくるために多額の借金を抱えている学生が授業に出る間もなくアルバイトに追われる反面、記者会見で元総長が「金儲け」のために留学生を大量に受け入れていたと告発したため、大学側の姿勢が問われる事態となっています。しかし、これは東京福祉大学だけの問題ではありません。他の地方大学でも授業料が払えないという経済的な理由により、留学生が卒業することなく退学・除籍となっています。気の毒なのは「留学生30万人計画」の影で食い物にされている留学生です。大学側の受け入れおよび管理体制が不十分であることも一因ですが、拙速な計画推進が社会問題を生み出したとも言えるのではないでしょうか。 一方で、適正な学習環境を提供し、世界的にもユニークな大学としての評価を獲得している大学もあります。立命館アジア太平洋大学(APU)には約6000名の学生がいますが、そのうちの20%弱が大学のある九州地区からの学生です。残りの80%を超える学生は、九州以外、国内外から大分県の当校に集まってきています。全学生に占める国際学生の割合は約50%。2018年5月時点では、世界88ヶ国・地域から学生が集まってきているそうです。このような取り組みが評価され、同校はイギリスの高等教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)による「THE世界大学ランキング日本版2018」の『国際性』では私大で1位、同じくイギリスの高等教育評価機関クアクアレリ・シモンズ社による「QS世界大学ランキング2018アジア地域編」でも『国際性』で100点満点を獲得しています。しかも、日本の大学でありながらAPUは英語と日本語を公用語としており、講義の多くは二言語で行われています。 日本の少子化が大学を揺るがす 少子化で学生が足らない―とはよく耳にするものの、どのぐらい深刻なのでしょうか。 日本の18歳人口は、第二次世界大戦後のベビーブーム世代が18歳となった1966年の249万人をピークに減少に転じ、2014年には118万人となりました。その後は119万から120万人と多少持ち直しましたが、2018年は118万人と再び減少傾向となり、2031年には100万人を割り込むことになるだろうと予測されています。この少子化傾向は高等教育機関に直接的な影響を及ぼします。進学率が上昇しても学生総数自体が少なくなっているため、選り好みしなければすべての若者が高等教育機関に入学できるほどの状況なのです。日本の大学生数は2018年の65万人から、2031年には48万人に減ると予測されています。学生数減少は授業料収益の減少に直結し、大学にとっては死活問題です。2014年には私大の約4割は定員割れを起こしており、地方の国公立大学は2018年以降に財政難が表面化してくると予想されます。これが大学の「2018年問題」です。進学率は既に頭打ち、定員割れの大学の増加、大学間の統廃合や廃校など、大学にとっては生き残りをかけた戦いです。私立大の中には、学生を集めるために首都圏郊外のキャンパスを、都心部に移す動きも活発化しています。また、文科省は、大学の経営支援策を検討しており、国立大学法人について複数の大学をグループ化して経営できるような法改正を検討している他、政府も地方大学振興に関する新たな交付金を予算計上するなどの策を講じています。とはいえ、18歳人口の減少が止められない以上、大学の統合・縮小には歯止めがかからないと見られています。 ところが、驚くことに大学の数は増えています。2017年時点での日本の大学数合計は780校。2016年に前年より減少したのを除けば、1950年代からひたすら増え続けてきました。780校の内訳は、国公立が176校で、私立が604校。先に述べたように18歳人口が減少すれば、当然国外から学生を連れてこなければ学生数は確保できません。大学にとってグローバル化を進めるのと平行して、外国人留学生を増やしていくことは不可欠なのです。 現役の学生達の多くは、上の世代と比べて外国人が珍しくない環境で育ってきています。しかも、完全にボーダーレスなインターネットが普及する中、今の学生と親世代では「国境」や「グローバル化」の意識に大きな隔たりがあることも想像できます。今後は、日本の大学に進学しながら多様な国からの留学生と席を並べ、国際的な環境で学ぶ学生が増えることでしょう。   こんな記事もどうぞ…