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コロナ禍で変わる論文検索方法や研究資金規模

新型コロナ感染症(COVID-19)感染拡大は、甚大な経済的影響を及ぼしていますが、その影響は経済にとどまりません。研究者も移動を含めたさまざまな研究活動に制限がかかっている上に、医薬研究関連の情報過多と誤情報の拡散という問題に直面することとなりました。世界中がCOVID-19という共通の話題に関心を寄せる中、関連する情報は、例え誤ったものであっても、従来のメディアやソーシャルメディアにより瞬く間に拡散されます。特に、ソーシャルメディアは拡散する情報の量とともに速度と範囲を大きく変えました。この情報過多の問題も含め、パンデミックによる研究者への影響をみてみます。 パンデミックが研究論文の読み方・検索の仕方に再考を促す COVID-19治療薬あるいはワクチンの開発に向け、関連する研究が急ピッチで進められています。従来であれば厳しい査読とアクセス制限を課す学術出版社も、COVID-19に関連する論文については査読の迅速化やオープンアクセスでの情報公開を進めるなどして情報の共有化を図っています。同時に、査読なしで公開するプレプリントへの投稿も増大。この結果、論文の洪水が引き起こされました。既に、6000本を超える論文が、査読なしのプレプリントに投稿されていますが、品質の確認は困難な状況です。そこで、研究者らは論文の読み方、論文の検索の仕方に工夫を凝らす必要に迫られることとなりました。 信頼できる論文を拾い出す方法のひとつは、筆者の一覧から見慣れた名前、信頼できる機関を検索して論文を探すというものです。ただし、検索結果を過度に信頼しすぎることのないように注意が必要です。斬新なアイデアよりも従来の考え方に基づくアイデアを好む傾向が、COVID-19に関連する論文の検索や評価におけるバイアスとなる可能性があるからです。COVID-19の重要な論文は、米国以外、アジアやヨーロッパ諸国から発信されていることも多く、例えばコロナウイルスの特性や広がり方についての重要な論文には、あまり知られていない中国の研究者から発信されたものもありました。また、パンデミックに関する需要な洞察は、国際的には知られていないスペインとイタリアの研究者から発せられていたとの事例もあります。 中国の大学による研究不正が複数公表されたことなどを鑑みると、認知度の低い研究者・研究機関から発信される情報の信頼性に不安があるのは否めません。しかし、研究不正は中国に限ったものではないので、研究者は発表されている論文を多面的に判断し、慎重に読む必要があります。 Academic librarians on open accessに投稿された記事によれば、プランS(Plan S)やAmeliCAといったオープンアクセスモデルの台頭に加え、コロナウイルス関連の論文のオープンアクセス化推進によって、オープンなデータの価値が一層高まると同時にアクセス可能な論文数が増加しました。それらの膨大な論文の中からどうやって自分が読みたい論文を見つけ出すか?そのためにはアブストラクト(要旨)を活用するのも有効です。アブストラクトとは論文の要約なので、該当論文の内容を判断するのに役立ちます。Web of Science、PubMedなどの学術論文データベースでは、アブストラクトの検索が可能ですし、全文へのアクセスを限定している学術出版社でも、アブストラクトには無料でアクセスできることが多いので、論文の概要を知ることができます。PubMedにはタイトルとアブストラクトから論文の比較を行う機能があり、類似の論文を見つけることができます。 また、bioRxivに投稿された分析「A scientometric…

電子ジャーナルプラットフォームIOPscience

IOPscienceとは、英国物理学会(Institute of Physics: IOP)の出版部門IOP Publishingが提供する学術雑誌(ジャーナル)のオンラインサービスで、IOP発行のジャーナルの検索や論文へのアクセスを可能にするプラットフォームです。今回は、物理学分野において重要な論文公開と出版を支えるIOPscienceについてまとめてみました。 論文の出版 研究論文を出版することが、研究者のキャリア形成で非常に大切なことは言うまでもありません。所属先から論文出版が必須とされている人もいれば、学術界に研究成果を知らしめるために出版するという人もいますし、自分の研究分野において専門家としての地位を確立するために出版するという人もいるでしょう。いずれにしても、研究成果を論文として出版するまでが「研究」であるとも言われるほど論文の出版は重要視されています。成果を発表してこそ、該当分野の研究を促進し、科学の発展に寄与することができるのです。研究者としてのキャリアを積むのであれば、できるだけ早くから論文の執筆にチャレンジしてみることをお勧めします。 とはいえ、論文発表はキャリアのためだけではありません。有名な物理学者、スティーブン・ホーキング博士の言葉に、研究を行うことの原動力は発見の喜びであると表したものがありますが、その喜びを他者と共有するためにも論文を出版することは意義深いことです。 「No one undertakes research in physics with…

研究支援エナゴ、大学・研究機関における研究および教育の未来に関する 世界規模のアンケート調査の結果を発表

[米国ニューヨーク州] 英文校正および研究支援サービスのエナゴは、このたび新型コロナウイルス(COVID-19)の流行を受けた、研究・高等教育の未来に関する包括的なアンケート調査を各国で実施しました。調査期間は、2020年5月から6月の約8週間で、欧州、アジア、南米、北米、中東、豪州/オセアニア、アフリカの38か国108大学が参加し、これまでで最も包括的な大学についての調査の一つとなりました。エナゴではこの数百万人単位の学生と数万人単位の研究者および教職員を対象とした広範囲にわたる調査を手始めに、一連の研究リスク評価調査を行う予定です。 調査報告のハイライト 大学による「ニューノーマル」への適応の中心的方策は、オンライン学習への移行と、実験やフィールドワークではなく論文執筆への注力でした。喫緊の課題であったオンライン学習への移行は28%の大学で順調に進んだものの、15%の大学では容易ではありませんでした。またほとんどの大学はすぐにオンライン環境に適応したものの、まだ移行を完遂できていない大学もありました。 なお、各国で厳しいロックダウン措置が取られましたが、研究活動自体がストップしたわけではありません。回答者の35%は研究成果発信の低下を報告し、26%は変化がなかったと回答しています。また61%の大学が現在進行中のコロナ危機の研究に積極的に取り組んでおり、大学は国際的な援助や協力よりも同じ地域内での外部の支援や協力を求める傾向にあります。 予算面では35%以上の大学が研究予算を削減され、26%が標準予算を維持しています。全体でいうと54%の大学が大幅な予算削減を行っておらず、これは評価されるべき結果だと思われます。 注目すべきは、48%の大学がすでに研究者・学生のためのeラーニングシステムを構築しており、36%が運用の初期段階にあるということです。半数以上(56%)の大学が、研究者の技能を向上させるための新しいソリューションを積極的に模索しており、これらの大学の大多数は、e ラーニングプラットフォームの導入に外部の支援を必要としています。現時点でeラーニングシステムの導入に向けて動いていない36%の大学も、今後、適切なプラットフォームを特定し導入するための支援を必要とすると考えられます。 AIベースのソリューションについては、41%の大学は今のところ運用に向けた具体的な動きは行っておらず、すでに広範に運用している大学は約25%にとどまりました。76%近くの大学がAIなどの技術を完全には実装していないことが明らかになりました。 今回の調査で判明したことは、2020年前半に大きな「パラダイムシフト」が起きたということです。具体的には、オンライン授業やeラーニングシステムへの移行が進んだこと、研究予算への影響が見られたこと、研究全体をとりまく不安感が高まっていること、新しい状況への適応が容易でない大学があることなどです。 現在の前例のない世界的災厄の中で希望を見出すとすれば、この広範囲にわたる変化が、大学における研究教育を、中長期的にみてダイナミックで進歩的に変革する可能性があるということです。 エナゴでは、今後も引き続き研究リスク評価調査を実施していく予定です。共同調査または調査協力に関するお問い合わせは、academy@enago.comまでご連絡ください。 報告書の全文は、以下のサイトよりダウンロードいただけます。https://www.enago.com/academy/global_survey_report_2020.htm 研究支援エナゴについて(www.enago.jp) エナゴは世界有数の学術研究支援サービスで、論文投稿支援サービスや英文校正サービスにより論文発表のサポートを行っています。契約を交わす科学者、研究者、翻訳者、ソフトウェア開発者、プロジェクトマネージャー、学術出版の専門家が全世界に3000人以上在籍し、その幅広い知識と経験によって広範な専門分野に対応しています。言語学、自然言語処理、AI、データ分析などについての知見と技術を活かし、お客様のニーズに合った各種校正校閲サービスや論文投稿支援サービス、そして高いインパクトファクターのジャーナルへの投稿をスムーズにする最新のAIツールを提供しています。

論文出版のスピードと信頼性は両立できるのか

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療および感染拡大抑制のため、関連する研究論文の公開が急加速で進んでいます。大手出版社も含めた多くの出版社や研究機関が情報公開に踏み切り、関連論文のオープンソース化が進むと同時にスピード化も促進され、従来の査読付き学術雑誌(ジャーナル)ではなくプレプリントサーバーへの投稿が急増しています。COVID-19に関する新しい情報をより迅速に得ることが重要であるとはいえ、膨大な量の情報処理に追われる、研究の信頼性が保障できないといった問題も生じています。いくつか挙げてみます。 成果を急ぐあまり研究の品質が軽視される、あるいは精度(正確性)が失われる可能性(信頼できる調査結果と品質が保障されないデータが混在する恐れ) 査読プロセスのスピード化に伴う学術雑誌(ジャーナル)出版の信頼性の低下 誤解あるいは誤った情報の拡散 良質・悪質問わず多数の論文が投稿されることで生じる物理的なオーバーフロー 科学の信頼性、再現性の問題の複雑化 研究スピードと発表の問題 従来、医学・薬学研究は、新しい治療薬やワクチン開発、治験などいずれの研究においても時間をかけて慎重に行われてきました。研究デザインの構築、被験者の選択と結果の分析、バイアスによる影響の検討などには多くの時間を要しますが、今、研究者は少しでも早く結果を出そうと研究を急いでいます。 学術ジャーナルに投稿された研究論文は、査読プロセス(そのプロセス自体の問題を指摘されることがあるとは言え)を経ることによって一定の品質が保証されていました。しかし、このパンデミック下でジャーナルも査読の迅速化を図っています。従来は数か月を要していた査読をスピードアップし、概ね2週間以内に出版しているのです。その結果、低品質な出版物が増えたとの指摘も出ています。さらにプレプリントでの発表増加が、これに拍車をかけています。プレプリントには、多くの研究者が自由にアクセスし、早期に新しい発見を共有することができるというメリットがある一方で、査読を経ていないことで研究の質が担保されないとのデメリットがあります。 もちろん、COVID-19の世界的感染拡大を一日も早く収束させるためには、良質な研究をできるだけ早急に公開することが重要です。しかし、急ぎすぎた研究、出版は有害な問題を引き起こす可能性も有しているのです。 期待に反してリスクを増加させることも 一時期、米トランプ大統領がCOVID-19の治療に有望だと売り込んだ抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンは米食品医薬局(FDA)の不足薬品リストに加えられるほど需要が拡大しました。自身も予防薬として飲んでいると発言して話題になっていたので耳にされた方もいると思います。しかし、この薬のCOVID-19への効果は未確認で、FDAは深刻な副作用があると警告しています。医学雑誌ランセットとニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)に掲載された論文には、ヒドロキシクロロキンはCOVID-19の治療に有効などころか、感染者の死亡リスクを高めると書かれていましたが、データを提供した会社の透明性に疑問が持たれ、調査の信頼性に疑問が持たれた結果、撤回されました。この論文に関する問題は査読で特定されなかったため、緊急時に大量に提出された論文に対する査読が甘くなってしまったのではとの指摘も出ました。 正確さとスピードのバランス COVID-19の研究者が研究論文の発表を急いでいるだけでなく、ジャーナルも査読プロセス迅速化を図っていることが、前述したような問題を生じさせる要因となっているのです。また、投稿された論文がメディアで「誤って」解釈されて世間の注目を集めてしまった例もあります。「コロナ陰謀論」を耳にしたことはありませんか?プレプリントリポジトリbioRxivに投稿された「新型コロナウイルスにHIVタンパク質に似たものが挿入」されているとの趣旨の論文は、コロナ陰謀論を裏付けるかのように拡散されましたが、論文にはそのようなことは書かれていませんでした。著者が撤回を表明した際に「HIVタンパク質類似のものが挿入」しているに過ぎず、「人為的な挿入」とは主張していないとコメントしています。論文に誤りがなくても、著者にそのような意図がなかったとしても、誤解されやすい表現が誤って伝達されるリスクがあるのです。 一方で、プレプリントと出版物で論文の捉えられ方に違いあることも確かです。出版された論文は、一般的に発表前に査読プロセスを経ていることから「正しい」と受け取られる傾向が高いのに対し、発表後に読者による精査を受けるプレプリントは慎重に受け取られる傾向があります。論文に問題があると指摘された際、撤回するまでの時間にも差があります。例えば、前述のヒドロキシクロロキンの論文は5月22日にランセットに掲載され、6月5日に撤回。bioRxivに掲載された論文の場合、1月31日に投稿され、2月2日に撤回されています。出版された論文の修正、撤回は簡単ではありません。出版社は、調査を行った上で、理想的には著者の合意の上で撤回を行います。一方のプレプリントサーバーは、更新版の投稿が簡単であるため、問題の迅速な解決を図れますし、研究上の問題が明らかな場合には該当論文を即削除することも可能です。…

「アフター・コロナ」の世界の女性の活躍に期待

新型コロナウイルス感染症の封じ込めに成功している国の女性リーダーの活躍が、ワシントン・ポストやForbesで取り上げられて話題となりました。確かに、新型コロナウイルス対策で一定の成果を挙げている国々、ドイツ、台湾、ニュージーランド、デンマーク、アイスランド、フィンランド、ノルウェーでは女性リーダーの活躍が目を引きます。 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、コロナ対策でも手腕を発揮し、欧州諸国ではいち早く検査の実施拡大を行い、医療崩壊を食い止めています。台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は、中国の武漢で正体不明の新型ウイルスが蔓延しているとの情報をつかむと早々に行動を開始。疫学者の陳建仁副総統と総統自身が抜擢したIT担当の唐鳳大臣とともに迅速な移動制限をかけ、日本でも紹介された「マスク配布システム」を含めた実用的なシステムを活用した対策を打ち出しました。ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、観光業への依存度が高い国にもかかわらず早い段階で国境を閉鎖し、感染者が確認されると全国的なロックダウン(都市封鎖)に踏み切りました。他国がコロナの「封じ込め」を目標にしたのに対して「根絶」を目標に掲げ、自分は専門家ではないからと断りながらも国民の不安を解消すべく、ライブ中継を行うなど明確なメッセージを発しました。デンマークのメッテ・フレデリクセン首相も、早い段階で国境を閉鎖、ロックダウンに踏み切りました。女性が指導者となっている北欧4カ国(デンマーク、アイスランド、フィンランド、ノルウェー)では4月後半には封じ込めの成果が出始め、コロナウイルスによる死者は他の欧州諸国と比べて少数で収まっています。もうひとつ印象深かったのは、カリブ海のオランダ領シント・マールテンの国家元首シルベリア・ヤコブス首相の「動かないで」というシンプルなメッセージです。シント・マールテンにはICUのベッドが2つしかないという危機的な状況下で発せられた単刀直入なメッセージは力強いものでした。また、日本の小池百合子東京都知事もコロナ対策で評価された女性リーダーと言えるでしょう。小池都知事が毎日ビデオ会見を行い、フリップを多用しつつ明確なメッセージを発信していた姿は、ワシントン・ポスト誌の記事に取り上げられています。実は、小池都知事は毎週英語でもライブ配信を行っています。英語が堪能であることは知られていましたが、緊急事態に関する情報を母国語以外でも発信し続けているのは大変なことです。このように、女性リーダーたちはいち早く危機意識を持ち、専門家の助言を聞きながら必要な情報発信を行いつつ、迅速な判断を下すことで成果を挙げてきたのです。 女性がリーダーになるには、強すぎてもダメ、弱すぎてもダメという「ダブルバインド(二重拘束)」を克服しなければならないと言われています。これは、コミュニケーションをする上で、強い態度を見せればヒステリックととられ、柔らかい態度で接すれば弱々しいと取られるということです。女性リーダーとして成功するには冷静な判断力や決断力と共に、絶妙なバランス感覚も必要とされるのです。今回のコロナとの戦いでは、女性リーダーたちの人の気持ちを察しながらも必要な対策を進めていくという優れたバランス感覚とコミュニケーション力の高さが発揮されたことが良い結果につながったと言えるかもしれません。一方で、男性リーダーには科学を軽視あるいは否定する姿勢、経済優先の傾向が強く見られると指摘されています。北欧5ヶ国のうち唯一男性が首相を務めるスウェーデンは、ロックダウンを行わず、結果として同国の100万人あたりの死者数は他の欧州諸国よりも高くなってしまいました。もちろんコロナ対策で成功を収めている男性リーダーもいますが、科学を否定し、科学者からの警告に耳を傾けなかった男性リーダーの国で壊滅的な被害が出ているのは明らかです。 新型コロナウイルス感染の押さえ込みについてどの国の政策が正しいかを論じるには時期尚早です。しかし、早々に封じ込めに成功した国、迅速な対応が評価されている国には女性リーダーが多いのは事実です。それでも、なぜここまで彼女達の活躍が話題になるのかを振り返ると、女性リーダーの少なさが注目される理由のひとつであることは否めません。列国議会同盟(IPU)およびUNウィメン(UN Women)の発表によると2020年1月1日時点で女性が国家元首や首相を務めている国は、国連加盟国193カ国のうち20ヶ国に過ぎません。さらにこのデータを見ると、世界で官僚ポストに女性が占める割合は21.3%と過去最高ではありますが、まだまだ男性が多数を占めています。補足ですが、日本の官僚ポストに女性が占める割合は15.8%で113位。G7中では最下位です。 残念ながら女性の割合が少ないのは政治の世界だけではありません。エルゼビアが2020年3月24日に発表した欧州連合および世界15の国と地域、26の研究分野におけるジェンダーレポート「ジェンダーの視点から見た研究者のキャリアパス」によれば、日本の女性研究者の割合は対象国の中で最下位です。ほぼすべての調査対象国と地域で研究に参加する研究者の男女差は縮まりつつあり、日本でも女性研究者の数は増加しているものの、世界の中では今でも最も低い状況なのです。この事実は、内閣府の発表する男女共同参画白書(令和元年版)の「研究者に占める女性の割合の国際比較」にも明白に示されています。日本の研究者に占める女性の割合は漸増傾向にあるとはいえ16.2%、ここでも比較対象29カ国中の最下位です。しかもこの研究者の数は、自然科学系の研究者だけでなく、人文・社会科学系の研究者も含まれています。 女性の活躍において日本は劣等国です。これは改善されるでしょうか? 6月5日に日本学術会議が発表した報告書「理工学分野におけるジェンダーバランスの現状と課題」は、理工学分野で特に顕著なジェンダーアンバランスの課題について検討した結果をまとめたもので、同分野の女性研究者がキャリアアップするにつれて減少していく傾向を分析し、問題解決に向けたアプローチを示しています。科学技術基本計画(現在は第5期、2016年からの5カ年計画)では、女性研究者の採用割合の目標値を自然科学系全体で30%、理学系20%、工学系15%、農学系30%、医学・歯学・ 薬学系合わせて30%と定めているほか、女性リーダーの育成・登用に積極的な大学などの取組を促進するなどの施策を進めています。 日本をはじめ多くの国には今でもジェンダー・バイアスが存在していますが、変わりつつあります。世界が「アフター・コロナ」、「ニューノーマル(新常態)」に向かう中、今まで以上に女性の活躍が期待されるとの見方も出てきています。これからの社会に必要なのはダイバーシティ(多様性)であると考えられており、日本の学術界もダイバーシティの不足を重要視しています。これまでの進みは遅々としたものでしたが、図らずもコロナという「社会を変える力」が働く今こそ、女性が躍進するチャンスなのかもしれません。 こんな記事もどうぞ エナゴ学術英語アカデミー STEM分野の女性差別改善に男性ができること(リンク)

研究データ出版の動向

学術界では、科学研究の成果や関連するデータや情報を共有する「オープンサイエンス」の動きが強まっています。そこで登場したのが、データジャーナル。研究データについて詳細に記述し、公開することで他の研究者が再利用することを助けます。研究データを広く公開することで社会貢献するとともに、価値あるデータを他の研究者に再利用してもらうことで次の科学的発見につなげることができるのです。しかし、ほとんどの研究者は自身の研究成果を論文として発表することが学術界にとっても自身のキャリアにとっても良いと認識していながら、すべての研究データを論文と共に発表することに合意しているとは言えません。長年、研究当事者はデータを所有物と考え、他の研究者は方法と結論さえ明確に書かれていればデータを見る必要はないと考えていました。この考え方が変わりつつあります。再現性の危機が問題視され、オンラインアクセスが増加するに従ってデータの検索や閲覧が簡単にできるようになると、科学者や研究者たちの間でデータを共有する新しい動きが出てきたのです。データ・レポジトリ(またはデータリポジトリ)が構築されると、新たな論文の出版先としてデータジャーナルが浮上してきました。データジャーナルの動向を探ります。 データジャーナルと研究データ まず、日本学術会議情報学委員会から出された報告書によれば、データジャーナルとは「データ生産者が分野を超えて連携して、オリジナル論文に埋め込んだデータや論文投稿時に棄却した高品質のデータを学術の成果として集積するための新たな場」と記されています。データジャーナルは、データ自体を研究成果として発表する場です。多くのデータジャーナルはオープンアクセス(OA)誌の形で刊行されており、分野を超えて利用されています。ところが「データ」自体は特に定義されていないため、簡単に言えば、観察の結果および研究を進める間に研究題材に関連付けて研究者が集めた情報全般となります。ここには生データだけでなく、処理・較正された値、発表内容まで研究の過程で生じたすべての情報(未処理のデータファイル、ソフトウェア、ソースコード、プロトコル、方法、インタビュー記録、モデルなど)も含まれます。 従来の学術論文は、主な発見や興味深い結果を重視し、そこに至るデータにはあまり注意を払ってきませんでした。その理由としては、研究者が集めたデータが論文に書き込むには膨大だった、一般的に論文の中のデータの位置づけが研究の結論を補完するものだったなどが挙げられます。では、今まで発表してこなかったデータを発表することに、意味があるのでしょうか。 研究データは公開すべき? 研究成果たる論文の根拠となる情報である研究データの公開を検討すべき理由は複数ありますが、最初に挙げるべきは、再現性の危機(reproducibility crisis)対策でしょう。データを共有すれば、学術界(科学コミュニティ)は再現性の検証ができます。次に、データを公開すれば、他の研究者がデータだけでなく実験・分析方法などの詳細を確認し、新しい課題に取り込むことも可能です。もちろん、著者が新たな共同研究を立ち上げるにも、学術界で研究者として評価を高めることにも役立ちます。また、データを公開することは学術界のみならず、政策決定の際に参照されたり学術関係以外の研究者が入手できるようになったりするなどの便益が図られます。最後は、自分にとってのメリットです。データを公開することで論文の被引用数を増やすことができます。データを、データジャーナルやデータ・レポジトリに公開することによって、他者に適正に研究データを引用する機会を提供し、それによってデータ提供者はその功績を認められることになるのです。 データをどこに公開するか データの公開する方法としては、データジャーナルに出版するか、データ・レポジトリに保存するかの2通りがあります。データ・レポジトリは、研究データ(画像データや数値データなど)や研究に付随するプログラム等を収集・保管しておくことを目的としています。データ・レポジトリは研究者にとって既になじみのあるものですが、その利用は個々の大学や研究機関などに限られており、部外者が簡単に利用することはできない上、多くのデータ・レポジトリへのアクセスは有料です。とはいえ、European Open Science Cloud(EOSC) ポータルのように無料のデータ・レポジトリもあるので、参考にしてみましょう。 もうひとつの方法が、データジャーナルです。ほとんどの研究者は論文を出版し、原稿とは別にデータをデータ・レポジトリに保存していましたが、この方法では特定のデータを探し出すのが簡単とは言い難い状況でした。データジャーナルは、データセットを探しやすくするのと同時に、普及・引用しやすくすることを目的としています。データジャーナルには、データセットを説明する簡潔な文章とレポジトリに収納された全データへのリンクが示されるので、データの保存や再利用を促すために有効な手法と考えられています。ほとんどのデータジャーナルに書式があり、著者はこの書式に入力してデータ情報を提出するだけで投稿できるようになっています。データジャーナルはMEDLINE のように主要な医薬文献検索に収録されるので、従来の学術雑誌(ジャーナル)同様にインパクト・ファクター(IF)を取ることができます。…

世界的なパンデミック下でプレプリントの利用が急拡大

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大にともない、医学研究論文や関連記事の数が急増しています。ウイルス感染の急拡大は人々の命と健康にとって重大な問題ですが、学術出版界は思わぬ恩恵を受けることとなりました。ロックダウンや移動制限により、学術出版、特にバイオサイエンスや医学分野におけるオープンサイエンスの重要性が再認識されたのです。世界中の研究者が、ウイルスの遺伝配列、疫学的情報、投薬による症状の変化などのデータを共有するようになりました。必要性が革新的な変化を後押ししたのです。その結果、お互いの状況を確認し合い、手元にはない知識や情報にアクセスすることができるようになりました。効果的なワクチンや有効な治療法の開発を支援し、パンデミックの影響を理解するための急激な情報ニーズに対し、世界の学術界は驚くべきスピードで対応しました。例えば、新しいコロナウイルスの人への感染が確認されると、2020年1月10日には中国の研究者が、世界的なインフルエンザウイ ルスの共有データベースGISAID(Global initiative on sharing all influenza data)にこのウイルスのゲノム配列情報を公開し、そして1月中旬までには、ドイツと他のヨーロッパ諸国と香港の研究者が、新型コロナウイルスを検出するための診断テストの詳細を公開するに至りました。過去のインフルエンザやSARSの流行時には考えられなかったスピードです。 一気に進んだコロナ関連論文の共有化 このように、論文や情報が共有されるスピードは格段に進歩しました。学術雑誌(ジャーナル)のNatureは、コロナ関連のすべての研究論文を自由に利用できるように取り組むとともに、研究者には関連研究を迅速に公表し、共有することを推奨しています。論文公開に関して論争の的となっている学術出版社エルゼビアも「Novel Coronavirus Information Center」を開設しコロナウイルス関連の論文を無料公開しています。医学雑誌ランセット(Lancet)も「COVID-19 Resource Centre」を開設し、COVID-19でジャーナルに掲載された論文や記事を提供することで、医療従事者や研究者を支援しています。このサイトにはランセットジャーナルに掲載されているCOVID-19関連の論文がまとめられており、無料でアクセスすることができます。…

大型研究計画「マスタープラン2020」

先日、科学技術基本法の改正案の議論についてお伝えしましたが、2020年3月10日に閣議決定されました(追記:6月1日には衆院で可決、参議院での審議に進んでいる )。今国会での成立を目指し、この改正により、これまで自然科学に絞られていた研究支援の対象に、法学などの人文・社会科学も含まれることとなります。1995年に成立した同基本法の改正は今回が初めてで、名称は「科学技術・イノベーション基本法」と改められました。人工知能(AI)やゲノム編集などの新たな技術が急速に発展する中、倫理的議論や法整備の必要性が高まっていることに対応したものです。そして、この基本法とは別に、もうひとつ研究者にとって重要な「第24期学術の大型研究計画に関するマスタープラン(マスタープラン2020)」が1月末に発表されているので、今回はこちらのプランを紹介します。 マスタープラン2020 2020年1月30日付けで公表された「マスタープラン2020 」は、日本学術会議が日本として重点を置くべき大型研究プロジェクトをまとめたものです。日本学術会議は2010年に大型研究計画マスタープラン2010を策定、2011年の小改訂以降、概ね3年ごとに策定しています。日本学術会議が、学術全般を展望・体系化し、各学術分野が必要とする大型研究計画を網羅して実施すべき計画を選択したマスタープランを策定し、このマスタープランをもとに文部科学省がロードマップを策定。優先度の高い研究計画を選定し、概算要求を作成します。学術大型研究計画とは、予算総額が数十億円規模(超えるものもあり)、実施期間は5~10年、あるいはそれ以上の長期、学術分野のビジョン・体系に立脚した大型施設計画もしくは大規模研究計画に該当するものです。規模が大きいだけに、このような計画に関わる研究機関や研究者にとってマスタープランに策定されるか否かの影響は大きいことでしょう。 選定結果 例えば、過去のマスタープランで選定された計画 には、大型電波望遠鏡「アルマ」による国際共同利用研究の推進(国立天文台)やスーパーカミオカンデによるニュートリノ研究の推進(東京大学宇宙線研究所)のように大型施設の建設を伴うものや、大学・研究機関が活用する新しいステージに向けた学術情報ネットサーク(SINET)整備(国立情報学研究所)などがあります。学術大型研究計画は、新規提案及びマスタープラン2017に掲載され、今回改訂された提案である区分Ⅰと、過去のマスタープラン(マスタープラン2017及びそれ以前)に掲載され現在実施中・進行中の計画である区分Ⅱの2つのグループに分けられます。マスタープラン2020では、区分Ⅰの146件と区分Ⅱの15件、合わせて161件の学術大型研究計画が選定されています。さらに区分Ⅰの中から16件の新規計画と15件の継続計画の計31件が、優先度が高く早急な予算化が必要とされる重点大型研究計画として選ばれました。とはいえ、31件のうちの15件の継続計画とは「マスタープラン2017」から継続して採用されているものです。半数近くをマスタープラン2017に掲載され今回改訂された提案が占めていることから、新しい研究計画が採用される余地が減っているのではとの懸念もあります。 マスタープラン2020策定に関わる利益相反排除の方針 マスタープランは、各学術部分野が必要とする大型研究計画を網羅し、日本における大型研究計画のあり方に指針を与えることを目的としたもので、予算獲得のために作られたものではありません。しかし、科学研究費が抑制され、長期にわたる研究資金の確保が厳しくなっている状況下、文部科学省がマスタープランを参考に計画の優先度を整理し、大規模学術フロンティア促進事業等を選定していることを鑑みれば、マスタープランが日本の科学研究に及ぼす影響は大きいと言えます。大型の学術研究は、長期にわたって多額の経費が必要なため、社会・国民からの理解と支持を得つつ、長期的な展望のもとで戦略的に推進される必要があります。そのためにも、透明性の高い研究評価および、日本における戦略的、計画的な大型研究計画の推進においてマスタープランが活用されることが重要なのです。 このような重要性を持つマスタープランですので、選定の際に公平性を保つことは大切です。日本学術会議の委員がプランの策定に関与する審査支援者と研究者という相反する立場に立たされることを回避すべく、マスタープラン2020策定にあたっては、日本学術会議声明「科学者の行動規範について―改訂版―」 (平成 25年1月25日)の利益相反の条項を踏まえた利益相反排除のための方針が発表されました。この新たな方針に準じ、公平で公正な策定・評価が行われることが求められています。 マスタープラン2020で選定された161件の学術大型研究計画の分野は、生物学、医学、物理学、農学、食料科学、薬学、地球惑星科学、情報学、など多岐にわたります。選定された大型研究、特に重点大型研究計画は優先度が高く、可及的速やかに予算化され、推進されるべきものと位置づけられたものです。マスタープラン2020が、多様な学術の発展、日本の科学力の向上に貢献されることが期待されます。

Withコロナ時代 ニューノーマル の学術研究・教育

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで世界は大きく変わりつつあり、今までとは全く異なる新たな経済システムやライフスタイル、「ニューノーマル(新常態)」に移行すると言われています。ニューノーマルとは2008年以降の世界金融危機のときに使われた経済用語でしたが、コロナで再び脚光を浴びることとなりました。そして、教育および学術研究もニューノーマルへの移行を余儀なくされています。 パンデミックで浮上した多くの問題 パンデミックにより多くの大学を含む教育機関は休校・閉鎖を行い、オンラインでの対応を迫られることとなりました。既にオンライン教育システムに対応できている学校や機関もありますが、システムが整備されていない学校も多い上、オンライン授業の経験を有する教員は限られており、教育の提供と学習に影響が及んでいるのです。オンライン教育への移行には差があり、誰もが通常と同じ授業を受けることは難しく、学生側に教育格差を生じさせることにもなっています。また、教育を提供する側の制度上の弱者(非テニュアトラックの教員、非常勤職員、テニュアトラックの初期段階の教員など)は厳しい状況に追い込まれています。このような立場にいる教員は、所属機関において重要な貢献をしているにも関わらず、平常時でも雇用の不確実性や金銭的な苦境に立たされていますが、非常事態で状況が悪化しているのです。十分な対応を行わないままオンライン教育への移行を進めることによって、これらのさまざまな問題が浮上することとなってしまいました。 研究者への影響も計り知れません。研究に関する知識の交換や普及、研究者間のコミュニケーションに不可欠な会議や学会などが中止され、研究を公開し、フィードバックを得る機会を失いました。フィールドに出られない、調査ができないなどの物理的理由で研究そのものが停滞している人も多いことでしょう。学術的生産性は著しく損なわれており、学術界全体で現在の状況に対応しつつ被害を最小限に抑えるための努力が行われていますが、ニューノーマルに向けて今後どのように変化していくべきなのかの検討も不可欠です。このように問題は山積みですが、今回はオンライン教育システムへの移行における技術的な課題と大学の取り組みを取り上げてみます。 オンライン教育の技術的な課題 国連教育科学文化機関(UNESCO)によれば、COVID-19の発生以来、世界146カ国で約11億8,000万人 の学生が教育機関の閉鎖などの影響を受けています。しかしオンラインへの移行といっても、すべての教育機関がオンライン教育を実装できているわけではありません。ネットワークへのアクセスが均等ではないこと、安定性に問題があることも無視できませんが、オンライン授業では学生の質問をもとに議論を促すことも容易ではありません。質疑応答や議論を行うにはハード面でインタラクティブな環境を整え、ソフト面では教員が新しい授業スタイルに適したシラバス(授業計画)に調整する必要に迫られています。では、インタラクティブなオンライン授業を行うには何をしなければならないのでしょうか。 1) 教員側の環境整備と準備 いわゆる講義型ではなくインタラクティブに授業を行うには、受講者の反応が見られるデジタル環境が必要ですが、大学の講座のように人数が大きくなると、それだけでも大変な作業です。受講者を見ながら、スライドを画面共有で見せるには、ある程度の大きさの画面が2つ必要になりますし、大人数と回線をつなぎつつスムーズにスライドを動かすには、それなりの動作環境も必要となります。しかも、授業ではスライドだけ見せているわけにはいきません。学生から教員が見える状態にしておく、画面の一部しか見えないことを踏まえて動く、ディスカッションするような場合にはホワイトボードなども(画面を通しても)見やすいように整理するなどの工夫が必要です。講義をストリーミングするだけでなくインタラクティブに進めるには周到な準備が必要なのです。 2) オンライン向けのシラバスの準備 オンライン授業には、実際に教室で行うのとは異なる進め方が必要となります。講義中に画面を切り替えたり、追加資料を配ったりするための準備をしておかなければなりませんし、受講者への指示や問いかけを簡潔でわかりやすいものにしておくことも重要です。画面を注視し続けるオンライン授業では、集中力が切れやすくなることへの対処も必要です。教員が意識して全体を見渡し、挙手していない学生に発言を求める、質問を振るなど、受講者に積極的に働きかけることが緊張感を保つには有効です。実際の教室のように学生全体に目を配ることが難しいので、ここでも何らかの工夫が必要です。 3) 学生間(受講者間)のインタラクション…

査読の貢献を研究業績の一部に:ORCID iD入力が可能に

査読付き学術雑誌(ジャーナル)に論文を発表することは、研究成果の学術論文としての妥当性が当該分野の専門家に認められることであるとともに、論文に書かれた内容の信頼性を読者に担保することにつながります。 一般的には、論文を学術ジャーナルに投稿すると、査読のプロセスが始まります。まず、投稿論文を受け付けた学術ジャーナルの編集者は、その論文の分野の複数の研究者に論文を送り、評価を依頼します。研究者は「査読者」として、論文を読み、ジャーナルの出版基準を満たしているか、論文の内容が掲載に値するかを判断します。査読が完了し、基準を満たしているものがジャーナルに掲載されます。 査読は、研究成果の発表を判断する重要なステップであり、学術研究の信頼性を下支えするものです。ジャーナルの編集者が当該分野の研究に精通しているわけではありません。その分野で実践的な経験を積んだ研究者だけが、論文に記された研究内容について理解し、研究が妥当なものか判断できるのです。査読が論文出版にとって重要なステップであるにも関わらず、従来は研究者としての正式な実績とは認められてきませんでした。研究者にとって査読者となることはどのような利益があるのか?研究者は無償で科学に貢献するべきなのか?査読プロセスにおける研究者の責務については議論となっています。 この問題への改善策として、査読プロセスへの参画を研究業績の一部とする動きが進んでいます。 査読者のORCID iDの入力を可能にして研究者としての信頼性をアップ 査読プロセスは研究者の負担になるという考えは変わりつつあります。2019年6月26日、PLOS(Public Library of Science)がPLOSの全ジャーナルを対象に査読者のORCID iDの入力を可能にしたと発表しました。これによって査読者は、査読履歴を追跡し、査読への貢献を研究業績の一部とすることができるようになります。PLOSは2000年代の初頭からオープンアクセス(OA)ジャーナルの出版を進めている出版社で、現在は医学・生物学分野を中心に7誌を発行しています。ORCID(Open Research and Contributor ID)とは、複数の学術コミュニティ機関によって設立された非営利団体が管理する研究者のID(識別子)で、一度登録すると、研究者が所属組織を変わっても同じ番号で業績が一元的に認識されるようになります。PLOSは2013年にORCIDに加盟して以降、投稿者にORCIDの使用を積極的に求めてきました。…