学術界を知る

dosageとdose

医学の専門用語で「dosage」と「dose」があります。これらの語は似た意味を持ちますが、同義ではありません。以下にそれぞれの語の意味とその典型的な使用例を挙げます。 dose: 1回の投与量。 (1) Each packet contains one dose. dosage: 投与量、頻度、継続期間の決定や調整。 (2) The dosage was…

cooperateとcollaborate

「cooperate」と「collaborate」は意味が似ており、双方とも「共同する」、「協同する」、「協力する」のいずれにも訳されうる可能性があります。しかし重要な意味上の違いもあり、通常はそのまま置き換えることはできません。「cooperate」が持つ語意は「collaborate」の持つ語意に包含されていますが、「collaborate」の語意の一部を形成するにすぎません。「cooperate」が単に「力を合わせる」という意味を表すのに対し、「collaborate」はその「力を合わせる」こと自体のみならず、むしろ協力の目標に主眼を置き「協力によってある結果を生み出そうとする」という意味を表します。 以下に動詞「cooperate」と「collaborate」、およびその名詞形「cooperation」と「collaboration* 」の正しい使用例を挙げます。 (1) Thomas and Yamada have collaborated on several research projects. (2) We…

誤訳を防ぐために気をつけたいこと4つ

今回は、自分の研究論文の英訳を依頼するとき、どうしたら誤訳を防ぐことができるかを少し考えてみたいと思います。下記に誤訳の予防策として気をつけたいことを4点にまとめました。 (1)専門知識を明確に説明すること 研究論文を他の人に翻訳してもらう場合、まず大切なのは、その論文翻訳に必要な専門ジャンルの知識レベルを、相手に明確に説明するということです。論文の内容によっては、その分野に関し浅く広い知識を持った翻訳者が適した場合もあれば、ある事項に関してより深い知識が要求される場合もあります。現在の学問は細分化がきわめて進んでおり、自身の専門分野について広くて深い知識を持つことは難しくなっています。同様に、ある分野を得意とする翻訳者のなかでも、その領域に関して研究者を越えるような広くて深い見識がある人などそうそういるものではありません。自分の論文に必要な専門知識を自分なりにきちんと把握し、明確に説明して翻訳を依頼しましょう。また、医学論文翻訳であれば医学博士に依頼したい、といった最低限の条件を決めておくことも必要です。 (2)翻訳者との関係性は良好に 翻訳者が決まったら、翻訳者とのコミュニケーションを大いに歓迎する態度を示したいものです。とくに研究論文を書き慣れていない研究者の場合、どんなに頑張っても、複数の意味にとれてしまう文章がいくつか残ってしまうものです。翻訳者がそういった文章を見つけた際には、無理に翻訳を続けるのではなく、その時々に確認できる関係性を作っておけば、 大きな誤訳へと発展することを防ぐことができるはずです。 (3)ダブルチェックで誤訳をなくそう もし時間と人材に恵まれていたら、一度翻訳してもらった論文を、他の人に読んでもらうと、誤訳が激減します。一度日本語を読んでしまうと、どうしてもその表現に引っ張られ、なかなか一度の翻訳では明確で正確な英文には翻訳されません。そこで、翻訳してもらった論文を、まったく新しい第三者の目を通して、英語の論文として読んでもらえれば、新鮮な視点で評価してもらえるはずです。 (4)第三者として自分の論文を再確認 そしてできることなら、ジャーナルに投稿する前に少し時間を空け、自分でも英訳された論文を一気に読み直したいものです。少し時間を空け、第三者として英語の論文を読むことで、わかりにくい表現がないか最終確認することができます。 翻訳には時間がかかるものですが、これも自己表現の大切な一歩。あせらず慌てず、慎重かつ丁寧に取り組むことが質の高い論文へにつながるのです。

オープンアクセス化の効用

学術論文の「オープンアクセス化」という潮流があります。 2000年秋、商業出版社が出版するジャーナルの購読費が高騰していることに対し、「Public Library of Science(PLoS)」という科学者グループが公開書簡を公表しました。彼らは出版社に対し、論文が公表されてから6カ月以内にそれを公共のアーカイブに提供することを要求し、それを受け入れられないのなら、購読や投稿をボイコットする、と主張しました。この書簡がどれほどの影響をもたらしかのかということについてはいろいろな評価があるのですが、その後の学術論文のオープンアクセス化を促進したことは間違いないでしょう。「PLoS」は財団からの助成を得て、2003年にオープンアクセスの学術雑誌『PLoS Biology』を、2004年には、『PLoS Medicine』を創刊しました。PLoSや同時期にスタートしたオープンアクセス専門の出版社BioMed Centralの活動が注目され、オープンアクセス・ジャーナルが次々発行され、既存の商業出版社までがオープンアクセスに参入するようになり、現在にいたります。 今回は、あらゆる分野の人々にとって以下のような利点があるということを、あらためて簡潔にまとめてみたいと思います。 アクセス(利用しやすさ) オープンアクセス化を進めているジャーナルや論文集の大半は、読者に利用料金を求めていません。つまり、論文を読むための料金という障壁が大幅に軽減されているか、あるいはまったく廃止されています。このことにより、論文の著者たちも今までより広範な読者に自分の論文を読んでもらうことができます。読者の経済状態や、どこにいるのかが問題にならないので、論文その他の文献の対象読者が格段に拡大します。 直接性 その研究分野のコミュニティだけでなく、研究者か一般読者かを問わず、広範囲の読者が研究成果を直接に読むことが可能になります。 各種の効果を推進 研究成果が広がりやすいので、同分野の研究が盛り上がるだけでなく、そこから新たな研究分野が発展すれば、それに取り組んでみようという刺激を受ける研究者も出てくるでしょう。…

continualとcontinuous

形容詞「continual」と「continuous」(また、その副詞形の「continually」と「continuously」)は意味が似ており、口語においては互換性がある場合もありますが、厳密には同義ではなく、文語、特に学術論文において使い分けが必要です。 両形容詞は、ともにある状態が「終わらない」という状況を表しますが、「continuous」がその状態が継続的に、つまり「途切れずに続く」という意味を持つのに対し、「continual」はそのような意味を持たず、同じ状態が「何度も絶えず出現する」という状況を表します。 以下に「continual(ly)」と「continuous(ly)」の使用例を挙げます。 (1) The visitors have made continual requests to be moved to another…

【日本大学発ベンチャー】 ブルーイノベーション株式会社

「世界で戦えるオンリーワンの無人航空機と強いチームを作りたい。」 近年、全世界で無人航空機(UAV: Unmanned aerial vehicle)の商業利用に向けた動きが活発化している。2013年には、アマゾン・ドット・コムやドミノピザが無人航空機による宅配事業サービスへの参入を発表。無人航空機による新市場は約1兆円にものぼると言われ、現在では欧米諸国はじめ各国が法整備や技術革新を急いでいる。 その中、国内で先行的に無人航空機の運用サービスを手がけているベンチャー企業がブルーイノベーション株式会社だ。2014年にはYahoo! JAPANと連携した360度パノラマコンテンツアプリを提供し国内外から注目を集めた。 海岸の防災・環境コンサルティングを主軸としながら、世界を見据えた無人航空機運用サービスを展開している同社の成長の軌跡と今後の戦略について熊田社長に伺った。 ■開拓者としての研究時代 大学院時代は、差別化できるスキルを身につけるため、学科内では誰も手がけていない「海岸環境工学」を研究テーマに選びました。当時、海洋建築工学科では構造・都市計画の研究がほとんどで、先輩も教授もいませんでした。開拓者としてやってみようという思いはありましたが、修士1年目は模索状態。 そんな時、タイ・ベトナム調査で洪水によるマングローブの倒木に伴う河岸侵食や家屋の崩壊を目の当たりにし、河岸・海岸の防災に興味を抱くようになりました。帰国後、世界で初めて海岸地形と底質粒径の変化が予測できる数値計算モデルを開発しました。 侵食されている海岸の粒度を分析し、どのような砂粒を補給すれば海岸が復活するかが分かるもので、当時は画期的なモデルとして高く評価され、大学より博士号が授与されました。 ■無人航空機との出会い 私の研究は実務分野に答えがあると実感し、大学院時代には海岸防災を中心とした会社を設立しました。現在も「海岸コンサルティング事業」を主軸とし、砂浜の侵食・高潮・津波対策などにおいて現地調査から解析、対策・保全計画の提案、住民協議会運営まで手がけています。顧客は官公庁や第三セクターです。 現地調査のことを我々は〝海岸の健康診断〟と呼んでいますが、その際に欠かせないのが無人航空機です。5年前に東京大学の開発プロジェクトを知り、共同研究を開始しました。無人航空機はGPS誘導によりプログラムされたルートの自動飛行が可能なため、海岸の経年変化を測定するのに適しています。また、高度150m以下は航空法の申請がいらず、災害時などにすぐ飛行できるのも大きな特長です。我々は無人航空機を海岸モニタリングに活用することで、有人機の空中写真撮影に比べ、圧倒的な情報量の取得と低コスト化に成功しました。同システムは日本でも類がなく、共同研究論文は土木学会や航空宇宙学会でも高い評価を受けました。…

ベル研シェーン事件

今回は、「科学界における不正行為」の代名詞的存在となってしまったシェーン博士の研究者人生と、彼の不正行為が学術界におよぼしたインパクトについて考えてみたいと思います。2014年に日本で発覚し大騒動となった「STAP細胞事件」と、2005年に発覚した「韓国クローンES細胞事件(ファン・ウソク事件)と、この「シェーン事件」を合わせて、「三大不正事件」といわれることもあります。 1997年、当時弱冠28歳だった若手科学者ヤン・ヘンドリック・シェーン(Jan Hendrik Schön)は、世界的にもそのレベルの高さで有名なベル研究所に雇用されます。それから数年の間、シェーンは物性物理学とナノテクノロジーを中心に研究を続け、2000年から2001年にかけて、フラーレン(中が空洞の球、楕円体、チューブなどの形状をした炭素の同位体)における高温超伝導(比較的高い温度で電気抵抗がゼロになる現象)の研究を中心に、画期的な研究成果を科学雑誌『ネイチャー』や『サイエンス』 などで次々発表します。その量産ぶりには目を見張るものがあり、2001年には、シェーンが著者に名を連ねる論文が、平均して8日に1本のペースで発表された計算になります。しかも、これらの研究成果がもし真実であれば、人類がシリコンをベースとした無機エレクトロニクスから離脱し、有機半導体をベースとする有機エレクトロニクスに向かう大転機となりうる大発見であったため、シェーンは、2001年には「オットー・クルン・ウェーバーバンク賞」と「ブラウンシュヴァイク賞」を、続く 2002年には「傑出した若手研究者のための材料科学技術学会賞」を受賞し、「超電導の分野でノーベル賞に最も近い人」と賞賛されるまでに至ります。 シェーンは当時、ベル研究所以外にドイツの出身大学にも研究室を持っており、同僚たちも、もう1つの研究所で実験を行ったといわれると、その結果を鵜呑みにするしかない状況だったようです。また、あまりに華々しい成果に世論の賞賛の声が高まり、躍進的な研究結果に多少の違和感を感じていたほかの研究者たちも、なかなか正面切って疑惑の声をあげることができませんでした。 しかし最終的には、多くの論文で同じデータが重複して使われていることが指摘され、2002年にベル研究所が調査委員会を設けるに至ります。調査では、シェーンの論文25本と共同執筆者20人に不正の嫌疑がかけられ、世紀の大発見のほとんどがデータの捏造であったことが露見しました。その結果、『サイエンス』誌に掲載された論文10編および『ネイチャー』誌掲載の論文7編が無効扱いとなり撤回されました。 このシェーンのスキャンダルは科学者のコミュニティにおいて、共著者・共同研究者の責任をめぐる大論争を引き起こし、近代的な研究倫理の設定を促すことになりました。というのも、当時、論文に対する共著者たちの責任に対する一般的なコンセンサスがなかったため、不正行為はすべてシェーンが1人で行ったとみなされ、事件にかかわった共同研究者や研究グループリーダーは無罪放免となったからです。 また、完全無欠のように賞賛されていた査読付きジャーナルの限界も指摘されるようになりました。査読はあくまでも、論文のオリジナル性と妥当性を論文上の情報を元に審査することしかできず、論文の作成までのプロセスに不正があってもそれを見抜くことが不可能に近いからです。 共同研究者の責任や投稿する論文の正当性についての規制は、年々厳しくなる傾向にあります。自分の研究に「箔」をつけたいがために有名研究者の名前を借りること、有名研究者も自分の業績を増やしたいために名前を貸すという行為は近年、「ギフトオーサーシップ(贈り物としての署名)」と呼ばれ、批判の対象になっています。「STAP細胞事件」でも、若い研究者が持ってきた実験データを、シニアの研究者がまともに確認しないまま論文の共著者になったことが問題になりました。気軽に他の人の研究を後押ししたり、誘惑に駆られてデータの出典を確認しなかったりすることのないよう、十分気をつけてください。 [PR] 研究論文の英文校正はエナゴまで。 参考資料 有機エレクトロニクス…

利益相反

「利益相反」とは、一般的には「ある行為により一方の利益になると同時に、他方への不利益になる」状態を指しますが、研究における「利益相反」は、個人としての利益相反と組織としての利益相反の双方を含みます。具体的には「外部との経済的な利益関係等によって、公的研究で必要とされる公正かつ適正な判断が損なわれる、又は損なわれるのではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態をいう」と定義されています。 英語では「利益相反」を「Conflict of Interest」と表記し、各ジャーナルの「Instructions for Authors」には「Conflict of Interest」の項目が必ずあります。論文を投稿する際はその指示によく従ってください。 研究における利益相反の詳しいことについては以下のウェブサイトをご参照ください。 日本語: 厚生労働省-研究に関する指針について 文部科学省-利益相反ワーキング・グループ報告書 英語: Resources for…

誤訳、悲喜こもごも

同じ言語を使って話をしていても、ちょっとした言い間違いや言葉足らずな表現が原因で誤解を招くことは多々あります。これが通訳を通した二言語間の会話となると、国の代表という一流の人たちの間でも、言い間違いや誤解のリスクはゴロゴロ転がっています。そういった国の代表者たちの間で起きる誤訳は、思わず失笑してしまうような、愉快な事態を引き起こすこともあれば、国同士の関係を悪化させる深刻な事態を招く危険もあります。今回は、各国で実際に起こった誤訳をめぐる悲喜こもごものエピソードをご紹介します。 まずは、明るい(?)話題から。 2011年4月に、中国の温家宝(ウェン・ジアバオ)首相がマレーシアを訪問したときのことです。盛大に催された歓迎式典には、マレー語で「温家宝閣下マレーシア訪問の正式歓迎セレモニー」と書かれたパネルが掲げられていました。そしてその下には、首相を心から歓迎する思いからか中国語への翻訳が書かれていました。ただ、この中国語訳が「正式歓迎セレモニー。彼と一緒の温家宝閣下、マレーシア正式訪問」という意味不明のものだったのです! 事態は、歓迎式典の翌日、マレーシアのナジブ首相が温家宝首相に謝罪し、笑い話として収拾・・・かと思われましたが、2カ月後の6月、台湾の『聯合新聞』が「笑える話」として取り上げ、マレーシア政府は再度恥ずかしい思いをさせられることとなりました。 調査の結果、中国語訳は大手検索サイトであるgoogleの翻訳サービスを利用して行われていたことが明らかとなりました。便利なサービスも過信することなく用心が必要というわけです。 このお話は、相手に対する好意的な歓迎の気持ちから生まれ、相手の好意的で寛大な対応で何事もなく笑い話として終わりました。公式の場で大恥をかくのは、誰にとっても嫌なことですが、誤訳の害は最小限にとどまったといえます。 しかし、同じ誤訳でも、周辺の国々を巻き込み、国の名誉をかけた口論に発展する場合もあります。 2012年8月、イランの首都テヘランで開催された首脳会議で、エジプトのモルシ大統領が演説でシリアの政権を非難したときのことです。モルシ大統領が「シリア」というたびにイラン国営放送のペルシャ語通訳者が「バーレーン」と訳したため、モルシ大統領がバーレーンを非難したと思ったペルシャ語話者の聴衆が混乱しました。その後の調査で、通訳者の誤訳だと判明すると、バーレーンの国営放送は「事実のねつ造であり、報道機関の行為として受け入れられない」と述べ、内政干渉だとイランを強く批判し、正式謝罪を要求するまでにいたりました。イランの国営放送は単なる誤訳だと述べました。一方で、議長国であるイラン政府が、イラン人である通訳に圧力をかけて意図的に誤訳させた、という説も飛び交いました。イランはシリアの同盟国なため、そのような説が上がったのかもしれません。 このように、スンニ派とシーア派の危うい関係が渦巻く中東では、「国名を間違えた」だけでは済まされず、 複数の国をまたがった宗教的抗争のような論争へと発展することがあるのです。 好意的な気持ちから発生した誤訳だからといって、笑い話で終わるとは限りません。本当の国際化を目指し、自分の気持ちに正直に、そして相手の立場からみても自分の気持ちが率直に伝わるように外国語のスキルを磨きたいものです。

論文の謝辞-例文比較

論文における謝辞(Acknowledgement)とは、論文執筆に間接的に携わったすべての人の貢献に対して感謝を述べるとともに、当該研究を支援した人、組織・機関などの貢献に対する評価を記す、論文の構成要素の1つです 。 論文の作成に実質的な貢献を行っていても、著者となる基準(オーサーシップ)を満たさない人やグループは謝辞に記載します。 謝辞には、技術的な面や執筆補佐などにおいて具体的な役割を果たした人や、間接的にサポートを行った人物やグループも含まれます。また、経済的な援助を行った団体が謝辞の最後に記されるのはよくあることです。原則として、そのように貢献者として記載される人物からは、あらかじめ謝辞への掲載許可を得ておかなければなりません。 なお、ジャーナルによって謝辞に関する基準が大きく違いますので、原稿を投稿する前に「Instructions for Authors」を参照してください。 以下に謝辞の典型例を挙げます。 I would like to thank R. Solleg for…