学術界を知る

論文の多くは「再現」に必要な情報がない!?

第三者が論文に書かれた研究を検証し、場合によっては追試( 再現実験 )を行なうためには、詳しい実験手順(プロトコル)が必要です。また、グラフなどの図表を検証するためには、そのもとになった「生データ(オリジナルデータ)」も必要です。エモニー大学のシャリーン・イクバルらは、研究報告を適切に評価したり再現したりするために必要な情報が公開されているかどうかを調べるために、2000年から2014年に公表された生物医学分野の論文441本を分析しました。 2016年1月4日付のオープンアクセス・ジャーナル『プロス・バイオロジー』で発表されたその結果は残念なものでした。ケーススタディ(症例報告)などを除外して、具体的なデータを含む論文268本のうち、完全なプロトコルを示していた論文はわずか1本しかありませんでした。著者たちはその論文について 実際のところ、この論文自体がある臨床試験のプロトコルであり、オープンアクセス・ジャーナルの『臨床試験(Trials)』に掲載されたものである。 と、皮肉まじりに書いています。また、図表などのもとになった生データすべてを第三者が参照できるようにされていた論文は1本もありませんでした。さらに、論文441本のうち、約半分には、研究にかかった資金の出所が書かれていませんでした。約7割には、企業など資金提供者との利害関係を意味する「利益相反」について何も書かれていませんでした。 『プロス・バイオロジー』の同じ号では、ドイツの研究者らががんや卒中にかかわる論文を調べたところ、その大部分が実験に使われた動物の数を示していないことを明らかにしました。同誌を発行するプロス社のプレスリリース*1は、 人間の医療において、患者の数、つまり研究の過程で何人がドロップアウトしたり亡くなったりしたのかという情報がないまま臨床試験の結果を公表することは考えにくいだろう。 と、動物実験においても基本的なデータを正確に示すことの重要性を指摘しています。 日本でも、論文そのものだけでなく、そのもとになった生データも公表すべきだ、という議論が高まっており、文部科学省などで検討されています。一方で、研究者が学会に加入したり学術誌を購読したりする必要がなくなってしまう可能性もあるわけですが、その影響も深く議論されるべきでしょう。 *1: https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160104163155.htm

第8回 発音を向上させたい人は

英語 のアクセントの位置に気をつけることでジャパニーズイングリッシュでも伝わりますが、より高みをめざして発音を向上させたいと考える人もいるかもしれません。そのような人のためのちょっとしたヒントを提供します。 日本人の英語の特徴を直す 日本人に特有の英語の発音はたくさんありますが、なかでも以下の3点に気をつければ、より好感度の高いジャパニーズイングリッシュを話すことができるようになります。 末尾の母音を消す たいていの日本人はI would like to をアイウドゥライクトゥと発音しています。それで十分伝わりますが、すぐにジャパニーズイングリッシュだとわかります。ウドゥ、ライクと、単語ひとつひとつの末尾で母音を発音してしまうからです。日本語はすべての音節が母音で終わりますので、無理もありません。しかし、英語は末尾の子音がほとんど消えそうになる傾向があり、そうなると当然、末尾の母音はまったく響きません。極端に言えば、アイウッライットゥのような感じです。 日本人がwebsiteと言おうとしてウェブと言った瞬間にジャパニーズイングリッシュとわかります。ネイティブスピーカーが発音すれば「ウェッ(プ)サーイ」のように聞こえます(実際はbの部分で唇を閉じ、tの部分で舌が前歯の裏に付いています)。Public、method、repeat、topなど、末尾が子音で終わる単語は、子音を含めて丸ごと消すような意識で発音してみましょう。 lとr を意識して使い分ける 日本人がlとrの発音を苦手としていることはよく知られています。Our results…

第7回 学会発表に向け、自分の言葉にするために練習する

学会 発表に向け、スピーチの練習なんて野暮だと思っていませんか?そんなことはありません。プレゼンテーションの達人と言われる人々の多くが、しっかりと練習をして本番に臨んでいます。英語プレゼンならではの練習のポイントを紹介します。 原稿作成は必要か? 母国語でない英語でのスピーチにおいては一度原稿を書くのが無難です。文字量には個人差がありますが、慣れないうちは1分100ワードを目安に増減します。心がけるのは関係代名詞を多用しないシンプルな短文で書くことです。そして、ネイティブスピーカーにチェックを依頼し、ゆっくり音読してもらって録音をしましょう。学術英語は発音の難しい専門用語を多く含むので、研究分野に明るい人にお願いしたいところです。先の記事で指摘したように、英語はアクセントの位置が非常に重要ですので、録音を聞きながら原稿にアクセント記号を記入して、練習に役立てます。 「つなぎ」が肝心 原稿を作成する際には、「つなぎ(transition)」の言葉もしっかり作り込みます。聴衆の注意をそらさないでストーリーを語るためには、スライドとスライドの間を言葉でしっかりとつなぐことが非常に重要です。下記に例をお示しします。 悪いつなぎ: “… The difference was significant in the experiment…

生物医学分野における研究開発費がアジアで増加

生物 医学分野における研究開発費において、おもしろいニュースが報じられました。2014年、米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された研究報告書により、欧州や北米では研究開発費が減少しているのに対し、アジアでは増加傾向にあることが伝えられたのです。 欧州と北米における研究開発費の減少 2007年~2012年までの間、生物医学分野の研究開発に対する欧州での投資額に大きな増減はなかった一方、米国とカナダでは、投資額が年に約2%減少しました。中でも生物医学分野における世界の研究開発費の約半分を占める世界最大の研究国、米国の研究開発費が減少したことは注目に値します。理由のひとつとして、研究計画と研究費に関する活動を停滞させるに至った、米国議会内での政争が挙げられます。ただし、米国政府からの投資額の中で研究費が占める割合は減少しておらず、むしろ年0.8% というわずかな伸び率ではありますが、増加しています。減少したのは民間の研究費です。米国での生物医学関連産業の民間研究費はほぼ同額を推移していますが、米国のほかにも、アジアでますます多くの研究費を使うようになってきています。アジアの人件費は安く、新薬開発への規制はより緩やかなためです。 アジアにおける研究開発費の増加 豪州を含むアジア・オセアニア地域全体で、生物医学分野の研究開発費は増加しています。この地域でもっとも有力な研究国である日本では、2007~2012年の間の研究開発費の年間成長率は約6%でした。オーストラリアとインドも同程度の成長率でしたが、韓国の成長率はこれを上回ります。もっとも伸びているのは中国で、額としては他国より少ないものの、年間成長率はなんと33%を記録しました。もしこの劇的な成長率を中国が9年間維持し続けるとすれば、2012年にはわずか60億ドルだった研究開発費が、2021年には1090億ドルになり、米国を抜いて生物医学分野における世界一の研究開発国になります。もちろん、未来の推定は確実なものではありません。中国が年33%の成長率を無限に維持することはあり得ず、成長は緩やかにはなるでしょう。 研究者にとっての意味 もし現在の流れが続くとすれば、アジアに注目すべきです。最先端の研究はますますアジアで行われ、共同研究の機会がもっとも豊かな地域もアジアになるでしょう。そこまでの道のりは平坦なものではなく、それぞれの地域の政治と世界経済の状況によっては山あり谷ありで、断続的なものとなるかもしれません。しかし、世界の人口の5%を占めるだけの米国が、生物医学分野における研究費の50%を永遠に捻出し続けることも難しいでしょう。その他の地域が、研究の質においても研究費においても、追いつきつつあることは事実です。これは朗報と言えるものです。 ではこの事態について、校正者たちの意見を聞いてみましょう。 研究の質や正確さを維持することが不可欠 米国以外の地域で研究費がさらに成長しているのは、基本的な資本の原理が働いているというだけです。同額以下の費用で、官僚制にそこまで頭を痛めずに、より大規模な研究を行うことができるのに、規制の厳しいところで高い人件費を払うことに意味があるでしょうか?もし同額以下の費用で同じような効果を上げることができれば、経理担当者も株主も喜びます。ではそこに問題点はあるのでしょうか?「目的は手段を正当化する」という合理化が有効なのは、適切な管理と監督が行われている場合のみです。しかし、もしそれらの地域で費用削減のために研究で手が抜かれるようなことがあれば、集められたデータの正確さはすぐに疑われてしまいます。それらの地域で公的な認可を得る前にデータの正確性を問い直し、研究の質や正確さを維持することはできるのでしょうか? 残念ながら、研究開発を短期の費用削減目標と見なす傾向は徐々に広まりつつあるようです。さらに、大規模な研究や基礎研究よりも短期間の応用研究へシフトすればするほど、研究費に関するこのような姿勢が世界的に広まる可能性も高くなります。 博士(経営学) アメリカにて30年以上の研究・学術論文執筆経験…

第6回 スライドはシンプル・パワフルに

学術 研究の発表会場は暗い場合が多いです。細かい文字を見れば眠たくなるのは誰しもが経験済みのことです。それでも詰め込みスライドが多いのは、スライドのビジュアル効果を過小評価しているせいかもしれません。明快なスライドは不慣れな英語を強力にカバーしますので、力を入れて作成しましょう! 紙の上でコマ割りを 発表のストーリーが決まったら、それに合わせたスライド作成の計画を立てましょう。まだPowerPointは開きません。ノートなど紙の上でコマ割りをしましょう。驚くべきことに、プレゼンテーションの達人と言われる人々は共通してこの作業を行っています。ストーリーが転換するたびにアウトラインのスライドを出して現在地点を示すなどの工夫も、コマ割りをしながら綿密に計画します。1枚のスライドに入れる情報はデータを1つのみ、あるいは最小限にとどめます。スライドは1分あたり1枚が目安と言われますが、それにこだわる必要はありません。多少枚数を増やしてでも各スライドを簡潔するほうが効果的です。 削ぎ落とし、補足する いよいよPowerPointやKeynoteを用いてスライド作成です。全体を通して「一目瞭然」のデザインを目指しましょう。そのためには、作成した図表をただペーストするだけでは不十分です。凡例を大きくする、重要な部分を強調する、言及しない部分は割愛するなど、丁寧に作り込みます。文章の箇条書きは最低限に絞り込みます。アニメーションは、ストーリー展開に有効な場合のみ厳選して使用しましょう。また、先に提案したような印象的なオープニングスライドは、楽しみながら作成しましょう。 カラーユニバーサルデザイン(CUD)の視点を 一人でも多くの人に研究成果を伝えるために、スライドの色使いに配慮しましょう。人種により異なりますが、男性の十数人〜20人に1人、女性の250人〜500人に1人が、その他の人々とは異なる色覚を持っています。色で区別したはずの情報や、強調したはずの情報が一部の人々には伝わらない場合があるのです。真にグローバルな研究発表を目指すために、CUDにも配慮したプレゼンテーションを実践しましょう。日本の科学者が中心になって設立されたカラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)のウェブサイトを是非参照ください。CUDについては今後、本アカデミーでも特集予定です。 キャラクター紹介:久里 夢存(Muzon Kuri) 日本の大学で材料工学を学び地元企業に就職するも、“独立型・移動式住居”開発の夢をあきらめきれず、再び大学でエネルギー工学を専攻。工学、生物学、建築学など多分野の研究者からなるプロジェクトチームに所属し、エネルギー自給型インフラストラクチャーフリー移動式住居[Self-Sufficient Camper(S.S.Camper)]を開発中。この度、国際住環境学会(“架空”)において同住宅の自然災害時における有用性について口頭発表することに・・。口演タイトルは、“Energy self-sufficient, infrastructure-free…

第5回 Q&Aはプレゼン冒頭から始まっている

発表 でのQ&Aを上手く乗り切るコツは「あなたの人間性を前面に押し出すこと」です。口頭発表の目的はディスカッションであって、それを行うのは人間と人間です。聞き手はプレゼンテーション中にあなたに親近感をおぼえたなら、コミュニケーションが円滑に進むように取りはからってくれるはずです。 気持ちをつかめばスムーズに あなたが聞き手であったら、原稿読み上げマシンのような発表者にどのような気持ちを抱くでしょうか?発表内容がどんなに興味のあるテーマであったとしても、違和感か、ひどい場合は嫌悪感を抱くのではないでしょうか。そして質疑応答に入ったならば、質問者は発表者の顔色をさぐりながら、場合によっては問題点を指摘するような質問を投げかけることになります。原稿に頼れなくなった発表者が答えに窮する…これがQ&Aが恐怖となる筋書きです。 スムーズなQ&Aはその逆を行えばよいのです。発表者が、たとえ英語が流暢でなくとも、熱意と誠意をもって聞き手に話しかけるように発表を行えば、聞き手は自然に発表者に親近感を持ち、話に引き込まれます。そして質疑応答に入ったならば、質問者はすでに親しみを覚えた発表者に気持ちを込めて質問をすることができます。英語が得意でないとわかれば、ゆっくり質問してくれるかもしれません。つまり、Q&Aはプレゼンテーションの冒頭から始まっていて、口頭発表の全体がひとつのディスカッションを構成していると考えましょう。したがって、発表中にも聴衆に視線を配る必要があります。さらに ‘聴衆を読む’ことができれば達人の域です。 質問が聞き取れないことは問題ではない 多くの日本人がQ&Aを恐れる大きな理由として、そもそも質問が聞き取れないと言います。しかしその原因の50%が質問者にあると考えたことはあるでしょうか?多くのネイティブスピーカーが、自分にも質問がわからないことがあると言います。たしかに、ネイティブスピーカーが質問者に「今の質問は○○という意味でしょうか?」と問い返している場面は少なくありません。発表内容について最も多くの知識を持っているのは発表者ですから、明快に質問してくれさえすれば、妥当な回答はできるはずです。質問が聞き取れなかったときは、質問者の英語に問題があることも考えられますので、過剰に不安がらずに落ち着いて聞き返しましょう。Q&Aに役立つフレーズは別記事で紹介します。   キャラクター紹介:久里 夢存(Muzon Kuri) 日本の大学で材料工学を学び地元企業に就職するも、“独立型・移動式住居”開発の夢をあきらめきれず、再び大学でエネルギー工学を専攻。工学、生物学、建築学など多分野の研究者からなるプロジェクトチームに所属し、エネルギー自給型インフラストラクチャーフリー移動式住居[Self-Sufficient Camper(S.S.Camper)]を開発中。この度、国際住環境学会(“架空”)において同住宅の自然災害時における有用性について口頭発表することに・・。口演タイトルは、“Energy self-sufficient,…

第4回 伝わるジャパニーズイングリッシュを目指す

ノンネイティブ の英語の中で、インドの人々が話す英語はヒングリッシュと言われます。フランス語訛りの英語は、ひとつの魅力として受け入れられています。英語の国際共通語化によりノンネイティブの英語が地位を確立しつつあります。伝わる、魅力的なジャパニーズイングリッシュで国際舞台に斬り込みましょう! 決め手はメリハリ What time is it now? は『掘ったイモいじるな(ホッタイモイジルナ)』と言えば伝わるという有名な話があります。言い古された例ですが、ここに‘伝わる’ジャパニーズイングリッシュの全てが集約されています。英語らしく『ファッタイムイズィットゥナウ』と言ったつもりでも伝わらないのはなぜでしょう。 日本語は単語の中の各音節、および文章の中の各単語をすべてきちんと平板に発音する傾向にあります。それに対して英語は、単語の中でアクセントのある音節のみを強調、文章の中でも重要な単語のみを強調します。それにより、単語の中に消えそうな音節、文章の中にも消えそうな単語があるため、話し言葉にメリハリが付きます。米国人が日本語を話すと、「ワターシハ キヨーロガ スーキデス(私は京都が好きです)」となるのはそのためです。「ワタシハキョウトガスキデス」などと平板に発音するのは至難の業なのです。 伝わるジャパニーズイングリッシュを話している人は、一見カタカナ英語を話しているようでも、単語内および文章内のアクセントがきちんと強調されています。lとrを使い分けるなど正しい発音ができなくとも、メリハリをつけるだけで格段に伝わる英語が話せます。 単複と三人称のsに気をつける サイエンスは明快さが重要ですから、学術英語は自ずとシンプルな構造になります。したがって、論文にせよ口頭発表にせよ英作文に必要な文法は中学〜高校レベルで十分です。専門用語と専門的な言い回しを適切に用いて、短い文章表現を心がければ、下書きレベルの原稿は比較的容易に作ることができるでしょう。その際には最低限、単数形・複数形の使い分けとそれに応じた動詞の呼応、ならびに三人称・単数・現在形にsをつけること(いわゆる三単現のs)を忘れないようにしましょう。これらは日本語にない用法であるため忘れやすいのですが、基本的な部分であるがゆえ、誤るとぞんざいな印象を与えてしまいます。…

【東京大学発ベンチャー】 株式会社ユーグレナ

「ミドリムシで10億人の栄養失調を救い、飛行機が飛ぶ社会に。」   豊富な栄養を含む素材として注目を集め、急速な拡大を遂げている「ミドリムシ(学名:ユーグレナ)」市場。食品売り場にはミドリムシ入りのジュースやお菓子など多彩な商品が並び、市場規模は約100億円にのぼる。 そのミドリムシを世界で唯一屋外大量培養できるユーグレナ社は、新たなステージに向けた取り組みを進めている。ヘルスケア事業では、国内での足場を固めるとともに中国・イスラム圏など世界への本格進出を展開。同時に、環境・エネルギー事業ではミドリムシを原料としたバイオ燃料の実用化に向けた研究開発も推進している。 15年12月には、バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化計画を発表。2020年にはバイオジェット燃料による飛行機のコマーシャルフライト、バイオディーゼル燃料によるバスの公道走行を目指している。ミドリムシと共に歩んできた出雲社長のこれまでの道のりと目指す未来について伺った。 ■世界初、ミドリムシの屋外大量培養に成功 一般の家庭で育った私にとって、学生時代にはベンチャー企業を興すということは選択肢にも入っていませんでした。そんな自分を変えたのが、バングラデシュでの経験です。東京大学在学中にバングラデシュで栄養失調の子供たちに出会い、「これはなんとかしなければ」と考えるようになりました。 そして、同大学農学部に在籍していた鈴木健吾(同社取締役研究開発担当)から研究テーマである「ミドリムシ(学名:ユーグレナ)」を紹介され、その可能性に魅了されました。藻の一種であるミドリムシは体長わずか約0.05mmながら植物と動物両方の性質を持ち、59種類もの栄養素を含んでいます。また、光合成により二酸化炭素を吸収し、バイオ燃料を取り出すことも可能なのです。 当時、ミドリムシ商品を専門に扱っている会社はなく、自分たちでやろうと2005年に起業、同年12月には各大学や企業の協力を経て世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功しました。 ■国内のミドリムシ市場を300億円規模へ 大量培養の成功後、私自身約500社に営業に飛び込みましたが成果が上がらず、2008年に伊藤忠商事からの出資が決まったことが転機となりました。現在では、一人でも多くの方にミドリムシを知っていただくために、大手食品メーカーとの共同開発にて様々な商品を展開しています。同時に12年から自社ブランド「ユーグレナ・ファーム」を立ち上げ、自社製品の強化にも取り組んでいます。立ち上がりは順調で、主力商品である「ユーグレナ・ファームの緑汁」は、定期購入者数が約6万3000人を超えました。現在、ミドリムシ入り商品市場は末端価格で約100億円規模にまで成長しています。私たちは食品や化粧品など商品の形にこだわることなくミドリムシを多くの人に届け、18年には300億円規模への拡大を目指しています。 世界に向けては、14年2月にイスラム圏への輸出が可能となるハラール認証を取得するなど、中国・イスラム圏への市場開拓を進めています。また、同4月からはバングラデシュで約5000人にミドリムシ入りのクッキーを配布していますが、この活動をいずれは100万人に広げ、将来的には10億人の栄養失調の解決に役立つことを目指しています。 ■2020年はミドリムシを世界に発信するチャンス 14年6月から、いすゞ自動車との共同研究により、ミドリムシを原料としたバイオディーゼル「DeuSEL®」を利用したシャトルバスの運行を開始しました。また、15年12月にはバイオジェット・ディーゼル燃料の実用化計画について発表しました。 現在、ミドリムシ由来のバイオ燃料研究開発は、マラソンで言う折り返し地点にまで来ています。東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年にはミドリムシでバスが走り、飛行機が飛ぶ社会を実現させ、日本を訪れた外国人に「日本には石油に代わるクリーンエネルギーがある」と各国で口コミしてもらうのが狙いです。…

第3回 聞き手を引き込むストーリーを「練る」

プレゼン において、よく練られたストーリーは聞き手を離しません。たとえ英語が流暢でなくとも聞き手を引き込む威力があります。心血を注いだ研究結果を一人でも多くの人に聞いてもらうためには、データを羅列して述べるだけでは不十分です。スライド作りに着手する前に、ノートを開いて構想を練りましょう。 口頭発表とはストーリーを展開すること 聞き手を想定し内容を絞り込んだら、各要素をつなぐストーリーを入念に作り込むことが極めて重要です。この作業を経ていない研究発表が非常に多いことが学会を眠たい場にしていると言っても過言ではありません。ここでいうストーリーは‘筋書き’ですから、構想を練る際に発表の流れをチャート化することが有効です。ひとつの研究が複数の実験や試験から成る場合は特に聞き手を迷わせないストーリー展開の工夫が必要です。論文であればページをさかのぼって不明点を確認することができますが、口頭発表は過去にさかのぼることができませんので、発表者が聞き手を巧みにガイドする必要があります。 ズームインからズームアウト ストーリーを作成する際には、発表全体がズームインからズームアウトの構図を持つようにします。発表の冒頭で研究の位置づけを示す全体像を示し、研究の詳細を紹介したら、最後に研究成果の意義を示す全体像でしめくくることです。これは発表者の取り組んでいる研究が、科学的課題を広く視野に入れていることを示すために重要です。 オープニングにひと工夫を 口頭発表はストーリー展開を明確にすることで格段に向上しますが、さらにオープニングにひと工夫を加えることをお勧めします。具体的にはイントロダクションの冒頭を印象的にすることです。ごく短い時間を使って、発表内容に関連する何らかのエピソードや映像を挿入することで聞き手の気持ちを発表者にぐっと引き寄せることが出来ます。質の高いプレゼンテーションで名高いTEDカンファレンスはオープニングおよびストーリー構成の参考になります。 キャラクター紹介:久里 夢存(Muzon Kuri) 日本の大学で材料工学を学び地元企業に就職するも、“独立型・移動式住居”開発の夢をあきらめきれず、再び大学でエネルギー工学を専攻。工学、生物学、建築学など多分野の研究者からなるプロジェクトチームに所属し、エネルギー自給型インフラストラクチャーフリー移動式住居[Self-Sufficient Camper(S.S.Camper)]を開発中。この度、国際住環境学会(“架空”)において同住宅の自然災害時における有用性について口頭発表することに・・。口演タイトルは、“Energy self-sufficient, infrastructure-free…

第2回 伝える内容を「絞る」

プレゼン において聞き手としての経験があれば、‘詰め込み発表’がいかにわかりにくいか知っているはずです。発表者になったら、「結局何が言いたかったのかわからなかった」パターンに自ら陥らないよう、徹底的にシンプルな発表を目指しましょう。これだけでも、不慣れな英語を強力に補うことができます! 聞き手を知る 口頭発表で忘れがちなのが、聞き手を意識するということです。学会発表では、聞き手は発表者の研究領域の専門家である可能性が高いと思われます。しかし近年、学会はますます大規模化し、研究領域はますます細分化されていますので、聞き手は必ずしも発表者の研究領域を熟知していないことを想定したほうがよいかもしれません。発表が予定されているセッションのテーマや座長、発表者の顔ぶれをチェックして、聞き手を具体的に想定しましょう。 “take-home message”を決める 口頭発表は論文と同様に、イントロダクション、対象または材料、方法、結果、考察、サマリーなどの要素で構成します。しかし、短時間に伝えられるように内容を絞り込む必要があります。その際にはまず、最も伝えたいメッセージを決めましょう。これは国際学会でよく“take-home message”と言われているものです。研究が複数の実験や試験からなる場合も、それらを統合したメッセージを引き出し、出来る限り簡潔な一文にまとめるのが望ましいです。 サポートする情報を取捨選択する “take-home message”が決まれば、発表の各要素はこれをサポートするのに必要最小限の内容に絞り込みます。情報やデータの取捨選択にあたっては、聞き手が必要とする内容に焦点を合わせると同時に、制限時間内にカバーできる量を考慮します。通常、「イントロダクション」は研究の動機や背景を伝えるために非常に重要ですが、聞き手が専門家のみであればむしろ簡略化すべき場合もあります。冗長になりがちな「対象/材料」「方法」はできるだけ簡潔にし、「結果」「考察」に十分な比重を置きましょう。必要に応じて「仮説」や「今後の展望」を述べる余地も残します。 キャラクター紹介:久里 夢存(Muzon Kuri) 日本の大学で材料工学を学び地元企業に就職するも、“独立型・移動式住居”開発の夢をあきらめきれず、再び大学でエネルギー工学を専攻。工学、生物学、建築学など多分野の研究者からなるプロジェクトチームに所属し、エネルギー自給型インフラストラクチャーフリー移動式住居[Self-Sufficient…