各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十二回目は、駒澤大学の日野健太教授にお話を伺いました。後編では、研究者を目指す若手の方に向けてのメッセージと英語力向上への秘訣をお伺いします。 ■ 大学や大学院で英語論文の書き方や口頭発表の仕方を学ぶ機会は少ないと思いますが、研究者を目指す方は、それらをどのように鍛えていくのが良いのでしょうか? 博士課程の学生だと日本語で論文を書き、発表するだけで精いっぱいだと思いますが、少なくとも英語論文を読む機会はあると思います。そのとき、1回はきちんと声に出して読むことを薦めています。声に出して読むというのはシンプルなことですが、すごく役に立ちます。大学、大学院の両方で外書講読の授業を持っていますが、学生には必ず声に出して読んで来るよう強調しています。半年間やって上達する学生は、予習の際に真面目に声に出して読んでいます。やっているか、やっていないかで、明らかな差が出る。音読を継続することが、スキルアップにつながると思います。 ■ 今後、口頭発表をする学生へ、アドバイスがあれば教えてください。 「とにかく、やってみろ。1回は恥をかけ。」でしょうか。恥ずかしい思いをし、もっと頑張らねば、と思うことがないとダメだと思います。最初からうまくいくわけがないから、とにかくやってみなさいということですね。 5月にメキシコで開催されたIFSAM(2016年のメキシコ大会)に行ってきましたが、メキシコ人の若手研究者が必死に英語で発表しているのを見て、昔の自分を思い出しました。一生懸命にやっているのは見てわかりますから、最初からうまくできる必要はないと思います。 ■ 学会が終了した後などに研究者同士がネットワークを広げる機会があると思いますが、それも英語へのモチベーションにつながるのでは? 国際学会の懇親会などで海外研究者が積極的にネットワーキングしている中に日本人が飛び込んでいくと、なかなかの”アウェー”を感じます。世界の研究者は交流をけっこう大事にするらしく、コーヒーブレイクなどで気軽に話をしていますが、あのアウェー感はすごい。それでも、また行こうと思いますけど。 ■ あきらめずに目の前の機会に向き合うことが大切なのですね。若い先生方へのメッセージをお願いします。 就職した後の目標をどこに置くかを考えておくべきだと思います。私の場合は、学位論文を書くのが自分で作った「30代の上り坂」でした。現在は経営学でも学位を取ってから就職する人が増えています。そんな中で若手の先生たちは、国際学会で発表をし、その後に英語で論文を発表するとか、「30代の上り坂」を意識して作ると良いのではないでしょうか。 ■ 英語添削などのサービスを提供している会社に対して、「こんなサービスがあれば役に立つ」といったご要望はありますか? 書いて直してもらって、を繰り返せば論文執筆は絶対にうまくなると思います。自分はこう書いたけど、本当はこの書き方が正しいと示されることで、少しずつ言い回しが身に付いていきます。ただ、添削済みの原稿に英語の勉強法などをびっしり書かれても、人によっては消化しきれないかもしれません。少しで良いので、パーソナルなコメントが返ってくると、丁寧に見てくれているなとうれしくなります。例えば「あなたの英語はよくこういう表現を使っているけど、こういう表現のほうが良いんじゃないか」とか「これは、あまり学術論文では使わない表現です」といったように。そうしたコメントが付いていると、顔の見えない校正者の方への共感の念を抱くんです。 ■ 最後に個人的な質問ですが、先生の分野(経営学)だと、平均年何本の論文投稿をするのでしょうか? わかりません……。1本も書かない人もいるので、平均したら小数点の世界かもしれません。文系の研究者は本の執筆をしたり、翻訳をしたり、学術誌だけに寄稿しているわけでもないですしね。 今は洋書を日本で出版するための和訳を行っていますが、これは大学教授の伝統的な仕事の一つです。何人かで分担して作業を進めていますが、翻訳の質に個人差があるのは事実です。英語から日本語または日本語から英語の翻訳でも、文章を書いてみることで上手くなっていく、くらいのことは私の口からでも言うことができます。ただ、どのくらい書けば上達するかを正確に言うのは難しいです。年に2本仕上げられれば言うことないのではないかと思います。…
2017-05-24