学術界を知る

ICMJE Recommendations:2024年更新ではAI使用における透明性の確保を強調

世界の主要な医学雑誌の編集者や出版社の集まりである医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors, ICMJE)の「Recommendations for the Conduct, Reporting, Editing and Publication of…

「若手研究者の ”1,000 True Fans” 実現企画会議 – みんなでつくる研究の未来」イベント参加レポート

クラウドファンディングやサポーター制度などを通じ、開かれた学術業界の実現を目指すacademistが2021年より行っている若手研究者向け研究加速プログラム「academist Prize」。現在このプログラムの 第4期(2024年9月〜2025年8月)が進行中です。 2025年4月24日(木)、今期のプログラムに採択された7名、および協賛企業の株式会社ビットマイスターによる企業賞(「ビットマイスター賞」)の過去の受賞者2名が東京大手町のInspired.Labで開催されたイベント「若手研究者の ”1,000 True Fans” 実現企画会議 - みんなでつくる研究の未来」に登壇し、会場とZoomでの参加者にそれぞれの研究や、プログラムについて語りました。エナゴのマーケティング担当者とライターも会場で参加させていただきました。 今期のacademist Prizeに採択されたのは、寄付のマーケティング研究を行う會澤裕貴(あいざわゆたか)さん、実践的な取り組みの中でより良いケアを探る金子智紀(かねこともき)さん、災害からの復興についてフィールドワークを行う土田亮(つちだりょう)さん、AI・機械学習の技術を用いて宗教性/スピリチュアリティを研究する林尭親(はやしたけちか)さん、美を感じる仕組みや美がもたらすものを心理学的に究明する櫃割仁平(ひつわりじんぺい)さん、亡くなった人の遺伝学的検査(死後遺伝学的検査)に基づく新しい予防医療の体制構築を目指す福嶋佳菜子(ふくしまかなこ)さん、意識の発達の多様性の解明に取り組む渡部綾一 (わたなべりょういち)さんの7名。(ドイツ在住の櫃割さんのみリモートで登壇) サイエンスコミュニケーターの佐伯恵太さんの進行により、冒頭に7名がそれぞれの取り組みを手短に紹介する「ピッチ」が行われた後、会場参加者が、個々の研究者の元に集まって踏み込んだ対話をするセッションに移行しました。 「共に生きるケア」の実現を模索する金子さんは、法人を設立し、高齢者介護の課題先進国として注目される日本で、海外からの視察者も数多く受け容れる近況を報告。意識の発達の多様性の解明に取り組む渡部綾一さんは、実験参加者が行う具体的なテストとその結果について解説し、会場参加者からの熱心な質問に回答。災害からの復興をテーマとする土田亮さんは、フィールドワークの現場スリランカで自身が撮影した写真集などを持参し、アートによる情報発信についての説明にも参加者たちは聴き入っていました。…

STEAM人材が活躍する時代

AIによって人間の仕事が奪われるのか-といったテーマが話される時代、今こそ必要とされるのはどのような人材なのか。その答えの鍵になるのは「STEAM人材」ではないでしょうか。STEAM人材とは、STEMと呼ばれる科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の分野にリベラルアーツ(Arts)を加えた幅広い分野の知識や技能を習得した人となります。以前は科学技術リテラシーを重視したSTEM人材の育成が推進されていましたが、テクノロジーやAIが普及した今では、社会に求められる人材の資質が変化し、「A」の要素を加えたSTEAM人材の育成が注目されています。 社会の変化:STEMからSTEAMへ 2000年代、実社会に応用できる科学技術の知識や技能の習得を促そうというアプローチのもと、アメリカを中心にSTEM教育についての議論が活発化し、STEM教育による人材育成が国の競争力を高めるとして、急速に世界に広がっていきました。アメリカでは2000年代に国を挙げてSTEM教育を推し進め、2015年にはSTEM教育法 STEM Education Act を制定しています。 その後、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)やロボット、AI(人工知能)といったテクノロジーがめざましい速度で発展すると、あらゆる産業分野で今までにはない革新的技術が使われるようになりました。急速な科学技術やテクノロジーの発展により、第四次産業革命(インダストリー4.0とも呼ばれる)が起きていると言われることもあるようですが、私たちの社会・経済はめざましい勢いで大きく変化しています。生活の中の「普通」がどんどん変わっていっているのです。 ではここで、この十数年の間に生活の中の「普通」を覆してきた企業のビジネスを振り返って見ましょう。 すぐに頭に浮かぶのは、Apple、MicrosoftやGoogleといった世界を席巻するIT企業の製品やサービスでしょう。例えば、2007年に発売されたiPhoneは、技術もさることながら、そのユーザーフェースに画期的なデザインを取り入れたことで衝撃的でした。それまでの携帯電話にあった物理的なキーボードをなくし、基本的な操作を液晶画面の中に全て詰め込んだのです。そのデザインは発売から20年近くなる今も使い続けられ、他社の携帯電話にも普及しています。 Googleなどのサービスにおいても、ユーザーを意識したデザインが取り入れられています。かつてはデザインより機能が優先されていましたが、発想の転換を新しい技術がサポートし、それまでは実現できなかった製品やサービスが登場するようになっているのです。祖父母の時代、ほんの50年程前には、パソコン並みの機能を持った電話がポケットに入っているなど想像すらできませんでした。逆に、現代の子供にはダイヤル式の電話機は何だかわからない物体となっていることでしょう。 急速に変化する社会の中、ビジネスの世界では、技術開発やマーケティングに人間本来の創造性やユーザーの目線を意識したデザインを取り入れていこうとの動きが広がっています。こうした変化に対応するには、ユーザーの本質的なニーズを見つけながら変革させていく思考である「デザイン思考(Design thinking)」が求められます。携帯画面のレイアウトやボタンの操作性だけの問題ではありません。ほとんどの業種においてホームページやSNSコンテンツを作成する際、ユーザーのニーズを意識したデザインは不可欠です。「デザイン思考」が注目されるようになったことこそが、芸術的な感性や創造力を育む「A(リベラルアーツ)」を教育に取り込み、STEMからSTEAMへと変化してきた背景にあります。…

STEMからSTEAM:文理融合を目指す教育へ

2000年代初頭には、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の4つの分野を横断的に学び、自分で考えて問題を発見し、解決する力を養うことを目指すSTEM教育が主流でした。しかし、AI(人口知能)が浸透し、単純作業などがAIによって効率的に処理されるようになり、スマートフォンが普及している現代に生きる子どもたちには、STEMの教養(科学技術的な知識)とともに、「自分で考える」力が必要となっています。そこで、最近は創造性や表現力を育成しようとの発想から、STEMにArt/Arts(芸術/リベラルアーツ、教養)を加えたSTEAM教育を推進する動きが広がっています。STEMとSTEAMの違い、日本のSTEAM教育の状況などを紹介します。 STEM教育とは STEMという頭字語は1990年代に使われ始めました。当初は「SMET」と呼ばれていたものが、2001年にアメリカ国立科学財団(National Science Foundation: NSF)が「STEM」と使ったことからSTEMという言葉が広がったと記されています。1990年代から2000年代にかけてのハイテク・ブームの中で国際競争力を高めるには、科学技術の知識とスキルを持った人材の育成が必要だったため、密接に関わっている科学(S)・技術(T)・工学(E)・数学(M)の4つの分野を関連づけて学ぶように「STEM教育」が推奨されたわけです。 アメリカでは2000年代、国を挙げてSTEM教育を推し進めてきました。オバマ大統領(当時)はSTEM教育を国の優先課題と位置づけ、2011年には年間37億ドルの予算を付けました。2015年にはそれまでのSTEM教育プログラムを法的に支援するためにSTEM教育法(STEM Education Act)を制定し、STEMにコンピューターサイエンスを含めるなど、定義を拡張させていきました。ITが社会に浸透し始めたころ、STEM知識を身につけることは、より給与の良い職に就くためのチャンスにつながったのです。NSFによると、2012年の(米国内の)科学・エンジニア職種の労働者の収入の中央値は78,270ドルで、米国の全労働者の中央値(34,750ドル)の2倍以上であったそうです。 STEAM教育とは:STEM+A STEAM教育とは、STEMに芸術分野のArt/Arts(A)を追加した教育方針ですが、「A」には幅広い分野が含まれています。STEMが科学的概念に重点を置くのに対し、STEAMは創造的・芸術的なプロセスを含めて捉えることを重視しています。 STEAMは、2006年にアメリカの教育者ジョーゼット・ヤークマン氏によって提唱された教育概念です。これからの人材育成には、科学技術への理解に加えて判断力や問題解決力が必要であるとして、芸術性・創造性を育むことを目的に「A」が追加されました。芸術と科学技術とのつながりは分かりにくいかもしれませんが、例えば、彫刻を学ぶ学生が彫刻を彫らずに、3次元モデルをデザインするためにコンピューターのプログラムを学ぶというようなものです。STEAM教育は、5つの分野の知識・技術を関連づけながら総合的な知識、教養を身につけ、科学的専門性だけでなく、独創的かつ創造的な考え方を養うことを目指しています。 文部科学省によるSTEAMの定義 STEAM 教育(Science,…

ICMJE Recommendationsアップデート2025年版ー倫理的研究出版は新たな局面に

研究インテグリティ(研究における健全性・公正性)とは、研究者が守るべき倫理・規範の基本的な概念です。医学・科学の研究実施、報告、出版にとって国際的な倫理基準に従うことは、研究結果の信頼性を確保するために極めて重要です。 医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE: International Committee of Medical Journal Editors)は、1978年に「生物医学雑誌への統一投稿規定(Uniform Requirements for Manuscripts Submitted to Biomedical Journals)」を公表して以来、生物医学分野で重要な役割を果たしてきました。ICMJEのICMJE…

土田亮氏へのインタビューー個々人が意思をもって災害復興できる社会の実現を目指して

日本初の学術系クラウドファンディングサイト「academist」を運営するアカデミスト株式会社が実施する、若手研究者を対象とした研究費支援プログラム「academist Prize」。エナゴが協賛する同プログラム第4期の採択者である、東京大学大学院総合文化研究科 超域文化科学専攻 日本学術振興会 特別研究員 土田 亮博士に、書面インタビューでお話を伺いました。   1. 被災者の声に耳を傾けて、個人の意思に基づいた行動や、国・自治体のより良い選択を促す研究を行っていらっしゃいます。いつごろ、どのようなきっかけで今の研究テーマに興味を持たれましたか? 博士課程の研究で、コロナ禍を経ながらもスリランカで災害復興と日常を調査してきて、無事に博士号をとりました。今後スリランカに加えて日本でも地道にフィールドワークをしたいなと考えていた時に、能登半島地震が起きました。その時は実家の宮崎に帰っていて、夕方以降にニュースを見て深く動揺してしまいました。学位を取ったり、論文を書いたりしてきたからって、結局こういうときに何ができるんだろうか、と冷笑的になりながらも、真剣に向き合うなかで自分の心に深く鋼鉄の杭が刺さったような時間を悶々と過ごしていました。 今のテーマに関して明確に意識し出したのは、2024年の2月ごろだったかなと思います。先の年始から、何かしら関わりをもつことができないか、どのような形が望ましいのか、ということをSNSやニュースを中心に探索していたら、諸々の反響を目の当たりにして、結局自分自身が燃え尽きてしまいました。「被災した地域や人たちの方がもっと苦しんでいるのに、どうして私がこんなに……自分ってこんなに弱かったのかな」と考え詰めてしまうことが、さらに苦しみを重くしました。あまりこの時の記憶もおぼろげで、必要最低限の移動や仕事以外は、ほとんど自室で塞ぎ込んで、何をしたかもよくわからないような気がします。それくらい傷ついてしまったんですね。 鬱屈になって、情報や人から離れて一人で考え込んでいる時に、ふと「私は誰の声を聞いていたんだろう、どういう立場でいたい、関わりたいのだろう」と考えたんですね。「行かなきゃ、誰がどんな声で話しているのか、わからない」と。そして、自らとらわれてしまった声を一旦振り切って、まずはそこで暮らしてきた人々や現場で活動を行う人々の声を聞こう。その声をたよりに、不器用ながらも手を差し伸べられるようになるためには、自分が何者かを身体の経験から知らないと、何も答えは出ないと気づいたんです。 そういった混沌や苦しみのなかで、災害がもたらす苦しみを他者と共有・理解できない中で、いかに私たちは互いに傷や悲しみ、苦しみに関わり合えるのかという問いや、ボランティアやケア、語ること、聴くことによって互いにどんな生活があったのか、どうやって支援することができるのかといった、自己犠牲や解釈を施しながらも、いかにカタストロフィのさなかや新しい日常に向かう復興の時間のなかで、自ら生きていることや過ごす日々、選択、葛藤、決定を肯定できるのか、という問いが、普段は意識しないけれども、災害を通してふつふつと湧き上がってきました。 これらの問いを現場にコミットしながら探求していきたいという想いから、少しずつ心を取り戻し、身体も元気になり、フィールドワークとボランティア、聞くこと、記録することを始めました。  …

金子智紀氏へのインタビューー「ケアする / される」から「ともに生きる」社会へ

日本初の学術系クラウドファンディングサイト「academist」を運営するアカデミスト株式会社が実施する、若手研究者を対象とした研究費支援プログラム「academist Prize」。エナゴが協賛する同プログラム第4期の採択者である、慶應義塾大学SFC研究所上席所員で、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程在籍中の金子智紀氏に、書面インタビューでお話を伺いました。   1.「パターン・ランゲージ」と呼ばれる「知の記述方法」を、「思考の補助具」として活用することで介護のより良い実践を促進する研究を行われています。いつごろ、どのようなきっかけで今の研究テーマに興味を持たれましたか? 最初に「介護」に触れたのは、中学の時の怪我とリハビリ経験がきっかけでした。その後、高校に進学し、生徒会活動の一環で介護施設でのボランティアを経験。そこで介護現場の現状や、介護人材不足と制度の崩壊リスクといった「2025年問題」を知り、「自分が最期を過ごしたいと思える介護とは?」という問いが生まれました。 成城大学進学後、その思いはさらに強くなり、パターン・ランゲージという「知の記述方法」と出会います。パターン・ランゲージとは、よい設計やよい実践における共有パターンを言語化(ランゲージ化)したものです。介護分野にも応用できると確信し、パターン・ランゲージ研究の第一人者である井庭崇先生に学ぶため、慶應SFC(湘南藤沢キャンパス)への再受験を決意。 猛勉強の末、2014年にSFCに入学。1学期目から井庭研究室に所属し、認知症とともによりよく生きるための工夫をパターン・ランゲージで記述するプロジェクトに参加しました。全国で活用していくために、学部3年生の頃には、RUN伴と呼ばれる認知症の当事者、家族、地域の方々が参加するイベントの事務局として全国を回り、現場の実情を徹底的に調査しました。その結果、「自分が最期を過ごしたいと思えるケア」に出会い、具体的な研究領域が見えてきました。 介護は環境や状況、個々の症状によって常に変化するため、「これが正解」や「よい介護とは〇〇である」とトップダウン的に定義することは難しい。しかし、だからといって、他の実践から何も学べないわけではないはず。というのも、全国の介護現場を回る中で、「あそこの介護はいいよね」と言われる施設には、共通する特徴があると感じていたからです。ボトムアップの視点で優れたケアを実践している施設を調査し、その共通項を示すことで、多くの人の実践を支援できるのではないかと考え、「やはりパターン・ランゲージしかない」と思いました。井庭研究室では、いきなりプロジェクトを持つことができないので、学部での経験を踏まえて、修士課程でプロジェクトを正式に発足させました。   2. academist Prize 第4期にアプライした理由は何ですか? 博士論文の執筆に専念できる環境を作るため、academist Prize…

渡部 綾一氏へのインタビューー意識の発達の多様性を解明し、子どもたちが生きやすい社会を目指す!

日本初の学術系クラウドファンディングサイト「academist」を運営するアカデミスト株式会社が実施する、若手研究者を対象とした研究費支援プログラム「academist Prize」。エナゴが協賛する同プログラム第4期の採択者でありアンバサダーでもある、京都大学大学院文学研究科渡部 綾一博士に、書面インタビューでお話を伺いました。   1. 心理学や発達科学など分野を横断する学際的な研究を行っていらっしゃいます。いつごろ、どのようなきっかけで今の研究テーマに興味を持ちましたか? 意識の発達研究を始めたのは、大学院に入ってからですが、ぼんやりと意識の発達に興味を持ち始めたのは、小学生のころからです。私は当時、自分の行動や感情をコントロールできない子どもで、いつも怒られて、泣いてばかりでした。自分の思考や行動なのに、自分では思い通りにならないことに苦しんでいました。同時に、苦しんでいることを周りの人に理解してもらえないことに、疎外感を感じていました。それから「私とは何か」「生きるとは何か」「世界とは何か」を考えるようになりました。そのヒントが、意識と発達だと思って、今の研究テーマを始めました。   2. 意識の発達に関わる研究活動の魅力はどのようなところですか? 研究活動の魅力はいろいろありますが、大きく2つあります。 1つは、意識の不思議な現象や子どもの反応が、純粋に面白く魅力です。私は、バックワードマスキング現象という、意識の現象を利用した実験をしてきました。こういう実験から、私たちが意識している世界と現実の世界が少し違うことがわかってきました。また、子どもたちは私たちの予想を超える反応をしてくれます。そういった、体験が魅力です。 もう1つは、この面白さを他の人に共有できることが魅力です。こんなにおもしろい世界があるよ、ともっと多くの人に知ってほしいです。意識はまさに生きることの不思議・面白さですし、子どもは子育ての不思議・面白さにつながります。生きることや子育てをサポートする知見やモチベーションにつながったら嬉しいなと思い、研究活動をしています。   3.…

櫃割仁平氏へのインタビューー「美は世界を救う」を心理学で実証したい

日本初の学術系クラウドファンディングサイト「academist」を運営するアカデミスト株式会社が実施する、若手研究者を対象とした研究費支援プログラム「academist Prize」。エナゴが協賛する同プログラム第4期の採択者でありアンバサダーでもある、ヘルムートシュミット大学 人文社会科学部 リサーチフェロー、日本学術振興会 海外特別研究員 櫃割 仁平博士に、書面インタビューでお話を伺いました。   1. 俳句という特定の詩の形式を対象として、様々なテーマで研究を行われています。いつごろ、どのようなきっかけで今の研究テーマに興味を持たれましたか? 初めて研究を行った卒業論文のテーマは「感動体験」に関するものでした。自分自身がいろいろな物事に感動しやすい性格で、その感動というものが人生に彩りを与え、成長していく鍵にもなっているのではないかと思ったからです。 ただ、「感動」の定義は広く、曖昧であり、大学院で研究していくにはもう少し絞ったほうがいいと考えていました。その結果が、アートや美の研究であり、俳句という題材でした。 2000年以降、アートや美に関する心理学の研究が増えてきたのですが、その主要な題材は、絵画などの視覚芸術や音楽でした。言語芸術の研究はまだまだ未解明要素も多く、そこに集中して取り組み始めました。その中でも俳句は、世界最短の詩であるので、美の核心に迫るためにいい題材だと思いました。物理学で原子、原子核、陽子、クオークなどとどんどん小さい世界を探求することで、真理に迫っていこうとする動きと近しいものを感じていました。   2.…

林尭親氏へのインタビューー多様化する宗教観の研究を通して、多文化共生の在り方を考えたい

日本初の学術系クラウドファンディングサイト「academist」を運営するアカデミスト株式会社が実施する、若手研究者を対象とした研究費支援プログラム「academist Prize」。エナゴが協賛する同プログラム第4期の採択者である、京都大学大学院 教育学研究科 教育学環専攻 教育認知心理学講座 博士課程在籍中で、日本学術振興会特別研究員の林尭親氏に、書面インタビューでお話を伺いました。   1. 日本文化を対象として、多様な価値観が共生する現代の生き方を考える研究を行われています。いつごろ、どのようなきっかけで今の研究テーマに興味を持たれましたか? 日本文化を研究したいという気持ちは、大学の頃から考えていたことでした。大学時代はアメリカにいたので、いろんな文化に触れる中で自然と文化比較に興味がわき、せっかく研究するなら自分がよく知る文化を研究しようと思いました。 その中でも特に宗教に興味がわき、学部時代から専攻していた心理学分野での研究を始めました。最初は自分の興味に従って研究を進めていましたが、修士課程2年(M2)の頃ぐらいから研究費の申請書などを書いたり、スタートアップでインターンをしたりする中で、自分の研究の社会的意義について考えるようになりました。宗教間紛争は宗教的な価値観の違いに起因する争いですが、このような思想や価値観の違いを乗り越えることが社会における課題の一つであると考え、多様な価値観がある現代社会の生き方を考えたいと思うようになりました。   2. academist Prize…