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研究の選択バイアスを軽減する10のヒント

学術研究では、真実を明らかにするための注意深い目と客観性を確保するための揺るぎない意思が不可欠ですが、本人も気づかないバイアスは、どのように注意すればよいのでしょうか。 成功事例だけが注目されて語られ、失敗事例は記録されずに顧みられることもない―これはsurvivorship bias(生存者バイアス、または生存バイアス)と呼ばれる選択バイアスの一種で、学術研究でも生じうるものです。生存者バイアスは、洞察力をにぶらせ、理解をゆがめてしまう恐れがあります。特定の行動において成功することが当然で、その結果が保証されているかのような思い込みを植え付け、失敗事例の有用なデータを隠してしまうのです。こうなってしまうと、誤った結論、誤った決断に至りかねません。本記事では、学術研究における生存者バイアスについて探求し、その広範囲に及ぶ意味を探り、研究に与える7つの影響と、バイアスの落とし穴をうまく切り抜けるための10のヒントを紹介します。 生存者バイアスとは 生存者バイアスとは、あるプロセスや出来事の「生存者」のみを基準に判断し、生存(成功)しなかった人や事象を無視したときに発生する選択バイアスの一種です。このバイアスの名前は、「生き残った」つまり、選択を通過できたデータだけに焦点を当て、「生き残れなかった」データを無視したときに発生するエラーに由来しています。成功事例のみに注目し、失敗事例(生存していないデータ)を顧みないことによって、不完全で歪んだ結果の考察を導き出してしまうのです。このバイアスは、ビジネス、金融、歴史、そしてもちろん学術研究など、さまざまな領域で散見されます。研究者がこの生存者バイアスの影響を軽減するためには、多様な視点やデータを積極的に分析に取り入れる必要があります。 研究における生存者バイアスの影響 生存者バイアスは、事実の認識を歪め、誤った結論を導く可能性があります。失敗例や不成功例を見落とすことで、リスクを過小評価したり、成功の可能性を過大評価したり、さらには誤った仮定や方策を採用したりすることにつながりかねません。生存者バイアスを軽減・回避するためには、生存者と非生存者の両方に目を向け、極端な事例だけでなく、結果の分布全体を分析することが極めて重要なのです。 研究における生存者バイアスの例 ヘルスケアおよび医学研究における生存者バイアスの例を見てみましょう。治療や介入に成功した患者のみに焦点を当ててしまう生存者バイアスは、その医学研究に影響を与える可能性があります。生存者バイアスは、疾病診断、その中でも特に診断後の生存率を調査する際に見られます。例えば、重篤な診断をされてからの患者の生存率を見た時、診断後まもなく患者が死亡した場合、その患者は調査対象者数に含まれないので、見かけ上、生存率は高くなります。一般的に若く、体力もあり、良好な既往歴などといった因子を持つ患者(被験者)は予後が良好で、こうした因子を持たない患者と比較すると高い生存率を示す傾向にあります。しかし、病気の診断後から一定期間のみを切り取った生存率の計算では、死亡した患者が除外されるケースが多く、結果として実際の確率より健康な人の割合が過剰になってしまうのです。 COVID-19のような世界的なパンデミック事象の場合、ウイルスの影響を正確に評価することは困難です。疫学者や医療専門家は、生存率の計算だけに頼っていては包括的な把握ができないことに注意を促しています。例えば、COVID-19の検査を受けずに死亡した人は、ウイルスに関連した公式の死亡者数に含まれません。このことがCOVID-19感染者の生存率を分析する上で偏りをもたらす可能性は捨てきれません。特に、検査能力やインフラが圧倒的に不足している国では、データが不完全になり、生存率の計算に歪みが生じる恐れがあります。 「生存者バイアス」の例として最も有名なのは、第二次世界大戦中の軍用飛行機の話 でしょう。第二次世界大戦中、コロンビア大学の統計学者アブラハム・ウォルドと彼の研究チームは、軍用飛行機の研究で生存者バイアスの興味深い例に遭遇しました。彼らの任務は、敵機に打ち落とされないように飛行機の装甲を補強することでした。その任務達成のために帰還した飛行機の損傷箇所を分析し、そのデータから機体の補強箇所を提案することがミッションでした。最も損傷を受けた箇所を補強することは、一見合理的なように見えますが、ここに生存者バイアスが潜んでいます。 ウォルドは、撃墜され、帰還できなかった飛行機を無視して、無事に帰還した飛行機の損傷部位だけを考慮したのでは生存者バイアスがかかってしまうことに気づきました。この発見は、彼らのアプローチを変えることにつながり、ウォルドは、帰還した飛行機の損傷が激しい部分は、むしろ、その箇所に被弾しても帰還が可能だったのに対し、急所となる部位を損傷した飛行機は撃墜されてしまったと気づきました。ウォルドはこのバイアスを考慮し、データで過小評価されていた部分、具体的にはモーターとコックピットの周辺を補強することを提案しました。これらの急所に被弾した飛行機は撃ち落とされて帰還できなかったので、その機体の損傷箇所のデータは含まれていなかったわけです。よって、生存者バイアスを考慮した上で必要な部位を強化することにより、本当に必要な補強を施した機体ができました。 生存者バイアスは学術研究においてもいくつかの重大な影響を及ぼし、調査結果の妥当性と信頼性を損なう可能性があります。以下は、生存者バイアスが研究に与える主な影響です。 1.結論をゆがめる:生存者バイアスは、相関関係と因果関係についての基本的な誤解から生じるものなので、生存者バイアスがかかると結論がゆがめられ、事実が誤って伝えられることになりかねません。生存者や成功事例のみに注目することで、研究者は不正確な結論を導き出したり、研究対象の集団や現象全体について不当な主張をする恐れがあります。 2.理解不足をまねく:生存者バイアスにより、研究対象に対する理解が不完全になる可能性があります。非生存者や想定範囲外の結果を除外することで、結果に変化をもたらす根本的なメカニズムや要因に関する洞察につながる重要なデータを見逃すことにつながりかねません。…

ChatGPTに「できない」9つのこと

急速に広まっているChatGPTですが、万能というわけではありません。ChatGPTは、アメリカのOpenAI社が2022年11月に公開した対話型AIサービスです。チャットで質問したことに対し、膨大なデータから情報を収集して答えてくれるわけですが、GPTが「Generative Pre-trained Transformer」の略であることからも察せられるとおり、回答を出力するためには事前学習(pre-training)が必要です。2023年6月時点での普及モデルGPT-3.5の事前学習データセットが2021年9月までのものであるため、2022年以降の情報が含まれていないことが指摘されていますが、プラグイン機能を追加することでChatGPTが新しい情報にもアクセスできるようにするといった対策や、深層学習アルゴリズムを使ってインターネット上の大規模なデータセットから情報収集した後に後学習(post-training)することで微調整を行ってから出力する機能の開発なども進められています。ChatGPTは、日々進化を続けている一方で、誤った情報に基づく誤った回答が出力される危険性も含め、使用の際には注意が必要です。 ChatGPTやその他の生成AIツールを使うことで調べ物の時間を短縮したり、テキストを作成させたりできるといった利便性が注目されていますが、研究者がChatGPTを使う際には、ChatGPTが「できないこと」、つまりAIツールの限界を知っておく必要があります。ここでは、研究活動においてChatGPTができない9つのことを取り上げます。 ChatGPTができない9つのこと 1- 独創的な研究アイデアの発案 独創的な研究アイデアは科学の進歩の原動力であり、イノベーションを生み出し、知識を広げ、画期的な発見への道を開くものです。、ChatGPTは研究アイデアを作成することはできません。 試しにChatGPTに化学分野の研究における独創的な研究アイデア/テーマをいくつか提案するよう入力したところ、この分野では基本的な3つの既存の研究について出力してきました。以下がその際の画面(スクリーンショット)です。 ChatGPTのアルゴリズムには、独自の批判的な分析能力がないので、情報の正否は判断できません。 ChatGPTが分野に特化した専門知識を習得し、最新の動向を把握しているわけではありませんし、各分野独自の複雑な内容を深く理解しているわけではありません。 研究者の専門的知識は、研究を進めるべき方向性を特定し、既存の知識を基に革新的なアプローチを提案し、その分野を発展させることができます。一方、ChatGPTには、人間の研究者のような豊富な知識の集積や経験はありません。 AI言語モデルをベースとするChatGPTの能力は、既存のトレーニングデータに制限され、生き生きした会話や協業に積極的に参加する能力は有していません。 2- 複雑なデータ分析の解釈…

効率的な文献レビュー

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン教授のコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回は、文献レビューをシステマティックで効率的に行う方法について解説します。 _________________________________________________________________________________ 最初に、私がケンブリッジ大学で開催する一般公開のイベントをいくつか紹介しましょう。 6月6日(火)午後5時30分からケンブリッジのウルフソン・カレッジで、サイモン・クリューズとの共著『Be visible or Vanish』のテーマについてのレクチャー。ケンブリッジまで来られる方は直接会場にお越しいただくこともできますし、そうでない方はオンラインでもご予約いただけます。 7月10日(月)午後5時30分~7時30分には、ケンブリッジのキングスカレッジで、不確実な時代における博士号についての講義を行い、英国の研究スキル市場に関する最新のデータについてお話しします。 さて、ここからが今月の投稿、文献レビューの執筆をいかにスピードアップするかというシリーズの第1弾です。 私は文献レビューをするのが苦手です。 研究者は素晴らしいアイデアや知見を持っているのに、それを難解な専門用語や厄介なペイウォールで隠してしまいがちです。広大なデジタル空間から論文を掘り出したとしても、そこからが本当の苦痛です。一度にたくさんの論文を読むと、本当に気が変になりそうなのです。 私はサバティカル(研究休暇)中なのですが、愚かにも、その間にニューロダイバーシティ(神経多様性)と博士号に関する大規模な文献レビューを行うとボスに言ってしまいました。大変なことになってしまいました。私がサバティカルを過ごしているのはケンブリッジ大学ですが、みんな本当に面倒見が良い人ばかりです。ランチやディナーのお誘いに「No」とはいえません。特に、中世建築の(あるいはモダニズム建築の)大学の食堂で、大昔のアカデミックな装飾品に囲まれ、聡明で面白い人々と一緒に食事できるのであれば、なおさらです。 ケンブリッジで提供される料理の素晴らしさをご覧ください。これはグラスゴーでは「フィッシュ・ティー」と呼ばれるメニューで、豆のマッシュが添えられています(ThinkLabの客員研究員として私が「所属」するウルフソン・カレッジにて)。…

学術出版におけるChatGPTなどのジェネレーティブAIツールのリスクと可能性

学術研究におけるAIツールの役割 倫理的な配慮事項 AIツールの責任ある使用 ChatGPTと人間による校正の比較

リジェクトへの対応方法-失敗をチャンスに変える

リジェクトの種類:エディターキック(デスクリジェクト。査読以前のリジェクト)と査読後のリジェクト 査読コメントに見られるリジェクト理由の典型例 リジェクトを告げるコメントを理解し次の行動を決める方法 査読コメント/リジェクトへの申し立てと反論 原稿の修正時と再提出時に役立つヒント ※講師は日本語で解説しますが、使用資料は英語となります。

ChatGPTを活用してライティングを上達させる

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン教授のコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回は、ChatGPTを活用して、研究や論文執筆を効率化する方法について解説します。 私はこれから3ヶ月間のサバティカルに入るので、ニューロダイバーシティ(脳の多様性)とPhD研究に関する文献レビューを書くと約束してしまいました。ぶっちゃけ、文献レビューを書くのは嫌いです。ほとんどの学術論文は退屈で、大規模なレビューをするということは、たくさんの論文を読むことを意味するからです。3ヶ月で200本以上の論文を読むと思うと、ペンで自分の目を突き刺したくなります。 しかしありがたいことに、このレビュー執筆にChatGPTを役立てることができます。ChatGPTをめぐっては多くの人々が「モラルパニック」を起こしている様子で、私の双子の妹は愛着を込めて「チャッティー君*」(*原文ではChattieG)と呼んでいます。誤情報の危険性や学生の不正行為を阻止する方法について、私たちはよく耳にしています。ChatGPTにまつわるプライバシーや環境負荷、労働者の搾取などについて正当な懸念がある一方で、多くの論評は的外れなものだと私は思っています。 研究者には、これらのツールを創造的かつ倫理的に使用する方法を学生を含む他の人々に対して示す責任があるのです。億万長者主義的な後期資本主義のもとでは倫理的な消費はありえず、テクノロジーの使用について葛藤を感じるのは自然なことです。私たちは、この技術がどのように作られ、どのように使われているかについて批判的な目を向け続けるべきですが、関わりを持たないという選択肢は現実的ではありません。魔神がランプから出てきてしまった今、私たち自身がこのテクノロジーを使いこなさなければ、私たちの仕事は本当にロボットに奪われてしまうのです。 さて、高みの見物はこれぐらいにして、本題に入りましょう。 ChatGPTを本当に使いこなすには、かなり時間がかかりました。この記事の残りの部分は、私がこれまでに学んだことを記録したものですが、私のやり方を踏襲する前に、ご自身の大学にも確認してみてください。ANUからの声明は漠然としたもので、使い方を探ってみることを認めていますが、異なるスタンスの大学もあります。 大まかに言うと、ChatGPTを使用する上で最良の方法は、それが、才能はあるものの惑わされやすく、性差別や人種差別やその他の種類の「イズム」など、悲しい傾向を持つインターン/研究助手であると想定して使うことです。 このような欠点を持つ人間に対するのと同様に指示出しすれば、より良い結果を得ることができるのです。また、これは変な話ですが、ChatGPTに人間の顔を持たせることも役立ちます。AI画像生成ツールDALL・Eに「メガネをかけたキュートでスマートなインターン」と入力すると、こんな感じになりました。 もちろん、「キュートでスマート」と言えば、白人の若者になりますね(まったく!)。この画像は、あらゆる種類のAIツールに度し難く組み込まれているであろうバイアスを、いい意味で浮彫りにしてくれます。さて、文献レビューにどのように役立つのか、見ていきましょう。 ブレインストーミング ChatGPTにアイデアを提案してもらうことができます。ChatGPTはデタラメの源泉になることもありますが、それ以上に問題なのは、アイデアが退屈でありふれたものになりがちなことです。退屈であることは悪いことばかりではありません。事実を確認したり、まやかしを打ち壊したりするための出発点になることもあるのです。 私の基本的なプロジェクトの題材「非定型発達脳の博士学生をよりよくサポートするために指導教官や大学ができること」、というテーマについてどのようなアイデアを出してくれるか見てみましょう。 プロンプト:…

人間対AI:ChatGPTの英文校正の限界

話題の人工知能チャットボット、ChatGPTは質問に答えることやテキストを生成することに加えて、文章のスペルや文法のミスを検出・修正できます。しかし、ChatGPTを英文校正に利用する限界を知っておくことは重要です。本稿では、ChatGPTでは対応が難しいポイントを洗い出し、人間の校正者との比較を通してChatGPTによる英文校正の限界を探っていきます。 ChatGPTが識別・判断できない点 1- 引用と参考文献の表記方法 論文中に記載する出典の確認、引用や参考文献が適切に表記されているかの確認と統一は時間のかかる面倒な作業ですが、ChatGPTは学術的な記載の適正を判断することはできません。 2- 情報の新旧と重要性 ChatGPTは、インターネット上に公開されている大量のテキストデータを学習し、自然言語処理技術を使用して前処理したデータを出力します。しかし、膨大なデータから情報の新旧を判断し最先端の研究に関連する情報だけを選択的に抽出する機能はなく、その情報の重要性を判断することもできません。 3- 情報の信憑性と使用の権利 上述のようにChatGPTはインターネット上で公開されている情報から学習していますが、その情報が不正に入手された情報でないかやその情報の信憑性は考慮されません。AIが利用しているデータには信頼できない情報も含まれている可能性があるので、その出力情報も見極める必要があります。 4- 専門用語、分野特有の表現 言語処理技術は日々進歩していますが、専門用語や分野特有の用語や表現も増え続けており、全てを掌握することは困難です。それぞれの分野特有のルールや、使用されるスタイルやトーンなどを理解していないと、見落としや誤って書き換えてしまう恐れがあるので、注意が必要です。 この他にも、ChatGPTには著者の文章の根本的な意図を汲むことはできないといった限界があることを忘れてはいけません。ChatGPTは機械的に処理を行うものなので、校正に使用した場合、個性のない平坦な文書に変えてしまいがちです。研究者自身の経験に基づく知見や個性が薄れてしまうことも懸念されます。…

子育てをしながらの博士号(PhD)取得

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン教授のコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回は、2人のティーンエイジャーの息子を育てながら博士号を取得したフラン・ハイドから寄せられた体験談を紹介します。 この投稿は、生涯学習という考え方を常に実践してきたフラン・ハイド(Fran Hyde)によるものです。フルタイムで働く傍ら、マーケティングの修士号だけでなく、複数の専門資格を取得し、複数の非営利組織のマーケティングチームにも積極的に関与してきました。キャリアを変え、「中年期」に博士号を取得するというフランの決断は、「困難」と思われる状況でのマーケティングの実践を研究したいという思いと、高等教育機関で正規雇用の地位を確保するには博士号が必要であるという認識からでした。このようなことは完全に論理的に聞こえるかもしれませんが、「ほぼ」ティーンエイジャーの子供を抱えながら学業に復帰することは、ここに書かれているように、困難を伴うことでした。子供たちのもう一人の親でもある素晴らしいパートナーが博士課程の間をサポートしてくれたこと、特に4年に渡って家計を支えてくれたことについてフランは感謝を述べています。以下は、フランによる記事です。 博士課程(2013年~2018年)の間、幾度となく私の周りの人の人生を凍結させる「一時停止ボタン」が欲しいと願いました。一番の理由は、博士課程に入った時点で13歳と10歳で、論文を提出する前にティーンエイジャーになってしまった息子たちの人生を一時停止させたかったのです。博士号を取得しながら親業を続ける他の人たちが、論文を推敲しながら昼寝をしている赤ちゃんの写真を投稿したり、乳歯が生える時期の子供の夜泣きで不眠になったことについて語ったりする中で、私の経験は少し違っていました。私が博士号取得に取り組んでいる間、息子たちは受験し、Secondary School(訳者注:Secondary Schoolは日本の中学・高校の学年に相当)に入学し、小論文を書き始め、GCSE(General Certificate of Secondary Education=全国学力試験)を受け、髭を剃り始め、パーティーするようになりました(最後のやつは、別の意味で、親を不眠に陥れます)。 卒業の日の、フランと「ベイビー」たち 博士課程に入って間もない頃に、研究がうまく行かず落ち込んでいた時、下の子が私を見て、すごく冷静に「ママ、何を期待してたの?博士号なんだから大変に決まってるじゃない」と、多くの指導教官が敬遠する率直な表現で、この言葉を伝えてくれました。彼の言う通りでした。私は研究が予想以上に大変なことに気づきましたが、息子がそれをして理解してくれていることに、なんだか少し救われました。 同じ頃のある日曜日、私は大学図書館での仕事に行く前に、サッカーの試合の審判に行く上の息子を車で送っていました。車中で私たちは計算してみたのですが、息子の審判をするアルバイトの時給は、私の大学教員としての時給を超えることがわかりました。ゼロ時間契約に比べれば、などと話して雰囲気を和らげようとしましたが、気が重くなる会話でした。私は彼に「不安定労働」という概念について伝えました。その頃の私は、編集を過剰に加えられたデジタルな世界とは対照的な、自分の経験を元にした「会話」を試みていたのです。博士号取得の課程における「混乱」や、新しいキャリアを構築する際の困難を目にすることで、息子たちが資格取得とはどういうものかを理解できるかもしれないと私は考えていたのでしょう。この当時の家庭生活を決定づけていた私の「血と汗と涙」から、有益な何かを生み出せないかと思っていたのです。…

博士号…さらに子供4人?

オーストラリア国立大学(ANU)のインガー・ミューバーン教授のコラム「研究室の荒波にもまれて(THE THESIS WHISPERER)」。今回は、4人の子どもの妊娠・出産・育児と並行して博士号を取得したサラ・スタンフォードの記事を紹介します。 博士号取得のための子育てについて何度か書いてきましたが、私には子供が一人しかいないので、他の人の話を聞くと、ちょっとラクな部類の子育てをしているような気がします。4人の子供を抱えて博士号を取得するなんて話しに比べたら!今回はサラ・スタンフォード(Sarah Stanford)による記事をご紹介します。サラは、青少年に関わる牧師やユースワーカーとして、自傷行為を行う多くの若者のサポートをしてきました。 そして、より広い活動で貢献したいという思いから、自傷行為についての研究で博士号を取得し、学校、教会、その他の地域社会で、自傷行為への理解と対応、予防を促す活動を行っています。詳しくは彼女のウェブサイトとツイッターアカウントは、@DocStanfordで見つかります。 以下はサラによる記事です。 4人も子供がいると、奇異の目で見られることがあります。また、博士号を取得している人も、変わり者扱いされがちです。ですから、ここ数年、私が変な目で見られることが多かったのは想像に難くないでしょう。よくあるのは、以下のような反応です。 「正気なの?」 「スーパーママだね。」 「どうすれば、そんなことができるの?」 そしてもちろん、みんなが口にしないけど思ってる「…なぜ?」です。 博士課程では、良かれと思ってアドバイスをくれる方がたくさんいました。でも結局、そのほとんどに従いませんでした。ここでは、私が破ったルールと、私にとって効果的だったことを紹介します。 (先に断っておきますが、私にはとても協力的な夫がいました。彼は子育てや家事のあらゆる面で協力してくれました。ですので、これはあくまで私の経験であり、事情は人それぞれでしょう。) 私が破ったルール:…

研究の目的とねらい―研究を成功に導く2大要素

目的地を決めずにドライブしている自分を思い浮かべてみてください。なぜ運転しているのか、どこに向かっているのか―、どうやって目的地に到達しようとしているのか―不安になってきませんか?同じように、研究を順調に進めるためには、研究目的とねらいを明確にする必要があります。研究の目的とねらいは、あらゆる研究プロジェクトの基礎となるものです。研究の明確な方向性と目指すべき到達点を掲げることで、研究プロセスを通じて集中力を維持し、研究を軌道に乗せることができます。目的とねらいは、研究を成功に導く、信頼できるナビゲーション・ツールなのです。 研究プロジェクトの成功のためには、研究目的とねらいの関係性を理解することが重要です。この記事では、目的とねらいの重要性を探り、その違いを理解し、研究の質に与える影響について掘り下げていきます。 研究の目的とねらいの違い 研究において、目的とねらいは2つの重要な要素ですが、たびたび同じ意味で使用されているのが見受けられます。この2つは似ているように見えて別のものであり、目指すところも異なります。 研究の目的 研究目的とは、研究の全体で「目指すもの」を説明する広義な記述です。研究の全体的な方向性を示し、研究を行うことで成し遂げられることを示します。研究目的は、研究が最終的に目指すことを一般的かつ抽象的な記述で示します。 研究のねらい 研究のねらいとは、特定の時間枠内で達成することを目指した、具体的で測定可能、かつ達成可能な“めあて”のことです。研究目的をより詳細に、管理しやすい構成要素に分解し、何を達成したいのか、どのように達成するのかを明確にします。 この例におけるねらいは、目的を果たすために達成しなければならない具体的な目標を示しています。基本的に、目的は研究の全体的な方向性を示すものであり、めあては目的を達成するために成し遂げなければならない具体的なステップやタスクを示すものです。つまり、目的は研究の大まかな方向性を示し、研究の目的を達成するために研究者がやらなければならない小さなマイルストーンを示しています。例えるなら、ドライブ旅行を計画するとき、研究の目的は到達したい目的地であり、研究のねらいはそこに到達するために必要な具体的なルートとなります。 目的とねらいは相互に関連しています。ねらいは、研究方法を定める上で重要な役割を果たし、どのようにデータを収集し、分析するかという道筋を示唆するものです。具体的な到達点を定めることで、研究の目標、ひいては研究の目的を達成するための研究計画を立てることができるようになります。 目的とねらいを明確にすることの重要性 研究目的・ねらいを明確に定めることが研究の質に与える影響は計り知れません。しかし、単に目的・ねらいを定めれば良いというものでもありません。研究の目的とねらいを明確にすることの重要性を以下に挙げておきます。 方向性を示す:目的およびねらいを明確にすることで、研究の具体的な方向性を示し、研究が着実に特定のトピックや問題に集中できるようにします。研究の幅が広がりすぎたり、焦点が定まらなかったりすることを防ぎ、研究の関連性と意義が保たれるようになります。 研究デザインの指針となる:研究の目的とねらいは、研究デザインと方法を考える上での指針となり、リサーチクエスチョンに対する答えを導きだし、研究の目標を成し遂げることを確実にします。 リソース配分に役立つ:研究の目的とねらいが明確であれば、時間、資金、人材、その他必要な資材などのリソースを効果的に配分することができます。研究を行うのに必要なリソースを特定し、効率と生産性を最大化する方法でリソースを配分するのに役立ちます。…