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変わる「利益相反」-Natureが新ルール適用へ

学術論文を投稿する際、著者は利益相反(Conflicts of Interest: COI)を開示するように求められます。これは、研究にとってバイアスをもたらす可能性のあるすべての利害関係、つまり研究助成金の出所や謝礼、特許権使用料やライセンス(商標や著作権)などの金銭的関係、および雇用契約などの個人的関係を含む経済的利害関係を開示する必要があるということです。通常、ジャーナルや学会が定めた投稿規定の中にCOIにつき何をどう開示すべきかが記されていますが、国際的には医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors : ICMJE)の規定が受け入れられているようです。

■ 非経済的利害関係もバイアスになる

経済的利害関係の中で直接的なものとしては、金銭的関係です。研究助成金はもちろん、旅費なども金額にかかわらず、すべて開示しなければなりません。また、個人的関係としては、雇用関係のような人間関係などが含まれます。研究結果が特定の企業の売上に影響を与えるような論文を執筆した著者が、その企業の社員や関係者である場合、経済的利害関係のある利益相反とみなされます。さらに、研究にとってバイアスとなるのは経済的な要素だけではなく、所属機関への忠誠心や個人的な野心など非経済的な要素も影響すると考えられるのです。そこで、ネイチャー・リサーチが出版するジャーナルは、利益相反の開示ルールを強化し、著者に対して、研究の中立性・客観性に疑問を抱かせる可能性のある非経済的利害関係の開示も求めていくと発表しました。

2018年1月31日に発表された記事によると、2月以降、ネイチャーおよびネイチャー・リサーチが出版するジャーナル(Nature Communications, Scientific Reports, Scientific Dataなど)に論文やレビューなどを投稿する著者は、非経済的利害関係も開示するよう求められることになります(詳細はネイチャーの「Competing interests」参照)。非経済的利害関係がどんなものなのか、見解は様々でしょう。金銭の受け取りを伴わない関係は目に見えないので、把握が難しいのです。しかし、特定の人物や企業・組織から報酬を受け取っていないからと言って、その人物や企業・組織が研究の客観性や中立性に影響を与える可能性がないとは言いきれません。今回、ネイチャーは非経済的利害関係として、幅広い意味での個人的な関係に加え、政府/非政府機関、支援団体との組織的/個人的な職務上の関係、専門家として従事しているような関係まで開示するよう示唆しています。

■ 利益相反の研究へのバイアスと開示方針の強化

企業が研究費を支援した場合、その経済的利害関係が研究デザインや分析、報告にバイアスを与えることは、かねてより指摘されてきました。一方、非経済的利害関係のバイアスを特定すること難しい状況です。とはいえ、非経済的利害関係も研究に対してバイアスを与えると推測できることから、ジャーナル(特に製薬会社などからの影響を受けやすい臨床研究や生物医学系のジャーナル)によっては数年前から非経済的利害関係も開示することを求めていました。研究にバイアスを与えかねない利害関係をすべて開示することによって研究の正当性と透明性を向上させることが、研究内容に対する読者の理解を促進し、社会的な信頼を守るために最良の方法であるとわかっているからです。今回のネイチャー・リサーチの方針強化も同様の意図があるものと考えられます。

ネイチャーのジャーナルは、今後、このCOI開示の対象を査読者にも広げるとしつつ、開示する内容、管理および開示内容の選択(除外)については著者およびその所属機関に委ねるとしています。経済的・非経済的、双方の視点から利益相反を加味することで公平な判断を行うことができるとするこのような動きは、他のジャーナルにも広がるのではないでしょうか。
著者は投稿先のジャーナルの投稿規定に示される利益相反について、理解を深めておく必要があります。一般的には、ICMJEの規定や世界医学雑誌編集者協会(World Association of Medical Editors : WAME)の掲載情報が役立ちます。投稿先のジャーナルにCOIを開示するための指定フォームがない場合は、ICMJEのフォーム(Form for Disclosure of Conflicts of Interest)を参考にするのが良いようです。著者は、投稿する都度、ジャーナルの最新の投稿規定をチェックし、利益相反の開示につき特定の要件が求められているかを確認すべきですが、英文校正会社らによる投稿規定チェックのサービスを利用するのも一案です。

開示を怠った投稿論文に利益相反があると判断された場合、論文の撤回や調査対象となる可能性もあるので、研究成果と自身の信頼性を守るためにもバイアスの疑いを晴らしておくことが大切なのです。


こんな記事もどうぞ
クローズアップ学術界:思わぬところに見られる「利益相反」
パケット道場~初級アカデミック英語講座~:投稿規定、論文の様式


論文引用の仕方で絶対に抑えておくべきポイント

論文の著者にとって、自分の書いた論文が他の研究者の論文に引用されることは、論文の影響力が上がるという意味で喜ばしいことです。反対に、自分の論文の中に他者の論文を引用することも多々ありますが、この時に注意しなければならないのが、引用の仕方です。これを間違うと盗用・剽窃として、訴訟にも発展しかねません。そうならないために、正しい引用の仕方を抑えておく必要があります。今回は参考文献の記載の仕方と、よく用いられる引用方法についてまとめます。

■ どうやって記載するか-参考文献の記載方法(3種類)

論文中に他人の著作物から得た情報を記す場合は、該当する情報が引用・参照であることを本文中に示し、かつ論文の最後に参考文献としてリスト化する必要があります。

1.本文中に記載する
論文の本文中に、引用文献があることを示す数字か、または引用文献の情報を括弧で記載します。学会や学術ジャーナルによっては数字や著者名、出版年数などの記載方法を示したスタイルガイドがあるので、これを参照しましょう。参考文献のリストは、論文末尾に、数字順またはアルファベット順に掲載します。

例:
・タイリクオオカミは、かつては北米大陸中で見られた肉食動物であった。5(本文中には数字のみ記載する)
・タイリクオオカミは、かつては北米大陸中で見られた肉食動物であった(Smith,1970)。(本文中に著者名と発表年まで記載する)

最初の例は、アメリカ医師会(のスタイルガイドによるものであり、2番目の例は、アメリカ心理学会(によるものです。

2.文末脚注(エンドノート)に記載する
「本文中に記載する」と似ていますが、注釈をつける個所の本文中に数字を括弧書きで記載する方法です。この数字を、論文末尾の参考文献リストの番号と対応させます。

3.脚注(フットノート)に記載する
エンドノートと同様に本文中に数字を記載する方法ですが、参考文献リストを論文末尾にまとめるのではなく、個々の引用を記入したページの下段に記載される点が異なります。

学術ジャーナルに論文を掲載する場合、各誌が著者のためのガイドラインを発表しているので参照できます。また、AMA(アメリカ医師会)、APA(アメリカ心理学会)、MLA(アメリカ現代語学文学協会)、などの学会も、論文執筆者向けに書き方のスタイル(シカゴスタイル<Chicago Manual of Style>など)を提供しています。

■ 引用のルール

参考文献を記載することは、研究の経緯と論拠を示すことでもあります。参考文献を明記することによって、読者は情報が正当なものであることを確認でき、結果として該当論文への信頼の構築につながります。

とはいえ、論文執筆に利用したすべての情報を参考文献に記載する必要はありません。すべてやろうと思えば、途方もない時間がかかります。しかし、どんな場合に参考文献を記載すべきか――は知っておく必要があります。対象には、ニュース番組やウェブサイト、TVやラジオ番組を含め、すべての情報源が当てはまります。

1.直接引用
直接引用とは、一言一句そのまま他人の文章を写すことです。これに参考文献の掲示が必要なことに異論はないでしょう。たとえ単語であっても、引用した語句であれば引用符を付けなければなりません。数行にわたる引用の場合、本文とは明確に区別できる形で書いておきます。

2.間接引用
間接引用とは、他者の考えを自分の言葉に置き換えて書くことです。この場合でも、他者の考えから着想した以上は、参考文献の掲示が必要です。また、引用するにあたっては、専門用語を読者にとってわかりやすい言葉に置き換えることも大切です。

3.要約
要約は間接引用の一種ですが、違いは、主要点のみを短く述べることです。もちろん、これにも参考文献を表示する必要があります。

4.常識
広く一般に知られていることは、それが統計上の情報または研究上の情報でない限り、参考文献を示す必要はありません。

例:
・不要な例――「セントポールはミネソタ州の州都です」
・必要な例――「セントポールは、ミネソタ州の州都で、米国で最も多くの多発性硬化症が発生する都市です」

セントポールが州都であることは一般常識ですが、多発性硬化症が米国で最も多く発生する都市であることは、統計上の情報です。この事実には参考文献を付すべきです。

5.追加情報
結論部分や他の部分で、それ以前に同じ参考文献から同じ内容の記述を引用した旨を一度でも記載したのであれば、再び記載する必要はありません。しかし前述の引用記載とは異なる情報を紹介したり、別の内容を追加したりする場合には、あらためて記載しなければなりません。

■ 間違った引用は身を滅ぼす

盗用・剽窃は重大な不正行為です。発覚すれば、論文を掲載したジャーナルが出版された後であっても撤回を余儀なくされます。著者の所属機関によっては懲戒処分となることもありますし、研究者としての評価は確実に下がってしまいます。

学術機関・学会・出版社によって、参考文献の表示ルールが異なっている場合があるため、注意が必要です。論文を書く際は、まず自身の属する機関のルールを習得しておくこと、さらに論文投稿先のスタイルガイドを厳守することが必要です。

エナゴ学術英語アカデミーではこれまでにも、盗用・剽窃を防ぐ方法について取りあげてきました(「こんな記事もどうぞ」をご参照ください)。ぜひお役立てください。

 

こんな記事もどうぞ
論文の盗用・剽窃を避けるコツ-前編
論文の盗用・剽窃を避けるコツ-後編
研究論文での盗用を未然に防ぐには?


自分の論文を広く読んでもらうための7つのコツ

膨大な量の研究論文やデータが公開される今日、苦労して執筆した論文をできるだけ多くの人に読んでもらおうと思えば、それなりの工夫が必要です。論文をプロモーションするための7つのコツを紹介します。

■ 識別番号をとって自分と論文を特定しよう

論文を読んでもらうためには、まず初めに自分の売り込みが必要です。研究者を(組織、専門分野、地域を越えて)1つのIDで識別する取り組みORCID(Open Researcher and Contributor ID)に登録し、自分のIDを取得することをお勧めします。研究者がORCIDの識別番号を一貫して利用することにより、名前や組織が変わっても研究者個人と業績を正しく結びつけることが可能になります。

また、研究論文にDOI(Digital Object Identifier)と呼ばれる識別子を付けることも推奨します。DOIは、ウェブ上の電子文献に付けられるコードです。商品のバーコードや、紙の書籍に対するISBNコードと同じと言えばわかりやすいでしょうか。この恒久的なコードであるDOIが付いていれば、たとえ電子ジャーナルのURLが変わったとしても、興味を持った人は、探したい論文にたどり着くことができるのです。

■ 論文を読んでもらうための7つのコツ

では、ここからは、より多くの人々に論文を読んでもらうためのコツを見ていきましょう。

1. 誰に読んでもらいたいかを考える 

研究論文をより多くの人々に見てもらうためには、読者を念頭においた対策を取らなければなりません。対象はどういった人で、何に興味を持っているのか、どこにいるのか、同じ部門の同業者なのかなど、読者を想定した戦略が必要です。

読者を想定できたら、次はどのように論文に目を止めてもらえるかです。同じ分野の研究者たちがオンラインで論文を見ている度合いや、どのようなウェブサイトを見ているか――など、読者のオンライン利用特性を知ることは、研究をプロモーションする場所を絞り込むのに役立ちます。ソーシャルメディアで言えば、一般的なオープンプラットフォームとして利用者数の多いTwitterが効果的なのか、もしくはもっと限定的なLinkedInのほうが有効なのか。一利用者として自分も使ってみることをお薦めします。

論文のソーシャルネットワーク上でのステータス「Altmetricスコア」を表示するサービス「Altmetric bookmarklet」(Altmetric社)をインストールすると、自分が閲覧している論文がTwitterやFacebook等のソーシャルメディアでどの程度言及されているかを見ることができます。これを参考に、同じメディアを使って自身の論文のプロモーションを行ってみてはいかがでしょうか。

2.ソーシャルメディアを活用する

ソーシャルメディアは、情報のオンライン上での拡散に役立ちます。代表的なのはTwitterとLinkedInです。

Twitterから見ていきましょう。自身の研究内容について投稿することはもちろんですが、それ以外にもできることはあります。フォロワーの関心を引けそうなツイートをリツイートしたり、他のユーザーのツイートや質問に答えたり、見る人を意識した取り組みが重要です。また、興味を持った研究をシェアしたり、著者をタグ付けすることも可能です。

LinkedInは、仕事における人脈の構築やビジネス情報の共有に便利なソーシャルメディアです。最新の研究情報の掲載や、短い記事の投稿による専門知識のシェアを通じて、関心のあるユーザーとつながり、情報交換することが可能です。

3.コミュニティに参加する

オンラインだけでなく、実際に人と会えるコミュニティに参加することも大切です。自身の研究に興味を示しそうな活動組織や団体を見つけて、ボランティアで講演を行ったり、会議開催中にセミナーを開催したりしてみるのはいかがでしょうか。コミュニティの参加者の理解レベルには差があると予想されるので、自身が話す内容が相手にきちんと伝わるよう、工夫しなければなりません。実際に会って話をすることで気づくこともあるはずです。

4.Eメールの署名欄に論文へのリンクを貼る

Eメールの署名は、名刺のようなものです。その中に、論文へのリンクを入れるのも一案です。LinkedInやKudosのプロフィールページへのリンクを書き込むのも有効でしょう。これにより、Eメールを受け取った人々が、研究成果にたどり着くよう誘導することができます。

5.論文を読みやすくする

論文の内容を簡潔に表した要約文を作成してみるのも手です。要約で興味を引ければ、全文読んでみたいと思う読者も出てくるでしょう。要約文は、自身のブログやソーシャルメディア、または自身が属する研究グループなどでの発表の際にも使えます。科学分野の記者の目に留まれば、インタビューを申し込まれるかもしれません。

6.ハッシュタグを付ける

ハッシュタグとは、ソーシャルメディアで投稿内のタグとして使われる「#(半角のシャープ)」がついたキーワードのことです。例えばTwitterで「#科学」「#微生物学」「#天文物理学」などと、論文の分類をハッシュタグと共に記載しておけば、ユーザーは同じハッシュタグが付けられた投稿を検索して閲覧することができます。つまり、科学や微生物学に関心のあるユーザーの目に留まりやすくなるのです。Hashtagifyというツールを利用すれば、人気や話題のハッシュタグを調べることができます。

7.出版社や所属機関の力も活用する

多くの出版社は、学術ジャーナルや論文が読まれるようにソーシャルメディアを活用しています。所属の学術機関も、ソーシャルメディアやEメールリストの活用、さらに報道機関や政府関連部門を巻き込んだ研究促進のためのPR戦略をとっているかもしれません。自身の研究論文をどうすればプロモーションできるか、広報やメディアの担当者に相談してみるのもよい方法です。

■ プロモーションは必須の時代

研究成果のプロモーションは、助成金や共同研究者、学生などを集めるのにも効果的です。出版される論文の数は年々、増加の一途をたどり、学術コミュニケーションの場は、学会などの実世界からインターネット上にも広がっています。このような状況で、せっかくの研究成果を埋もれさせないためには、研究者が論文執筆・投稿の後、自らの成果を伝える努力が不可欠になっているのです。「これでは作業は増えるばかり――」。そうは言わず、AltmetiricやKudosなどの便利なツールを使いつつ、研究論文を広く知ってもらえる策をとってみるのはいかがでしょうか。

 

参考記事
Enago academy:
Using Social Media to Effectively Promote Your Research
Should You Use Twitter to Promote Your Research?
How to Promote My Research
Altmetric blog:
10 clever tips for promoting your research online

こんな記事もどうぞ
オルトメトリクスが2017年の論文ランキング100を発表
Kudos協同創設者・チャーリー・ラップル氏へのインタビュー(第1部)

 


Twitterは研究者にも有益か-使用上の注意 (後編)

前編でツイートには3つのパターンがあることが調査から見えてきたことをお伝えしました。では、本当にツイート数の多さが論文閲覧数に影響するのでしょうか。3つのパターンと調査の結果を見てみます。

■ パターン1. 1つのアカウントから複数回発せられたツイート

ツイート数が最多となった論文は(アメリカで)264のツイートに登場し、高いAltmetricスコアを得ましたが、このツイートの73%(193)は、たった1つのアカウントから投稿されたものでした。しかも、このアカウントからの発信に書き込まれた該当論文へのリンクは65回、2番目に多くのツイートをしたアカウントからの発信に書き込まれたリンクは58回。この2つのアカウントはお互いにリツイートすることもあり、これらのアカウントからの発信を除くと、該当論文へのツイートは15と限られたものでした。ツイート数や書き込みリンクの数に違いはあっても、このように単独あるいは少数のアカウントから多数のツイートが発せられる傾向は他の論文にもあるようです。

■ パターン2. アカウント管理者によるツイート

一方、別のアカウントから同じ内容のツイートが多数発せられることがあることもわかりました。このパターンの例として、1982年に発表された論文が51回も次々に同じ内容でツイートされたことがあげられます(2016年)。Twitterがリリースされる前の古い論文がツイートされること自体が稀ですが、Twitterのアカウントを有する歯科医らが、アカウントの管理を同じ会社に委託していた結果、同じ内容のツイートが発せられたと考えられています。歯科医師らは患者とのコミュニケーションにTwitterを使用していましたが、委託を受けた管理者は、投稿にはオリジナルのテキストを使うと約束していたにもかかわらず、コピーしたテキストを繰り返し貼り付けて投稿していたのです。このようなパターンも散発的ではありますが、存在しています。

■ パターン3. 情報共有の広がりを示すツイート

もうひとつのパターンは、投稿を見た研究者が、実際に内容に興味を持ったことを示すツイートです。本来はこのパターンが多くなるべきなのですが、真摯に論文について書き込んだ投稿数がトップではないことは問題です。トップ10に入った1つの論文への59のツイートは、41の異なるアカウントからツイートされていました。これは、興味を持った研究者たちが、個別にツイートまたはリツイートしたことを示しています。

■ 調査結果から見えてくるのは――

トップ10本の論文へのツイートが、データ全体の8.4%を占めていること、それらのツイートには上述のパターンが見られることなどから、単独または少数による頻繁な投稿がツイッター上では大きな役割を果たしていることが見られました。また、データの中にはbotで作成されたツイート(設定された条件で自動発言をする機能を使ってツイートすること)も含まれることも踏まえ、この調査では機械的な発信か人による発信かの特徴に注意した分析も行っています。このような実態を踏まえると、ツイート数を論文の評価指標として組み込むには、不適切なフォロワーやbotによるツイートなどを除外するアルゴリズムの導入など、まだまだ課題は多そうです。この状況を理解した上で論文についてツイートするのであれば、専門知識などを駆使し、明らかに人(研究者)によるツイートとわかる内容を投稿することによって研究成果の拡散効果を上げる必要がありそうです。

■ Twitterは一長一短

学術研究についてツイートすることが有益か否かは、意見が分かれるところではないでしょうか。Twitterでなら新しい研究について意見を交換したり、以前の研究の価値について議論したりと、研究者仲間とオープンなコミュニケーションができると言う研究者もいます。一方で、発表した論文の影響力を強化するためにTwitterが有益であるかについて懐疑的な意見があるのも事実です。前述の調査結果を見ると、単純にツイート数が多いことが、該当記事への関心の高さを示すものではないことがわかります。また、ツイートの数を研究への関心の高さと見なすことも危険です。関心を引くためにわざと挑発的な内容や物議を醸すようなコメントを残すのはもってのほかですし、炎上したツイート数を評価に含めるようなことをすれば、いかなる研究分野であっても悪い影響を与えかねません。ツイート数の分析に注意が必要なことは明らかです。

Twitterの利用は一長一短です。コミュニケーションには便利なツールですが、研究論文を周知することや、影響度を向上させるために使おうとすれば、それなりの注意と方針が必要です。SNSの発展と利用拡大に伴い、オルトメトリクスのような新しい評価指標が登場したことで、研究者もSNSと無縁ではいられなくなってきています。しかし、TwitterなどのSNSを使いこなすには、時間と労力を要します。研究活動を広める目的で利用し始めたのに、ツイート数を増やすことが目的になってしまっては本末転倒です。SNSの利点をうまく活用するためのアドバイスは、さまざまな場所(インターネットや若手研究者からの口コミなど)で入手できるので、自分にあった活用法を探ってみてください。情報を役立てつつ、うまく活用することで、思わぬ成果が得られる可能性はあるのです。

※ Twitterは研究者にも有益か-使用上の注意 (前編)はこちら


こんな記事もどうぞ:
エナゴ学術アカデミー 『研究者に有益なオンラインツールと活用のメリット


Twitterは研究者にも有益か-使用上の注意 (前編)

Twitterといえば、トランプ米大統領の書き込みがたびたび話題をさらっています。このソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の最大の威力は、発信された情報が、まさに瞬間的に世界中に拡散されること。このメリットを活用すべく、Twitterの利用は学術界にも波及しており、発信する文字数が制限(280文字、ただし日本語・中国語・韓国語は拡大対象外)されているにも関わらず、研究活動に役立てる研究者も増えているようです。

■ 研究活動にTwitter

Twitterに限らずSNSをコミュニケーション・ツールとして使いこなす研究者は少なくありません。多くの研究者が、「科学者・研究者のためのFacebook」と呼ばれるResearchGateAcademia.eduのようなプラットフォームで、研究の共有・情報交換を行っています。無論、FacebookやTwitterの利用者も多いことでしょう。

発信できる文字数に明確な限りがあるTwitterが本当に研究活動の助けになるのか?半信半疑な方もいると思います。しかも、フェイクニュースが話題になるように、発信される情報の信頼性の確保や、無遠慮なリツイートによる炎上といった、社会的な問題をも内包しているTwitterは本当に大丈夫なのか?信頼性が重要視される学術界において、Twitterを使うことで、研究の面白さや重要性を損なってしまうリスクは十分に考えられます。

■ Twitterの投稿は論文の評価に影響するか

2017年8月、研究論文をツイートすることで論文閲覧数に影響が出るかを調査した結果が、オープンアクセス・ジャーナル「PLOS ONE」に発表されました。これはTwitterへの投稿が、学術論文の影響度評価の新たな指標として注目される「オルトメトリクス(SNSでの拡散の度合いも評価対象に含めて論文の影響力を計る新しい指標)」に影響を及ぼすかを調べたものです。つまり、この調査で対象とした歯学分野の研究論文へのリンクを書き込んだツイートを調査することで、積極的なTwitter利用が、論文の周知や他の研究者の興味を引くことに貢献したかを見ようとしたのです。

調査の対象となった論文は、2016年に発表されたWeb of Science(WoS)に登録された84誌とPubMedに登録された47誌の中から抽出。2011年から2016年までの5年間に執筆された4,358本の論文について、2,200以上の米国内の個人アカウントから発信された8,206のツイートの分析が行われました。

■ 分析内容
・WoSの引用数とツイート数の比較
・論文あたりのツイートされた数
・論文あたりのツイートしたアカウントの数
・投稿されたテキストにおける変異
・「@」で始まるツイート数

この分析からツイートされた数の多かった論文トップ10を選び出したところ、ツイートには3つのパターンがあることが見えてきました。

ツイートに見られるパターン
パターン1.1つのアカウントから複数回発せられたツイート
パターン2.アカウント管理者によるツイート
パターン3.情報共有の広がりを示すツイート

これらのパターンそれぞれの特徴については後編に続きます。

こんな記事もどうぞ:
エナゴ学術アカデミー 『いま話題の新しい論文評価指標「オルトメトリクス(Altmetrics)」
エナゴ学術アカデミー 『ソーシャル・メディアは学術活動に役立つか?

 


2017年に学術界を揺るがした衝撃的事件(後編)

2017年に学術界を揺るがした衝撃的事件として、前編では海賊版論文サイト「サイハブ」訴訟と、ドイツの主要学術機関とエルゼビアとの契約交渉が決裂した件を紹介しました。後編では、研究者を食い物にする「捕食出版社」と研究論文の盗用・剽窃に関する話題を取り上げます。

■ 捕食出版社として訴えられたOMICSへの仮差止め

OMICSグループはインドに本社を置く、オープンアクセスジャーナル専門の出版社ですが、「捕食出版社」 (著者から掲載費用を得る目的で、適正な査読を行わずに論文を掲載する出版社)として知られています。「ハゲタカ出版社」とも呼ばれ、いわゆるジャンク・サイエンス(論理的根拠に乏しい科学)の流布をはじめ、たびたび問題となっています。米国の連邦取引委員会(FTC)  は2016年8月、OMICSグループのCEOであるSrinubabu Gedela氏を相手取り、詐欺的ビジネスを理由に提訴 しました。

OMICSは700の学術雑誌を出版し、3000の学術会議を運営する出版社です。FTCは、OMICSが研究者らに、論文を掲載する動機付けとなるインパクトファクター(学術雑誌の影響力の評価指標)を偽って伝えていると主張しています。その上、OMICSは論文の掲載料を著者らに公表せず、さらに著者が論文の掲載をやめたり、他社で発表したりすることを妨害していたということです。

OMICSへの疑惑はまだあります。FTCは、OMICSが開催する学術会議でも不正が行われていると指摘しています。例えば、OMICSは学術会議での研究発表に架空の論文「鳥-豚の生理における飛翔特性の進化」を採択し、手数料を払えば発表も可能としたとの報告があります。採択されるはずのないジャンク・サイエンスの論文にも関わらず、発表が許可されたのです。また、査読を行っているという偽りの発言をしていることも疑われています。OMICSの編集委員のリストには著名な科学者の名前が連なっていますが、証明するものはありません。このような申し立てが積もり、OMICSは捕食出版社だとの疑惑が高まっているのです。

2017年11月、ネバダ州の地方裁判所のGloria Navarro裁判官は、Gedela氏とOMICSグループ、関連会社のiMedPub、Conference Seriesの3社に、仮差止め命令を下しました。OMICSが研究者に虚偽の説明をして論文を掲載するように誘導していることや、著名な科学者の名を無断で用いて投稿を依頼するメールを送っていたことが、今回の命令の根拠とされています。

この仮差止め命令はOMICSグループに向けたものであるため、OMICSは、会議に出席する予定のない講演者の名を語って宣伝することや、ジャーナルの編集委員として虚偽の名前を連ねることは、無論できなくなります。裁判所はOMICSに対し、論文の投稿前に、掲載にかかる費用の総額を著者に伝えるよう要求しています。また、FTCは研究者らに、OMICSによる仮差止め命令への違反があればすぐに報告するよう伝えており、新たな不正が発覚した時点で、法廷侮辱罪として訴える考えです。

一方、OMICSのCEOであるGedela氏は、FTCの訴えの内容を否定しています。この告発は、市場シェアを失った従来の出版社が、オープンアクセス出版社に対して腹いせに起こしたものであり、仮差止め命令の後もOMICSの活動は制限されない、と反論しています。米国の裁判所命令ではインドの出版社の活動を効果的に止めることはできない、と主張する研究者もおり、出版投稿や国際会議での発表を行わないようにする以外、捕食出版社の活動を実際に抑制することは難しいと見られているようです。

このような捕食出版社が登場した背景には、一本でも多くの論文を出版し、学術会議で発表しさえすれば、研究者として評価されるという、学術界の悪しき習慣があるのかもしれません。仮差止め命令の影響とOMICSの今後の動きが注目されるところです。

■ 多数の編集者を辞任に追い込んだScientific Reportsの剽窃問題

2016年に発刊されたScientific Reportsに掲載された論文の剽窃疑惑が発端となり、2017年、同誌の多数の編集委員が辞任しました。

ジョンズ・ホプキンス大学の研究者Michael Beer氏は、同誌が、自身の過去の論文を盗用・剽窃して掲載したと主張しています。彼は同誌の編集委員の1人でもあったため、この不正に気付き、論文の撤回を求めました。しかしScientific Reports側は、撤回を拒否し、訂正表の発行のみに留めることを決定したのです。Beer氏は、この処置は不適切であると抗議し、編集委員を辞任しました。ジョンズ・ホプキンス大学の他の研究者らもBeer氏に賛同し、次々に編集者を辞任しています。

盗用・剽窃が疑われた論文は、ハルビン工科大学(中国)の深センキャンパスの研究者らにより発表されたものでした。この研究は、Beer氏と彼の研究チームが2014年7月の『PLOS Computational Biology』で発表したアルゴリズムを元にしており、元の論文にはBeer氏の論文を引用していることが示されていました。しかし、2016年のScientific Reportsに投稿された論文には、PLOSに掲載したBree氏の論文の内容を書き換えたものが数多く見られたにもかかわらず、参考文献にBeer氏の論文は見当たりませんでした。同誌の編集長は、著者らによる参考文献の書き漏れがあったことを認めましたが、論文の撤回ではなく、訂正表を発行することが適切であると判断し、事態の収拾を図りました。Beer氏は、これでは、研究者らは盗用・剽窃をしても後に訂正表を発行しさえすればよいと考え、結果的に剽窃を助長することになるとして、この決定に抗議・辞任したのです。

盗用・剽窃の問題が多発する今日、論文掲載にあたり厳しい審査を課すべきであると考える研究者はBeer氏の他にもおり、今後もこのような事態が発生する可能性は十分に考えられます。出版社側が明確な改善策や指針を打ち出さない限り、盗用・剽窃に関する問題は続きそうです。

以上、2017年に起きた衝撃的事件を2回に分けて紹介しました。2018年は学術界にとって、どのような1年になるのでしょう。

※ 2017年に学術界を揺るがした衝撃的事件(前編)はこちら


こんな記事もどうぞ

エナゴ学術英語アカデミー
米国の裁判所、“捕食出版社”に差し止め命令
編集委員を辞任に追い込む剽窃問題
参考記事

US Court Issues Injunction Against Open-Access Publisher OMICS
Junk science publisher ordered to stop ‘deceptive practices’
Retraction Watch: U.S. government agency sues publisher, charging it with deceiving researchers


論文の盗用・剽窃を避けるコツ-後編

本記事の前編で、盗用・剽窃の定義や、他人の文献を引用する際のコツをご紹介しました。しかし、研究者が注意しなければならない盗用・剽窃は、単なる文字のコピーに限りません。後編では、盗用・剽窃と捉えられかねない、直接引用と間接引用、パッチライティングについて見てみます。

■ これも盗用・剽窃?-直接引用と間接引用

他人の文章を、それが他人の文章であることを示すことなく書き写すことさえしなければ問題にならないと思いがちですが、盗用・剽窃とは「テキスト」のコピーだけではありません。他人の発想や考え方、データをコピーすることも含まれます。そもそも文章とは発想や考えをまとめたものであるため、その「考え」自体を真似たり、それを記した文章を適切に引用することなく自分の文章に書き写したりすることは、許されません。

では文章や「考え」を引用するにあたって取るべき適切な対応とは、どのようなものでしょうか。引用の仕方である「直接引用」と「間接引用」のそれぞれで見てみましょう。

直接引用

直接引用とは、他人の文章を自分の論文中に、該当文章が引用であることが明確になるように引用符を付けて「原文どおりに」再現することです。引用により定義付けをしたり、明確化させたり、あるいは主張を裏付けたりする場合に有効です。

以下の例文のカッコの中の文章が、他人の文章から引用した部分です。

象は、地上で一番大きな哺乳類で、体重は8トンぐらいあります。象は、「巨大な体と、大きな耳と、長い鼻を持っていて、その鼻で、手のように物を掴んだり、ホルンのように警笛を鳴らしたり、腕のように上げて挨拶をしたり、ホースにして水を飲んだり、シャワーを浴びたりします。」(出典:https://www.worldwildlife.org/species/elephant

この引用部分は、象の外見を言葉で説明したものです。視覚的イメージを維持したまま書き換えるのは困難なので、カッコを付けて示すとともに、出典を書き添えることによって、外部からの引用であることを明確にしています。英文の場合はカッコの代わりに引用符(“”)を使って外部からの引用であることを示します。

間接引用

間接引用(言葉の書き換え)とは、他人が書いた文章を自分の言葉に書き換えて記述することです。言葉を置き換えるのだから盗用・剽窃にはあたらないと考えがちですが、直接引用と同様に、書き換えた場合も出典元を明示しなければなりません。また、元の文章の意味するところ、基本的な考え方を変えないように注意する必要があります。

例えば、以下のような表現です。

象は、地上で一番大きな哺乳類で、体重は8トンぐらいあります。その大きくて、ひらひらした耳は、体を冷やしたり、虫をよけたりするのに役立ちます。頭から地面まで伸びた長い鼻は、道具として使われるほか、水を飲んだり、シャワーを浴びたりするのに使われます。(参照:https://www.worldwildlife.org/species/elephant

ここでは、情報が別の言葉に書き換えられていますが、2つの例文を比較すると直接引用の文のほうが、象の描写がより明確に表現されていることがわかります。

これらの引用方法は一長一短です。直接引用は、考えを説明したり、明確にしたりするのに有効ですが、頻出すると、文章の独自性が薄れてしまいます。一方の間接引用は便利ですが、うまく書き換えなければ明確に内容を伝えることができません。間接引用をする際には、引用文の背景にあるメッセージをしっかりつかみ、引用文を参照せずに書き換え文を作ってみて、元文と書き換えた文の意味が同じ内容となっているか読み比べてみる――という手順を経ることで、よりわかりやすい文章となり、盗用・剽窃を防ぐことができるようになるでしょう。

ただし、他者の文章を自分の言葉で言い換える間接引用であっても、きちんと自分の言葉で言い換えられていなければ盗用・剽窃となります。よって、直接引用した場合にはカッコ(「」)または引用符(“”)でくくる、間接引用の場合でも注釈を付けるなどして出典を示すように注意する必要があります。

■ パッチライティング(つなぎ合わせ)もNG

では文章を組み立て直して「間接引用」になっていれば、他者の文章をつなぎ合わせてもよいのでしょうか?例えば、文芸作家が複数の作家の作品をつぎはぎにして「新作」として発表したら、それは「盗作」であり、剽窃行為と見なされます。語句を並び替えたり、別の言葉で置き換えたりしたとしても引用元の文と似すぎているものを「パッチライティング(はめ込み)」と言います。これはれっきとした盗用・剽窃にあたります。内容を十分理解せずに言い換えた場合、どうしても引用元の文章との類似性が高くなってしまいます。他者の文章を類似語に置き換えただけではダメなのです。

特に近年は、インターネットが普及し、情報の入手が簡単になりました。複数のサイトからテキストを「コピペ」し、不要な情報を取り除いて自分の言葉を付け加えるだけでは、パッチライティングとなってしまいます。例文で見てみましょう。

その皮膚の厚い動物は、地上で一番大きな哺乳類です。体重は200キロから8トンぐらいあります。とても大きな体と、大きな耳と、長い鼻を持っており、その鼻で物を拾ったり、警笛を鳴らしたり、挨拶をしたり、水を飲んだり、水浴びをしたりします。

前述の直接引用や間接引用とは表現を変えていますが、内容はほぼ元文のままですので、この文章にも引用を付けるべきです。間接引用をする時の注意と重複しますが、ただ言葉を類似語に置き換えるだけでは盗用・剽窃ととられることを免れません。言葉にとらわれず、元の文章の背景にある「考え」を書き表すことでのみ、盗用・剽窃の落とし穴に陥るのを避けることができます。

■ 盗用・剽窃は身を滅ぼす

2回にわたり、盗用・剽窃には、意図的なもの/意図的ではないもの、直接引用/間接引用、パッチライティングなどさまざまな落とし穴があることを紹介しました。盗用・剽窃は、重大な学術的倫理違反です。掲載論文の撤回から研究助成金の削減まで、さまざまな措置がとられ、研究者としてのキャリアに影響を及ぼす可能性もあります。研究を続ける上で必要な助成金を獲得するために論文を発表しても、不正が指摘されればすべて台無しになってしまうのです。

論文の執筆では研究知見を裏付けるために、たくさんの参考文献を用いる必要があるため、学術雑誌は、推奨するスタイルガイドに準拠した引用や参考文献の書き方を示したガイドラインを提供しています。こうしたものを参照して正しい引用の仕方を身に付けるとともに、盗用・剽窃をチェックするツールを使うなどして、間違いを犯すことのないよう努める必要があるのです。

 


こんな記事もどうぞ
エナゴ学術英語アカデミー:研究論文での盗用を未然に防ぐには?


論文の盗用・剽窃を避けるコツ-前編

研究論文を書く時、文献を集め、自説を裏付けるエビデンスを揃えるのに苦心される方が多いのではないでしょうか。既存の考えや価値観を参考にしつつ、的確な所見を加えることは大切ですが、その時、盗用や剽窃(ひょうせつ)の間違いを犯さないように注意しなければなりません。

盗用・剽窃とは、他人の文章や考え方を許可なく使用あるいは部分的に使用し、自分のものとして発表することです。意図的かどうかを問わず、適切な手続きを取らずに引用されたことをいい、自分自身の過去の論文等の利用も含みます。盗用・剽窃は、学術的かつ倫理的に重大なルール違反です。発覚すれば、論文の撤回や執筆者の信用失墜を招きかねません。

近年の学術出版界では、この盗用・剽窃が大きな問題となっており、盗用・剽窃が原因で論文が撤回されることが多くなっています。論文の投稿・発表に際して思わぬ問題を起こさないために、研究者は盗用・剽窃について、よく理解しておかなければなりません。

■ 故意でなくとも…… 

国によっては、言葉の出所や考えのもとになった事実について、出典を明示することにこだわらないところもあります。しかし、学術界の世界的な倫理規範においては、適切な参考文献の表示は大前提です。すべての研究者は、この規範を順守しなければなりません。にも関わらず、盗用・剽窃が多数発生しているのはなぜなのでしょう。理由は「意図せぬ」盗用・剽窃です。特に、英語を母国語としない研究者が注意しなければいけないことがあります。自身の研究成果を英語で書き記す際、うまく表現できないと、ついつい参照論文の通りに書いてしまいがちではないでしょうか。剽窃の意図がなくとも、他の研究者が書いた文章をそのままコピーすれば剽窃にあたります。論文をチェックする編集者は、文法的に間違いの多い論文の中に、部分的に完璧な文章があると、それは剽窃である可能性が高いと見抜きます。

言語のハンディとは別の落とし穴もあります。IT技術の進歩により、情報入手が手軽になったことがあげられます。デジタル時代の今日、研究者はインターネット上で、他者の資料やデータを簡単に閲覧できるようになりました。オープンアクセスのプラットフォームをのぞけば、多種多様な研究論文にアクセスすることも可能です。これにより、デジタル化された文書から文章やデータをコピーすることが容易になり、検索した結果を「つい」借用することにつながりがちなのです。これも盗用・剽窃に当たります。

執筆した文章が「偶然」同じ表現となるような、偶発的な盗用・剽窃であったとしても、それが意図的でないことを証明することは困難です。研究者は疑いがかからないよう、初めから自衛手段を講じなければなりません。ここでは前後編にまたいで、いくつかの有効な手段と事例を紹介します。

■ 盗用・剽窃対策5つのポイント 

1 間接引用する

・参照文献を逐語的に引用せず、自分の言葉に置き換える。
・自分の言葉に言い換えるために、参照文献の内容を十分理解することが大切。
・参照文献の文章を部分的に切り抜き、それをつなぎ合わせるのも剽窃になるので、注意すること。

2 直接引用には引用符を

他者の論文から文章をそのまま使う時は、引用符を付けて引用すること。引用符の中の文章は、一言一句、元の文章そのままにする必要がある。

3 引用のルールを知る

・他者の論文から抽出したすべての言葉や発想は「引用」扱いとし、出典を明示する。
・過去に自分が書いた論文の一部を転載する際であっても「引用」扱いとすること。引用することなしに自分の過去の論文や資料を利用することを、自己剽窃と言う。
・自分自身が実験を行って得られた科学的エビデンスは、引用不要。
・事実や常識は引用不要。確定できない場合には参照を付けること。

4 引用元の記録を付けておく

・エンドノート(EndNote)やリファレンス・マネージャー(Reference Manager)などの引用ソフトを使用して、参照した文献の記録を残すこと。
・裏付けには複数の参照文献を付けること。例えば、書評を見るだけではなく、個々の論文を参照し、引用すること。

5 盗用・剽窃チェックツールを利用

iThenticateeTBLASTなどの盗用・剽窃チェックツール、または英文校正会社が提供する盗用・剽窃チェックサービスを利用する。広汎な文献を参照して、意図せぬ盗用・剽窃がないかを数分で知らせてくれるツール・サービスを論文提出前に利用する。

 

注意事項:ほとんどの剽窃は、論文の書評から文章を引き抜いています。自ら論文を記す時、他者の論文を参照する際には、書評だけでなく論文の全体を注意深く読み、文脈を理解し、自分の言葉で表現しなければなりません。そして、参照したら引用を忘れずに示すことが大切です。

上に記した対策は、あくまで文章の盗用・剽窃対策についてのものです。文章ではなく他者の研究結果を盗用することは、もってのほかです。

次回は、パッチライティングや、直接引用・間接引用について、さらに深く考えてみます。

 


参考:
THE WRITER’S HANDBOOK:Successful vs. unsuccessful paraphrases (英語リンク


ResearchGate 170万本の閲覧制限から見える著作権問題

2017年11月、科学者・研究者向けのソーシャル・ネットワーク・サービス「ResearchGate」が、エルゼビアやワイリーといった複数の大手出版社の申立てに応じ、オンラインに掲載していた約170万本の論文へのアクセスを制限するという処置を講じた、と報じました。学術ジャーナルに掲載された論文を誰もが無料で見られるようにしようという、オープンアクセスへの追い風が強まる中で発表された今回の措置。ResearchGateに何があったのか。著作権問題について考えます。

■ 何が問題なのか?

ResearchGateは2008年にボストンで設立、現在はドイツのベルリンに本部を置く営利団体で、1400万人以上の会員を有する世界最大級の学術ソーシャルネットワークを運営しています。世界有数の金融機関ゴールドマン・サックス、医学研究支援などを目的とする公益信託団体ウェルカム・トラストをはじめとした団体や、ビル・ゲイツ個人による出資を受けていることでも知られています。

ResearchGateのサイトは科学者・研究者向けのFacebookとも呼ばれており、会員は論文や要約等をアップロードして共有したり、他の研究者をフォローして最新の研究成果を確認したりできます。近年、このようにネットワーク上に論文を公開して共有するオープンアクセス化が、急速に拡大しました。研究者らが、時間や費用をかけずに必要な論文を自由に入手できるようになることを切望し、それを可能とする技術が発展することで、オープンアクセス化が進んでいるのです。

しかし一方で、従来であれば学術ジャーナルを買わずには読めなかった論文を無料で入手できてしまうわけですから、発行元である出版社にとっては、経営の危機に立たされると言っても過言ではありません。こうして、出版社に対する著作権侵害が問題となってきたのです。このような状況の中、ResearchGateは著作権侵害や責任ある共有を求める出版社連合(Coalition for Responsible Sharing: CRS)との協定違反を理由に、厳しい監視下に置かれることになったのです。

■ 著作権侵害の申立て

2017年9月、国際STM(Scientific, Technical, Medical)出版社協会がResearchGateで増え続ける論文共有に懸念を示し、論文の公開/非公開を判定するシステムの導入を提案しましたが、ResearchGateはこれを受け入れませんでした。そこで、著作権を有する出版社は、ResearchGateに対して、著作権を侵害している論文の削除を求める通知を送付することにしました。大手出版社5社(ACS、Elsevier、Brill、Wiley、Wolters Kluwer)が設立した連合であるCRSは、10月初めからResearchGateに対して著作権を侵害する掲載論文の削除通知を送り、この求めに応じた形で、ResearchGateはサイトからの即時ダウンロードをできないようにしたのです。

CRSによれば、同サイト上では、出版社が著作権を有する論文約700万本が自由に閲覧できる状態で公開されていたということです。2017年10月、CRSに参加している米国化学会(ACS)とエルゼビアはついに、ResearchGateに掲載されている論文の著作権の正当性を明らかにするため、ドイツの地方裁判所に訴訟を起こしました。裁判の結果によって、ResearchGateはオンライン上の掲載論文を削除するか、損害賠償を支払うことになるでしょう。

■ 著作権侵害が浮き彫りにしたのは――

ResearchGateが、少なくとも170万本の著作権侵害に該当する論文へのアクセスを制限したことにより、研究者達は論文をオンラインから自由に入手することができなくなりました。これはつまり、著者に論文の提供を直接求める必要に迫られるということです。論文を提供するかしないかは、著者自身の責任で判断されることとなるのです。

CRSの広告担当者であるJames Milne氏は、ResearchGateが200万本近くの論文へのアクセスを制限したことは前向きな一歩であるとしつつ、それでもなお、研究者以外からのアクセスを防ぐには十分ではないと述べています。今後は、ReserachGate以外の他のプラットフォームにおいても、論文共有に対するセキュリティ対策が強化されるかもしれません。実際、今までもオープンアクセスにおける著作権侵害は問題視されてきました。エルゼビアは、2013年に論文共用サイト「Academia.edu」に対し、2800通の掲載論文削除通知を送りつけています。また、ACSとともに海賊版論文サイト「Sci-Hub」を提訴することも行いました。

オンラインアクセスにおける著作権侵害の問題から明らかになってきたのは、学術出版業界における論文の適正な使用許可契約の欠如です。これまでは学術ジャーナルが論文の発表場所としての地位を確立してきましたが、オープンアクセスの台頭により、ビジネス・モデルそのものを考え直さざるをない状況です。出版社は近い将来、出版社と著者(研究者)双方の公平性を保ちつつ、購読料の確保とオープンアクセスの推進という相反する課題への対策を両立させる必要がありそうです。

■ オープンアクセスに向けた新しい試み

学術出版社がこれからの論文発表のあり方を模索する中、オープンアクセスの流れは止まりません。新たな動きをいくつか紹介しましょう。まずは「Free the Science」という試みです。これは、非営利団体である電気化学会が、長期的なビジョンに則って、学術研究の情報交換に斬新な変化をもたらそうとするものです。その他に、アムステルダム大学の歴史学者Guy Geltner教授が率いる非営利の学術ネットワークであるScholarlyHubも知られています。こちらは研究者が自身の手で構築したプラットフォームに論文を掲載するという仕組みになっています。

このように、オープンアクセスにおける著作権問題は存在するものの、学術研究の情報交換を促進しようとする新しい試みも広がりつつあります。CRSの見解に賛同する研究者もいれば、オープンアクセスを歓迎する研究者もいます。今後、どう変化していくのか。少なくとも学術出版社は、大きな転機を迎えていると言えるでしょう。


編集委員を辞任に追い込む剽窃問題

剽窃(ひょうせつ)とは、他人の成果や論文を許可なく部分的に利用し、自分の成果のように発表することです。例としてSTAP細胞論文の疑惑があげられます。まるごと盗んで自分のもののように使用する「盗用」とは区別されますが、剽窃は重大な犯罪です。大学や研究機関では教員や学生、研究者に剽窃をしないよう指導を行っていますが、学術出版社でも問題となっています。自然科学を対象としている著名な科学誌『Scientific Reports』でも剽窃が問題となり、投稿された論文の撤回を求めて19名の編集委員が職を辞するという事件に発展しました。

■ Scientific Reportsの編集委員19名が辞任

アメリカのボルティモアにあるジョンズ・ホプキンス大学の研究者であり、Scientific Reportsの編集委員の1人でもあるマイケル・ビア氏は、2016年に発刊されたScientific Reports 6に掲載された論文内で、自分の過去の研究成果が剽窃されたと訴えました。これに対し、他の編集委員もビア氏の主張を支持。最終的に計19名もの研究者が、編集委員を辞任したのです。

剽窃が問題視された論文は、ハルビン工科大学(中国)の深センキャンパスの研究者達により発表された、DNAの組み換えスポットを特定する技術を説明するものです。この研究は、ビア氏と彼の研究チームが2014年7月の『PLOS Computational Biology』に発表したアルゴリズムを基にしており、論文にはビア氏の論文を引用していることが示されているものの、ビア氏がgkm-SVMと名付けた技術を中国人研究者達はSVM-gkmと呼ぶなど、多くの部分は単にビア氏の論文を書き換えたものであると、同氏は訴えたのです。

■ 訂正表では納得せず

Scientific Reportsの編集者リチャード・ホワイト氏は当初、この論文がビア氏のアルゴリズムをより発展させたものだとする中国人研究者達の主張を認めていました。しかし中国人研究者達は、ビア氏の論文を引用したことは記していたものの、同氏の論文から引用した5つの方程式に、出典を付けるのを怠っていたのです。これによりビア氏と研究仲間は、中国人研究者は剽窃を行っているとして、訂正ではなく撤回という処罰が妥当であり、出版社の対処は不適切だと主張しました。しかしScientific Reportsは、訂正表で対処するという決定を改めはしなかったのです。

■ 辞任の連鎖

Scientific Reportsが該当論文を撤回しないと決定したことから、研究者の辞任が始まりました。まず、著名な遺伝学者であるアラビンダ・チャクラバーティ氏が、Scientific Reportsの本件への対処は不適切であり、Scientific Reportsの査読の質に疑問があるとして編集委員を辞任しました。チャクラバーティ氏は、自身が知る限り少なくとも2つの論文が、査読者が指摘した重大な懸念事項を修正することなく公表されたとも明かしています。

ビア氏と同じジョンズ・ホプキンス大学に所属する研究者のスティーブン・サルズバーグ氏は、自身はScientific Reportsの編集委員ではないのですが、この剽窃記事を発端として、ある運動を起こしました。Scientific Reportsの編集委員に名を連ねているジョンズ・ホプキンス大学の研究者に、この問題に抗議するために編集委員を辞任する考えがあるかと聞いたのです。その結果、「該当論文が撤回されないなら辞任する意思がある」と署名した研究者は21名に上りました。サルズバーグ氏は、自分の学生達が剽窃を行ったなら落第または退学させるのに、このケースにおいてScientific Reportsは、剽窃を行った者の論文を掲載し続けるという処置に甘んじていると、編集者のホワイト氏に宛てたEメールで訴えました。

ジョンズ・ホプキンス大学の神経学者、テッド・ドーソン氏は、本件でのScientific Reportsの対処を知ってすぐに編集委員を辞任しました。著者が論文を訂正すれば済むとするならば、Scientific Reportsは剽窃を許しているのと同じだと考えたためです。

一方、Scientific Reportsのホワイト氏は、該当論文は科学の発展の一過程を担うものであり、学術文献に新たな貢献を成すものとして、掲載に足ると考えている、と説明しました。当初はビア氏の論文を引用したことを示す記述が論文内に不十分であったが、その研究の新規性は疑うべきものではなく、研究分野における論文の貢献度を鑑みれば撤回は必要ないと考え、訂正表の発行という対処を行ったとのことでした。

問題となった論文の著者の一人であり、Scientific Reportsの編集委員でもあるベン・リュー氏は、ビア氏の論文からの剽窃を否定しており、Scientific Reportsのような権威ある科学誌において剽窃論文が掲載されることはあり得ないと述べています。

■ 研究者に生じた、ある疑問

今回のScientific Reportsの対処法は、研究者の意識に、ある疑問を投げかけました。故意ではない剽窃であれば論文は撤回されない可能性があり、そうなれば、自分たちが過去に発表した論文はいかにして守られるのか、と――。

どうやって剽窃であるか否かを判断し、どう対処するべきなのか。この一件で、剽窃に対する考え方と対処法について、研究者と出版業界の間には微妙な温度差が存在していることが浮き彫りとなりました。その後、Scientific Reportsは特別な編集委員会を編成し、該当論文のレビューを行うことにしたと、Retraction Watch(日本語名:撤回監視。学術雑誌に掲載された論文の撤回を報告・分析・議論するブログ)が報じています。しかし出版社と研究者が剽窃に対する認識を共有したわけではありません。問題の根は深く、第2・第3の事件が発生しても、不思議ではない状況です。

 

参考記事
Retraction Watch: 17 Johns Hopkins researchers resign in protest from ed board at Nature journal
Retraction Watch: Board member resigns from journal over handling of paper accused of plagiarism