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第17回 9つの “色覚バリアフリーツール”

より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい、色覚バリアフリーなスライドを作るために覚えておきたい「CUD: カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズ。第17回目の今回は、カラーユニバーサルデザインの実践に役立つ9つのツールをご紹介します。


CUDの実践に役立つ9つのツールをまとめてご紹介します。このようなツールに触れてみるだけでも多様な色覚の世界を知る手がかりとなりますので、機会があればぜひ利用してみましょう。
 

  1. シミュレータ(ソフトウェア)
  2. ①「Illustrator 」、「Photoshop」
    世界的にシェアの高いアドビシステムズ株式会社のグラフィックソフトウェアならびに画像編集ソフトウェア。Illustrator 、Photoshopとも、CS4以降、CUDOが協力して開発したCUDチェックシステム機能を標準搭載しています。[校正メニュー]の中にP型、D型それぞれのCUD校正ビューが組み込まれており、オリジナルの作業スペースと別に開くことができるのでチェック画面を見ながら作業できます。

    ②「Vischeck」
    米国スタンフォード大学のBob Dougherty氏と Alex Wade氏が開発した、P型、D型、T型色覚のシミュレーションソフトウェア。画像処理ソフトウェアImageJのプラグインとして利用するのが一般的で、ImageJ、Vischeckともに無償でダウンロードできます。既存の画像ファイルを開いてチェックするとともに、色に改変を加えて保存することもできます。PowerPointなどのファイルをいったん画像として保存すれば、スライドの色の見分けやすさをチェックすることもできます。

    ImageJ http://imagej.nih.gov/ij/
    Vischeck ImageJ Plug-In http://www.vischeck.com

    ③「色のシミュレータ」、「色のめがね」
    http://asada.tukusi.ne.jp/cvsimulator/j/index.html
    http://asada.tukusi.ne.jp/chromaticglass/j/index.html
    浅田一憲氏(医学博士、メディアデザイン学博士)が開発したスマートフォン用のアプリケーションです。「色のシミュレータ」は、各色覚型の色の見分けにくさをチェックするためのツールで、「色のめがね」は、P型、D型、T型など色を見分けにくい人のための補助ツールです。上記サイトまたは各種配信チャンネルから無償でダウンロードできます。

    ④「UDing(ユーディング)」
    http://www.toyoink1050plus.com/color-solution/ucd//
    東洋インキ株式会社から無償提供されているCUD支援ツールのシリーズです。なかでも「UDingCFUD」は、色の組み合わせが適切であるかどうかを自動認識により知らせてくれる便利なツールです。UDingにはiPhoneアプリ版もあり、配信チャンネルから無償でダウンロードできます。
     

  3. シミュレータ(ハードウェア)
  4. ⑤色弱模擬フィルタ「バリアントール」
    http://www.variantor.com/jp/
    豊橋技術科学大学中内茂樹研究室、高知工科大学篠森敬三研究室、伊藤光学工業株式会社の産学連携により開発された、色弱者の色の見分けにくさを一般色覚者が体験するための色弱模擬フィルタのシリーズ。メガネ型およびルーペ型があり、色覚に関する啓発活動や研究、デザイン作業における配色チェックなどに活用されています。

    ⑥液晶ディスプレイ「Flex Scan」、「Color Edge」シリーズ
    http://www.eizo.co.jp/
    EIZO株式会社のスタンダードモニタ―「Flex Scan」、ならびにカラーマネジメントモニター「Color Edge」シリーズは、同社が無償で提供している色覚シミュレーションソフトウェア「UniColor Pro」と組み合わせることで、モニター表示の色変換を行うことができます。静止画のみならず動画をリアルタイムに扱えることが利点です。

    ⑦液晶ディスプレイ「MultiSync」シリーズ
    http://jpn.nec.com/products/ds/display/professional/
    NECのクリエイター向けカラーマネジメントディスプレイ「MultiSync」シリーズは、ディスプレイ単体で各色覚特性およびコントラスト確認用の表示をすることができます。静止画のみならず動画をリアルタイムに扱えることが利点です。
     

  5. 配色セット
  6. ⑧CUD推奨配色セット
    http://www.cudo.jp/resource/CUD_colorset
    CUDOおよび印刷・塗料企業により選定された、C型、P型、D型、T型、さらには白内障の人など、あらゆる色覚の人に見分けやすい約20色のセットです(詳細には下記参照)。

    伊藤啓氏(東京大学分子生物学研究所)によるCUD配色セットの詳細
    http://jfly.iam.u-tokyo.ac.jp/colorset/
     

  7. 緑色レーザーポインター
  8. ⑨コクヨ株式会社 レーザーポインター
    https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/lp/
    近年、さまざまなメーカーからさまざまな機能を備えた緑色のレーザーポインターが発売されています。なかでもコクヨ株式会社の緑色レーザーポインターはシンプルなものから多機能のものまでラインアップが豊富です。CUDマークのついたものを探してみましょう。
     
     



第16回 “魅”せるプレゼンテーション – チェックリスト!

より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい、色覚バリアフリーなスライドを作るために覚えておきたい「CUD: カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズ。第16回目の今回は、これまでにご紹介した色覚バリアフリーの資料作りのポイントを一挙ご紹介します。


ここでは、CUDOによる「CUDチェックリスト」から、学術発表に関係する項目をピックアップします。本連載で取り上げていない内容もありますので、 色覚バリアフリー の発表資料を作成するための参考資料として役立ててください。
 

  1. 色の選び方
  2. ・赤は濃い赤を使わず、朱色やオレンジを使う
    ・黄色と黄緑は色弱者には同じ色に見えるので、なるべく黄色を使い、黄緑は使わない
    ・濃い緑は赤や茶色と間違えられるので、青みの強い緑を使う
    ・青に近い紫は青と区別できないので、赤紫を使う
    ・細い線や小さい字には、黄色や水色を使わない
    ・明るい黄色は白内障では白と混同するので使わない
    白黒でコピーしても内容を識別できるか確認する
     

  3. 色の組み合わせ方
  4. ・暖色系と寒色系、明るい色と暗い色、を対比させる
    ・パステル調の色どうしを組み合わせない。はっきりした色どうしか、はっきりした色とパステル調を対比させる
     

  5. 文字に色をつけるとき
  6. ・背景と文字の間にはっきりした明度差をつける(色相の差では不可)
    ・線の細い明朝体でなく、線の太いゴシック体を使う
    ・色だけでなく、書体、太字、イタリック、傍点、下線、囲み枠など、形の変化を併用する
     

  7. グラフや概念図
  8. ・区別が必要な情報を、色だけで識別させない
    ・明度や形状の違いや文字・記号を併用して、色に頼らなくても情報が得られるように工夫する
    ・白黒でも意味が通じるように図をデザインし、色はその後で「装飾」としてつける
    ・シンボルは同じ形で色だけ変えるのではなく、形を変えて色は少なくする
    ・線は実線どうしで色だけを変えるのではなく、実線、点線、波線など様々な線種と色とを組み合わせる
    ・色情報を載せる線は太く、シンボルは大きくする
    ・塗り分けには、色だけでなくハッチング(地模様)等を併用する
    ・色相の差でなく明度の差を利用して塗り分ける
    ・輪郭線や境界線で、塗り分けの境界を強調する
    ・図の脇に凡例をつけず、図中に直接書き込む
     

  9. 図の解説の仕方
  10. 色名だけで対象物を指し示さない。位置や形態を描写したり、ポインターで直接指し示す
    ・凡例にはなるべく色名を記入するか、凡例を使わずに直接矢印で示す
    ・赤いレーザーポインターは見づらいので緑のレーザーポインターを使用する
     
     
    〜カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版 P.168より抜粋(一部補足)〜
     
     

    Article16_image_RE_色覚バリアフリー
     
     


    参考資料:
    カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版
    カラーユニバーサルデザイン機構『カラーユニバーサルデザインガイドブック』


第14回 動物における色覚の多様性 – 光の受容と種の保存

より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい、色覚バリアフリーなスライドを作るために覚えておきたい「カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズ。第14回目の今回は、我々ヒトを含めた、動物における色覚の多様性についてご紹介します。


生物にとって「色」とは、物体を検出、認識する手がかりであるとともに、信号としての役割を持ちます。生物はそれぞれ一定の光の波長を 受容 することにより独自の色の世界を持っているようです。
 

  1. チョウにはお尻にも「目」が!
  2. 昆虫の眼は複眼でヒトの視覚とシステムが異なります。色覚についても、ミツバチの仲間は赤の光受容体がなく、紫外線、青、緑の3色型色覚を持つことが知られています。アゲハチョウやモンシロチョウは、ヒトより多い、紫外線、紫、青、黄、赤の5色型色覚に加え、さらに、お尻にもう1つの「目」(眼球外光受容器)を持つといいます。お尻の「目」では、交尾や産卵を確実に行えるように紫外線から青にかけての光を利用していることが確かめられています。

    Article14_image1
     

  3. 夜行性だったヒトの祖先
  4. 脊椎動物は魚類からヒトまで左右一対のカメラ眼を持ちますが、色覚は魚類、は虫類、鳥類の多くで4色型色覚を持っていたのが、ほ乳類で2色型に減少し、その中からヒトなどの霊長類が再び3色型色覚を持つようになりました。約2億年前、ほ乳類がは虫類から分岐した頃、地球は恐竜の全盛期で、ほ乳類の祖先は夜間行動をしていたために4種類のうち2種類の視細胞を失ったと考えられています。

    霊長類が今から約4〜3千万年前に再び3色型色覚を持つようになった理由については、恐竜の絶滅後に昼行性の樹上生活を始めたため視覚への依存度が高まったことによると考えられています。3色型は木の葉のなかから若葉や果実を見つけ出すのに適していたほか、仲間とのコミュニケーションにおける役割も果たしたことが指摘されています。

    Article14_image2
     

  5. 現代人において高い2色型色覚の頻度
  6. 3色型色覚を持つサルの世界にも2色型(P型、D型)のサルが共存していることが知られています。また、それら「色弱」のサルを遺伝子型で特定して追跡した研究において、色弱のサルにおいても食べ物が異なるということはなく、一方的に弱いということはないことが観察されています。

    ヒトは長い進化の過程を経て3色型色覚を持つようになりましたが(C型)、男性の5〜8%は2色型色覚を持ちます(P型、D型)。現代人における2色型色覚の頻度は、サルやチンパンジーにおけるその頻度と比べて極めて高いことがわかっています。

    その理由として、ヒトの現代社会においては樹上生活に適した3色型の優位性が失われたか、あるいは2色型のほうが有利な場合も生じたために3色型に対する選択圧が緩和されたという説があります。そのほかに、ヒトが狩猟採集生活をしていた時代には2色型は輝度コントラストから獲物を見つけるのが得意で、3色型は果実の採取などに適しているために、相互利益により維持されたという考え方もあります。遺伝子構造によるとの見方もあり、はっきりとした理由は明らかではありません。
     
     

  7. 多様性を担うオプシン遺伝子の多型
  8. このような色覚の多様性を担う視細胞は、364個のアミノ酸からなるタンパク質のオプシンに、ビタミンA誘導体であるレチナールが結合したものです。そして、ヒトにおいてC型、P型、D型を分けるのは、このオプシンのなかの15個のアミノ酸の違いです。

    オプシン遺伝子の多型による色覚の多様性は、種が環境変化に応じて生存していくために担保される遺伝的多様性と考えることができるかもしれません。
     
     


    参考資料:
    カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版
    (社)日本動物学会関東支部編『生き物はどのように世界を見ているか さまざまな視覚とそのメカニズム』(2001)学会出版センター
    種生物学会編『視覚の認知生態学 生物達が見る世界』(2014)文一総合出版
    三上章允編『視覚の進化と脳』(1993)朝倉書店
    ジェラルド H. ジェイコブス(三星宗雄訳)『動物は色が見えるか―色覚の進化的比較動物学―』(1994)晃洋書房
    京都大学霊長類研究所編著『新しい霊長類学 人を深く知るための100問100答』(2009)講談社
    岡部正隆、伊藤啓(2002)色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション 第1回 色覚の原理と色盲のメカニズム. 細胞工学21(7)733-745


第12回 カラーユニバーサルデザイン・日本から世界へ

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン」について迫る連載シリーズです。


世界に先駆ける日本の「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」の取り組みはどのような背景から生まれてきたのか、CUDO副理事長の伊賀公一氏と同副理事長の田中陽介氏にお話を伺いました。
 

  1. 色が「使える」条件
  2. 色をなぜ使うのか?色が「使える」から使うのだ、と伊賀氏は言います。モノクロが当たり前だった状況からカラー化を進めるには一定のコストがかかりますが、日本にはその経済力がありました。

    また、日本には教育上の共通インフラのようなものがあり、色で情報を伝えることのできる素地がありました。色に意味を持たせる場合に必要な一定レベルの印刷技術や塗装技術もありました。つまり日本には、いろいろな意味で色を使える条件が(色弱者以外には)そろっていました。海外旅行に行くと、言語、文化、宗教の多様性を実感します。そのようななかで、公共のサインなどにはアイコンを使うのが最も確実であって、色分けしておけば情報が伝わるという認識はほとんどないといいます。

    color_universal_12_色弱_社会意識
     

  3. 「左利きと何が違うの?」
  4. 一方、日本の小学校では2002年まで全員に色覚検査を行っていました。これは世界に類をみないものです。また、色弱者にはかなりの職業の制限があり、身内からも黙っておくように言われることが普通でした。ひと昔前は左利きも修正されたことを考えれば、皆と同じであることがそれほどに重要だったということです。

    田中氏によれば、米国では鉄道・航空など交通系や警察官の就職試験時に色覚検査が行われるものの、消防では行われなかったり、学校での一斉検査もないため、問題意識は低いといいます。特に西洋の文化は個人主義で、色覚についても個人の問題と捉えられているようです。実際、伊賀氏は 色弱 のイギリス人科学者に「左利きと何が違うの?」と言われたことがあるそうです。
     
     

  5. 日本発の成功事例になれば
  6. 日本はよい意味でも悪い意味でも色に対してセンシティブであるがゆえに、CUD (Color Universal Design) という新たな概念が生まれたと言えそうです。CUDはより多くの色覚型に情報が正しく伝わるデザインを目指している点において画期的です。田中氏は、「個人主義もあいまって孤立した色弱者は世界中にいるはずだが、日本の取り組みを成功事例として、独りで悩まずにすむ社会になればよい」と述べています。

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第11回 デジタル画像 作成時のひと工夫

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン」について迫る連載シリーズです。


学術発表におけるデジタルカラー画像の使用頻度が高まっています。第11回の今回は、医学生物学領域で使用頻度の高い蛍光多重染色画像を例にとり、多くの色覚型に伝わりやすい“ほんの一工夫”を紹介します。
 

  1. 単色画像はグレースケールで
  2. 今日、蛍光顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡の画像はデジタルカメラで撮影して、パソコン上で疑似カラーを用いて表現します。単色の画像を黒バックに赤や緑や青で提示しているものが多くありますが、この場合、色には意味がありません。むしろデメリットの方が多くなります。特にP型の人には黒い背景に赤い色は見にくく、一般型の人にとっても黒い背景に青色などは見にくいものです。

    また、ポスターや論文などの印刷物においてカラー画像は不鮮明になる欠点があります。特に緑色はトラブルが多いと言われます。これは、顕微鏡で取得された画像がRGB 形式であるのに対し、印刷は一般的にCMYK方式であるため、変換により階調が飛んでしまうためです。白黒画像であれば、細かいシグナル強度の差も鮮明に表現でき、印刷時のトラブルが少なくなります。単色画像はぜひ白黒のグレースケールで提示しましょう。
     

  3. 2重染色画像では「赤―緑」を「マゼンタ―緑」に
  4. 蛍光2重染色では、黒い背景に「赤」と「緑」で表現し、赤と緑が共存する部分が「黄色」で表現されるのが一般的です。ところが、この色の組み合わせは、P型、D型の人には非常に見づらいものです。P型色覚の見え方をシミュレーションしたものが図11-1下段の一番左の画像です。赤が暗く、緑と黄色が見分けにくいことがわかります。

    そこで、岡部正隆氏(東京慈恵会医科大学解剖学講座)は、P型、D型のみならず一般型のC型の人も含め、ほぼすべての人に理解できる蛍光二重染色画像の提示方法として、赤のシグナルをマゼンタ(赤と青を1対1で混ぜた赤紫色)に変更することを提唱しています。こうすれば、もともと赤かった部分は青寄りに見え、マゼンタと緑が共存する部分は「白色」で表現されるため、3つの色が明確に区別できます(図11-1下段の一番右の画像)。
     

  5. Photoshop上で赤チャンネルの絵を青チャンネルにコピーするだけ!
  6. では、「赤―緑」から「マゼンタ―緑」への変更はどのようにすればよいのでしょうか。多くの顕微鏡では疑似カラーとしてマゼンタを選択できますので、それを活用するのが最も簡単ですが、すでに撮影した赤緑画像についても、RGBモードの画像であればPhotoshopで簡単に変更できます。

    具体的な手順は図11の通りです。Photoshopで赤緑画像を開き、レイヤーウィンドウの中のチャンネルのタグを選択します。次に、赤チャンネルだけを表示させ(ショートカットは⌘+1またはctl+1)、赤チャンネルの画像のすべてを選択し(⌘+Aまたはctl+A),これをコピーします(⌘+Cまたはctl+C)。そして、青チャンネルだけを表示させます(⌘+3またはctl+3)。赤緑画像であれば青チャンネルには何も表示されませんので、先程コピーした赤チャンネル画像をペーストします(⌘+Vまたはctl+V)。そして全チャンネルを表示させると(⌘+^またはctl+^)、「マゼンダ―緑」の画像ができます。慣れれば数秒でできる操作です!
     
    Cyan_Magenta1

    Cyan_Magenta2

    図11 蛍光二重染色において「赤―緑」を「マゼンダ―緑」に変更する方法[岡部正隆氏の許可を得て次の文献より転載:岡部正隆、伊藤啓(2005)医学生物学者向き 色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法(http://www.nig.ac.jp/color/bio/)。下段は上段画像に対するP型色覚のシミュレーション(Vischeck使用)]

  7. 各チャンネルの画像はグレースケールで提示
  8. 多重染色においては、各チャンネル単独の画像も並べて提示することが多く、それらをカラーで提示しているものが多く見られます。しかし先に述べた通り、カラー画像は印刷物においては階調が飛び不鮮明になってしまいます。したがって、各チャンネルの画像はぜひ白黒のグレースケールで提示しましょう。
     

  9. 3重染色画像では最も有効な提示方法を
  10. 3重染色画像には、赤緑青の各色に加え、2色の重なり部分、3色の重なり部分の合計7色が混在することとなります。このような画像はカラフルで一見情報豊富ですが、色弱の人のみならず一般色覚型の人にも伝えられる情報はむしろ少なくなります。

    3重染色では、2つのチャンネルで示す分布関係が重要で、残りの1チャンネルは位置情報を示すためのみに使用されている場合があります。そのような場合は、重要な2チャンネルを「マゼンタ―緑」で提示し、もう1つのチャンネルを別にグレースケールで提示する方法もあります。

    発表者が伝えたいことを多くの人に正確に伝えられるよう、撮影に利用した色にこだわらず、最も有効な デジタル画像 作成方法を選択しましょう。
     
     


    参考資料:
    岡部正隆(2010)蛍光顕微鏡画像におけるカラーユニバーサルデザイン. 顕微鏡 45(3)184-189
    岡部正隆、伊藤啓(2005)医学生物学者向き 色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法
    Masataka Okabe, Kei Ito(modified 2008)Color Universal Design(CUD)- How to make figures and presentations that are friendly to Colorblined people
    岡部正隆、伊藤啓(2002)色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション 第3回すべての人に見見やすくするためには、どのように配慮すればよいか. 細胞工学21(9)1080-1104
     


第8回 スライド作成で気をつけたい配色のポイント

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン」について迫る連載シリーズです。


前回(第7回)紹介したように、国際学会でのプレゼンにおいて、「赤いレーザーポインターを使わず」、「赤色はオレンジ色寄り」にして、「色の名前を言うときに注意」することは、CUD(カラーユニバーサルデザイン)への大きな一歩です。今回は、さらに配慮したい2つのポイントを紹介します。
 

  1. 使う色の数を少なくする
  2. プレゼンテーションソフトウェアの発達により、多くの人が気軽に色をつけてカラフルなスライドを作るようになりました。一般型色覚のC型の人にとって色は便利な情報伝達手段ですが、使いすぎれば見づらい場合もあります。P型、D型などの人にとってはなおさら、重要な部分で見分けにくい色の組み合わせが増えてしまいます。また、意外なことに、重要ではない演出的な色使いにも問題があります。例えばデータの一部に、特に必要ではない背景色がついていたとすると、P型、D型などの人は「何か色がついているようだが意味があるのだろうか」と不安を抱いてしまいます。

    したがって、なるべく多くの色覚型の人にわかりやすいスライドを作るためには、本当に必要でない色は使わないのが賢明です。そのようにシンプルを極めつつ、デザイン性の面でも満足のゆくスライド作りをめざしましょう。画面を動かすアニメーション効果も当初は多用されましたが、かえってわずらわしいという考え方が広まって、以前ほど多用されなくなりました。色についても多用しない効果的な使い方が広まっていくと考えられます。
     

  3. 色の組み合わせに気を配る―色相、明度、彩度とは?
  4. 赤色の選び方に代表されるように、色はそれ自体の問題もありますが、P型、D型の人にとっては、識別しにくい色の「組み合わせ」が問題となるケースが多くあります。第3回で紹介したように、「赤と緑」、「淡い水色とピンクと灰色」、「黄色と黄緑」、「紫と青」は特に判別が困難なため、重要な色分けの組み合わせにはなるべく用いないようにしましょう。

    色には、色合い(色相)のほかに、明るさ(明度)、鮮やかさ(彩度)といった要素があります。P型、D型の人は色合い(色相)の識別が困難な場合が多いですが、色の明るさ(明度)や鮮やかさ(彩度)はよくわかります。そこで、色相のみならず、明度、彩度に変化をつけると、色弱者の人にも区別しやすい色の組み合わせが増えます。少し踏み込んだテクニックになりますが、これを意識してスライド作りに反映させれば、多彩な色使いも維持しつつ、ユニバーサル 化に配慮したプレゼンテーションを行うことができます(図8)。

    カラー ユニバーサル デザイン_hue_saturation

    図8 色相のみならず明度・彩度の差をつけた色の組み合わせの例[上:調整前、下:調整後](CUDOおよびハート出版より許可を得て転載)

     
     


    参考資料:
    カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版
    岡部正隆、伊藤啓(2005)医学生物学者向き 色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法
    伊藤啓(2012)カラーユニバーサルデザイン 色覚バリアフリーを目指して. 情報管理 55(5)307-317
     


第7回 色覚バリアフリーのスライド・3つのポイント

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズです。


忙しくて余裕がない?―ポイントさえおさえれば、CUDはすぐに実践できます! CUDO副理事長の伊賀公一氏に、PowerPointなどを用いたプレゼンテーションでこれだけは実践してほしいこと3つを伺いました。
 

  1. 赤色のレーザーポインターを使わない
  2. Green_Pointer_Fig7-1

    図7-1 緑色のレーザーポインターの例(CUDOおよびハート出版より許可を得て転載)

    「赤色」はP型、D型の人には目立つ色ではありません。赤いレーザーポインターの光は長波長の光を使用しているために、特にP型の人には“赤外線”になってしまい、見えにくいか全く見えません。そこで、2000年代になって、P型、D型の人にも見えやすい緑色のレーザーポインターが開発されました(図7-1)。緑色のレーザーポインターは、開発当初、種類が少なく高価なものでしたが、現在では種類が増えて入手しやすくなっていますので、買い替えの際には是非導入を検討しましょう。なぜなら、緑色のレーザーポインターの光はC型の人にとっても赤色より明るく見やすいのです。

    最近は、PowerPointなどのアニメーション機能を用いてスライドの特定箇所を強調する方法もあるため、レーザーポインターを使わない人も増えています。それも赤色のレーザーポインターの使用を避ける方法の1つと言えます。
     

  3. 赤色の代わりにオレンジ色(朱赤)を使う
  4. 一般型のC型色覚者は「赤色」を目立つ色と考えていますので、重要な部分や強調したい内容に赤色を用いることが非常に多いです。しかし、特にP型の色覚者にとって、赤は目立たない色です。そこで、同じ赤色でも波長がより短いオレンジ色(朱色)寄りの色にすると認識されやすくなります。

    Microsoft Officeの標準色の赤は、3原色を用いたRGBの色表現では(R:255, G:0, B:0)という値になっています。デザインに凝る人であれば、色の設定の「ユーザー設定」機能で色を選ぶ場合があるでしょう。色弱の人にも見やすい赤色として推奨されているのは、具体的には(R:255, G:40, B:0)の色です。緑(G)に40が加わると、見えやすくなります(図7-2)。

    Orange_Insteadof_Red

    図7-2. 赤色の代わりに推奨されるオレンジ色(朱赤)のRGB指定値[右図に示す通り R: 255, G: 40, B: 0]

    一度このオレンジ色(朱赤)を作ったら、「CUDカラー」などテーマを名付けてカラーパレットに保存することをお勧めします。PowerPointなら[テーマ]タブ内の[配色]から、ExcelおよびWordなら[ホーム]タブ内の[配色]から[新しい配色パターンの作成]を選んで追加します。

    CUDO認証マークに用いられている赤色を見れば、色弱の人にも見えやすいオレンジ色(朱赤)のイメージがつかめます(図7-3)。赤色を使いたいとき、是非、少しオレンジ色寄りにしましょう!
    色を変えることができない場合、バックが濃い色なら白いフチドリをつけることも有効です。

    CUD_CertificateLogo

    図7-3 見えやすいオレンジ色(朱赤)(左下の丸):CUD認証マーク(CUDOより許可を得て転載)

  5. 色の名前だけで情報を指し示さない
  6. 「緑色の部分が○○です」「グラフの赤線で示している通り・・」などのように、色の名前でスライド上の情報を指し示すと、P型、D型色覚者にはどこを指しているかわからない場合が多くあります。それを解決するにはどのような方法があるでしょうか。

    まず1つは、「この緑色の部分が○○です」と言いながらポインターなどのツールでもその部分を指し示したり、「緑色の小さな丸の部分が○○です」などと、色以外の情報も加えて言うことです。もう1つは、最初から多様な色覚の人々に情報を伝えることを想定して、色のみに頼らない表現方法でスライドを作成することです。CUDに配慮したグラフの作り方については第9回で紹介します。
     
     


    参考資料:
    岡部正隆、伊藤啓(2005)医学生物学者向き 色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法
    カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版
    伊藤啓(2012)カラーユニバーサルデザイン 色覚バリアフリーを目指して. 情報管理 55(5)307-317