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第16回 “魅”せるプレゼンテーション – チェックリスト!

より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい、色覚バリアフリーなスライドを作るために覚えておきたい「CUD: カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズ。第16回目の今回は、これまでにご紹介した色覚バリアフリーの資料作りのポイントを一挙ご紹介します。


ここでは、CUDOによる「CUDチェックリスト」から、学術発表に関係する項目をピックアップします。本連載で取り上げていない内容もありますので、 色覚バリアフリー の発表資料を作成するための参考資料として役立ててください。
 

  1. 色の選び方
  2. ・赤は濃い赤を使わず、朱色やオレンジを使う
    ・黄色と黄緑は色弱者には同じ色に見えるので、なるべく黄色を使い、黄緑は使わない
    ・濃い緑は赤や茶色と間違えられるので、青みの強い緑を使う
    ・青に近い紫は青と区別できないので、赤紫を使う
    ・細い線や小さい字には、黄色や水色を使わない
    ・明るい黄色は白内障では白と混同するので使わない
    白黒でコピーしても内容を識別できるか確認する
     

  3. 色の組み合わせ方
  4. ・暖色系と寒色系、明るい色と暗い色、を対比させる
    ・パステル調の色どうしを組み合わせない。はっきりした色どうしか、はっきりした色とパステル調を対比させる
     

  5. 文字に色をつけるとき
  6. ・背景と文字の間にはっきりした明度差をつける(色相の差では不可)
    ・線の細い明朝体でなく、線の太いゴシック体を使う
    ・色だけでなく、書体、太字、イタリック、傍点、下線、囲み枠など、形の変化を併用する
     

  7. グラフや概念図
  8. ・区別が必要な情報を、色だけで識別させない
    ・明度や形状の違いや文字・記号を併用して、色に頼らなくても情報が得られるように工夫する
    ・白黒でも意味が通じるように図をデザインし、色はその後で「装飾」としてつける
    ・シンボルは同じ形で色だけ変えるのではなく、形を変えて色は少なくする
    ・線は実線どうしで色だけを変えるのではなく、実線、点線、波線など様々な線種と色とを組み合わせる
    ・色情報を載せる線は太く、シンボルは大きくする
    ・塗り分けには、色だけでなくハッチング(地模様)等を併用する
    ・色相の差でなく明度の差を利用して塗り分ける
    ・輪郭線や境界線で、塗り分けの境界を強調する
    ・図の脇に凡例をつけず、図中に直接書き込む
     

  9. 図の解説の仕方
  10. 色名だけで対象物を指し示さない。位置や形態を描写したり、ポインターで直接指し示す
    ・凡例にはなるべく色名を記入するか、凡例を使わずに直接矢印で示す
    ・赤いレーザーポインターは見づらいので緑のレーザーポインターを使用する
     
     
    〜カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版 P.168より抜粋(一部補足)〜
     
     

    Article16_image_RE_色覚バリアフリー
     
     


    参考資料:
    カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版
    カラーユニバーサルデザイン機構『カラーユニバーサルデザインガイドブック』


第9回 正しく情報が伝わるグラフ作成のコツ

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラー ユニバーサル デザイン」について迫る連載シリーズです。


情報を一目瞭然に伝えるためのグラフも、色の使い方によっては逆にわかりにくいものとなります。ほんの少し工夫するだけで、多様な色覚の人に見やすくなりますので、次の2点を是非取り入れましょう!
 

  1. 折れ線グラフ – 線の種類を変えましょう
  2. Excelなどの表計算ソフトを用いれば、表の形で入力した統計データをクリックひとつで グラフ に変換できます。表9-1左に最もシンプルな例を紹介します。線の太さや色はデフォルトで決まっており、何も考えないうちにこのようなカラフルな折れ線グラフが出来上がります。これをVischeckというシミュレーションソフト(第17回で紹介)を用いてP型色覚のシミュレーションとして写してみると、表9-1右のようになります。黄緑とオレンジ、あるいは青・紫・水色の区別が難しいことがわかります。

    Figure9-1_Vischeck_グラフ

    図9-1 折れ線グラフ例①[左:Excelのテンプレートからプレーンな折れ線グラフを選択、右:P型色覚のシミュレーション(Vischeck使用)]

    そこで、表をグラフに変換する際に、プレーンな折れ線グラフではなく、「マーク付き折れ線グラフ」を選ぶと、図9-2のようになります。少し煩雑になりますが、こうすれば、すこし時間をかければ凡例と線を照合することができます。ワンクリックで差をつけるためには、是非この「マーク付き折れ線グラフ」を選びましょう!

    Figure9-2_Vischeck_Marker_グラフ

    図9-2 折れ線グラフ例②[左:Excelのテンプレートから「マーカー付き折れ線グラフ」を選択、右:P型色覚のシミュレーション(Vischeck使用)]

    マーク付き折れ線グラフは有効ですが、線数が多い場合は照合に時間がかかります。もう一手間加える余裕がある場合は、データ系列ごとの書式設定で、線の種類(実線/点線)を選びましょう。さらに、凡例との照合をしなくてもいいように、凡例をなくし、テキストボックスを使って系列名を線の近くに直接記載しましょう。このようにすると、図9-3左のようになります。図9-3右のP型色覚のシミュレーションの通り、色の区別がつきにくくてもグラフの情報が一見してわかるようになります。

    Figure9-3_Vischeck_Marker_Dot_グラフ

    図9-3 折れ線グラフ例③[左:Excelのテンプレートから「マーカー付き折れ線グラフ」を選択後、適宜加工を追加、右:P型色覚のシミュレーション(Vischeck使用)]

  3. 棒グラフ・円グラフ – 塗りつぶしに「地模様」を入れましょう
  4. 棒グラフ、円グラフについても同様に、色の情報をなるべく形の情報に置き換え、凡例は使わず、直接指し示すことがポイントです。図9-4にExcelのワンクリックで選べるプレーンな横棒グラフを示します。系列データごとに、書式設定の[塗りつぶし]のなかの[パターン]から斜線、ドットなどの地模様を選んで入れ、凡例をなくして直接指し示すと、多様な色覚の人々に見やすい棒グラフができます(図9-5)。地模様を入れることを「ハッチング」と言います。

    Figure9-4_Hatching_グラフ

    図9-4 棒グラフ例① Excelのテンプレートからプレーンな横棒グラフを選択

    Figure9-5_Hatching_グラフ

    図9-5 棒グラフ例② Excelのテンプレートからプレーンな横棒グラフを選択後に適宜加工

    円グラフについても、プレーンなタイプ(図9-6)を選択した上で、「書式設定」で系列データの境目にフチ取りの線を入れ、凡例をなくして直接指し示すと多様な色覚の人々に見やすい棒グラフができます(図9-7)

    Figure9-6_Plane_グラフ

    図9-6 円グラフ例① Excelのテンプレートからプレーンな円グラフを選択

    Figure9-7_Divided_グラフ

    図9-7 円グラフ例② Excelのテンプレートからプレーンな円グラフを選択後に適宜加工

  5. 白黒コピーに耐えられることを目安に!
  6. このようにほんの一手間加えることで、一般色覚型の人にとっても、より見やすい グラフ ができます。また、色にのみ頼らない表現をするということは、白黒コピーに耐えるということです。PowerPointのスライドを配布資料用に印刷して白黒コピーをしたら、カラー部分の意味がわからなくなったという経験はありませんか?

    ここに紹介したような手法でグラフを作成すれば、そのような問題が生じません。今回紹介したグラフ作成のコツを、プレゼンテーションのみならず論文作成にも生かしましょう。論文審査において有利ですし、より多くの読者に情報が正しく伝わります。白黒コピーに耐えることを目安として、ユニバーサルな学術発表をめざしましょう。
     
     


    参考資料:
    カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版
    岡部正隆、伊藤啓(2005)医学生物学者向き 色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法
    岡部正隆、伊藤啓(2002)色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション 第3回すべての人に見やすくするためには、どのように配慮すればよいか. 細胞工学21(9)1080-1104
     


第7回 色覚バリアフリーのスライド・3つのポイント

国際学会でのプレゼンを成功させるには、聞き手を引きこむ英語スピーチに加え、見やすいスライド作りも重要な鍵となります。より多くの人に伝わりやすく・わかりやすい色覚 バリアフリー なスライドを作るために覚えておきたい「カラーユニバーサルデザイン」について迫る連載シリーズです。


忙しくて余裕がない?―ポイントさえおさえれば、CUDはすぐに実践できます! CUDO副理事長の伊賀公一氏に、PowerPointなどを用いたプレゼンテーションでこれだけは実践してほしいこと3つを伺いました。
 

  1. 赤色のレーザーポインターを使わない
  2. Green_Pointer_Fig7-1

    図7-1 緑色のレーザーポインターの例(CUDOおよびハート出版より許可を得て転載)

    「赤色」はP型、D型の人には目立つ色ではありません。赤いレーザーポインターの光は長波長の光を使用しているために、特にP型の人には“赤外線”になってしまい、見えにくいか全く見えません。そこで、2000年代になって、P型、D型の人にも見えやすい緑色のレーザーポインターが開発されました(図7-1)。緑色のレーザーポインターは、開発当初、種類が少なく高価なものでしたが、現在では種類が増えて入手しやすくなっていますので、買い替えの際には是非導入を検討しましょう。なぜなら、緑色のレーザーポインターの光はC型の人にとっても赤色より明るく見やすいのです。

    最近は、PowerPointなどのアニメーション機能を用いてスライドの特定箇所を強調する方法もあるため、レーザーポインターを使わない人も増えています。それも赤色のレーザーポインターの使用を避ける方法の1つと言えます。
     

  3. 赤色の代わりにオレンジ色(朱赤)を使う
  4. 一般型のC型色覚者は「赤色」を目立つ色と考えていますので、重要な部分や強調したい内容に赤色を用いることが非常に多いです。しかし、特にP型の色覚者にとって、赤は目立たない色です。そこで、同じ赤色でも波長がより短いオレンジ色(朱色)寄りの色にすると認識されやすくなります。

    Microsoft Officeの標準色の赤は、3原色を用いたRGBの色表現では(R:255, G:0, B:0)という値になっています。デザインに凝る人であれば、色の設定の「ユーザー設定」機能で色を選ぶ場合があるでしょう。色弱の人にも見やすい赤色として推奨されているのは、具体的には(R:255, G:40, B:0)の色です。緑(G)に40が加わると、見えやすくなります(図7-2)。

    Orange_Insteadof_Red

    図7-2. 赤色の代わりに推奨されるオレンジ色(朱赤)のRGB指定値[右図に示す通り R: 255, G: 40, B: 0]

    一度このオレンジ色(朱赤)を作ったら、「CUDカラー」などテーマを名付けてカラーパレットに保存することをお勧めします。PowerPointなら[テーマ]タブ内の[配色]から、ExcelおよびWordなら[ホーム]タブ内の[配色]から[新しい配色パターンの作成]を選んで追加します。

    CUDO認証マークに用いられている赤色を見れば、色弱の人にも見えやすいオレンジ色(朱赤)のイメージがつかめます(図7-3)。赤色を使いたいとき、是非、少しオレンジ色寄りにしましょう!
    色を変えることができない場合、バックが濃い色なら白いフチドリをつけることも有効です。

    CUD_CertificateLogo

    図7-3 見えやすいオレンジ色(朱赤)(左下の丸):CUD認証マーク(CUDOより許可を得て転載)

  5. 色の名前だけで情報を指し示さない
  6. 「緑色の部分が○○です」「グラフの赤線で示している通り・・」などのように、色の名前でスライド上の情報を指し示すと、P型、D型色覚者にはどこを指しているかわからない場合が多くあります。それを解決するにはどのような方法があるでしょうか。

    まず1つは、「この緑色の部分が○○です」と言いながらポインターなどのツールでもその部分を指し示したり、「緑色の小さな丸の部分が○○です」などと、色以外の情報も加えて言うことです。もう1つは、最初から多様な色覚の人々に情報を伝えることを想定して、色のみに頼らない表現方法でスライドを作成することです。CUDに配慮したグラフの作り方については第9回で紹介します。
     
     


    参考資料:
    岡部正隆、伊藤啓(2005)医学生物学者向き 色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法
    カラーユニバーサルデザイン機構(2009)『カラーユニバーサルデザイン』ハート出版
    伊藤啓(2012)カラーユニバーサルデザイン 色覚バリアフリーを目指して. 情報管理 55(5)307-317