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引用符 ( クォーテーション )

引用符とは、会話や他からの引用を示すために付ける記号のことで、日本語のカッコ(「」)にあたります。クォーテーションマーク(quotation marks)とも表記され、「ダブルクォーテーションマーク(二重引用符)」と「シングルクォーテーションマーク(一重引用符)」があります。ここでは、クォーテーションマークの用法のうち主なものを取り上げます。

1. シングルクォーテーションとダブルクォーテーション

英語の引用符、シングルクォーテーション(一重引用符)とダブルクォーテーション(二重引用符)の使い分け方については厳密なルールはなく、また、イギリス英語とアメリカ英語でも標準的な用法が多少異なります。それゆえ、正しい用法と誤った用法との区別はありますが、使い方に関してはある程度の自由があります。最も重要なことは使い方の一貫性です。

2. 自己言及

次の文を見てみましょう。

(1) The English word “science” comes from the Latin scientia, meaning ‘knowledge’.
ここで「science」という語は科学のことを意味しているのではなく、「記号」としてその語自身を指しています。ある語句が記号のように用いられる場合には、その特別な用法を示すため特別な形で表示する必要があります。ダブルクォーテーションはそうした場合によく使用されます(イタリック体も同様に用いられます)。なお、「knowledge」にシングルクォーテーションが付いていることに注目してください。シングルクォーテーションが付くのは、「knowledge」も特別な意味で使用されているからです。しかし「knowledge」は「science」と異なりその語自身ではなく、その単語が本来持つ「意味」を指しています。(ある意味を「指す」ことと「表す」ことは異なる行為ということに注目してください。)このような時はシングルクォーテーションで示します。

最後に、「scientia」がイタリック体で記されていることに注目してください。この語も「science」と同じように用いられていますが、外国語(この場合英語にとっての「scientia」)はイタリック体にして表記するのが慣例で、引用符は付けません。さらに引用符を加えるとぎこちなくなってしまうからです。

3. 用語の定義

物事の呼称を定めたり用語を定義したりするときは、対象となる言葉を引用符で囲みます。シングルクォーテーションとダブルクォーテーション、どちらを用いることもできますが、そのいずれかを選んだら一貫して最後まで用いなければなりません。以下はこの用法の典型的な例です。

(2) [米] In this paper, we call these cases “asymptomatic outliers.”
(ピリオドの位置がダブルクォーテーションの内側:よりアメリカ的)
[英] In this paper, we call these cases “asymptomatic outliers”.
(ピリオドの位置がダブルクォーテーションの外側:よりイギリス的)
(3) We refer to this as a ‘naïve solution’, because it results from what is known as a ‘naïve perturbation expansion’.
(4) Let us term this short period of contraction the ‘secondary phase’.

4. 注釈、注解

第2節に挙げた例文での「knowledge」の用法は「gloss」(「注釈」、「注解」)と呼ばれ、一般的にシングルクォーテーションで示されます。以下にこの用法をさらに例示します。

(5) In this work, we use the term “almost certainly convergent” to mean ‘convergent for all but at most a measure 0 set of processes’.

5. 比喩的な用法

以下の文を見てみましょう。

(6) Each electron “feels” the surface charge through the surrounding fluid.
ここで動詞「feels」はより正確な表現の代わりに、より直感的なイメージを伝えるように比喩的な意味で用いられており、そのことを表すためにダブルクォーテーションが付いています。

6. 特定の定義

ある語句が特定の定義で用いられる場合、そのことを示すのにダブルクォーテーションを使います。以下はその用法の典型的な例です。

(7) Anisogomphus solitaris is categorized as “critically endangered” by the IUCN.
ここでのダブルクォーテーションは、「critically endangered」という表現がIUCNという団体によって特別に定義され、その定義で用いられているという意味を表します。

7. 反語法

以下の文は、あえて「friend」という語を反語的に使用することで、強い皮肉の意を含んだ内容となっています。

(8) My “friend” John published my results without my consent.
このような場合でも、ダブルクォーテーションを用います。

8. 作品のタイトル

あるまとまった作品(本、絵画、映画、交響曲、アルバムなど)のタイトルは、イタリック体にすることが標準的です。そのようなまとまった作品の一部(一作品)については、ダブルクォーテーションで示すのが慣例となっています。以下にその用例を示します(それぞれの文中のコンマの位置に注目してください)。

(9) [英] The poem “By the River”, appearing at the end, is generally regarded as the finest work in Sontel’s Unguarded Musings. (コンマの位置がダブルクォーテーションの外側:よりイギリス的)
[米] The poem “By the River,” appearing at the end, is generally regarded as the finest work in Sontel’s Unguarded Musings. (コンマの位置がダブルクォーテーションの内側:よりアメリカ的)

9. 引用

以下に引用の用法における引用符の典型的な用い方を例示します。アメリカ英語とイギリス英語で違いがあることに注目してください 。

(10) [英] When I asked him when he would come, Tom said, ‘when I’m ready’, but I’m not sure what he meant.(コンマの位置がシングルクォーテーションの外側:よりイギリス的)
[米] When I asked him when he would come, Tom said, “when I’m ready,” but I’m not sure what he meant.(コンマの位置がダブルクォーテーションの内側:よりアメリカ的)
(11) [英] Smith characterized this entire body of work as being “wholly without merit”. (ピリオドの位置がダブルクォーテーションの外側:よりイギリス的)
[米] Smith characterized this entire body of work as being “wholly without merit.” (ピリオドの位置がダブルクォーテーションの内側:よりアメリカ的)
(12) Although his statement was “You must not give up,” he certainly did. (両方)

ここで特に注目していただきたいのは(12)での用法です。この場合、引用文の原文がピリオドで終わるはずですが、ここではコンマになっています。これは本節の脚注で述べた、「忠実性」についてのルールの例外です。(12)によって示されるように、ここで優先されるルールは、引用文がある一つの文章の中に挿入されている場合は、引用文をピリオドで終わらせてはいけないということです。

詳しいことについては以下の参考書をご覧ください。
1. Burchfield, Robert William, Fowler’s Modern English Usage (Revised 3rd ed.), (Oxford University Press, 2004). ISBN 978-0-19-861021-2. OCLC 56767410.
2. University of Chicago, The Chicago Manual of Style (16th ed.), (Univ. of Chicago Press, 2010). ISBN 978-0-226-10420-1.

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