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文献レビューを書く時に重要な10のポイント

*本記事は、2018年5月に掲載された「文献レビューを書く時に重要な10のポイント」の内容を更新してお届けするものです。

文献レビューとは、特定のテーマに関する研究論文などの著作物の概要や評価をまとめて記述するものです。論文の一形式として知られており、いかなる分野の学術研究においても、研究者が特定の研究テーマに関する先行研究の論文を把握したり、研究分野に関する知識を収集したりするのに役立つものです。

文献レビューは、それ自体で単独の論文として公表することも可能です。序論、方法、本論、考察と結論、最後に引用(参考)文献リスト(Reference)といった章立てで構成され、ほぼ論文と同じ要素を盛り込む必要がありますが、よりよい文献レビューを書くには、構成の他にも留意すべき点がいくつかあります。該当分野の研究を広く網羅しつつ、執筆者の独創性(オリジナリティ)があり、かつ、わかりやすく書かれた文章であることが求められるのです。

ここでは、研究者が文献レビューを論文形式で書くときに押さえておくべき重要な10のポイントを紹介します。

1. 対象テーマの学術論文の調査を行い、先行研究を広く網羅する。

文献レビューは特定の分野における文献を評価するものです。対象とするテーマについての研究の進展状況を把握したり、先行研究の傾向と内容をつかみ問題を解決する、あるいは、まだ解決していない問題、明らかになっていないことなどを指摘したりするため、先行研究を広く網羅しておく必要があります。
近年は分野を跨いだ研究も活発化していることら、直接的に関係しないように見える他分野に対象テーマに関連する文献が潜んでいる可能性もありますので、範囲を限定せずに広く網羅することも大切です。

2. 参考文献管理ツール(Mendeley Desktopなど)を用いて出版済み論文の調査時間を節減する。

対象とする研究テーマに関する先行研究を徹底的に調べて分析することが必要です。先行研究を探す際には、Mendeley Reference Manager for Desktop などの文献管理ソフトやGoogleスカラー、PubMedなどの論文検索データベースを活用して効率よく情報を収集しましょう。類似の研究で引用されている文献を見てみるのも有用です。ただし、未発表の論文は調査対象に含めません。
また、先行研究の文献を検索する際には、適切なキーワードを使う必要があります。見当違いなキーワードを使ってしまうと、探している論文に行き着けないことがあるので注意します。キーワードの入力順を入れ替えると異なる検索結果が表示されることもありますし、同義語や類義語を含めて検索してみることも一案です。

3. どんな読者に届けたいのかを意識してテーマを選択し、それから執筆する。

文献レビューの書き方はさまざまですが、執筆に取りかかる前にテーマを決めておくことは必要です。特定のテーマを選択したら、それについて重要な論点をまとめますが、その際には読者を意識して、読者に新しい視点や見解を届けられるように論文を書き進めていきます。

4. 研究の長所・短所を明確にし、バイアスがかからないようにする。

テーマに関連する文献が集まったら熟読し、先行研究の長所や短所、先行研究で明らかになったことやならなかったこと、先行研究の限界を指摘していきますが、その際には、いかなるバイアスもかからないように注意しましょう。

5. 題名、要約、索引、序論、資料、参考文献一覧、付録などの情報を書き込む。

通常、文献レビューは、序論(イントロダクション)、方法、本論、考察、結論、参考文献一覧から構成されます。それぞれのセクションで書くべきことを明確に述べましょう。序論では、この文献レビューで取り上げているテーマ、レビューの焦点が読者に伝わるように記述します。本論部分は、時系列に沿った書き方にするか、テーマ別に書くかで変わってきます。

6. 全体の構成と流れがブレないように注意する。

これは文献レビューに限ったことではありませんが、論文全体は論理的に展開されていることが重要です。

7. 特定の分野で進んでいる研究についての詳細な分析を示す。

集めた先行研究の中で、共通する内容、または一致しない内容を洗い出し、その理由を考察します。批判的に先行研究を見比べることによって論文の問題点も見えてくるでしょう。先行研究で明らかにされていること、明らかになっていないことをまとめます。

8. 特に最新または最も引用されている研究論文を見直し、紹介する。

文献レビューは、研究者が特定の分野における研究の最新情報を入手し、どの論文を読むかを判断する目安としても活用されます。それを踏まえ、最新の、または最も引用されている論文まで網羅するようにします。

9. 出版済みの研究論文を引用する際には自分の言葉で説明し、剽窃の恐れを避ける。

論文を引用する際には十分な注意が必要です。直接的に他者の書いた論文の文章を抜き出して書き写すこと、部分的に切り抜いてつなぎ合わせることは剽窃・盗用となります。論文に書かれた文章を転用する場合は、引用符を付ける、逐語的に引用せずに自分の言葉で説明するなど引用のルールを守って記載しなければなりません。

10. さらなる調査が必要な題材や発想については要約部分に明確に示す。

要約には、対象の研究テーマの主要な論点や結論を簡潔に記すとともに、さらに調査が必要な課題や後の研究につながる課題や発想、テーマに関する情報を凝縮して明確にまとめます。

毎年、大量の論文が出版されており、その数は増え続けています。網羅する文献リストを長大にすることより、該当分野の研究の現状を的確に示すようにしましょう。文献レビューの作成で何よりも重要なのは、そのレビューが何を目的にどのような選択基準のもと取り上げた論文を基に書かれたものであるかが明確になっていることです。ここで紹介した10のポイントを参考に良い文献レビューを作成してください。


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