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【工学院大学】藤川 真樹 准教授インタビュー(後編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十七回目は、工学院大学情報学部コンピュータ科学科の藤川真樹先生にお話を伺いました。インタビュー後編は、英語への取り組み方法や、英語の指導方法、さらに工学院大学のユニークな英語学習についてのお話です。


■ 英語の学習方法について教えてください。
オンライン英会話のレッスンを毎日続けています。また、単語は使わないと忘れてしまいますので、毎朝必ず勉強しています。普段が日本語の環境ですので、どうにかして英語に触れる機会をつくらなくちゃと思って、Japan Times STなどを1日1ページ読むとか、英語のボキャブラリーを増やすために地道に取り組んでいます。講義で英語を使うことはないですし、海外のスタッフがいるわけでもないので、自分から触れにいくことを常々意識しています。
■ 論文を英語で書かれる機会は多いのですか?
日本語と合わせて年に2・3本でしょうか。論文を書く際は、まず日本語で書いて、それを英語に翻訳します。その後、御社に校正をお願いをするという段階を踏んでいます。
発表は3回か4回です。授業の合間に国際会議に行きますので、回数は限られます。まずは国内でやって、研究成果の上がったものを海外用の原稿に織り込み、国際会議に投稿する。そして無事に採択されたら、発表しに行くという。
事業化、実用化につながる可能性があるので、国際会議での発表は非常に有意義です。研究者の方々と話をしながらニーズを探ったり、オーディエンスからいろいろなご提案をいただけたりするのはありがたいです。
質疑応答には、答えられる範囲で答えます。発表の後のQ&Aは、たかだか5分くらい。受けられる質問の数も限られているので、そこで受けた質問にはその場で答えますが、どうしても答えられない、時間がないという場合には、セッションの後で個別に「あの時のご質問ですけど……」と内容を確認してから、図やイラストを描きながら説明することもあります。
■ 論文を書かれる際、専門用語や今までにない言葉などの英訳にご苦労されることはありませんか?
この分野には先達のフロンティアがいらっしゃるんです。横浜国立大学の松本勉先生が「人工物メトリクス」という概念を作られました。これは、人によって異なる指紋のような情報を、人工物にも付けてみようというものです。それは、製造過程において自然偶発的かつランダムにできる情報で、それを用いると一つひとつ識別できるようになるという考え方です。私はこのコンセプトに沿ってアプローチしているんです。今は陶磁器ですが、次は合成樹脂でやってみようとか、いろいろな人工物に適用しているだけなので、表現で困ることはないんです。
松本先生が「Artifact-metrics(人工物メトリクス)」という言葉を作られました。ただ世界での認知度はそれほど高くないようなので、「Anti-counterfeiting method」など別の表現を使う時もあります。私は、松本先生に敬意を表して「Artifact-metrics」と最初に使って、後で「This metrics is a kind of technique that is also called as an anti-counterfeiting metrics method」と言った形で表現しています。両方の表現を適宜使い分けて、盛り込むというような感じですね。
■ 発表や質疑応答以外に英語でご苦労されることはありますか?
会議の司会を引き受ける時ですね。私の拙い英語で進行を遅らせたり、妨げたりするのはよくないので、必ず最初にスピーチ原稿だけは用意します。頭が真っ白くならないようにとの意図もあって。事前練習まではしませんが、メモが一つあるだけで気持ちは落ち着きます。
■ 学生への英語指導方法についてもお聞かせいただけますか。
週1回のゼミでは、私も含めて英語だけでディスカッションする時間を作っています。研究室の学部生8名全員、英語のみで会話するんです。教材はインターネット上にあるニュース記事など。技術に関係する記事を一つ選んで、それについてどう思うかなどを学生に質問し、それに答えてもらっています。あとは、部屋にJapan Times STなどの週刊紙を置いておいて、興味があれば読めばよいと。
一般的な講義では毎回、講義の前半、冒頭の5分を使って英文記事をプロジェクターで見せています。トピック紹介ですね。Japan Today、Japan Times、Mainichiオンラインなどから技術関連のニュース記事を拾って生徒に見せて、日本語で解説します。紹介記事は英語のまま投影して、こんな技術が開発されているんだと紹介する。これは数学の講義でもセキュリティの講義でも、どれでも一緒です。1年生から4年生までいて英語のレベルも異なりますが、まったく同じ英文記事を使用しています。
■ まずは触れてみることが大事、という感じでしょうか。
そうですね。英語に親しむことが大前提です。そこからすべてが始まるんじゃないかと。本学の英語のカリキュラムは特徴的です。例えば海外留学プログラム。英語はしゃべれなくてもいいから、とにかく現地に行かせてしまうというものです。アメリカに行って、講義は日本語でやるけれど、学校以外の生活、ホームステイ先での会話などは英語でやるという「ハイブリッド留学」を取り入れています。文科省から「大学教育再生加速プログラム(AP)」にも採択されています。実学主義という校風が英語教育にも反映されています。
■ 最後に、論文の英文校正サービスに関して、あったらよいなというサービスがあればご意見をお聞かせください。
私は今のサービスで満足しています。納期も価格もクオリティも本当によいです。自分の元の原稿はどこに行った?と思うくらい添削をしていただけて、十分に満足しています。原稿評価カルテでしたか、自分の英語力をチェックしてくれるシートが出ますよね。それを見ると、私の成績も概ねよいかなと思えます(笑)。
■ ぜひ、今後ともご利用いただければ幸いです。国際学会での発表など、今後のご予定はいかがですか。
授業と授業の合間に行くため発表の数は限られますが、引き続きブルー・オーシャンを開拓しつつ、他の分野にも応用できるような研究成果を出していきたいと思っています。研究の醍醐味って、やはりクオリティの高い成果を出すことじゃないかなと思います。それが学生の励みになって、その研究成果を持って、どんどん発表に行ってくれれば。たとえ国内での発表だとしても、それが自信になって、セキュリティの分野って面白いなと思ってくれれば、それでよいと思います。
■ ありがとうございました。

【プロフィール】
藤川 真樹(ふじかわ まさき)

工学院大学情報学部コンピュータ科学科 准教授
1998年3月 徳島大学 工学研究科 知能情報工学専攻  博士前期修了
2004年8月 中央大学 理工学研究科 情報工学専攻 博士後期修了
1998年3月~2016年3月 綜合警備保障株式会社 勤務
2016年4月 東京工科大学 特別講師「セキュリティシステム」担当
2016年4月~ 工学院大学情報学部コンピュータ科学科 准教授
ご専門の研究分野は、社会システム工学・安全システム

 

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