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Recommended:研究者を論文の山から救い出す新サービス

一般の書店で見かけるのとは別に、研究分野ごとに発行されている学術雑誌の数は数えきれません。その中に収録されている論文数となれば、星の数ほどになるでしょう。研究者は自分の行った研究の成果を論文にし、学術雑誌などに投稿することで自らの研究を公表して評価されるわけですが、当然、他の研究者が何をやっているのかを情報収集する必要があります。しかし、公開される論文の数が星の数となった今では論文の山に埋もれてしまい、自分のほしい情報を拾い出すのも簡単ではありません。
■ 増え続ける研究論文
今や研究論文は、紙で出版されるとともにオンラインに掲載される時代です。図書館に行かずに必要な情報の検索ができるようになったのは便利ですが、オンラインには研究論文があふれかえっています。国立国会図書館の科学技術論文誌・会議録データベースに収録されているデータだけで約17,000タイトル(2017年2月)となっています。公開された論文数は2003年の130万本から、2013年には240万本に増加しており、年率6.3%の勢いで増えていることになります。自然科学の分野だけでも、1日に公開される一次研究論文は4,000本に上ります。
学術論文が国際化していることも、論文数の増加に拍車をかけているのでしょう。研究を国際的な場で発表することは研究者の実績には不可欠です。トムソン・ロイター社のデータベースによれば、2000年の日本の学術論文の海外誌への掲載率(海外流出率)は、2003年の時点で既に80%でした。その後のインターネットの爆発的な普及を考えれば、日本だけでなく各国の研究者による論文の国際化はさらに増加していることが予想されます。
■ 読みきれないのが普通です
これだけ論文数が増えると、当然すべてに目を通すことは不可能です。自分が読みたい論文が分かっていれば雑誌名・巻号などからデータベースで検索することが可能ですが、専門分野の最新情報という漠然とした指定では、検索結果が膨大になってしまいます。Springerが2015年にnature.comの利用者4000人を対象に実施した調査では、85%が自分の専門分野の論文に目を通しきれておらず、25%は追いつかないのが常態化しているとの結果が示されました。研究者にとって、最新動向を把握できないのは大きな問題です。
■ 新サービスRecommended
そこで、研究者の積もる悩みを解決すべく登場したのがSpringer Natureの新サービスRecommendedです。研究者が論文を見落とさないためのカスタマイズサポートで、利用者の傾向に合わせて論文を抽出し、お勧めリストをサイト上またはメール配信で知らせてくれるサービスです。利用者がnature.com、SpringerLink、BioMed Centralで最近閲覧した論文100本をアルゴリズム分析して傾向をつかみ、その上でCrossRefとPubMedに収録されている4万5000誌、6500万以上の論文からお勧めの論文を抽出してくれます。しかもこの検索機能は、利用者の閲覧状況を学習して常時更新されるため、自分が最も興味を持っている情報を閲覧することが可能です。Springerから出版されている論文以外も含めて検索してくれるのは、研究者にとってありがたい機能です。
■ 進化するシステム
これは、アマゾンで書籍を購入したり情報を閲覧したりすると個人の嗜好として記録され、類似の書籍が「お勧め」として表示されるのと同様の機能です。アマゾンにおいてはユーザーのさらなる出費を促進する機能ですが、Recommendedでは研究者が検索に費やす時間を減らせるため、大いに役立つことでしょう。
既にベータ版が約1年間テスト運用されており、200か国以上の研究者が利用、70%が再利用しているということです。Springer Natureのパブリッシング・ディレクター、Sarah Greaves博士は、研究者の幅広い興味に対応するサービスの拡充を図っていく、と意欲を示しています。国際会議や研究助成金の情報、研究者の専門分野以外の研究の情報まで、あらゆる「欲しい情報」に対応することができるようになる日は近いかもしれません。
大学が卒業論文をオンラインで掲載する時代です。公開される学術論文は、今後ますます増えることが予想されます。論文の取捨選択を支援してくれるRecommendedのようなサービスは、研究者にとって必要不可欠なものとなるのではないでしょうか。

Enago academy掲載の英文はこちら:Recommended: A Lifeline for Researchers

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