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文法の修正だけではない、英文校正が持つ役割とは?

研究費を獲得することは、最近かなり難しくなってきていると言われます。全体の研究費は限られており、研究費は、著名な学術誌への論文掲載が保障されている研究にしか支給されない傾向があるようです。それゆえ、あなたの第一言語が英語でない場合、限りある研究費予算の申請項目に英文校正 サービスの費用を盛り込むことは、非常に難しいことかもしれません。結局校正のための予算は後回しとなり、校正については別の手段を講じることとなるでしょう。英語の得意な同僚が何人かいて、あなたの論文を見てくれるかもしれません。もしくはマイクロソフトのスペルチェック機能や文法チェック機能、あるいはグーグル翻訳などが、こうした困った状況からあなたを助けてくれる最後の砦になってくれるかもしれません。
一見合理的に見えるこうした手段は、予算に制約がある場合などは仕方のないことかもしれません。しかし、このような形で目先のコスト節減を図っても、長期的に見ればあなたに損失をもたらす危険性が潜んでいます。

査読という問題

誤りやつたない表現が残ったまま投稿された論文は、査読には進めない可能性がじゅうぶんにあります。学術誌の編集者は、言語的にも完成度の低い原稿は、学術的な厳密さを欠いていると考える可能性が高いからです。この評価がどんなに不当なものに思われても、現実にはそう判断されてしまいます。もし編集者が好意的で、論文を査読に回してくれたとしても、査読者はその論文を審査する際、研究方法の正しさ以前に文章や言語面のつたなさに辟易し(査読者は無償で働いていることを覚えておいてください)、再投稿を薦めることもなく論文を却下してしまうことにもなりかねません。

専門家による校正を受けていれば避けられること

科学の世界において、主に英語が使われているということは厳然たる事実です。学者によっては、ラテン語・フランス語・ドイツ語・ロシア語も科学における同等の伝統を持つ、と主張する人がいるかもしれませんが、現在の科学研究は主に英語で行われています。やはりきちんとした英語で研究をまとめ、発表することが大切な要素となってきます。以下は、英語に限った話ではありませんが、母語でない言語をネイティブスピーカーのチェックなしに使用しようとしたり、現地の言葉についてあまり理解のないままビジネスを始めたりすると困った結果を生じかねないという一例です。

    • Clairol という企業が、Mist Stick という商品名のヘアカールアイロンをドイツで売り出したが、実はmist はドイツ語では「肥料」を意味しており、当の企業はそのことを知らなかった。
    • メルセデス・ベンツが中国の自動車市場に参入した際、Bensi という現地ブランド名を採用したが、Bensi は中国語で「死に急ぐ」という意味だった。

 

    • 米国酪農協会がスペイン語圏で「牛乳飲んだ?」というスペイン語の広告を出したはずが、専門的な校正を受けなかったため「乳出してる?」という内容の広告になってしまった。

 

    • ブリストル大学のポール・メイ教授は、「おかしな名前の分子」を探し出し記録することで、言葉の誤用の可能性について独自に研究している。過去に発見された例としては、「ばかみたいな酸 [Moronic Acid]」や「フルフリル・フルフレイト [Furfurfyl Furfurate]」などが挙げられる。他にも多くの例があるが、この公的なブログで述べるにはちょっと「品がない」ものもある。

 


おもしろい、では済まない場合も

「おかしな名前の分子」については、そのように名づけることで「学問の権威」に対するささやかな抵抗が表わされているのかもしれません。しかし、その前に挙げたビジネスの例では、それぞれの企業は実際に大きな損害を被っています。 積極的な販売戦略や広告に投資された数万ドルが無駄になってしまったのです。これは、自分たち企業側の言語能力を信じすぎた結果でもあり、専門の校正者に「無駄金を使う」ことはしないという考えの帰結とも言えるのではないでしょうか。
科学の研究に必要とされる金額は、いまや上に示した各企業がビジネスにおいて必要とするものと同じくらい高額になる場合があり、それゆえ研究の失敗によるリスクも同じくらい大きなものとなっています。論文の発表などにおいても最悪の場合、校正や翻訳における些細なミスによって、研究内容自体が不当に評価されることになってしまう恐れがあります。研究予算には限りがあるかもしれませんが、英文校正の必要性については慎重な検討を行いたいものです。

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