カテゴリーアーカイブズ: 混同しやすい用語や表現

insteadとrather

副詞「instead」と「rather*」は同様の意味を持つ場合がありますが、一般的に互換性はありません。以下に「instead」と「rather」、それぞれの語の定義と典型的な用法を例示します。

*「rather」はここで扱う以外にもいくつかの意味を持っていますので、ご注意ください。

instead: の代わりに、そうせずに。

(1) The doctor told the patient to move his left hand, but he moved his right hand instead.
 
(2) Instead of oscillating, this function diverges monotonically.
 
(3) To reduce cost, we used brass instead of platinum.

 
 
rather: よりもむしろ、というよりは、ではなく、むしろ。

(4) This result does not contradict the previous results. Rather, it demonstrates that there are situations to which the existing theories simply do not apply.
 
(5) Rather than give up now, we should redouble our efforts.
 
(6) This is not an established result. Rather, it is a tentative conclusion that is apparently inconsistent with at least one experimental result.


glenn

グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


incidentとincidence

名詞「incident」と「incidence」はつづりも発音もよく似ていますが、意味は大きく異なります*。以下に2語の定義と正しい用法を例示します。

incident:(好ましくない)出来事。

(1) In that incident, the level of contamination was between 6 and 16 ppm.
 
(2) Most such incidents result in miscarriage.

 
 
incidence:(病気などの)発生、発生率。

(3) The incidence of both of these diseases increased in the U.S. between 1994 and 2007.
 
(4) The city has implemented measures to reduce the incidence of accidents at this intersection.

*2語ともここで例示する以外にもいくつか意味がありますので、ご注意ください。


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グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


in spite ofとdespite

前置詞の働きをする「in spite of」と「despite*」はほぼ同じ意味を持ち、どちらを使っても文全体の趣旨が変わらないケースはよく見られます。しかし両者には微妙な違いもありますので、意味のうえでの正確性が必要とされる場合はきちんと使い分けるべきです。

「in spite of」と「despite」は両方とも第一義が日本語の「にも関わらず」に相当します。しかし「in spite of」の方は語気が若干強く、「despite」が「…と関係なく」という消極的なニュアンスを持つのに対して「…に反して」という積極的なニュアンスを含みます。この違いは以下のように例示することができます。

(1) Despite the risk, I would like to proceed with the plan.
 
(2) In spite of his parents’ warning, the child continued to play with the toy.

なお、「despite」の用法に関して、もうひとつ注意していただきたいことがあります。「despite」を用いる際、「in spite of」と混同してしまい「despite of」と表記してしまうケースがたまに見うけられます。これは文法的に誤りです。

*despiteには名詞としての用法もありますが、その用法はまれです。

関連した解説についてはグレン・パケット:『科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現』(京都大学学術出版会,2004)の第45、第66章をご参照下さい。


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グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


homogeneousとhomogenous

形容詞「homogeneous」と「homogenous」は同義語として使うこともできますが、それぞれの第一義は異なります。「homogenous」という語には「homogeneous」の持つ意味(つまり、「同質」、「同種」、「均質」)という意味もありますが、それとは全く違うもう一つの意味があります。「homogenous」の第一義は、生物学の専門用語として「発生起源が同一であるため対応する構造を持っている」すなわち、「歴史的相同の」という意味です。一般的な用法では「同質」、「同種」、「均質」などの意味を表す上で、この2語のいずれを用いることもできますが、学術論文においてはそれぞれの第一義によって使い分けるべきです。
 
 
以下に2語の用法を対比します。

Homogenous

(1) Although the wings of birds and insects are similar in position, form and function, they are not homogenous. Rather, they are homoplastic.

Homogeneous

(2) These materials are homogeneous on a macroscopic scale, but on a mesoscopic scale, they exhibit a complicated structure that varies randomly in space.


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グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


fartherとfurther

形容詞・副詞の働きをする「farther」と「further」は両方とも「far」の比較級であり互換性もありますが、意味上の重要な違いもありますので注意が必要です。

2語とも「より遠い(遠く)」、「もっと先(に)」、「遠い方の」という意味で用いられますが、一般に「farther」は物理的な距離に、「further」は非物理的な距離に対して用いられます。下記にその使い分けの例を示します。

(1) I walked 10 km farther than I needed to.
 
(2)The two groups’ positions on the key issues were further apart after the meeting than before.

 
 
また、「further」は「farther」より広い意味を持ち、「farther」にはない「さらに」、「その上(に)」、「さらなる」という意味も持っています。以下にそのような場合の用例を示します。

(3) Further discussion of this point is given below.
 
(4) They requested further funding for their research.
 
(5) This is the first experiment of its kind to yield such clear results. Further, it was performed using a very simple technique.

上記の例文で「further」を「farther」に置き換えると、文全体は意味を成さなくなってしまいます。


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グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


exampleとsample

名詞「example」と「sample」が混同されることによって生じる文法的な誤りを、時おり目にすることがあります。それぞれの語の定義とその典型的な用例を以下に挙げます。

example: あるグループを成す複数のものの代表として選ばれた一つのもの。

(1) Japan is an example of a country whose population is presently shrinking.
 
(2) This system of equations is an example of a model that exhibits chaotic behavior.

 
 
sample: 全体から抽出された一部。

(3) The Mars Rover tested many soil and rock samples.
 
(4) We inferred our conclusions from three samples each consisting of 100 people chosen at random from the population of 23,241.

 
 
 
以下に両語の違いがよく分かる例文を挙げます。

(5) The sample we tested provides a good example of the effect of contamination on these specialized materials.


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1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


endemic、epidemic、pandemic

名詞「endemic」、「epidemic」、「pandemic」は公衆衛生学の専門用語*としてよく用いられますが、混同されることも多い語です。ここで各語の違いを説明します。

*これらの名詞は3語とも非専門用語として用いられることもありますが、pandemicの場合は非専門用語としての用法はやや稀です。

「endemic」は名詞として用いることもできますが、本来の用法は形容詞であり、名詞として用いられるのは「endemic disease」の短縮形として使用される場合です。形容詞「endemic」は「特定の地域・グループ・時代などに特有の」という意味を示します。それゆえ、「endemic disease」は「地方病」、「風土病」を意味し、影響範囲が狭い病気に対して使われます。また、「endemic disease」は「流行」という意味を持たず、病気が「長期的」、あるいは「永久的」であるという意味で捉えられます。

対照的に「epidemic」は単に「流行病」を意味し、病気が「特定の地域やグループに限られている」という意味も「長期的な現象である」という意味も含まれてはいません。

「pandemic」は「epidemic」と意味が似ていますが、影響範囲がより広い(全国的、あるいは全世界的な)伝染病の流行に対して用いられます。

以下に各語の名詞及び形容詞形の典型的な用法を示します。

(1) In order for an infectious disease to be endemic to a region, each infected person must, on average, infect one other person; if the transmission rate is lower, the disease will die out, while if it is higher, the infection rate will increase exponentially, and the disease will become epidemic.
 
(2) An epidemic will eventually disappear or leave an endemic disease. In either case, however, there is the chance that an epidemic may reappear in the future.
 
(3) The first influenza pandemic of the 21st century was the “swine flu” (Influenza A/H1N1) outbreak of 2009—2010. It was first reported in Mexico and eventually spread throughout the world, killing over 6,000 people.


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1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


dosageとdose

医学の専門用語で「dosage」と「dose」があります。これらの語は似た意味を持ちますが、同義ではありません。以下にそれぞれの語の意味とその典型的な使用例を挙げます。

dose: 1回の投与量。
(1) Each packet contains one dose.

dosage: 投与量、頻度、継続期間の決定や調整。
(2) The dosage was increased in size, frequency and duration.
(3) The failure to complete the full dosage of an antibiotic can in some cases contribute to the target bacteria becoming resistant to that antibiotic.

以下は両語の用法の違いを分かりやすく比較した例文です。

(4) The patient has two more doses remaining in the prescribed dosage.


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1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


cooperateとcollaborate

「cooperate」と「collaborate」は意味が似ており、双方とも「共同する」、「協同する」、「協力する」のいずれにも訳されうる可能性があります。しかし重要な意味上の違いもあり、通常はそのまま置き換えることはできません。「cooperate」が持つ語意は「collaborate」の持つ語意に包含されていますが、「collaborate」の語意の一部を形成するにすぎません。「cooperate」が単に「力を合わせる」という意味を表すのに対し、「collaborate」はその「力を合わせる」こと自体のみならず、むしろ協力の目標に主眼を置き「協力によってある結果を生み出そうとする」という意味を表します。

以下に動詞「cooperate」と「collaborate」、およびその名詞形「cooperation」と「collaboration* 」の正しい使用例を挙げます。

(1) Thomas and Yamada have collaborated on several research projects.
(2) We are presently collaborating on three papers.
(3) Their collaboration produced important results.
(4) The patient did not cooperate with her physical therapist.
(5) Your cooperation in dealing with this problem is requested.
(6) The referee did not cooperate with the editor.

* 名詞形「cooperation」と「collaboration」の違いも、上述した動詞形における違いと同様です。


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グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


continualとcontinuous

形容詞「continual」と「continuous」(また、その副詞形の「continually」と「continuously」)は意味が似ており、口語においては互換性がある場合もありますが、厳密には同義ではなく、文語、特に学術論文において使い分けが必要です。

両形容詞は、ともにある状態が「終わらない」という状況を表しますが、「continuous」がその状態が継続的に、つまり「途切れずに続く」という意味を持つのに対し、「continual」はそのような意味を持たず、同じ状態が「何度も絶えず出現する」という状況を表します。

以下に「continual(ly)」と「continuous(ly)」の使用例を挙げます。

(1) The visitors have made continual requests to be moved to another room.
(2) After continually attempting to measure the signal directly, we eventually gave up and constructed an indirect and more generally applicable method.
(3) The herons continually returned to the same marsh to feed.
(4) We assume that the pressure is a continuous function of the volume during the operation.
(5) The patient is continuously monitored.
(6) This power plant generally operates with a continuous output of 22 MW.


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グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。