カテゴリーアーカイブズ: パケット道場~初級アカデミック英語講座~

京都大学で長年にわたり英語指導を担当してきたパケット先生が、学術目的の英文執筆をイロハからやさしく伝授します。

論文英語の組み立て-能動態と受動態 I

能動態と受動態I: 動詞の種類による3つのケース

I. 概略

学術論文において受動態の間違った使い方が原因となっている誤りを度々目にします。ここでは、受動態文の作り方を検討します。

日本語と違って、英語では、受動態は他動詞の場合にのみ可能です。なお、他動詞にも数種類あり[1] 、受動態文の構造に関しては他動詞の種類によって3つのケースがあります。つまり、1)動詞が直接目的語しかとらない単一他動詞、2)直接目的語と間接目的語をとる二重他動詞、3)直接目的語と意味的間接目的語をとる二重他動詞となっている場合において受動態文の作り方はそれぞれ異なるわけです。以下で各ケースにおける構造を明らかにします。

II. 例文

IIa. 受動態文が能動態文と同じ状況を表す場合

まず、以下の例を見てみましょう。

1)単一他動詞
能動態:
[正] (1a) The dog chased the cat.
受動態:
[正] (1b) The cat was chased by the dog.

2)間接目的語をとる二重他動詞
能動態:
[正] (2a) I gave my friend a present. (I gave a present to my friend.)
受動態:
[正] (2b) My friend was given a present by me.
[正] (2c) A present was given to my friend by me.

3)意味的間接目的語をとる二重他動詞
能動態:
[正] (3a) The boy put a blanket on the dog.
受動態:
[正] (3b) The dog had a blanket put on him by the boy. [2]
[正] (3c) A blanket was put on the dog by the boy.

上述の各組ではb(あるいはbとc)はaと同じ状況を表します。

IIb. 受動態文が能動態文と逆の状況を表す場合

次に能動態文と逆の意味を表す受動態文を比べてみましょう。

1)単一他動詞:
[正] (1a) The dog chased the cat.
[正] (1b’) The dog was chased by the cat.

2)間接目的語をとる二重他動詞:
[正] (2a) I gave my friend a present. (I gave a present to my friend.)
[正] (2b’) I was given a present by my friend.
[正] (2c’) A present was given to me by my friend.

3)意味的間接目的語をとる二重他動詞:
[正] (3a) The boy put a blanket on the dog.
[正] (3b’) A blanket was put on the boy by the dog.
[正] (3c’) The boy had a blanket put on him by the dog.

これらの例文ではIIaと違って、各組ではb’(あるいはb’とc’)はaと逆の状況を表します。

IIc. 例文のまとめ

上述は、能動態文と受動態文との関係に関する典型的な用例です。これらの文が示す関係を意味論的な観点から見るとより分かりやすくなります。ここでの考察ではまず、動詞が表す動作・状態における主体、直接客体、間接客体を同定します。これらは能動態文においてそれぞれ主語、直接目的語、間接目的語あるいは意味的間接目的語が表すものです。それから、受動態文を作るとき、次のルールに従えばよいのです。まず、主体を表す語は必ず「by」の目的語になります。それから、直接客体を表す語は主語か直接目的語になります。前者と後者の場合、間接客体が存在すればそれを表す語はそれぞれ意味的間接目的語と主語になります。

IId. 省略文

英語では、原則として主語と動詞を省略することはできません。しかし、目的語は自由に省略でき、実際の文章ではよく省かれています。ここでは前述の例文の省略を検討します。
英語で完全な文章を構成するには主語と定形動詞が必要ですが、この2つの成分さえあれば、文法的に正しく、意味を成す文章を作ることができます。上に挙げた各例文において、主語(とそれに付く冠詞)と動詞以外の語を全部省略したとしても文法的には誤っていません。しかし、中にはかなり不自然な文となり、原文とは大幅に異なる意味を示すものもあります。ここでは自然な文のみを考察し、以下にその省略文を示します。

1)単一他動詞
能動態:
[正] (1a) —
受動態:
[正] (1b) The cat was chased.

2)間接目的語をとる二重他動詞
能動態:
[正] (2a) I gave a present.
受動態:
[正] (2b) My friend was given a present.
[正] (2c) A present was given to my friend.

3)意味的間接目的語をとる二重他動詞
能動態:
[正] (3a) —
受動態:
[正] (3b) The dog had a blanket put on him.
[正] (3c) A blanket was put on the dog.

これらの文から分かるように、受動態文では主体を明らかにする必要がなければそれを表す「by」の目的語を省略することができます。また、多くの能動態文で、間接客体を表す目的語を省略することができます。


[ 脚注 ]
1. 「自動詞と他動詞」を参照してください。
2. 厳密な文法規則によれば、これは受動態文ではありませんが、示される意味はまさに受動的です。

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グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


論文英語の組み立て-自動詞と他動詞

I. 概要

一般的な言語学現象として、 動詞 は、表す動作や状態において異なった立場にある複数の参加者が存在するかどうかによって二種類に分かれます[1] 。動作・状態の主体である参加者のみ存在する場合に使われる動詞は「自動詞」(intransitive verb)と言い、対象(客体)も存在する場合は「他動詞」(transitive verb)と言います[2] 。他動詞はさらに「単一他動詞」(monotransitive verb)と「二重他動詞」(ditransitive verb)という二種類に区別されます [3]。統語論的には、示される動作・状態における参加者を表す項が、前者では2つ(主語と1つの目的語)、後者では3つ(主語と2つの目的語)あります。英語では、単一他動詞は1つの直接目的語をとり、二重他動詞は直接目的語に加えて間接目的語、あるいは間接目的語と同様の役割を果たす前置詞の目的語をとります[4] 。(ここでは、間接目的語と同様に機能する前置詞句の目的語を「意味的間接目的語」と呼ぶことにします。)

例文を見てみましょう。

[正] (1) The cat is sleeping. (自動詞)
[正] (2) I ate a big apple. (単一他動詞)
[正] (3) My daughter gave the dog a kiss. (二重他動詞)
[正] (4) I put the book into my backpack. (二重他動詞)

(1)では、動詞「is sleeping」の項は主語である「cat」のみです。(2)の動詞「ate」は主語と直接目的語をとり、それぞれ「I」と「apple」になっています。(3)と(4)には、主語(「daughter」、「I」)と直接目的語(「kiss」、「book」)の他に、間接目的語(「dog」)と意味的間接目的語(「backpack」)もあります。

II. 誤用例

日本人学者が書いた学術論文では、自動詞と他動詞が混同されている誤用を頻繁に目にします。ここで典型的な誤用を示します。

以下の誤用例では本来他動詞になるべき動詞が誤って自動詞として用いられています。

[誤] (5) In the next section, we discuss about the first case.
[正] (5’) In the next section, we discuss the first case.
[誤] (6) We now explain about the method used in this study.
[正] (6’) We now explain the method used in this study.
[誤] (7) However, our conclusion contradicts with that of Jones.
[正] (7’) However, our conclusion contradicts that of Jones.
[誤] (8) The upper layer gradually approaches to the lower layer.
[正] (8’) The upper layer gradually approaches the lower layer.

次に、逆の誤りを見てみましょう。以下の誤用例では本来自動詞になるべき動詞が誤って他動詞になっています。

[誤] (9) The energy surface changes its shape.
[正] (9’) The shape of the energy surface changes.
[正] (9’’) The energy surface changes shape.[5]
[誤] (10) We compensate this underestimate by increasing the group size.
[正] (10’) We compensate for this underestimate by increasing the group size.
[誤] (11) Our results lead a deeper understanding.
[正] (11’) Our results lead to a deeper understanding.
[誤] (12) However, these modifications do not account the discrepancy.
[正] (12’) However, these modifications do not account for the discrepancy.


【脚注】
1. この区別が明確でない場合もあり、一般に「完全に自動的」と「完全に他動的」という分け方が不十分だということが指摘されています。(参照例:Paul J. Hopper and Sandra A. Thompson, Transitivity in Grammar and Discourse, Language 56, 251-299 (1980))確かに、この曖昧さは英語を母語としない人を悩ますものであり、誤りの原因となります。
2. 言語学では、動作・状態の主体と客体を意味する用語は著者によってまちまちですが、動作・状態の種類により主体を「動作主」(agent)または「経験者」(experiencer)、そして、直接客体を「被動者」(patient)または「主題」(theme)、間接客体を「受取手」(recipient)と呼ぶのが最も標準的かもしれません。
3. 単一他動詞と二重他動詞はそれぞれ「単他動詞」と「複他動詞」とも呼ばれます。
4. 間接目的語をとる他動詞のみが「二重他動詞」だと主張する言語学者もいますが、ここではこの文法的な基準ではなく、より意味論的な基準を用いて上述のように他動詞の二種類を区別することにします。
5. ここで「changes shape」は、意味的には動詞+目的語ではなく、合わさって動詞として機能する一つの意味的単位になっています。


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グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


間違いやすい用語や表現 - 不要な「of」 

「の」の誤訳が原因となっている「of」の誤用を度々見かけます。その中でも特によく見られるものとして、以下に例示する誤用があります。

[誤] (1) Here, the condition of v > 0 is important.
[正] (1’) Here, the condition v > 0 is important.

ここで「condition」と「v > 0」はいずれも名詞だということに注目してください。原文の書き手がこのことを根拠に「of」を加えたようです。これは「の」の誤訳と捉えることができ、「of」の意味的機能についての誤解を反映しています。

一般に、前置詞「of」は「所有」の意味を示します。その働きによって、(1)では「v > 0」という不等式が「condition」の指す条件を「所有する」という状況が暗示されてしまいます。しかし実際は、「condition」と「v > 0」は同一のものを意味しているので、文法的に、「v > 0」は「condition」を修飾する「同格語」となります。修正文ではこの関係が明らかです。

数学的な議論において、上述のような誤用をしばしば目にします。以下も典型的な例です。

[誤] (2) In the following, we describe the process of X → X*.
[正] (2’) In the following, we describe the process X → X*.

[誤] (3) In this case, U(x) is convex in the regions of 0 < x < 1 and 2 < x <3.
[正] (3’) In this case, U(x) is convex in the regions 0 < x < 1 and 2 < x <3.

[誤] (4) In this case the mass of m exceeds m0.
[正] (4’) In this case the mass m exceeds m0.

[誤] (5) In the limit of ψ → ∞, we obtain the following:
[正] (5’) In the limitψ → ∞, we obtain the following:
[正] (5’’) In theψ → ∞ limit, we obtain the following:

(5’’)では、「ψ → ∞」は同格語ではなく、名詞付加語となっていますが、(5’)における同格語の「ψ → ∞」と同様に名詞「limit」を修飾しています。

 


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グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


間違いやすい用語や表現 -the one 

代名詞「one」は日本人学者の論文で過度に使用されると思われます。熟語「the one」における誤用は特によく見受けられます。

「the one」が表現として誤っているとは言えませんが、学術論では一般に(「one」が代名詞となっている)「the one」よりは「that」の方が適切です。私が今まで読んできた学術論文では、ほぼ例外なく「the one」(「the ones」)はそのまま「that」(「those」)に置き換えるべきものでした。

以下は典型的です。

[誤] (1) This method is similar to the one studied in Ref. [2].
[正] (1’) This method is similar to that studied in Ref. [2].

[誤] (2) These solutions are then compared with the ones derived above.
[正] (2’) These solutions are then compared with those derived above.

[誤] (3) The proof of Theorem 3 is similar to the one that we presented in Section 2 for the case of a strictly convex function.
[正] (3’) The proof of Theorem 3 is similar to that which we presented in Section 2 for the case of a strictly convex function.

「the one」の誤用に関する実用的な対策への提案は以下になります。
論文が書き終わったら、最終チェックとして「the one(s)」を検索し、「one(s)」が代名詞となっていることを確認したら、「the one(s)」を「that」(「those」)に置き換える、という単純な作業で十分です。(なお、(3)が例示するように、「that」が「the one(s)」の直後にくる場合には、それを「which」にすべきです。)

 


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1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


間違いやすい用語や表現 -if any

熟語「if any」の誤用は、日本人学者による論文で度々目にします。この表現は「もしあれば」、「存在する場合には」などといった意味を表すのに使用できますが、その用法は、文法的に誤っている上に曖昧な文意をもたらすこともよくあるため、学術論文では避けるべきです。

例文を見てみましょう。

[誤] (1) A successful treatment must first satisfy all protocol conditions
(if any).
[正] (1) A successful treatment must first satisfy all protocol conditions.
[正] (1’) A successful treatment must first satisfy all protocol conditions, if such exist.

[誤] (2) The rest of the terms (if any) must vanish.
[正] (2) Any remaining terms must vanish.
[正] (2’) There can exist no more non-vanishing terms.

[誤] (3) Defects, if any, circulate about the origin in the counterclockwise direction.
[正] (3) Any defect will circulate about the origin in the counterclockwise direction.
[正] (3’) If a defect exists, it will circulate about the origin in the counterclockwise direction.

[誤] (4) A solution to this equation that satisfies the above stated boundary conditions, if any, necessarily also satisfies the following condition:
[正] (4) Any solution to this equation that satisfies the above stated boundary conditions necessarily also satisfies the following condition:
[正] (4’) If there exists a solution to this equation that satisfies the above stated boundary conditions, it necessarily also satisfies the following condition:

上述の誤用例に示されるように、ここで考察している用法において「if」は本来条件節を導入すべきものですが、「if any」は動詞を含まないため「節」を成していないのです。この文法的な問題によって曖昧さが生じ、文章がぎこちなくなりがちです。

[正] (2)、[正] (3)、[正] (4)で例示されるように、「if any」で示そうとする意味は多くの場合にはany」だけで示すことができます。

 


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1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


間違いやすい用語や表現 - Stay

動詞「stay」は、口語的とされるため、学術論文では避けるべきです。
「stay」が口語的である主な理由は、意味が非常に広いため、その使用によって学術論文には相応しくない曖昧さが生じてしまうからです。

私が読んできた日本人の学術論文において「stay」が使用されるほとんどの場合、意図した意味は次のいずれかの表現によって明瞭に表すことができます。

remain、「to be」動詞、exist、be positioned、come to rest、be fixed、be unchanged、be motionless、remain motionless、stop、converge、live、reside

以下は「stay」の典型的な誤用を示します。

[誤] (1) The value of S stays near 0 until t =τ.
[正] (1) The value of S remains near 0 until t =τ.

[誤] (2) In the present case, the current stays constant.
[正] (2) In the present case, the current is constant.

[誤] (3) The patient’s condition has stayed the same.
[正] (3) The patient’s condition has not changed.
[正] (3’) The patient’s condition has been unchanged.
[正] (3’’) The patient’s condition has been stable.

[誤] (4) During World War II, Picasso stayed in Paris.
[正] (4) During World War II, Picasso lived in Paris.
[正] (4’) During World War II, Picasso resided in Paris.

[誤] (5) Throughout the experiment, the temperature stayed at 3.0±0.1℃.
[正] (5’) Throughout the experiment, the temperature was fixed at 3.0±0.1℃.

 


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1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。

 


間違いやすい用語や表現 -hugeとtiny

形容詞「huge」と「tiny」は、口語的であるから、原則として学術論文には相応しくありません。

「huge」と「tiny」が口語的とされる理由は、これらの語には対象となっている物事の大きさについての判断が主観的であるということが含意されるからです。使用される状況によって程度が異なりますが、話し手・書き手の驚きも含意されてしまいます。

学術論文において「huge」と「tiny」の代わりに適切に使える表現は多数ありますが、特によく使用されるものとして以下を挙げます。

huge: very large, extremely large, inordinately large, excessively large, dominatingly large, divergent, indefinitely large, effectively infinite

tiny: very small, extremely small, inordinately small, negligibly small, infinitesimally small, infinitesimal, vanishingly small, indefinitely small, effectively zero

これらの語句には、それぞれが表現する意味に差異がありますので、使用する際には注意が必要です。

こんな記事もどうぞ:「huge」と「tiny」同様に間違えやすい表現− bigとlittle
 


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1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。

 


間違いやすい用語や表現 -a lot

熟語「a lot」は副詞として、また前置詞「of」と合わさって形容詞として用いることができます。前者と後者の場合には「a lot (of)」は、それぞれ「a great deal」や「to a great degree/extent」そして「much」や「a great amount/degree of」の同義語になります。ただし、このような用法は極めて口語的なので、学術論文では避けるべきです。(*1)

以下は「a lot」の典型的な誤用を例示します。

I. 副詞

[誤] (1) These two sets of results differ a lot.
[正] (1) These two sets of results differ greatly.
[正] (1’) These two sets of results differ significantly.
[正] (1’’) The discrepancy between these two sets of results is large.

[誤] (2) When carrying out these measurements, it does not matter a lot whether the order of the two steps are reversed.
[正] (2) When carrying out these measurements, the order of the two steps is largely irrelevant.
[正] (2’) When carrying out these measurements, changing the order of the steps does not alter the results significantly.
[正] (2’’) When carrying out these measurements, the variation in the results introduced by changing the order of the steps is much smaller than the experimental uncertainty.

II. 形容詞

[誤] (3) Of course, languages evolve a lot over a period of 200 years.
[正] (3) Of course, languages evolve greatly over a period of 200 years.
[正] (3’) Of course, languages evolve significantly over a period of 200 years.

[誤] (4) A lot of efforts have been made to determine this value.
[正] (4) A great deal of effort has been made to determine this value.
[正] (4’) Many studies have been dedicated to determining this value.
[正] (4’’) Many studies have been carried out with the aim of determining this value.

[誤] (5) We have had a lot of successes using the complex scaling method in studies of resonant structures.
[正] (5) We have had a great deal of success using the complex scaling method in studies of resonant structures.
[正] (5’) We have obtained a number of important results using the complex scaling method in studies of resonant structures.

[誤] (6) A lot of unsolved problems remain with regard to the dynamics exhibited by such systems.
[正] (6) There are still many unsolved problems with regard to the dynamics exhibited by such systems.

(*1)「a lot of」と同様の意味を示す「lots of」という表現もあります。この表現も口語的であり、学術論文では用いるべきではありません。しかし、日本人が書いた論文では、「lots of」は何故か「a lot of」と比べると使用頻度が低いです。


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間違いやすい用語や表現 - bigとlittle

形容詞「big」と「little」は、(例(3)、(4)、(5)で示す「little」の用法を除いて)口語的とされるため、原則として学術論文など、正式な書き言葉を必要とする文章では避けるべきです。

ここで、「big」と「little」に共通する一つの用法と「little」にしかない二つの用法を個別に考察します。

「big」と「little」に共通する用法は以下で例示されます。

[誤] (1) The value of this quantity in the present case is bigger/littler than in the case studied above.

ここでの「bigger/littler」の用法に関して注目すべき点が二つあります。その一つは、口語的な形容詞「bigger/littler」が文全体のスタイルと食い違っていることです。もう一つは、「bigger/littler」によって修飾される名詞「value」が可算名詞となっていることです。このような場合には「big」、「little」をそのまま(口語的でない)「large」、「small」に置き換えることができます。

次の文は「little」独特の用法を例示します。

[誤] (2) The value of this quantity in the present case is a little larger than in the case studied above.

ここでは、「little」は形容詞ではなく、「a」とセットで副詞として形容詞「larger」を修飾している、ということに注目してください。このような用法はかなり口語的です。学術論文では、一般に「a little」の意味を示すのに「slightly」が適切です。

下記の例文で示される用法も「little」独特のものです。

[正] (3) In this case, the perturbation has little effect on the result.
[正] (4) Such objections are of little concern here.
[正] (5) There is yet little information on the outcome of the election.

これらの例文では、「little」が具体的な意味で物事の大きさを意味しているのではなく、より抽象的な意味で用いられているということに注目してください。これは、いずれの場合においても「little」が修飾しているのは不可算名詞だということから明らかです*1 。 なぜなら、不可算名詞が表すものには「大きさ」という性質がないからです*2 。ここで例示されるように、形容詞「little」が抽象的な意味で用いられる場合(要は、可算名詞を修飾していない場合)には口語的ではないとされます。

最後に、「big」には(3)〜(5)で例示されるような用法がないということを考察します。そのために以下の口語的な用例を見てみましょう。

[誤] (6) There is big difference between our dogs.

ここでは、文全体が口語的なものですから、「big」自体の使用には問題がありません。ここでの問題は、「big」が必ず何らかの「大きさ」を表すため、それに修飾される名詞は可算名詞でなければならないということにあります。要するに、ここでの問題は文中の表現が食い違っているというスタイル的なものではなく、より深刻な文法的な誤りですので、会話としても間違っているのです。この文を修正するために「big」の前に「a」を置くべきです。

脚注:
*1 不可算名詞になっていることは冠詞が付いていないことから分かります。
*2 詳しくはグレン・パケット:『科学論文の英語用法百科〈第2編〉冠詞用法』(京都大学学術出版会,2016)をご参照下さい。

 


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グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。


複数形の誤用

英語には、通常単数形でしか用いられない名詞がたくさんあります。それらの名詞は、通常の用法で不可算物あるいは一つの可算物とみなされるものを意味するわけです。英語を母語としない人がこのような名詞を誤って複数形で用いているのをしばしば見かけます。

以下はこのような誤りの典型例です。

[誤] (1) These data analysis studies have added many knowledges to our understanding of neuronal firing patterns.
[正] (1’) These data analysis studies have added much knowledge to our understanding of neuronal firing patterns.

[誤] (2) In the final section, we give concluding discussions.
[正] (2’) In the final section, we give concluding discussion.

[誤] (3) We report previously unobserved behaviors in the metallic superconductor Sr2RuO4.
[正] (3’) We report previously unobserved behavior in the metallic superconductor Sr2RuO4.
[正] (3’’) We report previously unobserved types of behavior in the metallic superconductor Sr2RuO4.

[誤] (4) We first introduce some notations.
[正] (4’) We first introduce some notation.

[誤] (5) There have been great progresses in the field of machine learning in recent years.
[正] (5’) There has been great progress in the field of machine learning in recent years.

[誤] (6) Here we study the time evolutions of protein corona formations.
[正] (6’) Here we study the dynamics of protein corona formation.

[誤] (7) Study of the present model provides many new informations.
[正] (7’) Study of the present model provides much new information.

[誤] (8) There are many researches on the causes and effects of climate change.
[正] (8’) There is a great deal of research on the causes and effects of climate change.
[正] (8’’) There is a great body of research on the causes and effects of climate change
[正] (8’’’) There are many studies on the causes and effects of climate change.

[誤] (9) We next study how the efficiency of the decision-making process can be increased by the introduction of random noises.
[正] (9’) We next study how the efficiency of the decision-making process can be increased by the introduction of random noise.

[誤] (10) There is a lack of evidences for the existence of gravitons.
[正] (10’) There is a lack of evidence for the existence of gravitons.

[誤] (11) The author is grateful to M. Stevens for her advices on the various methods of sample preparation.
[正] (11’) The author is grateful to M. Stevens for her advice on the various methods of sample preparation.

[誤] (12) There are few agreements among these sets of results.
[正] (12’) There is little agreement among these sets of results.

[誤] (13) The various energies in this system can be understood as follows.
[正] (13’) The various forms of energy in this system can be understood as follows.

[誤] (14) Such uncontrolled motions of the detector and the source can result in significant error in the measurement of the scattering angle.
[正] (14’) Such uncontrolled motion of the detector and the source can result in significant error in the measurement of the scattering angle.

 
関連した議論についてはグレン・パケット:『科学論文の英語用法百科〈第2編〉冠詞用法』(京都大学学術出版会,2016)をご参照下さい。

 


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グレン・パケットGlenn Paquette

1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから。