カテゴリーアーカイブズ: わが研究室の英語学習法

学術英語のスキル習得の場として「研究室」にフォーカスし、実際に各大学の研究室に伺い、研究室独自の英語学習法について伺いました。

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【日本医科大学】 根岸 靖幸 講師インタビュー(後編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。20回目は、日本医科大学の微生物学免疫学教室で生殖免疫学の研究を進めている 根岸靖幸 先生です。

前編は、ご研究の内容と、英語への取り組み方についてのお話でした。後編は、学会での発表、後進の指導、研究のこれからに関するお話です。


■ 学会に参加される機会は多いのでしょうか?

海外は年に1回か2回です。毎年行われる米国生殖免疫学会と、3年に1度開催される国際免疫学会に参加しています。国内の学会の方が多いですね。僕の場合、産婦人科と免疫の両方の学会に参加する必要があるので、数が結構多くなります。日本生殖免疫学会、日本免疫学会、日本産婦人科学会、日本胎盤学会、米国生殖免疫学会。今出ているのは4-5つぐらいです。最近は国内の学会でも英語での抄録作成、発表が増えてきましたのでさらに英語のスキルが必要とされます。

■ 学会での英語発表で印象的な出来事はありますか?

米国生殖免疫学会で、口頭発表できたことでしょうか。口頭採択されない時期が長かったので。10分弱の短い時間ですが、つたない英語でしゃべって、質疑応答もぼろぼろでしたが、発表後、米国生殖免疫学会のご高名な先生に肩をぽーんと叩かれて、”Good presentation”と言ってもらえたのが嬉しかったですね。他に、国際生殖免疫学会でも、発表後に大御所の先生から評価をいただいたことがあって。そういう風に評価してもらえるのは嬉しいです。

ただ質疑応答にはいつも窮します。もう全然。リスニングが苦手なので、何となく単語を拾って、こうかな?と推測しながらにやっと笑う(笑)。学会に参加する外国人は、相手が日本人だと見ると「ああ、こいつは英語ができないな」って分かってくれて、ゆっくりしゃべってくれます。なので、あまり気にしないようにしています。プレッシャーはありますけど、楽しむ(笑)。

■ 質疑応答にご苦労される研究者の方は少なくありません。

質疑応答に限らず、英語ですべてを賄うのはネイティブでないので難しいです。それでも英語は不可欠になっている。日本で開催する学会でもプレゼンテーションを全部、英語で行うところがでてきました。でも、それが果たしていいのかどうか……。日本人同士が不十分な英語でしゃべらなければならない状況では、みんなが手を挙げなくなっているかもしれないし、理解できていないことがあるかもしれない。英語に慣れるのには役立つとしても、痛し痒しだと思います。

■ 若手の研究者への英語指導についてもお聞かせください。

研究室全体では、大学院生が4人います。スタッフは助教が3人、私を含め講師が3人。そこに准教授が1人、教授が1人。僕についている大学院生は現在この中にはいないのですが、産婦人科、整形外科で学位を取りたい先生がそれぞれ1名ずついて、一緒に研究をしています。

ただ英語の指導については本当に今、一番悩んでいることです。論文を読め、学会に行けというのは簡単ですが、具体的にはどう指導しようかと。この秋か冬ぐらいから、抄録を書いたり発表したり、論文を書いたりしてもらいながら、指導していこうと思っています。あとは、学会や発表に臨む姿勢は伝えたいなと。僕は学会に行ったら必ず、1日1回は英語でも日本語でも質問しようと自分に課しています。最初は何を聞いたり話したりしていいか分からなかったので、相手のプレゼンテーションをほめることから始めました。絶対質問しなきゃいけないっていうのを課すことで、抄録を読んであらかじめ質問を準備したりもしました。発表を聞いて質問内容をちょっと変えるとか、そうした努力はしてきました。その場で考えるのはハードルが高いので、抄録を読んで、自分の研究に近いものをピックアップして質問を考えておきます。絶対に質問すると追い込むことで、準備をして、じっくり聞いて考える。そうすることで発表の内容が、より入ってくるので、とにかく質問しようとすることは大切です。これについては、後進にぜひ伝えていこうと思っています。

■ 若手研究者へのメッセージをお願いできますか。

難しいですね……まだ自分が若手のつもりなので(笑)。

■ では研究に対する意気込みをお願いします(笑)。

去年は嬉しいことが重なりました。研究費取得や日本の中でいくつか賞もいただけて。すごく励みになりました。下積みが長かったし、新しい概念はなかなか受け入れてもらえなかったですから。この研究室で産婦人科は僕だけで、他のメンバーは腫瘍免疫、感染、粘膜免疫、漢方医学などをテーマにしています。様々な研究分野に携わる研究者が同じ教室にいるということは、それぞれの分野では思いもよらなかった考え方、最新の知見をただですぐに情報交換することが出来ます。メンバー達と刺激しあって研究を行っています。

免疫って面白いもので、今まで免疫の関与など知られていなかった多くの科の治療や研究に絡んでいることがあります。ごく最近、整形外科の先生と、整形外科学を免疫学的アプローチで解析するというコラボを始めたばかりです。他の科でも免疫学的な見地を探せばいくらでもあると思えるほど、未開拓なところが数多くあると思います。何とかその分野でもパイオニアになれたらと目論んでいます。

■ 最後に英語校正・添削などのサービスで「こんなサービスが役に立つ」といったご意見はありますか?

論文のリバイスをする際、サービス期間に幅(1年間)があるのが非常にありがたいです(あんしん保証 )。論文を投稿して膨大な追加実験を要求された時は最悪の気分でした。またマウスを購入(輸入)するところから始めなきゃいけないという指摘を受けたときに、本当にこれ、できんのかなと……。結局、半年ぐらいかかりました。その苦労を考えれば、文章を書くのって楽だな、って思ったぐらいです。この最近の論文では、論文の初回投稿から2ヶ月で返却・リバイスをうけ、追加実験に約半年間、さらに再審査に1-2ヶ月かかり全部で10ヶ月ほど受理まで時間がかかりました。1年という長い保証期間に助けられ、何とか安心保証のサービス期間内に終わることができました。最近では日本の学会でも英語抄録になってきたので、(英語の)ブラッシュアップをしてもらえるのが、時間の節約にもなるので助かります。

■ 今後も少しでも研究を進めるお手伝いができれば何よりです。ありがとうございました。

根岸靖幸先生のインタビュー(前編)はこちら

 


【プロフィール】
根岸 靖幸(ねぎし やすゆき)
日本医科大学 微生物学免疫学教室 講師
1995年3月:東京都立大学(現、首都大学東京)にて修士を取得(物理学)
1996年4月:日本医科大学医学部入学
2002年5月:日本医科大学医学部卒業、産婦人科学教室入局
2006年9月:日本医科大学大学院医学研究科入学(微生物学免疫学)
以降生殖免疫学の研究に従事
2012年3月:日本医科大学大学院医学研究科修了(微生物学免疫学)
2012年9月:日本医科大学助教 医学部 基礎医学微生物学免疫学
2018年4月:日本医科大学講師 医学部 基礎医学微生物学免疫学
受賞
2010年度:第25回日本生殖免疫学会学会賞
2012年度:American Society for Reproductive Immunology, European Society for Reproductive Immunology(米欧合同開催)、Best Poster Award
2012年度:第27回日本生殖免疫学会学会賞
2017年度:日本医科大学 同窓会医学研究助成金受賞
2017年度:第25回日本胎盤学会学会賞(相馬賞)
2017年度:第32回日本生殖免疫学会学会賞

 


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【日本医科大学】 根岸 靖幸 講師インタビュー(前編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。20回目は、日本医科大学の微生物学免疫学教室で生殖免疫学の研究を進めている 根岸靖幸 先生です。

物理学の修士を取得後、大胆な方向転換で医学の道に入られたという異色のご経歴を持つ根岸先生。生殖免疫学研究における第一人者として、日本医科大学で教鞭を執られる傍ら、産婦人科医として診療にもあたられています。多忙な日々を過ごされながらも「研究環境に非常に恵まれている」と笑顔でおっしゃる根岸先生に、研究の概要と英語でのご苦労話を伺いました。


■ 物理学から医学へ転向されたとのことですが、きっかけは何だったのですか?

子どもの頃から宇宙やアインシュタインなどに興味があり、大学で物理学を専攻したのですが、研究者になるのは天才的なひらめきを持った人たちで、努力だけではなれないなと……。おまけにポストも少ない。そこで医学に移りました。実は、子どもの頃に大病をして、当時ご高名なある小児外科の先生に手術をしていただきました。以来、その先生とプライベートも含めて長年お付き合いさせて頂くようになり、そのなかで様々な影響を受け医学にも興味を持っていました。高校を卒業して大学に進学する際、物理学か医学かで悩んで、ロマンを追い求めて物理学に進んだのですが、結局は医学に転向したという経緯です。

■ 宇宙というマクロから「微生物学・免疫学」というミクロの世界への大転換ですね。ご専門について教えてください。

生殖免疫学という分野で、産婦人科学を免疫学の視点でとらえる研究をしています。早産や流産、妊娠高血圧症候群や胎児発育遅延など、生殖に関わる問題を免疫というアプローチで解決していこうとの試みで、特に今、注目しているのは早産の発症です。

早産の原因は感染が多いといわれていたのですが、僕が見ているのは感染を伴わないような、自然免疫を中心としたものです。無菌性炎症というもので、菌がない炎症。無菌性炎症に起因する何かが、早産の原因になる可能性を検証しているところです。赤ちゃんにはお父さんの遺伝子が半分入っているので、お母さんにとっては異物です。お母さんは生物学的な異物を妊娠期間中にお腹の中に保っておいて、時期がきたら分娩の形で、体から出さなければならない。この一連の流れの中で、母体への外からの刺激だけでなく、母体自体の免疫が早産や流産を起こすのではないか、という見解を持っています。10年前ぐらいにこの研究を始めましたが、国外でも同じような考えをしているグループが研究を進めていることが分かって、この概念が徐々に議論にあがるようになってきました。それでも、まだ一般的ではないし、確固たる証拠はない状況。道半ばです。

■ この分野の研究をしている研究者は少ないのですか?

少ないと思います。事実国内では産婦人科医不足が叫ばれていますし、多忙な産婦人科業務の中、なかなか研究の為に自分の手を動かして実験するのは難しいと思います。しかしながら免疫学的アプローチで流早産を研究している国内、国外グループはみな頑張っており、お互い切磋琢磨しているところです。ありがたいことに、私は産婦人科医としてヒトの検体を得やすい環境におり、さらに病棟で患者さんを受け持っている訳ではないので得られたサンプルを研究室ですぐに解析することが出来ます。現在は、ヒトとマウスの両面からアプローチできているので、本当にバランスよく仕事ができる環境にいます。何とかこの分野を引っ張っていける立場になろうと、今頑張っているところです。

■ それではここからは、英語についてお伺いしたいのですが。

僕は留学経験もないし、英語に関しては全然前向きじゃないんです(笑)。うまくなってやろうという意気込みがないというか……。何とか学会を乗り切ろうとか、何とかこの論文を出そうとか、目前のやらなければならないことで精いっぱいです。

最初の頃は、同じ研究分野の英語論文でも業界用語が分からないので、本当に一字一句辞書を引いていました。最初の1年ぐらいは、1本の論文を読むにもすごい時間がかかりましたが、最近はだんだんポイントが分かってきて、アブストラクトを読んで図を見ると、大体イメージがつかめるようになりました。そして結果を見て、後は必要なところを自分でピックアップする。徐々にそういった要領のいい論文の読み方ができるようになったのかなと思います。

書く時は、本当にエナゴさんにお世話になっています(笑)。最初のうちは、なかなか筆が進みませんでした。なので、読んだ論文で使われていた単語やフレーズなどをノートに書き溜めて、少しずつ自分のボキャブラリーを増やすようにしました。僕は同じ単語ばかり使ってしまいがちなので、他の人が使っている言い方やフレーズとかを書き溜めておくしかないんです。添削してもらって自分が思いもしなかった使い方をしているものなどを見つけると、それも書き留めておきます。「この表現もらった!」と(笑)。ネイティブになれないのは分かっているので、いろんな言い回しを手に入れるしかないかと。

他には、教授がいろいろな先生と英語でやり取りをされた際の記録を見せてもらい、ストックしておいて、抜き出して使う。出身が外科系なので基本、技術は盗むっていう立場なので(笑)。手紙の書き方やリバイスになった際の投稿期限の延長交渉とかを含め、そういった方法で書き方を習得しました。

■ 添削サービスがお役に立てて何よりです。

はい。おかげで論文を書くスピードがすごく速くなりました。あれこれ考えるよりもとりあえず書けば、直してもらえるので。直ってきた文章を見て、あ、こういう言い回しをすればよかったのか――と勉強すればいいと割り切って考えています。

■ 論文の(英語での)発表についてはいかがでしょう?

発表は結構慣れてきたので、割と楽しみになってきています。最初は発表の内容より、どういう風に挨拶するのか、どうやってプレゼンを始めればいいのか、イントロダクションから分からなかったので、いろいろ教えてもらいながらやってきました。

■ レビューを書かれることもありますか?

最近はレビューの執筆に苦戦しています。レビューを書くには全部読まなければならないから大変(笑)。期限は迫っているし……。批判めいたことも書かなきゃいけないのは難しいです。ネガティブな表現は結構苦手です。こんなこと書いちゃって失礼になるんじゃないかなとか考えますし。外国の方が書いたレビューには、こんな辛辣なこと言っていいの(?)みたいなものもあります。でも甘いことを書いてしまったら、何回もやり取りをしなきゃいけなくなるので、指摘すべきことはちゃんと指摘しないといけないと反省することも。ネガティブなことも含めてちゃんと書くようにしないとと思っています。

 

【プロフィール】
根岸 靖幸(ねぎし やすゆき)
日本医科大学 微生物学免疫学教室 講師
1995年3月:東京都立大学(現、首都大学東京)にて修士を取得(物理学)
1996年4月:日本医科大学医学部入学
2002年5月:日本医科大学医学部卒業、産婦人科学教室入局
2006年9月:日本医科大学大学院医学研究科入学(微生物学免疫学)
以降生殖免疫学の研究に従事
2012年3月:日本医科大学大学院医学研究科修了(微生物学免疫学)
2012年9月 日本医科大学助教 医学部 基礎医学微生物学免疫学、
2018年4月 日本医科大学講師 医学部 基礎医学微生物学免疫学
受賞
2010年度:第25回日本生殖免疫学会学会賞
2012年度:American Society for Reproductive Immunology, European Society for Reproductive Immunology(米欧合同開催)、Best Poster Award
2012年度:第27回日本生殖免疫学会学会賞
2017年度:日本医科大学 同窓会医学研究助成金受賞
2017年度:第25回日本胎盤学会学会賞(相馬賞)
2017年度:第32回日本生殖免疫学会学会賞

 


【聖徳大学】北川 慶子 教授インタビュー(後編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十九回目は、聖徳大学 心理・福祉学部教授の北川慶子先生にお話を伺いました。インタビュー後編では、英語指導法や上達法についてお話しくださいました。


■ 佐賀大学にご在職中、学生の皆さんを海外に連れて行かれたそうですね。

佐賀大学が約10年前に環黄海地域の国々、つまり韓国と中国と日本で「環黄海教育プログラム」というものを作りました。言語専門の教員に対してプログラムへの参加を募ったのですが、手を挙げる人がいなかったので、私が立候補しました。

内容としては、環黄海の3カ国以上の国から教員を集めて行う授業に、各国の大学院生を参加させるという教育プログラムでした。選出された教員が、各大学院で持っている授業を一週間、オムニバス形式で行います。私の場合は社会学の授業でした。授業はすべて英語で、その後のグループディスカッションも、3カ国の学生が入り混じって全部英語。最後にはどんなことを話し合ったかをプレゼンし、その後に評価もする。それで2単位を取れるというプログラムでした。これは、長期休みの間にお互いを訪問し合うプログラムだったのですが、佐賀大学の院生は全員、韓国と中国と台湾に行きました。

■ プログラムに参加された学生の成長ぶりはいかがでしたか?

学生たちは飛躍的に成長しましたね。本当に全然しゃべれない学生もいましたが、一緒に夕食を食べて、お酒を飲んでいるうちに話し始めるのです。できる・できないは別にして、コミュニケーションを取ろうとしているのがわかって、すごくよかったですね。メールのやりとりでも、英語ができない中国人相手に漢字だけで書いていたり、韓国人相手に(ハングルは読めないので)英語で書いていたり。その中で国際カップルもできました。このプログラムを経験した学生たちは、私がそうだったように「今度は韓国に行きましょう」などと気軽に言うようになりました。

■ 先生の英語の指導方法についてお聞かせください。

学生にはできるだけ「機会」を与えるようにしています。カジュアルな国際会議に連れて行ったり、アブストラクトだけでも投稿させたり。私は英語の添削はいまだに苦手ですので最終的には、外国人共同研究者に見てもらいます。災害研究は外国でも進められており、ここ10年ほどで外国の研究者方との共同研究が増えました。そのおかげで、添削をお願いできる人脈も増えました。

おかげさまで、私のところで学んだ院生の多くが教員になっています。韓国で教員やポスドクになった学生もいれば、中国に帰国して教員になった院生もいます。

■ 卒業された皆さんは、韓国や中国でも英語を使われているのですか?

韓国でも中国でも、英語で学会の運営をすることが多くなっています。このよいところは、(英語)ネイティブではないことです。ESL(English as a second language)状態なので、若い人たちも気後れしないでしゃべるようになっています。英語が母国語でない人たちとの会話のほうが精神的に楽ですよね。若い人たちにとっては英語圏に行くのが一番かもしれませんが、英語を気軽に自分たちのものにするためには、アジアでもよいのではないかと思います。英語が通じない地域もありますが、Ph.Dを持っている台湾の人たちの9割はアメリカで学位を取得しているといいますし、国外でのPh.D.取得が韓国や中国でも多くなっています。私が台湾に2度ほど3か月と半年間、客員教授として迎えられましたが、英語だけで通じるので、まったく中国語ができない状態で行って、できないまま帰ってきました(笑)。

■ 先生が考える英語上達の秘訣、またはおすすめの勉強法を教えてください。

まだまだ勉強中の私が申し上げるのも難なのですが、とにかく触れる、使うことではないでしょうか。私の場合、共同研究で話したり、書いたりしながら実地で覚えたという感覚が強いです。仕方なく英語を使う状況に自分を追い込むんです。そうすると、向き合わざるを得ませんから。

あとは人の論文をレビューすることが、書くための勉強になります。文献を探して読むこと。あとは、自分で書くこと。私はパソコンでやっても身につかなくて、ノートに書いています。本当に必要なものは、書かないと入ってこないですから。スペルも覚えます。自分で書いて自分でチェックしていると、書くのが早くなります。年齢と共に筆記スピードだけでなく語学力も衰えていくと言われますが、筆記のスピードでそれをセルフチェックできるんです。

■ 自分で文献を探してレビューを読み、そして書くことが英語上達に結びつくということですね。

ええ。レビューを読むことは研究費などの調達にも必要です。資金を申請するには、必ず内外の研究動向を書かなければなりません。申請書を日本語で書くにしても内外の動向、特に外の動向を探るために外国の文献を読む必要がありますし、外国資金の申請をする時には、日本語の文献でもそれを読んで内容を書かなきゃなりません。

佐賀大学にいるころは、外部資金の獲得件数が多かったので「外部資金の女王」とか呼ばれていたんです(笑)。外部資金だけで35-36件でしょうか。申請書の書き方の本も書きましたし。

■ 研究費を確保するための申請書の書き方指南は、後身の指導にもなりますね。

実は、こつこつ集中して同じ作業をしたり研究をしたりするのは好きですけど、教えるのは苦手だと思っています。にもかかわらず指導のお声がけをいただき、本当にありがたく思っています。先日は申請書の作り方の指導に呼ばれて、沖縄の大学で8名の先生の申請書を朝9時から夕方5時まで休みなく、一人1時間ずつ。明日は佐賀に出張で大型資金の申請についての打ち合わせですし。結局、お世話するのが好きなんです。もう疲れて自分の申請書ができないかもしれません(笑)。

【プロフィール】
北川 慶子(きたがわ けいこ)
聖徳大学 心理・福祉学部 教授
1999-2014年 佐賀大学文化教育学部 教授
2009-2014年 佐賀大学女性研究者支援室副室長・佐賀大学男女共同参画室長
2014年-現在 聖徳大学 心理・福祉学部 教授(2014年~)/佐賀大学 名誉教授(2014年~)/佐賀大学 工学系研究科 客員研究員(2015年~)/韓国忠北大学国家危機管理研究所招聘研究員/ネパールルンビニ佛教大学客員研究員
2006年から国立台北大学 客座教授(台湾)、2007年から華東師範大学社会学研究所 併任研究員 (都市防災・福祉研究室)(中国上海市)、2008-2014年には輔仁カトリック大学特聘教授 国際交流諮問委員(台湾)など海外の役職にも就かれている。2015年モンゴル教育アカデミー優秀女性研究者賞、2016年には財団法人 日本女性科学者の会 功労賞と佐賀県 佐賀県政功労賞を受賞。
2016年9月には学文社より「科研費採択に向けた効果的なアプローチ」を出版。
ご専門分野:社会福祉学(高齢者福祉、地域福祉、児童福祉)

 


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【聖徳大学】北川 慶子 教授インタビュー(前編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十九回目は、聖徳大学 心理・福祉学部教授の北川慶子先生にお話を伺いました。インタビュー前編は、自身の原点であるアメリカ留学や、留学が持つ可能性についてのお話です。


■ 先生のご専門について教えてください。

高齢者や子供たちが住みやすい社会とはどのようなものなのかを研究しています。近年は、災害時におけるソーシャルワーカーの実務支援機能や被災者生活復帰支援など、被災者に機能する支援のあり方を探求しています。実は社会福祉分野の研究を始めたのは、大学院からです。大学では「あえて不得意なことをやってみたら?」という親の薦めで、工学部機械工学に進学しました。高校時代は完全に文系でした。博士課程を修了してからは大学の教員になりました。

■ 先生は「英語が得意ではない」と公言されていらっしゃいますね。

はい、今も勉強中です。エナゴさんには本当にお世話になっています(笑)。英語を学ばなければと思い始めたのはアメリカに留学してからですね。これも親の影響で、親が、まだ留学が珍しかった1960年代にアメリカ留学の経験があり、「あなたも留学しなさい」と。語学はダメだと思っていた矢先に、「この先は英語が絶対に必要になるから」と言われて。留学ではなく完全に遊学でした(笑)。

■ その後、英語の学習は…?

30代になり、教員2年目に、研究留学しました。行き先はカリフォルニア。この時も、勉強する代わりに国内のいろいろな所を旅して回りました。2-3日の旅程であちこちに行き、誘われればそちらに行きと。

遊んでばかりのように聞こえるでしょうが、私にはこれが重要でした。人との出会いで何となく英語に親しみが持てるようになりました。もし真面目に勉強していたら、間違いなく嫌いになっていたと思います。教授や事務職の人たちと「普通に生活できるようになった」という実感が一番うれしかったですね。ある時、毎日私の身を案じ電話をかけてくる母が、「日本語のスピードが落ちたみたい・・・」といったことに何となく自信めいたようなことを感じたことも思い出します。大学のキャンパスで、学生たちが気軽に話しかけてくれるようにもなりました。

その後、行動範囲も格段に広がりました。国際学会に出席するようになったのも研究留学後です。海外に出る機会も増えました。そして研究の対象が、今も関わりを持つアジアの国々の福祉に徐々に広がりました。

 何があったのですか?

韓国の教員の方が「来ませんか」と誘ってくれたのです。帰国してすぐのお誘いだったのですが、アメリカで行動力を身につけた私は「そうですね」と即決し、それからは頻繁に行き来するようになりました。

外国に行くと、日本人のアイデンティティをしっかり持つようになりませんか?いい加減なことを言えないからと歴史の勉強をしたら、いつしか目がアジアに向くようになりました。韓国から中国、台湾とどんどん広がって……。いつしか中国と台湾で客員教授をやっていました(笑)。ご縁が重なったこともありますが、結局はアメリカに行ったことからすべてが始まりました。

■ 留学が研究生活の原点である、と。

子供時代は海外経験もなく、怖がりで親と一緒じゃないと動けなかったのに、アメリカを独りで旅行をしたり友達を作ったりしているうちに、殻が破れたのだと思います。実を言うと、昔は高所恐怖症で、飛行機に乗るのも怖かったのです。でも、飛行機しか手段のないアメリカ国内を移動しているうちに、気付いたらすっかり治っていました(笑)。

留学中に人種差別も経験しました。1980年代でしたが、アジア人と同じ空間にいるのをあからさまに避けようとする人たちにも出合いました。どこの国の人も同じだと思っていた私にとっては衝撃でした。当時は意識しませんでしたが、帰国後にそれが英語学習のモチベーションになり、英語で論文を書くようになったのだと思います。

■ 留学後に英語での論文執筆を始められたのですね。

そうですね。災害研究を始める前後だったでしょうか。20年数前に、アメリカの学会The Gerontological Society of Americaで初めて発表しました。親やネイティブに練習に見てもらい、文章を書くのと発表は何とかなったのですが、質問が怖かった……。「後で答えます」と言えたらよかったのですが、緊張している上にネイティブの質問も聞き取れず……。ショックでした。翌年からその学会ではポスターセッションにしました。ポスターだと聞かれていることが分からなくても、「ここに書いてある」と示せる(笑)。ただポスターでも、実際は発表と同様に大変ですね。現在では、どちらかというと国内学会より国際学会への参加が多くなってきています。国際共同研究をしているということもありますが。

■ 英語で論文を書かれる頻度は多いのですか?

海外で年間に数回は発表しますので、英語で書くことが多いですね。日本語ではほとんど書いていません。英語で論文を書いているとは言っても、社会福祉学は生活科学ですので、文章自体が極端に難しくないような気はします。とはいえ、書く際はいつも四苦八苦しています(笑)。それでも、外国の方たちと一緒に研究をしていると、毎日のメールのやりとりに英語を使わざるを得ないですし、あとはとにかくおしゃべりをします。下手でも下手なりに、英語を磨く方法はあると思います。

■ 下手なりに英語を磨く方法、ですか。

はい。英語には慣れたものの、いつまでたっても、書くこともしゃべることも大してできず、日常はあまり英語を使う機会がないのでむしろ劣化しています。(笑)。その割には「しゃべれないのによくしゃべる」とか「間違っていても平気でしゃべる」とか「人の話を遮ってしゃべる」とか……いろいろ言われます。それは、自分からしゃべらなければ相手がどんどん話してしまうので、待っていては話す機会を逃します。ネイティブは待ったなしですので、礼儀に反するかもしれませんが、人の話を中断してでも話します。考え込んでいたら話は進みますし、そのうち言いたいことを忘れてしまいます。だから、何を言われても、間違っていてもしゃべる。でも、結果的にこの方法でも通用しています。こんな私でも、中国や韓国、ネパールなどでも講演し、教えることができてきたのですから。

私は全然身につきませんでしたが、留学するなら早いうちがよいと思います。学生には「一緒に行きましょう」と言っていますし、留学はせずとも、積極的に海外の学生と交流する機会を持つことを薦めています。

後編では自身が携わられてきた海外交流プログラムや、英語の指導法について伺います。

【プロフィール】
北川 慶子(きたがわ けいこ)
聖徳大学 心理・福祉学部 教授
1999-2014年 佐賀大学文化教育学部 教授
2009-2014年 佐賀大学女性研究者支援室副室長・佐賀大学男女共同参画室長
2014年-現在 聖徳大学 心理・福祉学部 教授(2014年~)/佐賀大学 名誉教授(2014年~)/佐賀大学 工学系研究科 客員研究員(2015年~)/韓国忠北大学国家危機管理研究所招聘研究員/ネパールルンビニ佛教大学客員研究員
2006年から国立台北大学 客座教授(台湾)、2007年から華東師範大学社会学研究所 併任研究員 (都市防災・福祉研究室)(中国上海市)、2008-2014年には輔仁カトリック大学特聘教授 国際交流諮問委員(台湾)など海外の役職にも就かれている。2015年モンゴル教育アカデミー優秀女性研究者賞、2016年には財団法人 日本女性科学者の会 功労賞と佐賀県 佐賀県政功労賞を受賞。
2016年9月には学文社より「科研費採択に向けた効果的なアプローチ」を出版。
ご専門分野:社会福祉学(高齢者福祉、地域福祉、児童福祉)

 


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【東京大学】佐藤 泰裕 准教授インタビュー(後編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十八回目は、東京大学大学院経済学研究科の佐藤泰裕先生にお話を伺いました。インタビュー後編では、英語の習得法や、「まずは中身」との英語学習者への助言をいただいています。


前編では、母語なまりの英語であっても、伝えるべきことを曖昧にせずに伝えることが大切と伺いました。では、長丁場の発表や研究会で質問返しができるくらいになるまでに、若手の研究者や学生はどのように英語を鍛えていけばよいのでしょうか。

■ 大学院で英語の論文を書かれたと思いますが、その際には指導教官の指導を受けられたのですか。

経済学部では修士2年になってから指導教官が決まります。そのため、英語を読むことに関しては自分(独学)でやった感じです。修士1年目でも読む機会は多いので、今の学生も、自分で頑張って辞書を引いていますよ。

書くことに関しては、最初は他の論文を見ながら使える表現を積み上げて、それをもとに自身で書いた原稿を、指導教員に見てもらう。この繰り返しだと思います。これに関しては、今も昔も一緒かと。

■ 英語で本格的に書くようになったのは博士課程からですか。

そうですね。修士のころの発表といったら、研究会で、読んだ論文の概要を日本語で説明するという程度でした。博士課程になってから英語で書く練習をして、英語の研究会にも参加するようになりました。それでも博士課程の間は自分の研究費などはありませんので、海外の学会には行かれず、国内の学会に出て日本語で発表していました。海外に行き始めたのは就職した後ですね。名古屋大学在職時に海外の学会に少しずつ自分の研究費で行くようになって、そこから英語で発表をするようになりました。

■ 初めて英語で発表をされたときの思い出をお聞かせください。

初めて英語でプレゼンをしたのはイギリスでのコンファレンスでした。学会より少し小規模で、持ち時間はやや長めの40分くらいでしたが、何をしゃべったか覚えてないですね。都市経済学に関する著名なジャーナルのエディターなどが揃っているようなコンファレンスだったので、「すごい方々がずらっと並んでいる」と思うと緊張して……。その後の懇親会で、海外の方に「おまえはもっと英語を勉強しなきゃいけない」と言われました。「そうしないと話ができないじゃないか」と。それで、やっぱり海外に一度は行かないといけないと思いました。指導教員の伝手をたどってベルギーの研究所に1年間滞在し、「とりあえずしゃべる」ということを学んできました。

■ そこでは英語でのコミュニケーションが主だったのですか。

そうです。研究所の中は全部英語。研究者の中に日本人が一人いたので一緒にご飯を食べてはいましたが、普段はフランス人やイタリア人も一緒なので英語で話す。海外の方とコミュニケーションを取らざるを得ない状況に身を置き、日常生活から研究に至るまですべてを英語で1年間続けたことで、基礎というか、話す力がつきました。

私はあまり社交的なタイプではないので、向こうにいる時も、おとなしい人と気が合いました。そういう人を見つけて仲よくなっていましたね(笑)。友達になることで、特に研究以外の世間話をする力が身についたと思います。これで懇親会などでのコミュニケーションが円滑にいくようになりました。ベルギーでの経験を経て、30分、長くて1時間半にわたる発表の途中で質問が来ても慌てなくなりました。

■ 経済学特有の長時間の発表や研究会に対応できるようになるため、若手の研究者やこれから研究者になろうとする学生は、どうやって英語を鍛えていけばよいと思われますか。

人によって向いている方法は違うと思いますが、一つは実地訓練ですね。研究会に出席して一言でも発信してみる。仲間内で研究会を模した練習をしてみるのも一つの方法だと思います。私自身はといえば、学部生のころに学会に参加することはなかったし、英語で発表する機会もなかったのですけれど……。

現在、東京大学では一年生からALESS・ALESAというアカデミック・ライティングのコースが必修科目になっています。私が学部にいたころに、こういう英語教育プログラムがあったらよかったのにと思います。

■ ご自身の経験から、学生に対して海外に行くことを薦められますか。

一度は行ったほうがよいと言っています。就職した後でもよい。英語が必要なら、どこかのタイミングで1年ほど海外に行けば、最低限のコミュニケーションを取れるくらいにはなれるよと。それ以上に流暢にしゃべれるようになれるかどうかは人それぞれで、私自身すらそこまで達していません。仲よくなりたいと思った人に話しかけて何とか話ができるレベルですが、それで生き残れるならそれでよいかなと思っています。

学生が海外に行く機会があれば、気が合って友達になれるような人を見つけてほしいです。外国に行って突然社交的になれるかと言ったらそうではありませんから、日本でこれまでしてきたような付き合い方を、海外でもすればよいと思います。そして、自分の仕事を切り口にしたほうがよい。私の専門は英語ではなく、経済学です。経済学をやっていてシャイな方っていうのは海外にもいらっしゃるので、そういう方とは非常に気が合う(笑)。そういう方を見つけて、仲よくしたらよいかなと思っています。

■ 人それぞれ性格にあったやり方でということですね。では、研究者が英語力を鍛えるために心がけておくべきことは何でしょう。

きれいな英語を話すより、まず自分の研究内容や、相手に伝えたいこと、何を話したいかを意識するというのが一番大事だと思います。きっかけは世間話でも天気のことでも構わないのですが、その後に、なぜその相手と話したいのかという気持ちが伝わらないと、会話が終わってしまいますよね。こちらがこんな研究をしていて、だからコミュニケーションを取りたいのだというのが相手に伝われば、一生懸命聞いてもらえる。その気持ちがあれば、自分が少々下手でも相手の話が聞き取りづらくても、徐々にコミュニケーションを取れるようになります。たどたどしくても、すごく中身のある内容をしゃべってくれる人だったら、もっと話を聞きたいと思うのは世界共通です。流暢さやなめらかさがあれば理想ですが、優先すべきは中身です。

■ 最後に、弊社のサービスで、英文添削や翻訳以外にもあれば良いと思うサービスや、あれば使ってみたいと思うサービスがあればお教え下さい。

英文校正のチェックができれば今のところは問題ないです。それが一番大事なので、そのサービスが信頼できるところに頼みたいです。

■ ありがとうございました。

【プロフィール】
佐藤泰裕(さとう やすひろ)
東京大学大学院経済学研究科・経済学部
1996年 東京大学経済学部卒業
2000年 名古屋大学情報文化学部講師
2002年 東京大学 博士(経済学)取得
2007年 名古屋大学大学院環境学研究科准教授
2008年 大阪大学大学院経済学研究科准教授
2016年から現在 東京大学大学院経済学研究科准教授
ご専門分野:都市経済学・地域経済学

 


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【東京大学】佐藤 泰裕 准教授インタビュー(前編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十八回目は、東京大学大学院経済学研究科の佐藤泰裕先生にお話を伺いました。インタビュー前編では、学会における英語での発表や、そこで得た大切な教訓について語って下さいました。


■ 先生の研究分野、研究テーマを教えてください。

経済学の領域で、その中でも都市経済学、地域経済学、空間経済学について研究しています。経済学とは元々、社会のルールや制度などをどのように設計すればより暮らしやすくなるのかを考える学問ですが、その中で都市や地域間の人口移動に関する分析や、地域経済政策の外部性を分析するのが専門です。いろいろな都市にある共通の問題を探ったり、都市に関する仮説を実証したりといった具合です。

例えば最近、大都市の混雑とか通勤などの問題が挙がっていますが、なぜ都市に企業や団体が集まるのか、その理由を理詰めで考えてデータで確認していくということをやっています。また、学歴の高い人ほど大都市に集まりやすいとも言われます。それをちゃんとデータで検証可能な形に整理するのです。そこが、私の研究が「理論分析」と言われる所以です。分析した後にあらためてデータを見て、実際に有意に観察されるかどうか、統計学を使って検証しているのです。

■ ご自身の研究を発表するのは、学会が主な場所でしょうか。英語で発表される機会はありますか。

そうですね、学会や研究会です。国内と海外、両方ありますが、子供がまだ小さいので海外にはあまり頻繁には行かれず、年に1回か2回ですね。

国内の学会でも、状況によっては英語で発表をしたり、資料を作ったりすることがあります。大学によっては研究会を全部英語でやっているところもありますし、聴衆の中に日本語のわからない外国の方がいる場合には、英語で――となることもあります。外国の方が来るかどうかわかった時点で資料を英語に訳すこともあるし、逆に、英語でプレゼンテーションする準備をしていたのに参加者が全員日本人だったから日本語に切り替わるということもあります。

■ 国内外問わず、英語で発表したり資料を作ったりしなければならない時のご苦労、大変だったご経験はありますか。

発表や資料作成ではそれほどないのですけれど、やはり質疑応答が・・・・・・。分野によって違うと思いますが、経済学の場合は、学会発表や研究会の発表でも(発表者が)しゃべっている間に質問が来ます。こちらがまだ話している間に手が上がって、「ちょっとこれの意味を教えてくれない?」とか「ここの部分をもっと聞きたいんだけど」っていうのが来る(笑)。国内の学会だと発表が終わるまで待ってくれますが、海外の学会は途中でも容赦なく手が上がります。

■ 準備していない段階で、予期せぬ質問が来ると。

そういうことです。なまりの強い英語で聞かれたり、ネイティブの方に(文を)省略してしゃべられたりすると質問の意味がわからないことがあって、それをどうやって返したらいいのか、どう切り抜けたらいいのか、最初は苦労しました。

今では、聞き取れなかったら素直に「今、何て言ったんですか?」と聞き返します。すると相手は、違う言い回しで質問し直してくれることが多いです。質問を予測して「こういう質問ですか」と尋ねたりもします。そうすると、やり取りが割とかみ合うようになります。最初に確認をすることで、話が有意義に進むようにしています。

もちろん事前にフレーズをいくつか考えて臨みますが、学会の会場で発表をされているノンネイティブの上手な返し方をストックもしています。学会や会議の場で学んだことを発表に生かすということです。

■ 発表の合間に質問が入るという以外に、経済学の分野で独特な「ルール」はありますか。

発表時間は長めです。学会だと1人の持ち時間がだいたい30分くらいで、短くて20分くらい。発表8割、質疑応答2割で構成されています。最初のころは原稿を発表時間に合わせて用意していたのですが、合間に入ってくる質問に対応していると網羅しきれず、やりにくさを感じたため、用意しなくなりました。スライドを見ながら説明して、質問が来たらその場で答えるという流れです。

研究会もけっこう長いですね。報告となると、1人につき1時間半くらいかけます。スライドは用意しますが、議論しながらやるので、濃密なやり取りになります。

■ そうした長時間の発表でも、外国の方が参加された場合には英語になるのですよね……?

もちろんです。大変ですが、いろいろなノンネイティブの方の発表を聞いているうちに、日本人は日本語なまりでいいのだというのがわかってきて、ずいぶん楽になりました。最初はRとLの発音を・・・とか気にしていましたが、今は全然(笑)。伝えたいことを伝えるのが一番大事です。とにかく話して、伝わらなければもう一回話す。曖昧にしないことが大切だなと。スペインの方なんかはもう、完全にスペイン語じゃないかっていうような発音ですし、フランスの方もそう。それでも気にしない。気にして伝えたいことを伝えられないほうが、かえって相手に失礼と思ってよいのではないかと。だから、日本人も日本語なまりでいいと思います。

 

【プロフィール】
佐藤泰裕(さとう やすひろ)
東京大学大学院経済学研究科・経済学部
1996年 東京大学経済学部卒業
2000年 名古屋大学情報文化学部講師
2002年 東京大学 博士(経済学)取得
2007年 名古屋大学大学院環境学研究科准教授
2008年 大阪大学大学院経済学研究科准教授
2016年から現在 東京大学大学院経済学研究科准教授
ご専門分野:都市経済学・地域経済学

 


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【工学院大学】藤川 真樹 准教授インタビュー(後編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十七回目は、工学院大学情報学部コンピュータ科学科の藤川真樹先生にお話を伺いました。インタビュー後編は、英語への取り組み方法や、英語の指導方法、さらに工学院大学のユニークな英語学習についてのお話です。


■ 英語の学習方法について教えてください。

オンライン英会話のレッスンを毎日続けています。また、単語は使わないと忘れてしまいますので、毎朝必ず勉強しています。普段が日本語の環境ですので、どうにかして英語に触れる機会をつくらなくちゃと思って、Japan Times STなどを1日1ページ読むとか、英語のボキャブラリーを増やすために地道に取り組んでいます。講義で英語を使うことはないですし、海外のスタッフがいるわけでもないので、自分から触れにいくことを常々意識しています。

■ 論文を英語で書かれる機会は多いのですか?

日本語と合わせて年に2・3本でしょうか。論文を書く際は、まず日本語で書いて、それを英語に翻訳します。その後、御社に校正をお願いをするという段階を踏んでいます。

発表は3回か4回です。授業の合間に国際会議に行きますので、回数は限られます。まずは国内でやって、研究成果の上がったものを海外用の原稿に織り込み、国際会議に投稿する。そして無事に採択されたら、発表しに行くという。

事業化、実用化につながる可能性があるので、国際会議での発表は非常に有意義です。研究者の方々と話をしながらニーズを探ったり、オーディエンスからいろいろなご提案をいただけたりするのはありがたいです。

質疑応答には、答えられる範囲で答えます。発表の後のQ&Aは、たかだか5分くらい。受けられる質問の数も限られているので、そこで受けた質問にはその場で答えますが、どうしても答えられない、時間がないという場合には、セッションの後で個別に「あの時のご質問ですけど……」と内容を確認してから、図やイラストを描きながら説明することもあります。

■ 論文を書かれる際、専門用語や今までにない言葉などの英訳にご苦労されることはありませんか?

この分野には先達のフロンティアがいらっしゃるんです。横浜国立大学の松本勉先生が「人工物メトリクス」という概念を作られました。これは、人によって異なる指紋のような情報を、人工物にも付けてみようというものです。それは、製造過程において自然偶発的かつランダムにできる情報で、それを用いると一つひとつ識別できるようになるという考え方です。私はこのコンセプトに沿ってアプローチしているんです。今は陶磁器ですが、次は合成樹脂でやってみようとか、いろいろな人工物に適用しているだけなので、表現で困ることはないんです。

松本先生が「Artifact-metrics(人工物メトリクス)」という言葉を作られました。ただ世界での認知度はそれほど高くないようなので、「Anti-counterfeiting method」など別の表現を使う時もあります。私は、松本先生に敬意を表して「Artifact-metrics」と最初に使って、後で「This metrics is a kind of technique that is also called as an anti-counterfeiting metrics method」と言った形で表現しています。両方の表現を適宜使い分けて、盛り込むというような感じですね。

■ 発表や質疑応答以外に英語でご苦労されることはありますか?

会議の司会を引き受ける時ですね。私の拙い英語で進行を遅らせたり、妨げたりするのはよくないので、必ず最初にスピーチ原稿だけは用意します。頭が真っ白くならないようにとの意図もあって。事前練習まではしませんが、メモが一つあるだけで気持ちは落ち着きます。

■ 学生への英語指導方法についてもお聞かせいただけますか。

週1回のゼミでは、私も含めて英語だけでディスカッションする時間を作っています。研究室の学部生8名全員、英語のみで会話するんです。教材はインターネット上にあるニュース記事など。技術に関係する記事を一つ選んで、それについてどう思うかなどを学生に質問し、それに答えてもらっています。あとは、部屋にJapan Times STなどの週刊紙を置いておいて、興味があれば読めばよいと。

一般的な講義では毎回、講義の前半、冒頭の5分を使って英文記事をプロジェクターで見せています。トピック紹介ですね。Japan Today、Japan Times、Mainichiオンラインなどから技術関連のニュース記事を拾って生徒に見せて、日本語で解説します。紹介記事は英語のまま投影して、こんな技術が開発されているんだと紹介する。これは数学の講義でもセキュリティの講義でも、どれでも一緒です。1年生から4年生までいて英語のレベルも異なりますが、まったく同じ英文記事を使用しています。

■ まずは触れてみることが大事、という感じでしょうか。

そうですね。英語に親しむことが大前提です。そこからすべてが始まるんじゃないかと。本学の英語のカリキュラムは特徴的です。例えば海外留学プログラム。英語はしゃべれなくてもいいから、とにかく現地に行かせてしまうというものです。アメリカに行って、講義は日本語でやるけれど、学校以外の生活、ホームステイ先での会話などは英語でやるという「ハイブリッド留学」を取り入れています。文科省から「大学教育再生加速プログラム(AP)」にも採択されています。実学主義という校風が英語教育にも反映されています。

■ 最後に、論文の英文校正サービスに関して、あったらよいなというサービスがあればご意見をお聞かせください。

私は今のサービスで満足しています。納期も価格もクオリティも本当によいです。自分の元の原稿はどこに行った?と思うくらい添削をしていただけて、十分に満足しています。原稿評価カルテでしたか、自分の英語力をチェックしてくれるシートが出ますよね。それを見ると、私の成績も概ねよいかなと思えます(笑)。

■ ぜひ、今後ともご利用いただければ幸いです。国際学会での発表など、今後のご予定はいかがですか。

授業と授業の合間に行くため発表の数は限られますが、引き続きブルー・オーシャンを開拓しつつ、他の分野にも応用できるような研究成果を出していきたいと思っています。研究の醍醐味って、やはりクオリティの高い成果を出すことじゃないかなと思います。それが学生の励みになって、その研究成果を持って、どんどん発表に行ってくれれば。たとえ国内での発表だとしても、それが自信になって、セキュリティの分野って面白いなと思ってくれれば、それでよいと思います。

■ ありがとうございました。

 

【プロフィール】
藤川 真樹(ふじかわ まさき)

工学院大学情報学部コンピュータ科学科 准教授
1998年3月 徳島大学 工学研究科 知能情報工学専攻  博士前期修了
2004年8月 中央大学 理工学研究科 情報工学専攻 博士後期修了
1998年3月~2016年3月 綜合警備保障株式会社 勤務
2016年4月 東京工科大学 特別講師「セキュリティシステム」担当
2016年4月~ 工学院大学情報学部コンピュータ科学科 准教授
ご専門の研究分野は、社会システム工学・安全システム

 


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【工学院大学】藤川 真樹 准教授インタビュー(前編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十七回目は、工学院大学情報学部コンピュータ科学科の藤川真樹先生にお話を伺いました。インタビュー前編は、世界の最先端を走る先生の研究についてのお話です。


■ 先生の専門分野、研究テーマを教えてください。

主にセキュリティに関する研究を行っています。セキュリティといっても今日では非常に幅が広いですが、ここでフォーカスしているのは、物理的な物に関連するセキュリティです。例えば、世の中には偽造品がいろいろと出回っていますが、それが本物か偽物かを見分ける必要があります。そして、本物をどうやって守るか、偽物を作りにくくするにはどうすればよいか……。そういう研究をずっと続けています。特に私たちが今、注目しているのは、工芸品で、中でも陶磁器です。日本には多種多様な伝統工芸品がありますが、偽物が非常にたくさん作られています。例えば、有田焼などの有名な窯元の作品の偽造品が多数出回っている。それなのに、どうやって偽造品を作りにくくするかといった議論や技術開発は進んでいない。そこで、日本の伝統工芸品は日本人の手で守るべきという考えに立脚し、研究を進めています。

■ 先生がご参画されている「経済産業省・戦略的基盤技術高度化支援事業」での研究を拝見しました。陶磁器の中に情報を入れ込むという。

はい、平成23年度から継続しています。かつて、ディスプレイに表示されている機密情報をカメラで撮影して持ち出すという情報漏洩がありました。羽田空港の管制官がグローバルホークなどの飛行計画、機密情報を撮影して持ち出したのですが、あってはならないことです。その時、ディスプレイに表示される情報を撮影によって持ち出されるのを防ぐには、ディスプレイの表面に赤外線を発光するような透明なシートを貼ればよいのではないかと考えました。人間には見えませんが、カメラは赤外線を情報だと認識するので、撮影された画像に赤外線が写り込み、情報を読めなくするという仕組みです。

この材料となるのが赤外線を発光する蛍光体なのですが、これを他の分野にも応用できないかと。これを擦りつぶして粉状にして、釉薬や絵の具に入れて陶磁器に焼きつけたらどうか、となったのです。実際に焼きつけたものを赤外線カメラで撮影すると、指紋のようなまだら模様ができるんですね。人間の目には見えない。この模様により、本物であることを証明できるんじゃないか、ということで転用し始めました。

■ 盗品や偽物の市場への流入が、世界中で問題になっています。研究内容を公表することで、偽造品を作り出す人間が対策を立てやすくなるということはないのでしょうか。

お札の偽造防止技術やクレジットカードのホログラムの製造方法のように、公開しないことでセキュリティが保たれているものもありますが、われわれの研究は、そういうものではないんです。人工物の中に特徴的な情報を埋め込む技術を公開しても、意図通りには作れません。私たちの研究は、同じものを作るのをいかに難しくするかを競っているのです。

■ 材料の組み合わせや製造方法を公にしても、個々の陶磁器に付けられた指紋のような模様を再現するのは難しいということですか?

はい.QRコードに例えると、分かりやすいかもしれません。通常のQRコードは人間の目で見えますが、私たちは見えないQRコードを焼き込んでいる。赤外線や紫外線などの特殊な光を当てると、その時だけ情報が出てくるんです。さらに、このQRコードの模様が同じであっても、コードを形成する蛍光体の粒子の大きさや厚みなどを変えることで、一つひとつをまったく異なるコードにすることが可能になります。一見同じに見えても、世界にたった一つしかないQRコードが作れるので、個々の識別が可能になるんです。

私の研究は、先行する研究者がいない、いわば「ブルー・オーシャン」。誰もやっていない未開拓分野を走っていくようなものです。ライバル不在のニッチな分野の第一人者に、という野心的な思いもあるのですが(笑)、この技術をビジネスにも活かしてもらえるのではと思っています。

 ユニークかつ実用的な技術ゆえ、研究成果をご発表される機会が多いのではないでしょうか?

国内外の国際会議で、偽造防止技術の発表をさせてもらうことがよくあります。ただ、英語のスキルはないほうなので、英語で発表する時、十分な受け答えができているとは思えません。
言葉の壁を感じることはよくあります。特に、この技術の実用化に関する話が出た時には苦労しました。英語の発表とは別ですが、ドイツのメーカーに話を持っていこうとした時のことです。私がうまく伝えられないがために、話が進まない……。結局、交渉事はドイツ人に任せて、その結果だけ受け取ることにしました。

大変面白い研究のお話でした。後編では、英語への取り組みについてなどをお伺いします。


【プロフィール】
藤川 真樹(ふじかわ まさき)

工学院大学情報学部コンピュータ科学科 准教授
1998年3月 徳島大学 工学研究科 知能情報工学専攻  博士前期修了
2004年8月 中央大学 理工学研究科 情報工学専攻 博士後期修了
1998年3月~2016年3月 綜合警備保障株式会社 勤務
2016年4月 東京工科大学 特別講師「セキュリティシステム」担当
2016年4月~ 工学院大学情報学部コンピュータ科学科 准教授
ご専門の研究分野は、社会システム工学・安全システム

 


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【筑波技術大学】三浦美佐 准教授インタビュー(後編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十六回目は、筑波技術大学 保健科学部の三浦美佐先生にお話を伺いました。
後編では英語学習のポイントを、ご経験に基づいてお話しいただきました。


■ 先生の研究仲間や研究室の大学院生も、論文発表において同じように苦労されていますか?実際に英語の指導をされる上で心がけていることを教えてください。

英語での応答に苦労している人は多いと思います。大学で英語力を伸ばす機会というのはなかなか限られています。プレゼンや質疑応答の練習まで、本当は一から細かく教えられればよいのですが、まずは自分の研究内容をどう伝えるか、という実用的なところに重点を置く必要があると思っています。発音や文法ももちろん大事ですが、それ以前に自身の研究内容を的確に伝えられるようになることが重要です。実用的かつ学会で役に立つという観点で、学術論文が書けるまでになる、ということを意識しています。

最終的には一人で英語の研究論文を書くことが目標です。この研究室の学生は、今年の4月に入ってきたばかりなので、まずは英語で自分の所属を書くところから慣れさせます。量を徐々に増やし、それを私がチェックします。学会で自分の研究を自分で伝えられるようになることを願って指導しています。
質疑応答で答えに詰まるようであれば、「後でメールなどの文書で回答します」ということを徹底させたいなと思っています。自分の研究内容を書く訓練になりますし、世界の研究者とつながるせっかくの機会ですからね。

■ 大学によって英語を学ぶ機会には差があり、学術英語を学ぶとなるとさらに機会が少ないかと思います。おすすめの学習法がありましたら教えてください。

東京大学が運営するUTokyo English Academiaがおすすめです。学術英語の勉強が無料でできるウェブサイトで、自分でも利用してみたのですが、手始めにはすごく適した内容だと思います。大学院生のためのプレゼンのコツや、学会で必要な会話などを紹介してくれていて、かつ無料で使えるので非常に役立ちます。

■ 日本の研究者が英語力を鍛えていくために必要だと思われることを教えてください。

日本人は読むことと書くことにかけては、英語ネイティブと比べても遜色ないと思っています。あとは話すことと聞くことですが、私の失敗経験から言えば、聞くこと(リスニング)を最初に鍛えていくのがよいのではないかと思います。私が一番困るのは、研究のことは伝えられても日常会話や冗談がわからないということです。周りが笑っているけれど、何がおかしいのかがわからない……。研究に関わることは話せたり、聞き取れたりするので、同じように日常会話や冗談も理解できて、自分もそれに対して言い返すことができたら、どんなによいかなって思います。

■ 学会のパーティーでの交流は、ネットワークの構築に欠かせませんからね。

日本人は社交の場で輪に入っていくのが苦手なのか、日本人同士で固まってしまうか、壁際で一人でワインを飲んでるという光景をよく目にします。英語を話せる人は、お酒が入るとどうしても早口になるので、会話に入っていくのが余計に難しいというところがあるのかもしれません。

■ 社交性を鍛える方法があれば教えてください。

英語を話す留学生を捕まえて、多少ブロークンでもいいから英語で話すことが最も手っ取り早いです。お金もかかりませんし(笑)。そして日本語を話さないことです。

私の周りにも留学生がいましたが、中国からの方が多かったですね。ショートメッセージなどで英語のやり取りをし、表現の仕方を勉強させてもらいました。自分では思いつかないような言い方や、日本人とは異なる考え方は非常に勉強になりました。

■ 筑波技術大学の英語教育はいかがですか。

この大学も英語に力を入れており、無料の英会話サロンも開催しています。週1回、ネイティブスピーカーが終日部屋におり、学生が自由に出入りできるようになっています。でも、学生は勇気がないのか、なかなか入れないみたいです。

本学は視覚・聴覚に障害を持つ学生を対象にしているのですが、視覚障害と言っても、暗い所では見えないとか、光の刺激があるとまぶしくて視野が狭くなるとか、一人ひとりがさまざまな苦労を抱えています。そのため、学生は前に出るということをためらいがちです。会話の場を提供するだけでなく、参加するための策を考えないといけないと思っています。

■ 最後に、若手の研究者、大学院生、学生へのアドバイスをお願いします。

英語のニュースを聞くのが一番じゃないでしょうか。BBCニュースをはじめ、発音のきれいなニュースを聞いてみる。インターネットでも聞けますし、速度調整も可能なので、少し遅いスピードで聞いて耳を慣れさせていくのは、リスニングの強化につながります。私もiPadにBBCを入れており、時々聞いています。

参考にする本としては、日本語で簡単に書かれた英語論文の書き方のノウハウ本や、ネイティブが書いた英語のコツなどがありますが、初歩の初歩なら漫画も一案です。英語がわからなくても絵を通して感覚的に理解することができるので。

テレビや漫画など何でも活用して基礎を固め、英語を好きになる、苦手意識をなくすということが大事です。英語への抵抗が薄れれば、学術論文に進むのもスムーズになるかなと思っています。

写真:三浦美佐先生と研究室の大学院生、西田叡人(あきひと)さん。

【プロフィール】
三浦 美佐(みうら みさ)
筑波技術大学 保健科学部  保健学科 理学療法学専攻・准教授
2010年3月 東北大学大学院医学系研究科医科学専攻 博士課程修了
2011年4月 東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻 機能医科学講座 内部障害学分野 非常勤講師
2013年4月 筑波技術大学保健科学部 保健学科理学療法学専攻 准教授
2016年6月 茨城県理学療法士会学術賞を受賞
現在の専門分野:内部障害学分野

 


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【筑波技術大学】三浦美佐 准教授インタビュー(前編)

各大学の研究室に訪問し、研究者たちにおける英語力向上の可能性を探るインタビューシリーズ。十六回目は、筑波技術大学 保健科学部の三浦美佐先生にお話を伺いました。
インタビュー前編では、三浦先生のご研究の内容と発表における苦労をお話いただいています。


■  先生の専門分野、研究テーマを教えてください。

専門はリハビリテーションです。その領域の中でも内部障害、主に循環器系、腎臓疾患、呼吸器系、肝機能障害や癌など、さまざまな疾患を患った方のリハビリに関する研究をしています。以前は、患者さんが寝たきりになってからの廃用症候群のリハビリ治療が主だったのですが、今のリハビリは疾病の予防にまで幅が広がっています。まずは病気にならないことが大事ですが、病気になってしまった場合でも、いかに患者さんに軽負担で、しかも効率よく治療できるか。それを主眼に、運動療法や電気刺激、超音波などの物理療法によるリハビリの研究を進めています。

■ 機械を使ったリハビリの効果の研究や、機械・機器の開発などもされているのですか?

従来の運動療法の実施が困難な寝たきりの方でも使用できる自転車運動とか、電気刺激、さらに廃用症候群の予防のための運動プログラムなどが研究対象です。例えば、腎臓病の方に効率よく運動していただくため、下肢陽圧式空圧免苛歩行装置を企業と開発し、臨床試験を行っているところです。他には、透析患者さんが透析を受けている間にベッドの上でこげる自転車を考案し、企業と一緒に臨床治験を行っています。

■ 寝ている状態での運動ということですね。

はい。ベッドの上で使用できる運動機器って少ないんです。専門の知識を持つ人も少ない。
最近では、運動さえままならない患者さんも増えています。そこで、自力で立つことができない方でも歩く方法はないかと考えて作ったのが、先ほど述べた下肢陽圧式空圧免苛歩行装置です。杖や歩行器が必要な方でも歩くことができる機械で、これを使用して少しずつ機能を戻していく取り組みを行っています。

■ 研究内容をわかりやすく説明していただき、ありがとうございます。では、その研究成果の英語での発表についてお聞かせください。最初に発表をされたのはいつでしょうか?

東北大学の大学院生だった時です。入学して2か月しか経っていないのに「イタリアの学会でポスター発表して」と言われまして……(笑)。当時の私は、英語の論文は何とか読むことができても、自分で書くことはできないレベルでした。

■ どのように準備をされたのですか?

今までに書かれた論文を読んだり、研究室の先輩や同級生の書き方を参考にしたり、研究発表を見たりして、少しずつ力を付けていきました。あとは研究室の中で予演会というものがありまして。先生や学生の前でリハーサルを行い、質疑応答もやるというトレーニングです。当然、日本語禁止で英語だけです。期限までには何とか仕上げましたが、今思えば、文法的な誤りや自分では気づけない間違った言い回しがたくさんありましたね。もちろん今でもそうですが……。

■ 本番の出来はいかがでしたか。

予演会のおかげで何とかなりました。原稿を精査できたこと、それに事前に準備したQ&Aが役立ちました。先生や同じ学生たちのおかげで質問をある程度想定することができ、本番でも落ち着いて答えることができました。写真も撮ってもらえてうれしかったですし、思い出深い発表になりました。

■ 突拍子もない質問はなかったですか?

ありましたよ(笑)。単語を並べて何とか切り抜けました……。拙い回答ばかりだったと思いますが、それでも練習の効果は大きかったですね。たとえピントが外れていても、何か答える、言葉を発するというのは大事なことだと思います。

■ イタリアの後、国際学会などで定期的に発表されてきたのでしょうか。

イタリア以降、年に一回は国際学会に行っています。昨年もアメリカ腎臓学会はじめ国際リハビリテーション医学会、ヨーロッパ腎臓学会などに行かせていただいて、年一回のペースで英語発表の機会を持てています。それからリジェクトされることは多いのですが、2年に1回は英語論文を学術ジャーナルに掲載してもらっています。エビデンスを考えると学会発表だけでは足りないので、年一回の発表と並行して論文を書いている状況です。

■ これまでのご経験の中でも特に大変だった発表を教えてください。

数限りなくありますが、一つあげるなら、香港で開催された循環器予防学会での口頭発表でしょうか。アジアの循環器予防学会からの招待でInvited Speakerとして発表したのですが、鋭い質問が多くて大変でした(笑)。「被験者に高齢の方が多いのはなぜか」「なぜ若年層と比較しないのか」といったような、全然想定していなかった質問や、日本語でも答えに窮するような追及が中国の研究者たちからいくつかあって……。そのパワーに圧倒されました。準備の大切さをあらためて実感しました。

■ その場での返答が難しい質問が来た際は、どう返されるのですか。

英語で「今後の検討課題にしたいと思います」と返します。そうすると、それ以上は突っ込んでこない場合が多いので。発表が終わった後に個別に聞きに来られる方もいますが、こちらの英語が拙いので「すみませんが、Eメールで質問をいただければ後で回答します」と返事をするようにしています。文章のほうが的確に伝えられるので、その場で何となく済ますことはしません。連絡先を聞いて、質問に答えます。そのたびに、エナゴさんには非常にお世話になっています(笑)。

【プロフィール】
三浦 美佐(みうら みさ)
筑波技術大学 保健科学部 保健学科 理学療法学専攻・准教授

2010年3月 東北大学大学院医学系研究科医科学専攻 博士課程修了
2011年4月 東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻 機能医科学講座 内部障害学分野 非常勤講師
2013年4月 筑波技術大学保健科学部 保健学科理学療法学専攻 准教授
2016年6月 茨城県理学療法士会学術賞を受賞
現在の専門分野:内部障害学分野