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学術コミュニケーションの変遷からジャーナル編集部との付き合い方まで、あらゆる角度から学術界の“今”をお届けします。

研究発表から論文を作成して投稿しよう!

学会やシンポジウムなどで自身の研究内容を口頭発表することは、研究者としての経験上、とても大切なことです。しかし、ただ発表するだけでは発表者として講演要旨集に記録されるだけで、せっかくの研究内容は参加者や聴衆の思い出となって消えてしまいます。口頭発表をもとに論文を作成して出版すれば、恒久的に記録として残すことができます。しかも、シンポジウムの参加者だけでなく、より広い範囲の人々に届けることもできるのです。発表をもとにした論文作成のノウハウをお伝えします。

■ 研究発表と論文出版には大きな差がある

最初に注意しておきたいのは、シンポジウムなどで自身の研究を発表することと、論文として学術ジャーナルで発表・出版することには大きな違いがあるということです。シンポジウムで口頭発表しただけでは、学術ジャーナルに掲載される論文ほどの信頼性を得ることはできません。掲載に至るためには査読を経る必要があるため、他の研究者のお墨付きを得た内容として学術的価値が高まるのです。論文には研究の背景、手法、結果、考察、引用した文献までも詳細に記録することを前提としているため、出版された研究内容は後世まで残ることになります。これが、研究者としての実績を積み上げることにつながります。口頭発表と比べ、必要な労力は数十倍ですが、その苦労は、論文が掲載された際に報われることでしょう。

■ シンポジウムでの発表を出版する方法

では、研究発表の内容を論文に作成し直し、学術ジャーナルに投稿するには、どうすればよいのでしょうか。出版方法としては、以下の2つに分かれるようです。

主催者による出版-会議録(プロシーディング

学会またはシンポジウムの主催者が、会における発表内容をまとめるものを会議録(プロシーディング)と呼びます。会議録を作成する場合、主催者は、自らの責任ですべての発表者から原稿を集め、出版社に提供します。これが、学術ジャーナル1冊分に相当するボリュームになる場合もあります。

出版については、シンポジウムが開催される前に決定しているのが一般的で、発表者は、シンポジウム後に原稿を作成して提出するよう事前に求められます。そのため発表者は、最初から論文作成を念頭に置いて発表を組み立てておくと、後で文章にまとめやすくなります。

発表者による出版-自主投稿

主催者がシンポジウムのプロシーディングを出版する予定がない場合、発表者は自身の発表内容を論文としてまとめて出版することができます。この場合、発表者が自らの責任で適切な学術ジャーナルを選び、原稿を提出しなければなりません。ほぼすべての学術ジャーナルが、発表論文の投稿を受け付けています。

プロシーディングの出版が予定されていない場合、研究者は、どの学術ジャーナルに、どのような形で発表論文を掲載できるか、あらかじめ調査・計画しておくべきでしょう。研究発表を学術ジャーナルに掲載することは、出版実績となるだけでなく、より多くの人々に自分の研究を読んでもらう有効な手段です。ただし、シンポジウムでの発表前に出版社に論文を提出することは倫理違反ですので、十分ご注意ください。

■ 発表論文の書式

提出する論文が従うべき具体的な書式は、学術ジャーナルごとに決まっています。文字数も学術ジャーナルによって異なるものの、3000語から6000語といったところです。適当な図や表があれば、挿入するとよいでしょう。発表論文の書式は、次のような構成とするのが一般的です。

1. 要約
2. 導入
3. 本文(見出しや小見出しを付けて)
4. 結論
5. 参考文献

発表論文は、会場で配られる10分程度で読めるような簡単なものではなく、研究発表を詳細かつ深掘りした内容となるはずです。論文を書くことを念頭にしつつ発表の構成を考え、また発表で使う言葉をすべて書き留めておくことも、後で論文を作成する際に役立つでしょう。

■ 何よりも重要なのは

発表論文を投稿・出版することはとても大切ですが、何より重要なのは、学会やシンポジウムなどでの発表機会を逃さないよう、常にアンテナを張っておくことです。発表をすることは、自身の研究に興味を持っている聴衆に直接語りかける機会に、また新たに興味を持ってもらう機会になります。発表後の質疑応答で、思わぬ点に気づかされるかもしれません。まずは、自身の研究内容に適した学会やシンポジウムを検索するところから始めてみてはいかがでしょうか。


論文引用の仕方で絶対に抑えておくべきポイント

論文の著者にとって、自分の書いた論文が他の研究者の論文に引用されることは、論文の影響力が上がるという意味で喜ばしいことです。反対に、自分の論文の中に他者の論文を引用することも多々ありますが、この時に注意しなければならないのが、引用の仕方です。これを間違うと盗用・剽窃として、訴訟にも発展しかねません。そうならないために、正しい引用の仕方を抑えておく必要があります。今回は参考文献の記載の仕方と、よく用いられる引用方法についてまとめます。

■ どうやって記載するか-参考文献の記載方法(3種類)

論文中に他人の著作物から得た情報を記す場合は、該当する情報が引用・参照であることを本文中に示し、かつ論文の最後に参考文献としてリスト化する必要があります。

1.本文中に記載する
論文の本文中に、引用文献があることを示す数字か、または引用文献の情報を括弧で記載します。学会や学術ジャーナルによっては数字や著者名、出版年数などの記載方法を示したスタイルガイドがあるので、これを参照しましょう。参考文献のリストは、論文末尾に、数字順またはアルファベット順に掲載します。

例:
・タイリクオオカミは、かつては北米大陸中で見られた肉食動物であった。5(本文中には数字のみ記載する)
・タイリクオオカミは、かつては北米大陸中で見られた肉食動物であった(Smith,1970)。(本文中に著者名と発表年まで記載する)

最初の例は、アメリカ医師会(のスタイルガイドによるものであり、2番目の例は、アメリカ心理学会(によるものです。

2.文末脚注(エンドノート)に記載する
「本文中に記載する」と似ていますが、注釈をつける個所の本文中に数字を括弧書きで記載する方法です。この数字を、論文末尾の参考文献リストの番号と対応させます。

3.脚注(フットノート)に記載する
エンドノートと同様に本文中に数字を記載する方法ですが、参考文献リストを論文末尾にまとめるのではなく、個々の引用を記入したページの下段に記載される点が異なります。

学術ジャーナルに論文を掲載する場合、各誌が著者のためのガイドラインを発表しているので参照できます。また、AMA(アメリカ医師会)、APA(アメリカ心理学会)、MLA(アメリカ現代語学文学協会)、などの学会も、論文執筆者向けに書き方のスタイル(シカゴスタイル<Chicago Manual of Style>など)を提供しています。

■ 引用のルール

参考文献を記載することは、研究の経緯と論拠を示すことでもあります。参考文献を明記することによって、読者は情報が正当なものであることを確認でき、結果として該当論文への信頼の構築につながります。

とはいえ、論文執筆に利用したすべての情報を参考文献に記載する必要はありません。すべてやろうと思えば、途方もない時間がかかります。しかし、どんな場合に参考文献を記載すべきか――は知っておく必要があります。対象には、ニュース番組やウェブサイト、TVやラジオ番組を含め、すべての情報源が当てはまります。

1.直接引用
直接引用とは、一言一句そのまま他人の文章を写すことです。これに参考文献の掲示が必要なことに異論はないでしょう。たとえ単語であっても、引用した語句であれば引用符を付けなければなりません。数行にわたる引用の場合、本文とは明確に区別できる形で書いておきます。

2.間接引用
間接引用とは、他者の考えを自分の言葉に置き換えて書くことです。この場合でも、他者の考えから着想した以上は、参考文献の掲示が必要です。また、引用するにあたっては、専門用語を読者にとってわかりやすい言葉に置き換えることも大切です。

3.要約
要約は間接引用の一種ですが、違いは、主要点のみを短く述べることです。もちろん、これにも参考文献を表示する必要があります。

4.常識
広く一般に知られていることは、それが統計上の情報または研究上の情報でない限り、参考文献を示す必要はありません。

例:
・不要な例――「セントポールはミネソタ州の州都です」
・必要な例――「セントポールは、ミネソタ州の州都で、米国で最も多くの多発性硬化症が発生する都市です」

セントポールが州都であることは一般常識ですが、多発性硬化症が米国で最も多く発生する都市であることは、統計上の情報です。この事実には参考文献を付すべきです。

5.追加情報
結論部分や他の部分で、それ以前に同じ参考文献から同じ内容の記述を引用した旨を一度でも記載したのであれば、再び記載する必要はありません。しかし前述の引用記載とは異なる情報を紹介したり、別の内容を追加したりする場合には、あらためて記載しなければなりません。

■ 間違った引用は身を滅ぼす

盗用・剽窃は重大な不正行為です。発覚すれば、論文を掲載したジャーナルが出版された後であっても撤回を余儀なくされます。著者の所属機関によっては懲戒処分となることもありますし、研究者としての評価は確実に下がってしまいます。

学術機関・学会・出版社によって、参考文献の表示ルールが異なっている場合があるため、注意が必要です。論文を書く際は、まず自身の属する機関のルールを習得しておくこと、さらに論文投稿先のスタイルガイドを厳守することが必要です。

エナゴ学術英語アカデミーではこれまでにも、盗用・剽窃を防ぐ方法について取りあげてきました(「こんな記事もどうぞ」をご参照ください)。ぜひお役立てください。

 

こんな記事もどうぞ
論文の盗用・剽窃を避けるコツ-前編
論文の盗用・剽窃を避けるコツ-後編
研究論文での盗用を未然に防ぐには?


E11 Open-access

今、人気のオープンアクセスジャーナルは

出版界の オープンアクセス 化は、学術研究の知名度と影響力を高めると同時に、学術界でタイムリーに知識を広めることに役立っています。2015年に国際STM出版社協会が発表した報告書『The STM Rreport』によると、2014年には、英語で書かれている査読付き学術ジャーナルは28000誌以上、英語以外の言語で書かれている査読付き学術ジャーナルは6400誌以上ありました。そして、オープンアクセスジャーナルのディレクトリを提供するサイトDOAJ(Directory of Open Access Journals)上のオープンアクセスジャーナルの数も、増加の一途をたどっています。123におよぶ国の論文が掲載されており、英語で書かれているのが7245誌、英語以外の言語で書かれているのが2845誌。学術誌のオープンアクセス化が英語圏以外の国々にも急速に進んでいることは明らかです。

このようにオープンアクセスジャーナルの数が増えてくると、それぞれのジャーナルの性質や影響力を多面的に比較・評価することが重要になってきます。そのための指標として、最も一般的に使用されてきたのはImpact Factorですが、研究者はSJR(SCImago Journal Rank)も参考にして、自身の研究分野に最適なジャーナルを選択しています。ここでは、主な分野ごとによく引用されるオープンアクセスジャーナルを、SJRの指標に基づきリストアップしてみました(下図)。

E11 Open-access-infographic

上の図には、2016年のSJRに掲載された3780誌の中から引用スコアの高かった代表的なオープンアクセスジャーナルの名前と、それぞれの分野におけるオープンアクセス論文の割合「オープンアクセス・アウトプット(OA Output)」を示しています。このOA Outputは2016年のSJRデータを元に算出されたもので、該当分野の論文総数におけるオープンアクセス論文の割合を示しています。全体では13.75%、図中の各分野のOA Outputはそれぞれ、生物化学・分子生物学25.41%、物理・天文学10%、経済・金融7.47%、化学8.86%、社会科学11.1%、工学5.29%となっています。

膨大な数のジャーナルが刊行され、オープンアクセス化も進む中、分野が細分化されていることも相まって選択肢は拡大するばかり。論文の投稿先を選出するのは至難の業です。今回紹介したSJRのランキングや、最適なジャーナルの候補を探してくれるサービスなども存在しますので、利用してみてはいかがでしょうか。

※ 各ジャーナルへのリンクはこちら

生物化学・分子生物学
Genome Biology
Molecular Systems Biology
Cell Reports
Nucleic Acids Research
Nature Communications

物理・天文学
Living Reviews in Relativity
Materials Today
Physical Review X
Nature Communications
Living Reviews in Solar Physics

経済・金融
Theoretical Economics
Quantitative Economics
Judgment and Decision Making
ClinicoEconomics and Outcomes Research
Economics and Sociology

化学
Nature Communications
IUCrJ
Redox Biology
Structural Dynamics
Journal of Cheminformatics

社会科学
Morbidity and Mortality Weekly Report
Scientific Data
Living Reviews in European Governance
Biology of Sex Differences
College and Research Libraries

工学
Materials Today
Frontiers in Neuroinformatics
The Open Bioinformatics Journal
APL Materials
European Physical Journal C

 


自分の論文を広く読んでもらうための7つのコツ

膨大な量の研究論文やデータが公開される今日、苦労して執筆した論文をできるだけ多くの人に読んでもらおうと思えば、それなりの工夫が必要です。論文をプロモーションするための7つのコツを紹介します。

■ 識別番号をとって自分と論文を特定しよう

論文を読んでもらうためには、まず初めに自分の売り込みが必要です。研究者を(組織、専門分野、地域を越えて)1つのIDで識別する取り組みORCID(Open Researcher and Contributor ID)に登録し、自分のIDを取得することをお勧めします。研究者がORCIDの識別番号を一貫して利用することにより、名前や組織が変わっても研究者個人と業績を正しく結びつけることが可能になります。

また、研究論文にDOI(Digital Object Identifier)と呼ばれる識別子を付けることも推奨します。DOIは、ウェブ上の電子文献に付けられるコードです。商品のバーコードや、紙の書籍に対するISBNコードと同じと言えばわかりやすいでしょうか。この恒久的なコードであるDOIが付いていれば、たとえ電子ジャーナルのURLが変わったとしても、興味を持った人は、探したい論文にたどり着くことができるのです。

■ 論文を読んでもらうための7つのコツ

では、ここからは、より多くの人々に論文を読んでもらうためのコツを見ていきましょう。

1. 誰に読んでもらいたいかを考える 

研究論文をより多くの人々に見てもらうためには、読者を念頭においた対策を取らなければなりません。対象はどういった人で、何に興味を持っているのか、どこにいるのか、同じ部門の同業者なのかなど、読者を想定した戦略が必要です。

読者を想定できたら、次はどのように論文に目を止めてもらえるかです。同じ分野の研究者たちがオンラインで論文を見ている度合いや、どのようなウェブサイトを見ているか――など、読者のオンライン利用特性を知ることは、研究をプロモーションする場所を絞り込むのに役立ちます。ソーシャルメディアで言えば、一般的なオープンプラットフォームとして利用者数の多いTwitterが効果的なのか、もしくはもっと限定的なLinkedInのほうが有効なのか。一利用者として自分も使ってみることをお薦めします。

論文のソーシャルネットワーク上でのステータス「Altmetricスコア」を表示するサービス「Altmetric bookmarklet」(Altmetric社)をインストールすると、自分が閲覧している論文がTwitterやFacebook等のソーシャルメディアでどの程度言及されているかを見ることができます。これを参考に、同じメディアを使って自身の論文のプロモーションを行ってみてはいかがでしょうか。

2.ソーシャルメディアを活用する

ソーシャルメディアは、情報のオンライン上での拡散に役立ちます。代表的なのはTwitterとLinkedInです。

Twitterから見ていきましょう。自身の研究内容について投稿することはもちろんですが、それ以外にもできることはあります。フォロワーの関心を引けそうなツイートをリツイートしたり、他のユーザーのツイートや質問に答えたり、見る人を意識した取り組みが重要です。また、興味を持った研究をシェアしたり、著者をタグ付けすることも可能です。

LinkedInは、仕事における人脈の構築やビジネス情報の共有に便利なソーシャルメディアです。最新の研究情報の掲載や、短い記事の投稿による専門知識のシェアを通じて、関心のあるユーザーとつながり、情報交換することが可能です。

3.コミュニティに参加する

オンラインだけでなく、実際に人と会えるコミュニティに参加することも大切です。自身の研究に興味を示しそうな活動組織や団体を見つけて、ボランティアで講演を行ったり、会議開催中にセミナーを開催したりしてみるのはいかがでしょうか。コミュニティの参加者の理解レベルには差があると予想されるので、自身が話す内容が相手にきちんと伝わるよう、工夫しなければなりません。実際に会って話をすることで気づくこともあるはずです。

4.Eメールの署名欄に論文へのリンクを貼る

Eメールの署名は、名刺のようなものです。その中に、論文へのリンクを入れるのも一案です。LinkedInやKudosのプロフィールページへのリンクを書き込むのも有効でしょう。これにより、Eメールを受け取った人々が、研究成果にたどり着くよう誘導することができます。

5.論文を読みやすくする

論文の内容を簡潔に表した要約文を作成してみるのも手です。要約で興味を引ければ、全文読んでみたいと思う読者も出てくるでしょう。要約文は、自身のブログやソーシャルメディア、または自身が属する研究グループなどでの発表の際にも使えます。科学分野の記者の目に留まれば、インタビューを申し込まれるかもしれません。

6.ハッシュタグを付ける

ハッシュタグとは、ソーシャルメディアで投稿内のタグとして使われる「#(半角のシャープ)」がついたキーワードのことです。例えばTwitterで「#科学」「#微生物学」「#天文物理学」などと、論文の分類をハッシュタグと共に記載しておけば、ユーザーは同じハッシュタグが付けられた投稿を検索して閲覧することができます。つまり、科学や微生物学に関心のあるユーザーの目に留まりやすくなるのです。Hashtagifyというツールを利用すれば、人気や話題のハッシュタグを調べることができます。

7.出版社や所属機関の力も活用する

多くの出版社は、学術ジャーナルや論文が読まれるようにソーシャルメディアを活用しています。所属の学術機関も、ソーシャルメディアやEメールリストの活用、さらに報道機関や政府関連部門を巻き込んだ研究促進のためのPR戦略をとっているかもしれません。自身の研究論文をどうすればプロモーションできるか、広報やメディアの担当者に相談してみるのもよい方法です。

■ プロモーションは必須の時代

研究成果のプロモーションは、助成金や共同研究者、学生などを集めるのにも効果的です。出版される論文の数は年々、増加の一途をたどり、学術コミュニケーションの場は、学会などの実世界からインターネット上にも広がっています。このような状況で、せっかくの研究成果を埋もれさせないためには、研究者が論文執筆・投稿の後、自らの成果を伝える努力が不可欠になっているのです。「これでは作業は増えるばかり――」。そうは言わず、AltmetiricやKudosなどの便利なツールを使いつつ、研究論文を広く知ってもらえる策をとってみるのはいかがでしょうか。

 

参考記事
Enago academy:
Using Social Media to Effectively Promote Your Research
Should You Use Twitter to Promote Your Research?
How to Promote My Research
Altmetric blog:
10 clever tips for promoting your research online

こんな記事もどうぞ
オルトメトリクスが2017年の論文ランキング100を発表
Kudos協同創設者・チャーリー・ラップル氏へのインタビュー(第1部)

 


Twitterは研究者にも有益か-使用上の注意 (後編)

前編でツイートには3つのパターンがあることが調査から見えてきたことをお伝えしました。では、本当にツイート数の多さが論文閲覧数に影響するのでしょうか。3つのパターンと調査の結果を見てみます。

■ パターン1. 1つのアカウントから複数回発せられたツイート

ツイート数が最多となった論文は(アメリカで)264のツイートに登場し、高いAltmetricスコアを得ましたが、このツイートの73%(193)は、たった1つのアカウントから投稿されたものでした。しかも、このアカウントからの発信に書き込まれた該当論文へのリンクは65回、2番目に多くのツイートをしたアカウントからの発信に書き込まれたリンクは58回。この2つのアカウントはお互いにリツイートすることもあり、これらのアカウントからの発信を除くと、該当論文へのツイートは15と限られたものでした。ツイート数や書き込みリンクの数に違いはあっても、このように単独あるいは少数のアカウントから多数のツイートが発せられる傾向は他の論文にもあるようです。

■ パターン2. アカウント管理者によるツイート

一方、別のアカウントから同じ内容のツイートが多数発せられることがあることもわかりました。このパターンの例として、1982年に発表された論文が51回も次々に同じ内容でツイートされたことがあげられます(2016年)。Twitterがリリースされる前の古い論文がツイートされること自体が稀ですが、Twitterのアカウントを有する歯科医らが、アカウントの管理を同じ会社に委託していた結果、同じ内容のツイートが発せられたと考えられています。歯科医師らは患者とのコミュニケーションにTwitterを使用していましたが、委託を受けた管理者は、投稿にはオリジナルのテキストを使うと約束していたにもかかわらず、コピーしたテキストを繰り返し貼り付けて投稿していたのです。このようなパターンも散発的ではありますが、存在しています。

■ パターン3. 情報共有の広がりを示すツイート

もうひとつのパターンは、投稿を見た研究者が、実際に内容に興味を持ったことを示すツイートです。本来はこのパターンが多くなるべきなのですが、真摯に論文について書き込んだ投稿数がトップではないことは問題です。トップ10に入った1つの論文への59のツイートは、41の異なるアカウントからツイートされていました。これは、興味を持った研究者たちが、個別にツイートまたはリツイートしたことを示しています。

■ 調査結果から見えてくるのは――

トップ10本の論文へのツイートが、データ全体の8.4%を占めていること、それらのツイートには上述のパターンが見られることなどから、単独または少数による頻繁な投稿がツイッター上では大きな役割を果たしていることが見られました。また、データの中にはbotで作成されたツイート(設定された条件で自動発言をする機能を使ってツイートすること)も含まれることも踏まえ、この調査では機械的な発信か人による発信かの特徴に注意した分析も行っています。このような実態を踏まえると、ツイート数を論文の評価指標として組み込むには、不適切なフォロワーやbotによるツイートなどを除外するアルゴリズムの導入など、まだまだ課題は多そうです。この状況を理解した上で論文についてツイートするのであれば、専門知識などを駆使し、明らかに人(研究者)によるツイートとわかる内容を投稿することによって研究成果の拡散効果を上げる必要がありそうです。

■ Twitterは一長一短

学術研究についてツイートすることが有益か否かは、意見が分かれるところではないでしょうか。Twitterでなら新しい研究について意見を交換したり、以前の研究の価値について議論したりと、研究者仲間とオープンなコミュニケーションができると言う研究者もいます。一方で、発表した論文の影響力を強化するためにTwitterが有益であるかについて懐疑的な意見があるのも事実です。前述の調査結果を見ると、単純にツイート数が多いことが、該当記事への関心の高さを示すものではないことがわかります。また、ツイートの数を研究への関心の高さと見なすことも危険です。関心を引くためにわざと挑発的な内容や物議を醸すようなコメントを残すのはもってのほかですし、炎上したツイート数を評価に含めるようなことをすれば、いかなる研究分野であっても悪い影響を与えかねません。ツイート数の分析に注意が必要なことは明らかです。

Twitterの利用は一長一短です。コミュニケーションには便利なツールですが、研究論文を周知することや、影響度を向上させるために使おうとすれば、それなりの注意と方針が必要です。SNSの発展と利用拡大に伴い、オルトメトリクスのような新しい評価指標が登場したことで、研究者もSNSと無縁ではいられなくなってきています。しかし、TwitterなどのSNSを使いこなすには、時間と労力を要します。研究活動を広める目的で利用し始めたのに、ツイート数を増やすことが目的になってしまっては本末転倒です。SNSの利点をうまく活用するためのアドバイスは、さまざまな場所(インターネットや若手研究者からの口コミなど)で入手できるので、自分にあった活用法を探ってみてください。情報を役立てつつ、うまく活用することで、思わぬ成果が得られる可能性はあるのです。

※ Twitterは研究者にも有益か-使用上の注意 (前編)はこちら


こんな記事もどうぞ:
エナゴ学術アカデミー 『研究者に有益なオンラインツールと活用のメリット


Twitterは研究者にも有益か-使用上の注意 (前編)

Twitterといえば、トランプ米大統領の書き込みがたびたび話題をさらっています。このソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の最大の威力は、発信された情報が、まさに瞬間的に世界中に拡散されること。このメリットを活用すべく、Twitterの利用は学術界にも波及しており、発信する文字数が制限(280文字、ただし日本語・中国語・韓国語は拡大対象外)されているにも関わらず、研究活動に役立てる研究者も増えているようです。

■ 研究活動にTwitter

Twitterに限らずSNSをコミュニケーション・ツールとして使いこなす研究者は少なくありません。多くの研究者が、「科学者・研究者のためのFacebook」と呼ばれるResearchGateAcademia.eduのようなプラットフォームで、研究の共有・情報交換を行っています。無論、FacebookやTwitterの利用者も多いことでしょう。

発信できる文字数に明確な限りがあるTwitterが本当に研究活動の助けになるのか?半信半疑な方もいると思います。しかも、フェイクニュースが話題になるように、発信される情報の信頼性の確保や、無遠慮なリツイートによる炎上といった、社会的な問題をも内包しているTwitterは本当に大丈夫なのか?信頼性が重要視される学術界において、Twitterを使うことで、研究の面白さや重要性を損なってしまうリスクは十分に考えられます。

■ Twitterの投稿は論文の評価に影響するか

2017年8月、研究論文をツイートすることで論文閲覧数に影響が出るかを調査した結果が、オープンアクセス・ジャーナル「PLOS ONE」に発表されました。これはTwitterへの投稿が、学術論文の影響度評価の新たな指標として注目される「オルトメトリクス(SNSでの拡散の度合いも評価対象に含めて論文の影響力を計る新しい指標)」に影響を及ぼすかを調べたものです。つまり、この調査で対象とした歯学分野の研究論文へのリンクを書き込んだツイートを調査することで、積極的なTwitter利用が、論文の周知や他の研究者の興味を引くことに貢献したかを見ようとしたのです。

調査の対象となった論文は、2016年に発表されたWeb of Science(WoS)に登録された84誌とPubMedに登録された47誌の中から抽出。2011年から2016年までの5年間に執筆された4,358本の論文について、2,200以上の米国内の個人アカウントから発信された8,206のツイートの分析が行われました。

■ 分析内容
・WoSの引用数とツイート数の比較
・論文あたりのツイートされた数
・論文あたりのツイートしたアカウントの数
・投稿されたテキストにおける変異
・「@」で始まるツイート数

この分析からツイートされた数の多かった論文トップ10を選び出したところ、ツイートには3つのパターンがあることが見えてきました。

ツイートに見られるパターン
パターン1.1つのアカウントから複数回発せられたツイート
パターン2.アカウント管理者によるツイート
パターン3.情報共有の広がりを示すツイート

これらのパターンそれぞれの特徴については後編に続きます。

こんな記事もどうぞ:
エナゴ学術アカデミー 『いま話題の新しい論文評価指標「オルトメトリクス(Altmetrics)」
エナゴ学術アカデミー 『ソーシャル・メディアは学術活動に役立つか?

 


研究者に有益なオンラインツールと活用のメリット

突然ですが、この記事を読まれている方で「科学者・研究者のためのフェイスブック」と言われるResearch Gateを使用されている方は、少なくないのではないでしょうか。インターネットの急速な発達に伴い、こうした研究活動に役立つといわれるオンラインツールが数多く登場し、インターネット上で利用することができます。用途ごとのツールとメリットを見ていきましょう。

■ 使いこなせば役に立つ

オンラインツールの最大のメリットといえば、やはり手軽さと拡散性でしょう。研究者は、他の研究者と気軽にコミュニケーションできるようになっただけでなく、論文の投稿や掲載情報の共有までできるようになりました。例えば前述のResearch Gate。研究者は研究内容やプレゼンテーションをここで共有することで、研究成果を多くの人に目にしてもらうことができます。オンラインツールを活用すれば、自身の研究成果に注目を集め、広く引用してもらい、結果として研究が高く評価されることにもつながるのです。

米国環境保護庁(EPA)傘下のNCCT(National Center for Computational Toxicology)に所属するアントニー・ウィリアムズらがF1000Research(生命科学分野のオープンアクセス・ジャーナル)に発表した記事によれば、多くの研究者がオンラインツールの利用価値を認識してはいるものの、活用できているのは、ほんの一握りであるとのことです。同時に、オンラインツールを使いこなすには時間と労力がかかるけれども、研究者がこれによって情報を共有し、人脈を作り、より多くの人に自分の研究内容を知ってもらうことは、研究者の業績や学術研究の発展に大いに役立つとも述べています。オンラインツールを活用する研究者の数は、今後も増え続けることが予想されます。

■ 論文の影響度の新たな測り方

研究者がオンラインツールを活用することで、投稿論文の影響度の測り方に、新たな指標が加わりました。従来は、研究論文の被引用回数から影響力を評価する「インパクト・ファクター(IF)」が主流でしたが、Altmetric(オルトメトリクス)など、論文のオンライン上での影響力を測る新しい指標が近年、登場してきたのです。

オルトメトリクスは被引用回数を反映するだけでなく、論文の閲覧数、ダウンロード数、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアや報道機関でのコメント数など、論文が持つ影響力をさまざまな面から反映させる新しい評価手法です。特にAltmetric.comが提供するスコアが有名で、さまざまな学術ジャーナルで採用されています。

このような総合的な指標の最大の利点は、所属機関や助成団体などが研究者の個人の業績を評価する際、論文を掲載したジャーナルの影響度とは別の判断材料として利用できるという点です。評価結果は、研究者のキャリアに直接影響しますし、新しい共同研究の機会や研究助成金の確保、ひいては新しい学術的発見にまでつながる重要なものなのです。

■ 研究内容の影響を最大化するオンラインツール

ウィリアムズらは、オンラインツールの利用目的を4つに分類しています。これはメリットにもそのまま置き換えられます。複数のツールを紹介していますので、用途に沿って、最適なものを使われてみてはいかがでしょうか。

・ネットワーク構築
学術界で最も活用されているネットワーキングツールにLinkedInがあげられます。プライベートの情報は共有せず、あくまで仕事に関連する情報のみを共有するこのプラットフォームは、研究内容や最近の研究活動、興味のあるトピックなどを投稿するのに適しています。最新の発表へのリンクを掲載したり、PowerPointやPDFなどのファイルをアップロードしたりすることもできます。画像も付けて投稿すると、閲覧者からの反応がよくなります(「いいね!」をもらいやすくなります)。同様に、Research GateやAcademiaも優れたネットワーキングツールで、技術的な内容を質問・投稿し、閲覧者から回答を得るのに適切なプラットフォームといえます。

ただし、これらのプラットフォームに出版済みの論文や資料をアップするには、著作元の許可が必要なので注意が必要です。

・研究関連情報の共有
情報共有ができるプラットフォームはたくさんありますが、やはり最も利用者数が多いものといえば、FacebookInstagramでしょう。しかし、これらはプライベートで利用されることが多いので、ブログやTwitterGoogle Plusのほうが研究関連情報の共有には適しているといえます。プレゼンテーション資料を共有できるプラットフォームのSlideShareは、研究発表のスライドを公開するのに優れています。動画を共有したい場合にはYouTubeVimeoWeiboがおすすめです。これらの他にもデータを共有するためのMendeley DataFigshare、化学分子データベースのPubChem、主に物理や数学分野の論文投稿サイトのarXivなどさまざまなオンラインプラットフォームが多数存在しています。

・影響度のトラッキング
影響度をトラック(計測)する新たな指標としては、先述のオルトメトリクスがあります。ブログへの引用数やリツイート数などを収集し、独自のアルゴリズムによって、論文に対するネット上での反響を示すものです。よく使われているものには、Altmetricスコアの他、ImpactStoryPlumXなどがあります。ORCID(Open Researcher and Contributor:ID<科学者や論文著者に識別するためのIDを付ける取り組み>)やGoogle Scholar(Googleの提供する学術用途の検索サービス)が、論文発表の有効性や引用数を見るために利用されることもあります。

・影響度の向上
影響度、つまり研究論文のインパクトを上げるために有益な著者支援ツールとして、Kudosというプラットフォームが注目されています。これは、投稿した研究論文をより多くの人に利用(引用)されやすくするのを支援するツールです。Kudosのオンラインプラットフォーム上に自身の論文を掲載することで幅広い読者にもわかりやすい言葉で論文の要約や説明を編集することが可能になるほか、論文の閲覧数やダウンロード数、引用の回数やオルトメトリクスの指標を確認できるようになります。公開した論文の影響度を向上させるのに何が有効かを分析することができる優れものです。

■ デジタルツール普及の流れは止まらない

以上のように、研究内容の発表方法は、ここ数年で著しく変化してきています。課題はあるものの、研究活動におけるオンラインツールを使ったコミュニケーションや研究データの共有は拡大し続けることでしょう。もはや抗えない流れになってきている以上、これに乗り遅れないようツールの活用についてアンテナを張り巡らせておいてはいかがでしょうか。

こんな記事もどうぞ
ソーシャル・メディアは学術活動に役立つか?
いま話題の新しい論文評価指標「オルトメトリクス(Altmetrics)
Kudos協同創設者・チャーリー・ラップル氏へのインタビュー(第1部)


論文の盗用・剽窃を避けるコツ-後編

本記事の前編で、盗用・剽窃の定義や、他人の文献を引用する際のコツをご紹介しました。しかし、研究者が注意しなければならない盗用・剽窃は、単なる文字のコピーに限りません。後編では、盗用・剽窃と捉えられかねない、直接引用と間接引用、パッチライティングについて見てみます。

■ これも盗用・剽窃?-直接引用と間接引用

他人の文章を、それが他人の文章であることを示すことなく書き写すことさえしなければ問題にならないと思いがちですが、盗用・剽窃とは「テキスト」のコピーだけではありません。他人の発想や考え方、データをコピーすることも含まれます。そもそも文章とは発想や考えをまとめたものであるため、その「考え」自体を真似たり、それを記した文章を適切に引用することなく自分の文章に書き写したりすることは、許されません。

では文章や「考え」を引用するにあたって取るべき適切な対応とは、どのようなものでしょうか。引用の仕方である「直接引用」と「間接引用」のそれぞれで見てみましょう。

直接引用

直接引用とは、他人の文章を自分の論文中に、該当文章が引用であることが明確になるように引用符を付けて「原文どおりに」再現することです。引用により定義付けをしたり、明確化させたり、あるいは主張を裏付けたりする場合に有効です。

以下の例文のカッコの中の文章が、他人の文章から引用した部分です。

象は、地上で一番大きな哺乳類で、体重は8トンぐらいあります。象は、「巨大な体と、大きな耳と、長い鼻を持っていて、その鼻で、手のように物を掴んだり、ホルンのように警笛を鳴らしたり、腕のように上げて挨拶をしたり、ホースにして水を飲んだり、シャワーを浴びたりします。」(出典:https://www.worldwildlife.org/species/elephant

この引用部分は、象の外見を言葉で説明したものです。視覚的イメージを維持したまま書き換えるのは困難なので、カッコを付けて示すとともに、出典を書き添えることによって、外部からの引用であることを明確にしています。英文の場合はカッコの代わりに引用符(“”)を使って外部からの引用であることを示します。

間接引用

間接引用(言葉の書き換え)とは、他人が書いた文章を自分の言葉に書き換えて記述することです。言葉を置き換えるのだから盗用・剽窃にはあたらないと考えがちですが、直接引用と同様に、書き換えた場合も出典元を明示しなければなりません。また、元の文章の意味するところ、基本的な考え方を変えないように注意する必要があります。

例えば、以下のような表現です。

象は、地上で一番大きな哺乳類で、体重は8トンぐらいあります。その大きくて、ひらひらした耳は、体を冷やしたり、虫をよけたりするのに役立ちます。頭から地面まで伸びた長い鼻は、道具として使われるほか、水を飲んだり、シャワーを浴びたりするのに使われます。(参照:https://www.worldwildlife.org/species/elephant

ここでは、情報が別の言葉に書き換えられていますが、2つの例文を比較すると直接引用の文のほうが、象の描写がより明確に表現されていることがわかります。

これらの引用方法は一長一短です。直接引用は、考えを説明したり、明確にしたりするのに有効ですが、頻出すると、文章の独自性が薄れてしまいます。一方の間接引用は便利ですが、うまく書き換えなければ明確に内容を伝えることができません。間接引用をする際には、引用文の背景にあるメッセージをしっかりつかみ、引用文を参照せずに書き換え文を作ってみて、元文と書き換えた文の意味が同じ内容となっているか読み比べてみる――という手順を経ることで、よりわかりやすい文章となり、盗用・剽窃を防ぐことができるようになるでしょう。

ただし、他者の文章を自分の言葉で言い換える間接引用であっても、きちんと自分の言葉で言い換えられていなければ盗用・剽窃となります。よって、直接引用した場合にはカッコ(「」)または引用符(“”)でくくる、間接引用の場合でも注釈を付けるなどして出典を示すように注意する必要があります。

■ パッチライティング(つなぎ合わせ)もNG

では文章を組み立て直して「間接引用」になっていれば、他者の文章をつなぎ合わせてもよいのでしょうか?例えば、文芸作家が複数の作家の作品をつぎはぎにして「新作」として発表したら、それは「盗作」であり、剽窃行為と見なされます。語句を並び替えたり、別の言葉で置き換えたりしたとしても引用元の文と似すぎているものを「パッチライティング(はめ込み)」と言います。これはれっきとした盗用・剽窃にあたります。内容を十分理解せずに言い換えた場合、どうしても引用元の文章との類似性が高くなってしまいます。他者の文章を類似語に置き換えただけではダメなのです。

特に近年は、インターネットが普及し、情報の入手が簡単になりました。複数のサイトからテキストを「コピペ」し、不要な情報を取り除いて自分の言葉を付け加えるだけでは、パッチライティングとなってしまいます。例文で見てみましょう。

その皮膚の厚い動物は、地上で一番大きな哺乳類です。体重は200キロから8トンぐらいあります。とても大きな体と、大きな耳と、長い鼻を持っており、その鼻で物を拾ったり、警笛を鳴らしたり、挨拶をしたり、水を飲んだり、水浴びをしたりします。

前述の直接引用や間接引用とは表現を変えていますが、内容はほぼ元文のままですので、この文章にも引用を付けるべきです。間接引用をする時の注意と重複しますが、ただ言葉を類似語に置き換えるだけでは盗用・剽窃ととられることを免れません。言葉にとらわれず、元の文章の背景にある「考え」を書き表すことでのみ、盗用・剽窃の落とし穴に陥るのを避けることができます。

■ 盗用・剽窃は身を滅ぼす

2回にわたり、盗用・剽窃には、意図的なもの/意図的ではないもの、直接引用/間接引用、パッチライティングなどさまざまな落とし穴があることを紹介しました。盗用・剽窃は、重大な学術的倫理違反です。掲載論文の撤回から研究助成金の削減まで、さまざまな措置がとられ、研究者としてのキャリアに影響を及ぼす可能性もあります。研究を続ける上で必要な助成金を獲得するために論文を発表しても、不正が指摘されればすべて台無しになってしまうのです。

論文の執筆では研究知見を裏付けるために、たくさんの参考文献を用いる必要があるため、学術雑誌は、推奨するスタイルガイドに準拠した引用や参考文献の書き方を示したガイドラインを提供しています。こうしたものを参照して正しい引用の仕方を身に付けるとともに、盗用・剽窃をチェックするツールを使うなどして、間違いを犯すことのないよう努める必要があるのです。

 


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エナゴ学術英語アカデミー:研究論文での盗用を未然に防ぐには?


論文の盗用・剽窃を避けるコツ-前編

研究論文を書く時、文献を集め、自説を裏付けるエビデンスを揃えるのに苦心される方が多いのではないでしょうか。既存の考えや価値観を参考にしつつ、的確な所見を加えることは大切ですが、その時、盗用や剽窃(ひょうせつ)の間違いを犯さないように注意しなければなりません。

盗用・剽窃とは、他人の文章や考え方を許可なく使用あるいは部分的に使用し、自分のものとして発表することです。意図的かどうかを問わず、適切な手続きを取らずに引用されたことをいい、自分自身の過去の論文等の利用も含みます。盗用・剽窃は、学術的かつ倫理的に重大なルール違反です。発覚すれば、論文の撤回や執筆者の信用失墜を招きかねません。

近年の学術出版界では、この盗用・剽窃が大きな問題となっており、盗用・剽窃が原因で論文が撤回されることが多くなっています。論文の投稿・発表に際して思わぬ問題を起こさないために、研究者は盗用・剽窃について、よく理解しておかなければなりません。

■ 故意でなくとも…… 

国によっては、言葉の出所や考えのもとになった事実について、出典を明示することにこだわらないところもあります。しかし、学術界の世界的な倫理規範においては、適切な参考文献の表示は大前提です。すべての研究者は、この規範を順守しなければなりません。にも関わらず、盗用・剽窃が多数発生しているのはなぜなのでしょう。理由は「意図せぬ」盗用・剽窃です。特に、英語を母国語としない研究者が注意しなければいけないことがあります。自身の研究成果を英語で書き記す際、うまく表現できないと、ついつい参照論文の通りに書いてしまいがちではないでしょうか。剽窃の意図がなくとも、他の研究者が書いた文章をそのままコピーすれば剽窃にあたります。論文をチェックする編集者は、文法的に間違いの多い論文の中に、部分的に完璧な文章があると、それは剽窃である可能性が高いと見抜きます。

言語のハンディとは別の落とし穴もあります。IT技術の進歩により、情報入手が手軽になったことがあげられます。デジタル時代の今日、研究者はインターネット上で、他者の資料やデータを簡単に閲覧できるようになりました。オープンアクセスのプラットフォームをのぞけば、多種多様な研究論文にアクセスすることも可能です。これにより、デジタル化された文書から文章やデータをコピーすることが容易になり、検索した結果を「つい」借用することにつながりがちなのです。これも盗用・剽窃に当たります。

執筆した文章が「偶然」同じ表現となるような、偶発的な盗用・剽窃であったとしても、それが意図的でないことを証明することは困難です。研究者は疑いがかからないよう、初めから自衛手段を講じなければなりません。ここでは前後編にまたいで、いくつかの有効な手段と事例を紹介します。

■ 盗用・剽窃対策5つのポイント 

1 間接引用する

・参照文献を逐語的に引用せず、自分の言葉に置き換える。
・自分の言葉に言い換えるために、参照文献の内容を十分理解することが大切。
・参照文献の文章を部分的に切り抜き、それをつなぎ合わせるのも剽窃になるので、注意すること。

2 直接引用には引用符を

他者の論文から文章をそのまま使う時は、引用符を付けて引用すること。引用符の中の文章は、一言一句、元の文章そのままにする必要がある。

3 引用のルールを知る

・他者の論文から抽出したすべての言葉や発想は「引用」扱いとし、出典を明示する。
・過去に自分が書いた論文の一部を転載する際であっても「引用」扱いとすること。引用することなしに自分の過去の論文や資料を利用することを、自己剽窃と言う。
・自分自身が実験を行って得られた科学的エビデンスは、引用不要。
・事実や常識は引用不要。確定できない場合には参照を付けること。

4 引用元の記録を付けておく

・エンドノート(EndNote)やリファレンス・マネージャー(Reference Manager)などの引用ソフトを使用して、参照した文献の記録を残すこと。
・裏付けには複数の参照文献を付けること。例えば、書評を見るだけではなく、個々の論文を参照し、引用すること。

5 盗用・剽窃チェックツールを利用

iThenticateeTBLASTなどの盗用・剽窃チェックツール、または英文校正会社が提供する盗用・剽窃チェックサービスを利用する。広汎な文献を参照して、意図せぬ盗用・剽窃がないかを数分で知らせてくれるツール・サービスを論文提出前に利用する。

 

注意事項:ほとんどの剽窃は、論文の書評から文章を引き抜いています。自ら論文を記す時、他者の論文を参照する際には、書評だけでなく論文の全体を注意深く読み、文脈を理解し、自分の言葉で表現しなければなりません。そして、参照したら引用を忘れずに示すことが大切です。

上に記した対策は、あくまで文章の盗用・剽窃対策についてのものです。文章ではなく他者の研究結果を盗用することは、もってのほかです。

次回は、パッチライティングや、直接引用・間接引用について、さらに深く考えてみます。

 


参考:
THE WRITER’S HANDBOOK:Successful vs. unsuccessful paraphrases (英語リンク


#157_CrowdPeerReview

オンライン査読システムが査読を変える?

ドイツのシュツットガルトに本社を置く医学・薬学・化学関連学術出版社のThieme社。彼らは化学誌Synlettの中で、査読のプロセスを早め、公平性を向上させるための「新しい査読システム」の試験運用で、好結果が得られたことを公表しました。Synlettの編集長Benjamin List氏(マックス・プランク石炭研究所)と彼の研究生Denis Höflerは、この新しい方法を「インテリジェント・クラウド」査読システムと名付けています。研究論文の査読をオンライン上で行えるようにするという試みが始まっているのです。

■ 査読を速く、より信頼できるものに

2016年にSynlettが行った新システムの試験運用では、編集委員会からの推薦と自主的に参加する研究者から100人のレビュアーが選ばれ、全員が数日間で、提出された論文にオンライン上でコメントしたり、他のレビュアーのコメントに返答したりして議論を行いました。すべてのコメントは匿名で記されるため、レビュアーによるバイアスのない率直な意見や必要な批評が提出されることにより、編集者がより速く、より公正な判断を下すことができるようになったとのことです。

List氏は従来の査読システムについて、一つの論文あたりの査読者の数が2・3人に限定され、かつ時間がかかるという問題点を指摘しています。これらへの不満が、今回の新しいシステムのアイデアを生み出すことになりました。多数の査読者がオンライン上で短期間に論文にアクセスし、匿名でコメントすることで、査読をスピーディーかつ、より信頼性の高いものにすることが期待されています。

■ 今の査読システムは限界?

そもそも従来の査読には複数のタイプがあり、学術誌によって採用しているシステムが異なります。まず大きく分けて、主として学術誌の編集者が投稿論文の査読を行うエディトリアルレビューと、選ばれたレビュアーが査読を行うピアレビューがあります。さらにピアレビューには、論文著者に査読者が誰かを知らされないブラインドレビュー(盲査読)、査読者にも著者が誰だか知らされない、つまり著者と査読者の双方がお互い誰だかわからないダブルブラインドレビュー(二重盲査読)、著者と査読者の双方がお互いの名前をわかっているオープンレビューの3つがあります。いずれの場合も、増加し続ける投稿論文数への対応や、査読におけるバイアス問題、査読者の不足、詐称査読、研究不正への対応などの問題を抱え、査読システム自体が限界を迎えているとの意見すら出てきています。

学術論文の出版後に研究仲間がオンライン上で論文の内容を査読する「出版後査読」という方法もありますが、この場合は論文が公開されているので、どんな読者でも匿名でコメントを発せるため、批判的あるいは不適切なコメントを除外することはできません。その点、インテリジェント・クラウド査読システムは公開前に行われるレビューであり、かつ編集者がレビュアーを把握しているため、無意味なコメントをあらかじめ除外できるというメリットがあります。

■ どうなる査読の未来

今回の試験運用では10本の論文を取り上げ、そのうち9本が実際に出版されました。Synlettの編集チームは試験運用の結果を前向きに捉えており、レビュアーも著者も、その結果に満足しているそうです。今後、Synlettは取り扱うすべての論文に新しいクラウド査読システムを取り入れるだけでなく、助成金申請のように査読が必要な他のプロセスにも取り入れていくことを考えています。

List氏は、クラウド査読システムが機能することは明白になったので、今後も実験を重ねて高機能な オンライン査読システム を維持・管理すると共に、目新しさが薄れた後もどうやって査読者を確保し続けるかといった課題にも対処していく、と述べています。

この査読システムが果たして、実際に査読者の負担を軽減し、査読の質を保証できるのか。学術出版会に一石を投じることとなるでしょう。

 


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