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AI研究者がSpringer Natureの新雑誌を ボイコット

人工知能(AI)や機械学習(マシンラーニング)の研究が盛んです。機械が人間と同じように問題解決や学習などをするプログラムは近年、さまざまな分野において活用されており、今後この分野の研究はますます活発になることが予想されています。人工知能や機械学習の研究者は原則的に、オープンアクセスジャーナル上でその研究成果を発表してきました。そのような中、Springer Nature(シュプリンガー・ネイチャー)が2017年11月にNature Machine Intelligenceという新雑誌(ジャーナル)を発行すると発表したことが、思わぬ波紋を呼んでいます。

グーグル、インテル、アマゾン、マイクロソフト、IBMなどの大手IT企業をはじめ、人工知能(AI)研究者、コンピュータ科学を専攻する学生までも巻き込んだ ボイコット 運動が起きており、学術界の枠を超えて、世界中の紙面をにぎわせているのです。

■ 外れたSpringer Natureの思惑

新雑誌Nature Machine Intelligenceは、人工知能やロボット工学、機械学習などの分野における最新の研究成果を掲載することを目指す学術雑誌として考案され、第1巻の刊行が2019年1月に予定されています。版元のSpringer Natureは、人工知能が社会や産業などに与える影響についても議論を進めることを意図して、論文の投稿を呼びかけました。

しかし新雑誌刊行に対するIT業界、研究界、とりわけ機械学習分野の研究者からの反応は、同社の予想を超えたものでした。研究者たちは、Nature Machine Intelligenceへの投稿はもちろん、論文審査や編集への参加も拒んでいるのです。その理由は、同誌が、論文掲載費や論文購読料を請求する従来型のジャーナルであることです。購読料を支払うことのできない学生や研究者が最新の知見にアクセスできなくなることにより、分野全体の発展を妨げることになりかねない――。学術雑誌のオープンアクセス化の流れに逆行するとの意見に加え、この新しい分野ならではの懸念もあるようです。

人工知能や機械学習の分野では、論文やデータを誰でも閲覧することができ、その結果、新たな研究成果がもたらされるという風潮があります。当然、最新の研究内容にも自由にアクセスできるというのが、研究者たちの共通認識です。データやソースコードが公開されることで新たな技術の開発を後押しし、アイデアはもちろんアルゴリズムすら共有される世界。しかも、急速に発展しているIT技術を瞬時に取り入れ、さらにその成果が多方面に影響をおよぼす分野なだけに、開放的な環境を維持する必要があると研究者たちは訴えているのです。

このような考えから、新雑誌をボイコットしようという動きが、研究者らの間で広まりました。2017年11月の発刊発表直後からボイコットの輪が広がり、2018年6月までに、3000名を超える研究者が署名に参加しています。その内容は、「この新雑誌に対し、論文の投稿も、査読・編集への関与も一切しない」というもの。研究者らの強い決意がにじみ出ています。

■ ボイコットの結果、何が起こる?

これに対しSpringer Nature側は、購読料を受け取ることは正当な行為である、と考えています。分野の最先端を行く内容を結集しようと思えば、編集の過程は長くなり、その分、お金がかかるためです。同社は、今回のボイコットに対する見解も表明しています。それは、Nature Machine Intelligenceとオープンアクセスジャーナルは共存できる、というものです。課金を必要とする従来の出版モデルと、誰でもアクセスすることができるオープンアクセスそれぞれに需要があるであろうと予測しているのです。

6月22日時点の同社掲載記事では、Nature Machine Intelligenceの創刊に向けて投稿論文を受け付けていること、有料の学術雑誌として読者にコストの負担を求めていく姿勢を撤回しないことを記しています。 

この騒動で、無料で研究論文にアクセスできるオープンアクセスサイトへの注目度がさらに高まるという余波も生じています。こうした状況下、専門家による今後の予想は――「Nature Machine Intelligenceは無料のオープンアクセスジャーナルになる」、「新雑誌は研究者の協力が得られず、経済的に行き詰まり撤退することになる」、「出版社と研究者が交渉の末、合意に達する。出版の一年後には、掲載論文がオープンアクセスになるのでは」というものです。

一昔前なら、ほとんどの研究者はインパクトファクターの高い学術雑誌で論文を出版することを望みました。インパクトファクターは権威の象徴であり、シュプリンガー・ネイチャー社が発行する雑誌の多くは、研究者の憧れとして君臨してきました。今回のボイコットは、掲載料や購読料といった伝統的なビジネスモデルの崩壊がすぐ目前にまで迫っていることを表しているのかもしれません。

Nature Machine Intelligence刊行まで、およそ半年。事態はどう変わるのか、今から目が離せません。

要注意!一次情報と二次情報の取り扱い

文章を書く時、他の文章や情報を参考にすることはよくありますが、情報源を正しく認識しておかないと、思わぬ落とし穴に落ちかねません。情報の出所を明記すること、他者から得た情報ならそれが信頼できるものかを確認し、記載しておくことは、情報を発信する者の責務です。今回は、論文を書く際の情報の扱いで注意すべきことを見てみます。

■ 情報には2種類ある

論文に記載する内容が、どこから得た情報なのか。これを明確にすることで、読み手は、その内容が著者自身の考えや実験によって得られた結果に基づくものか、あるいは他者の考察や研究から得られたものかを知ることができます。引用しておきながら情報源を示さないと、盗用・剽窃となってしまう可能性もあります。内容が何であれ、多くの研究機関や大学は、情報源を明確に示すことを義務付けています。

情報はその情報源によって、一次情報と二次情報に分けられます。
一次情報とは、オリジナルな情報、つまり著者本人が直接的に体験から得た情報、考察、本人が行った調査や実験の結果などです。一次情報の作成・収集には手間(+資金)と時間を要することから、情報としての価値は高くなります。
対する二次情報とは、他者を通して得られた情報、一次情報を解釈した上で記されたもの、あるいはどこかに掲載・保管されていた情報などです。第三者を介して得られた情報や、書籍や新聞、TVなどの報道から得られる情報が該当します。インターネットの普及により、二次情報は格段に入手しやすいものとなりました。しかし、簡単に得られるようになったがために、情報が過剰供給され、信頼できる情報の選別が難しくなってきているのも事実です。

■ 論文における一次情報と二次情報

論文における一次情報とは、特定の理論や事象、研究を経て得られた結果についての研究者本人の考えや新事実などです。実験データ、調査結果、アンケート集計結果、統計など、研究によって新たに判明したものです。

二次情報は、研究の背景や過去に試された手法など、一般的には一次情報を詳しく解説あるいは補足する情報です。二次情報(他者の論文や文献)を論文中に引用する場合には、自分の研究の内容に適合した情報を選択すること、その情報の信用性を確認すること、その情報の出所を正確に記載すること、に気をつけなければなりません。

特に、情報源を的確に示さないと盗用・剽窃の疑いをかけられることもあり得るので、注意が必要です。情報源の示し方(引用方法)については、さまざまなスタイルガイドやガイドラインが出ているので、参考にしてみてください。

■ 二次情報を引用するときの記載方法―スタイルガイド

論文中に二次情報を引用した時は、それが引用であることを所定のスタイルに準じて記載しますが、英語論文の作成では、MLA、APA、シカゴマニュアル(CMOS)系のスタイルのいずれかを用いるのが一般的です。MLAスタイルは、MLA(Modern Language Association、米国現代語学文学教会)が編纂しているガイドラインで、人文系で多く利用されています。APAスタイルは、APA(The American Psychological Association、米国心理学会)が編纂しているもので、心理学、社会科学の分野をはじめ幅広い分野で利用されています。CMOS(Chicago Manual of Style)は、シカゴ大学出版局から刊行されているスタイルガイドで、CMOSの執筆・出版ガイドラインがシカゴスタイルと呼ばれており、執筆者だけでなく学術雑誌(ジャーナル)や専門書の編集者や出版関係者にも広く利用されています。

それぞれのスタイルガイドは、近年のIT技術の進歩で変化する論文作成・発表方法に応じて、随時改訂を重ねています。APAスタイルのように年々更新されている(現時点では第6版)ものもあるので、論文を執筆する際には最新版を参照するようにしましょう。また、論文を投稿する場合には、投稿先の学術雑誌や学会によってスタイルを指定していることが多いので、確認するようにしてください。

世の中に流通している情報量(流通情報量)は年々増加しており、世の中の人が得ている情報量(消費情報量)をはるかに凌駕します。その差は今後、ますます広がることが予測されます。
このような状況の中、一人でも多くの人に自分の論文を読んでもらい、かつ正しく理解してもらうためには、簡潔で明瞭な文章が必要です。一次情報と共に二次情報をうまく取り込みつつ、二次情報であることを明確に示すことで、よりよい論文を作成されてみてはいかがでしょうか。

 

参考記事
University of Manitoba Academic Learning Centre: Citing Secondary or Indirect Sources: APA, MLA & Chicago Styles

 

 

visme

130万人が利用 インフォグラフィック作成ツールVisme

「ポスター発表でも口頭発表でも、わかりやすく説明することが重要」――。研究発表をテーマにした記事でよく見られる表現です。「わかりやすさ」の定義はさまざまですが、パッと目に飛び込む印象的なインフォグラフィック(視覚情報)を用いることも一案です。発表内容に興味を持ってもらえれば、資料の中身をじっくり読む、あるいは話を熱心に聞いてくれるでしょうし、研究内容をよく理解してくれることにもつながるからです。

そこで紹介するのが「Visme」です。これは、プレゼンテーション資料やレポート、インフォグラフィックなどを簡単に作成できる便利なオンライングラフィック作成ツールです。テンプレートが豊富に揃っているので、デザインの知識を持たない人でも使い勝手がよく、専門的な知識は必要ありません。また、ソフトのインストールも必要なく、インターネット環境でブラウザからアクセスし、アカウントを作成すれば、誰でも利用することができます(無料版のBasicと有料版のStandard、Completeが選択できる)。Vismeのウェブサイトによれば、2018年5月時点でのユーザー数は130万人を突破しており、大手企業にも利用されている、今注目のソフトウェアです。

■ Vismeの基本機能

Vismeの基本的な機能を挙げてみます。

・デザインテンプレート

用途に応じたテンプレートを選択することができ、それをベースにテキストや図やアイコン、写真などを追加していきます。色やフォントは簡単に変更することができます。

・図やアイコン、写真

オンライン上の数千点の図やアイコン、写真の中からカテゴリーやキーワードで絞り込み、選択することができます。

・グラフや表

データをわかりやすく示すためのたくさんのグラフや表が用意されています。値を入力するかもしくはインポートするだけで、それらを利用することができます。テキストを追加したり、好みの色に変更したりできます。

・インタラクティブマップ

世界地図を挿入したり、地図に国ごとの情報を挿入したり、特定の国をハイライトしたりすることもできます。埋め込みコードを使えば、Googleマップなども挿入可能です。

・インタラクティブメディア

コンセプトを効果的に伝えるため、YouTubeなどの動画や音(音声・音楽)を挿入できます。

・アニメーション

テキストや写真を、設定した時間に合わせて順番に表示することができます。

・ノート

発表の際に伝えたい内容をメモしておくことができます。もちろん聞き手には見せず、自分の手元のパソコンでだけ表示させることができます。

・発表時間の記録

発表中、どれくらいの時間が経過しているかを計測してくれます。こちらも話者にだけ見えるようになっています。

・共有

作成したファイルをウェブ上に掲載することができます。その際、共有範囲を指定する、自己紹介部分は非表示にする、コメントを許可する、といった設定も可能です。

・ダウンロード

作成したファイルをダウンロードして、他の資料に挿入したり、ソーシャルメディアに投稿したりすることができます。

・ラーニングセンター(サポート情報)

Visual Learning Centerでは、技術的なサポートやプレゼンを行う際のコツなど、幅広い記事を参照することができます。

■ 有料版にはこんな機能も

Vismeは無料版を利用しても十分使えるツールです。ただし、無料版の場合、保存できるファイルは3ファイルまで、ストレージの容量は100MBまで、テンプレートはベーシックなもののみ、という制限があります。また、作成したファイルをダウンロードする際は、JPG形式のみという制約もあります。

これでは物足りない、という場合、所定の料金(Standardで月額12ドル、Completeで月額20ドル)を支払えば、さまざまな追加機能を利用することができます。(利用可能な機能の詳細についてはVismeサイトを参照)

・Vismeのロゴを非表示に(無料版の場合は作成したファイルに表示される)・ダウンロードするファイルの形式に選択肢が増える(StandardではJPG形式に加えてPNG形式とPDF形式が、CompleteならHTML5形式でのダウンロードが可能。HTML形式であれば、アニメーションや音声といったインタラクティブな機能も保持したままダウンロードが可能)

・音声の挿入、音声の録音が可能

・有料版限定のテンプレート、図やイラスト、写真が利用可能

・保存できるファイル数+ストレージ容量が増加

・共同研究者とのファイルの共有(閲覧)

・限定したユーザー間での公開

・プライバシー設定

1つだけ残念な点があるとすれば、研究者の皆様がよく利用される標準誤差範囲をグラフに追加できない点です。とはいえ、伝えたい情報を視覚化し、わかりやすくインパクトのあるインフォグラフィックを活用した発表にできれば、その内容を記憶してもらえる可能性が高まります。Vismeを活用して、視覚に訴える学術イラストレイテッドや、グラフィカルなアブストラクト、発表用のスライドを作成してみてはいかがでしょうか。


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日本の 論文発表数 減少の実情と研究者にできること

研究者にとって、インパクトの高い学術雑誌(ジャーナル)に研究論文を発表することは、研究者としての実績およびキャリア形成において重要です。ところが、近年、日本の論文発表数が減少していることが指摘されています。

■ 日本の論文発表数は世界6位に低下

2018年1月、各国の科学技術力の分析にあたる全米科学財団(National Science Foundation, NSF)が発表した報告書Science and Engineering Indicators 2018で、中国の科学技術の 論文発表数 が初めてアメリカを抜いて世界首位となったことが、学術界に衝撃を与えました。この報告書はNSFが2年ごとに発表しているもので、2018年の発表は2016年の論文発表実績をまとめたもの。論文数ランキング10位までは、1.中国 、2.アメリカ、3.インド、4.ドイツ、5.イギリス、6.日本、7.フランス、8.イタリア、9.韓国、10.ロシアの順となっていました。

中国を筆頭に新興国の躍進が著しい中、日本は論文総数が13%減。減少傾向にある国は日本だけという事態です。さらに言えば、前回の報告書Science and Engineering Indicators 2016での日本の順位は3位だったので、今回の報告書(2018)ではドイツ、イギリス、インドに抜かれて6位に転落したということになり、科学技術立国としての日本の研究力の低下が、大いに憂慮される事態となっています。

■ 日本政府の認識は?

文部科学省は2018年6月12日、科学技術の振興について講じた施策を報告する「平成29年度科学技術の振興に関する年次報告」の2018年版(平成30年度版)「科学技術白書」を閣議決定しました。この白書には、研究の質を示す被引用件数の多い学術論文数の国別順位で、日本は10年前の4位から9位に下がっていること、イノベーションを生み出す基盤的な力が急激に弱まっていることなどが指摘されています。論文の量・質の低下、大学発ベンチャーの成長、博士課程進学者・若手研究者の減少、新たな研究領域への挑戦の不足、研究開発費総額の伸びの停滞などの、諸々の日本の学術界の問題についても記載されており、国際的な研究成果を出し続けるには危機感を持って改革に取り組むことが不可欠だと記しています。

白書では、日本の論文数の動向を、(1)総論、(2)部門別の論文生産数、(3)分野別の論文生産数の3つの観点から見ています。それぞれ簡単に概説を書き出します。

(1) 総論
世界の論文の動向としては、Web of Scienceに収録される論文数は一貫して増加傾向にあり、中でも複数国の研究機関による共著論文(国際共著論文)数が著しく増加している。にもかかわらず、日本の論文数は減少傾向にあり、全分野における世界の国・地域別論文数ランキングで大きく順位を下げている。2003~2005年と2013~2015年の比較では、論文数で2位から4位に、Top10%補正論文数で4位から9位に下降。世界から注目される質の高い論文の割合はわずかに高まっているが、主要国の割合は日本以上に増加。結果として、日本の論文数の減少が目立っている。

(2) 部門別の論文生産
大学等部門および公的機関部門における論文生産割合は増加しているが、民間(企業)部門における割合は低下している。白書には、Science and Engineering Indicators 2018によれば、アメリカでも同様に大学部門の論文生産割合が微増なのに対し、企業部門の割合は低下傾向にあることが示されているとして、これが日本だけの傾向ではないことが見て取れると記されている。

(3) 分野別の論文生産数
増加している分野はあるものの、ほとんどの分野で直近10年間の論文数および注目度の高い論文数 (補正論文数)で日本の順位は低下。世界各国で論文数が増加していることから、日本の相対的地位の低下が懸念されている。

なお、この白書は日本の科学技術力の現状分析として、論文数だけでなく研究開発投資、人材力などの比較も行っているので興味深い内容となっています。

■ 研究者が発表論文を増やすためにできること

Science and Engineering Indicators 2018などを含め、さまざまな報告書や世界的ジャーナルによる分析で日本の論文発表数の減少が指摘される状況下において、当の研究者が論文発表数を増やす、特に、Cell、Science、Natureといった注目度の高い学術雑誌への論文発表数を増やすためには何ができるでしょうか。第一に、よい研究を行わなければなりませんが、その結果をまとめ、アクセプトされる論文に仕上げる必要もあります。ここでは、論文を書くために抑えておくべきポイント20を以下に挙げますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。

・研究にマッチする研究室と適切な研究指導者(指導教員)を見つける。・研究資金があり、活発に研究が進んでいる分野を確認しておく。
・注目度の高い(インパクトのある)研究テーマを見つけ出す。
・強力な仮説を組み立てる。
・地域/世界と協力して研究を行う。
・確固たる研究デザインに基づいて研究を実行する。
・印象的なカバーレターを書く。
・研究の新規性と品質を重視しつつ、重要なメッセージを一つ入れ込む。
・研究テーマにマッチする学術雑誌を選択する。
・学術雑誌の投稿規定を順守する。
・言いたいことをはっきりと、わかりやすく書く。
・インパクトのあるタイトルと簡潔な要旨(アブストラクト)を書く。
・研究によって発見されたことを要旨に効果的に示す。
・明解かつ生き生きとしたタイトルにするため動作動詞を使う。
・結果を過大評価しない。
・“One the…,” “Study of…,” “Investigation of…”のような総称表現(梵語)は避ける。
・要旨では、専門用語、頭字語(先頭の文字や音節を表す文字をつづり合わせて作った語、略語の一種)、句読点の多用、あるいは図表への言及は避ける。
・要旨は、結論、または研究における疑問に対する回答で締めくくる。
・査読者のコメントに対して適切に対応する。


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Clarivate Analytics Releases the 2018 Journal Citation Reports

Journal Citation Reports 2018年版 発表

研究者なら誰しも、信頼のできる論文を参考文献とし、また、影響力の大きい学術雑誌(ジャーナル)に論文を掲載したいと考えるものでしょう。とはいえ、自身の研究内容に合っていて、かつ、信頼もできる学術雑誌を探すにはどうすればよいのでしょうか。

■  Journal Citation Reports 2018年版

2018年6月26日に、クラリベイト・アナリティクス(Clarivate Analytics)社が『Journal Citation Reports(JCR)2018年版』をリリースしました。JCRは1973年以来、毎年発行されており、研究者が自然科学と社会科学における査読学術雑誌を評価し、投稿する学術雑誌を決めるための有益な情報を提供しています。

このレポートは、トムソン・ロイターの科学部門「サイエンティフィック(Scientific)」によるオンラインの学術データベース「Web of Science」に基づき提供されるジャーナルのインパクトファクター(Journal Impact Factor:JIF)を含む、学術雑誌の評価指標を提供する体系的かつ客観的なデータベースとして信頼されています。これにより研究者や学術機関は、研究要件に照らして、どの学術雑誌に投稿するのが適切かを判断できるのです。

本レポートの2018年版には、各学術雑誌の評価に関して、昨年度版以上に詳細なデータが提供されると共に、さらに踏み込んだ洞察が示されています。

2018年版の主なポイントは以下の通りです。
・80か国、234分野の11,655誌を収録。うち、276誌が初めてJIFを獲得。新たにIFを獲得した学術雑誌は経営やビジネス分野が最も多く、The Quarterly Journal of Economicsが最も高いIFを得ている。
・20誌をレポートの整合性を確保するために排除(14誌は自己引用、6誌は相互引用による除外)。ただし、除外された学術雑誌もJCRへの再収録に適合するか、毎年再評価される。
・Web of Science Core Collectionの索引にBook Citation Index の、自然科学120万件および社会科学30.3万件を統合 (引用ネットワークをBook Citation Indexまで広げたことで引用データの拡充を図った)。
・本レポートには6400万点以上の引用データが含まれており、うち約1000万点 の引用データがIFの算出に利用されている。

また、2017年と比較し、新しくなった点は以下の通りです。
・学術雑誌のプロフィールページを刷新し、学問領域や発行機関、コンテンツが理解しやすくなった。
・JIFに対する論文レベルでの透明性を向上させることにより、学術雑誌の影響力に寄与するコンテンツの種類が特定できるようになった
・JIFの算出根拠を検証する新たな指標が追加された。
・自己引用や相互引用を行った学術雑誌を排除し、不正行為への警鐘を鳴らしている。
・Book Citation Indexを含め、引用ネットワークを拡大した。
・論文著者の所属国情報に加え、学術雑誌への貢献度の高い国と地域、学術機関のリストを開示した。

これらの変更の背景には、引用数のデータは重要だが、学術雑誌の価値はそれだけでは判断できず、論文レベルでのコンテンツの内容や学術雑誌そのものの情報も考慮することで、どのような学術雑誌が評価されるのかへの理解が深まる、という考え方があります。

■ 無料で閲覧できる別の指標も登場-Scimago Journal & Country Rank

JCRは、各学問分野で信頼できる質の高い論文を掲載する学術雑誌のランキングも発表しています。研究者は多面的なデータを確認することができるので、捕食ジャーナルを避け、信頼性のある学術雑誌を選ぶことができます。
ただし、JCRの欠点を指摘する声もあります。例えば、研究者の間では、JCRに掲載されているJIFは非ネイティブに対する偏見がある、といった批判があるほか、JCRが学術機関からのアクセスに制限されていることを否定的に捉える向きもあります。

多くの研究者が、投稿する学術雑誌の選択にJIFやJCRのような指標を参考にしてきました。しかし、それぞれの指標の出し方が違ったり、対象となる学術雑誌の範囲や分野が多様化したりしてきたことから、特定の指標だけで判断してしまうことが躊躇される場合も出てくるようになっています。もっと手軽に学術雑誌の評価を知りたいという人もいるでしょう。そこで、学術雑誌を評価する別の指標をオープンアクセスで提供しているコンテンツを一つ紹介しておきます。

Scimago Journal & Country RankはGoogle PageRankとして広く知られるアルゴリズムを使ったプラットフォームです。Scopus(世界の5,000以上の出版社から出版される21,000以上の科学・技術・医学・社会科学・人文科学のタイトルを網羅する世界最大級の抄録・引用文献データベース)からデータを引用して学術雑誌を評価しており、分野や科目別に学術雑誌を比較することが可能です。こちらはオープンアクセスモデルであるため、無料で研究や論文発表に生かすことができる有益なツールです。

多大な労力を割いて築いた研究成果ですから、少しでも多くの人の目に触れ、引用してもらい、影響力を高めたいものです。引用数を不正に増やすなど研究者の信頼を損なう学術雑誌や捕食ジャーナルに誤って投稿してしまうことなく、研究内容にふさわしい投稿先を選べるよう、これらのツールを活用し、慎重に検討したいところです。

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US-China

米国が 地球環境科学 分野でも中国にリードを奪われるか!?

いまだに反対論はあるものの、昨今の世界的な異常気象や例年にない高温や大量の降雨は地球温暖化が原因と考えられており、 地球環境科学 の研究者は、これらの現象の解析や予測向上、影響の緩和に向けた研究を促進しています。

■ 地球環境科学研究の特徴

地球環境科学の研究、特に気候変動の研究は、規模が大きく研究のために要する予算が膨大となるため、国レベルでの予算配分がその国の研究活動に影響をおよぼす傾向が見られます。例えば、米国では、米航空宇宙局(NASA)の温暖化ガスを調査する活動予算を削減し、炭素観測システムCMSへの資金提供を打ち切ったことが米国の地球環境科学研究に影響するのではと懸念されています。ちなみに、CMSには毎年1000万ドル(約11億円)の予算が割かれていたと報じられていますが、科学研究への損失は計り知れません。

また、地球環境科学の研究は政治との関わりが強いのも特徴です。地球温暖化対策を国の経済活動と切り離して考えることが難しく、トランプ政権の「パリ協定」脱退のように、国の政策による影響が避けられないのです。

そして、もうひとつの特徴は、国際協力が不可欠であるということです。グローバルな問題にはグローバルな対策が必要――という明快な理由はもちろん、研究に必要なデータや資金を工面するためにも国際共同研究で進めるほうが効率的なのでしょう。

■ 地球環境科学は国際共同研究の割合が大きい

実際に、地球環境科学研究は国際共同研究の割合が大きいことがNature Indexの分野別比較で明らかになりました。Nature Indexが6月28日に発表した「Nature Index 2018 Earth and Environmental Sciences」の分析によれば、自然科学4分野(生命科学、物理科学、化学、地球環境科学)ごとの高品質な研究論文の発表数の比較で、地球環境科学分野は、学術研究機関による研究発表数が少ない反面、政府研究機関による発表数が多く、また、国際共同研究の割合が4分野中で最も高かったことが分かりました。高品質な研究論文には国際的な共同研究によるものが多いという傾向は以前から見られましたが、特に2012年以降の地球環境科学分野では、その傾向が顕著なようです。また、地球規模の問題の解決策を探るため、異なる研究分野を跨いだ国際共同研究が多いこともわかりました。

■ 中国の猛追の裏に……

かつては、地球環境科学の研究では米国が圧倒的な強さを見せていました。現在、国別の発表論文数では、依然として米国が1位ですが、中国が猛烈な追い上げを見せて2位*となっています。2012年から2017年の5年間、中国の同分野における論文発表数は95%増加**。上位10ヶ国の中国以外の国からの発表数が減少傾向にあることと比較すれば対照的です。また、地球環境科学研究を実施している学術機関・政府研究機関を合わせた組織別のランキングでは、中国科学院(CAS)がトップになっています。この急速な伸びの背景には、中国政府の大気汚染対策や海洋学を優先する政策と、気候変動対策でイニシアティブを取りたいという思惑に基づく研究費の増額があります。過去5年、年間平均11.2%の予算増加率により、2017年の中国の研究開発費は2780億USドルに達しています。これは、中国のGDPの2.1%に相当する金額で、英国など他の先進国の予算より大きくなっています。中国政府は分野ごとの予算配分を公表していませんが、中国科学院の学長は報道機関のインタビューに答え、地球環境、エネルギー、材料、宇宙、海洋、生命および健康、資源と環境、学際的基礎研究といった8分野を、大きな研究費を投入する最も重要な分野であると挙げています。

潤沢な研究費だけではありません。現在の中国の強さには、多くの研究者の働きに裏付けられています。中国政府は、2008年に制定した海外から優秀な人材を呼び戻す政策「Thousand Talents Plan」を、2011年には若手研究者も対象とし、積極的な人材強化を図っています。国外の大学で学んだ研究者たちが帰国し、さまざまな研究分野で活躍しているのです。そして、国外で培ったネットワークを活用して国際的な共同研究を進めていることがうかがえます。

■ 追い上げられる米国では

一方の米国では、科学技術への予算が年々厳しくなってきています。中でも米環境保護局(EPA)の研究費確保は国の政策、つまりトランプ政権に大きな影響を受けています。そんな中、7月5日、地球温暖化懐疑論者でオバマ前政権時代の環境規制を改定しようとしていたプルイットEPA長官が、公費の無駄遣いを批判されて辞任しました。地球温暖化の主原因の一つとされる化石燃料の関連業界とのつながりが深いと言われていたプルイット氏は、トランプ政権による温暖化対策後退策を強行に進めてきました。辞任したとはいえ、彼の方針は残っており、さらに同じく温暖化懐疑論者と言われているEPA副長官だったアンドルー・ウィーラー氏が長官代行に就任することになったので、EPAおよび環境科学の研究者はまだまだ油断ができない状況です。研究者にとっては最悪の人事とも言われたプルイット前長官時代よりもトランプ政権の意向がより強くなる可能性もあり、米国だけでなく世界全体の地球環境科学に影響をおよぼす可能性も残ったままです。EPAの研究者が直面しているのは、研究費の先行きだけでなく、政治家が好まない証拠が出たとしても、その研究を実行・継続できる環境が保てるかどうかなのです。米国が地球環境科学の研究で世界をリードし続けられるか、今後の動きに注意です。
地球環境科学の研究者たちは膨大なデータを収集・分析し、日々刻々と変化する地球環境の問題の解決策、あるいは緩和策を見出すための努力を続けていますが、良くも悪くも国の政治や経済優先主義などの影響を避けきれません。地球環境科学分野の研究をどの国が牽引するとしても、”地球規模”での問題の解明・解決に向けた研究の発展を願うばかりです。

<脚注>

* 2位以下の順位は以下のとおり
1.米国、2.中国、3.英国、4.ドイツ、5.フランス、6.カナダ、7.オーストラリア、8.日本、9.スイス、10.オランダ
** 共著者の割合に応じて国に論文数を割り振るFractional Count(FC)計算方法を用い、該当国のFCを合計した数値の比較。


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「医療新時代」がやって来る?

グローバル化が叫ばれて久しい今日、医療の現場でもそれは進んでいます。医療先進国への医師の派遣や複数の国での合同臨床、遠隔治療……。医療も国境を越える時代にあって、医師同士の情報交換・情報共有の重要性が増しています。高品質の医療をどの国でも提供できる優秀な「医師ネットワーク」の形成が急激に進み、「医療新時代」に突入しているのです。

■  医師ネットワークがもたらす革新

従来、医療関係者は学術論文を読んだり学会に出席したりすることで、最新の情報を入手していました。それがインターネット全盛の時代になり、医療関係者は他の医師や医療機関とオンラインで関係を構築し、知見を共有するようになりました。症例研究や術式、技術などを開示し、他者にも役立ててもらうことで、これまで医療が行き届かなかった国・地域でも、医療先進国同様の治療を提供することができるようになりつつあります。

医師ネットワークの主な利点

• 登録している医師・医療関係者が、最新情報から自らの分野に関連する情報を選択して取得するのを容易にする。
• オンラインを活用することで、より多くの後進または若手医師などが、エキスパートあるいは識者による指導を受けることができる。
• 医療関係者が専門分野を超えて交流することで、症例に対する思わぬ治療法を見出せる可能性がある。
• ネットワーク内でデータを含めた各種情報にいつでもアクセスできることが、知識の幅広い共有を促進する。
• 新しい研究を含む最新かつ信頼できる情報が入手可能になる。

こうしたネットワークが医療従事者にもたらすのは、情報へのアクセスだけではありません。最新の知見に触れることで、患者に最善の医療を提供できるようにしようという、医療関係者へのさらなるモチベーションの想起も期待できるでしょう。

■ 画期的な医師ネットワークはもう既に

既に、医療関係者を対象にした学術ネットワークは多数存在しています。それらはネットワークの構築や症例・治験実施計画書などの共有と意見募集、クラウドファンディングなどに活用されています。代表的なネットワークとしてG-Med、Sermo、Doximity、DailyRounds、Among Doctors などが挙げられます。

G-Med について見ていきましょう。G-Medは、医療関係者のみを対象とする世界最大のグローバルオンラインコミュニティで、12万人を超える医師が登録している、世界各国における研究や臨床試験のデータが共有できるプラットフォームです。医療関係者はEメールアドレスとライセンスの詳細を登録することで、手軽にプロフィールの作成を行い、無料でG-Medの情報にアクセスすることができます。
G-Med の登録者は、共通の関心事、アイデア、自身の活動内容や参加イベントなどを切り口に、グループを作ったりパネルディスカッションに参加したりすることができます。他の会員の投稿記事や論文を読んだりコメントしたり、さらにはライブ映像配信システム(ソフトウェアのダウンロードは不要)を使って、医師同士で議論を行うことも可能です。ここでの出会いをきっかけに、同分野のみならず他の専門分野の医師とのディスカッションや共同研究も生まれています。さらには被験者の募集もできるというのですから驚きです。

■ 医療の未来-医師ネットワークの可能性

「医師ネットワーク」には多くの可能性があります。世界中の医師がつながることで、これまで考え付かなかったアイデアが生まれ、形になりつつあります。例えばG-Med は、オンライン診療所「Tel Aviv-based G-Med」の計画を発表しました。これは、患者が自宅にいながらにして医師と会話ができるようにするものです。無医村や過疎地域に住む人々や、高度医療サービスを受けることが困難な人々にとって、非常に大きな意味を持つ試みです。

さらにG-Medは2018年の秋、病院や診療所向けの新たなサービスを、無料で提供し始めることも計画しています。病院に勤務する医療スタッフを対象にした、臨床に関する相談や他の病院スタッフとのコミュニケーションを可能にするグローバル・プラットフォームのほか、病院ごとのイントラネットも整備される予定です。

IT技術(インターネット)が可能にした、医師ネットワーク。専門家が協業することで、無限の可能性が広がっており、今後さらなる画期的なサービスが生まれるのも夢ではありません。あなたが思い描く夢のような医療の形は、すぐ目前にまで迫っているのかもしれません。

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米国で働くのに必要なグリーンカード取得方法

研究者が母国以外で研究活動を続ける場合、当然ながら、その国の法律に従って居住権あるいは就労許可を得る必要があります。今回は米国(アメリカ)で研究者として働く(=給与を得て研究活動に従事する)ために必要な就労ビザとグリーンカードについて、概要をまとめてみます。

■ 米国で働くには何が必要?

米国内で合法的に就労するには、就労ビザ、労働許可証(EDA)、または永住権(グリーンカード)のいずれかを取得する必要があります。

・就労ビザ
就労内容によって種類が複数ありますが、雇用者による保証と、有効年数ごとの更新が必要です。

・労働許可証(EDA)
米国に滞在している人に発行されるもので、滞在に必要なビザ(例えば就労ビザ保有者の同行家族用ビザ)を有していることが前提です。

・永住権(グリーンカード)
外国人が米国に滞在する資格を証明するもので、これを取得すると就労する権利や社会保障など、米国市民と同等に近い権利を得ることができます。就労ビザと違って無期限、かつ雇用者に関わらず就労できます。

研究者が米国で研究職に就きたい場合、通常は大学や研究機関に雇用されて就労ビザ(H-1B:特殊技能職)を出してもらい、さらに長期で滞在したい、別の機関で研究を続けたい(転職したい)といった場合にはグリーンカードを申請する、という手順が必要になります。

■ グリーンカードを取得する方法

米国の移民政策の影響などにより、グリーンカードの取得は年々難しくなっているのが現実です。それでもグリーンカードがあれば、就労ビザに制限されることなく研究に没頭できるため、研究者にとっては大きなメリットと言えるでしょう。
では実際に、研究者が米国市民権・移民局(US Citizenship and Immigration Services,USCIS)にグリーンカードを申請する方法を見ていきましょう。USCISによれば、雇用に基づいて申請できるグリーンカードのカテゴリー(Employment-Based Immigration)は、以下のように分類されています。

EB-1
雇用ベースでのグリーンカード申請の中で最も優先されるカテゴリー。申請者の資格により3種類に分けられます。
1. 科学、芸術、教育、ビジネス、スポーツにおいて卓越した能力を有する人
2. 世界に認められる極めて有能な教授または研究者、少なくとも3年の経験を有する人
3. 多国籍企業の役員もしくは経営者として従事している人
USCISは、研究者がグリーンカードを申請するにあたり、受賞歴や出版件数などの卓越した能力の証明となる10項目を掲げ、そのうちの3つを満たさなければならないと示しています。EB-1の申請には、労働証明書(Labor Certificate, LC)が必要ありません。ただし、実際にはかなり要求が高く、ノーベル賞受賞者、オリンピックメダル保持者という国際的なレベルでないと取得は難しいようです。

BE-2
対象は高等学位(修士、博士等)あるいは同等の資格を持つ専門家で、専門分野において格別の能力を持つ人。あるいは、EB-2-NIW(National interest waivers、国益に基づく労働証明書免除*)として、米国移住することで米国経済、文化および米国の厚生に貢献すると認められる外国人です。

研究者がEB-2-NIWを申請する場合、雇用主とは無関係に、直接USCISに申請することができます。EB-2-NIWは、労働証明書や米国の大学・研究機関との雇用契約がない場合でも申請することができ、申請中に転職することも可能です。論文の発表数や被引用件数、専門家からの推薦状などを、審査に必要な書類に記入・提出します。研究者としての業績が米国にとっても重要であると示すことが求められますが、日本人研究者にとっては比較的申請しやすいカテゴリーではないでしょうか。

*National Interest Waiver (NIW) による申請(NIW申請)が認められれば、通常EB-2の申請に必要とされる労働証明書(LC)がなくてもグリーンカードを申請することができる。

EB-3
特殊技術を持つ専門家を対象としたカテゴリー。専門分野の4年生大学卒業者か、エンジニアや設計士など特殊職業において少なくとも2年以上の訓練あるいは経験を持つ人です。米国の会社によるサポートが必要です。

研究者にとっては、特殊技能職(H-1B)ビザなどで米国に滞在しながらグリーンカードを申請するのが一般的ですが、そもそも H-1B は申請受付の年間上限枠が65,000と定められており、追加で米国の博士以上を有する申請者を対象とした枠が20,000ありますが、いずれも年間上限数(2018年度分。年度により変更となることもあり、近年は発給条件が厳格化する傾向あり)に達した時点で受付は終了します。そのため、H-1Bを経てEBカテゴリーでグリーンカードを申請・取得するには、かなりの労力と時間がかかることを覚悟しておく必要がありそうです。

■ 申請の際のポイント

米国においてグリーンカードを申請する際に必要なものは、USCISのウェブサイトでも事前に確認することができます。以下にポイントを挙げます。

・詳細な学業成績書を作成し、修士号や博士号の取得者であることを示す。
・申請は速やかに。必要な書類を用意しておき、申請できるタイミングですぐに申請する。(2018年度分は申請開始5日以内に申請数が上限に到達)
・著名な学術雑誌(ジャーナル)に載った論文を目立たせ、専門分野での貢献度を示す。
・申請に関する法的事項を手助けしてくれる弁護士を雇うことも選択肢に加える。ただし、弁護士は必要となるサービスに応じて料金を請求してくるので、まずは自分で申請するための「do-it-yourself(DIY)パッケージ」をチェックしてみる。
・的確な申請を行うため、雇用者と仕事の内容についてよく話し合いをしておく。特にEB-2を申請する場合には、原則として労働証明書(LC)が必要であるため注意する。
・I-140(雇用ベースの永住権申請) の書類を正確に記入する。

■ 世界で活躍するチャンス

申請書を提出した後、USCISは内容を確認し、候補者を絞り込んで面接を行います。あとは結果を待つのみです。

大学職員、研究者、PhD保持者は、EB-2-NIWとEB-3を同時に申請するのが一般的なようです。近年は、NIWを申請して渡米し、研究を続ける日本人研究者が増えているとも言われています。優秀な研究者が米国に移動してしまうのは日本の学術界にとって残念なことかもしれませんが、一方で研究者が米国で研究を続けるための選択肢としてグリーンカードという手段があり、世界で活躍できる機会をつかんでいるのは喜ばしいこととも言えるでしょう。

一般の人の関心を引くための5つのステップ

何ヶ月、あるいは何年もかけて書いた研究論文がついに出版されたとします。研究者や学識者以外の一般の人にも読んでもらえたら――。苦心して作り上げた論文ですから、できるだけ多くの人に読んでもらいたいと思うのは当然です。しかし特定の研究に焦点を当てた学術書や学術雑誌(ジャーナル)が、一般の人に読まれることは稀です。また、研究者にとって論文を発表することは、自らの研究成果を知らしめるのと同時に、多くの人に情報と科学の飛躍的な進歩を伝えることが目的ですので、そのためにも幅広い読者の関心を引く工夫が必要です。では、どのようにすれば、研究に関心を持ってもらうことができるのでしょうか。

一般の人の関心を引くための5つのステップ

Sense About Scienceというイギリスで設立された科学啓蒙運動団体は、一般の人にとっても面白く、理解しやすい科学情報を提供するためのガイドライン『Public engagement: a practical guide』を作成しました。この2017年に発表されたガイドラインには、一般の人の関心を引くために研究者が行うべきこととして、5つのステップが掲載されています。

1.スコーピング(人の意見や思い込みに耳を傾ける)

研究の題材が話題となっているか、研究に関わる情報が正しく理解されているか、その情報が利用されているかなどを探ることで、世間の研究に対する関心の度合いを測ります。ソーシャルメディア、ブログ、チャットルームなどで自身の研究について取り上げてみると、一般の人の間でどのくらいの関心を得られるかをつかめるかもしれません。

2.興味を引く(さまざまな人の興味を引きつける)

まず、読者候補を見つけ出します。分野の枠を超えて、研究の内容に興味を持ちそうな人を探します。例えば、ハイイロオオカミをネブラスカ州に再導入させる研究に関する論文であれば、家畜農家が関心を持つかもしれません。家畜農家が公開討論に参加し、オオカミの再導入に伴う懸案事項について議論したいと考える可能性は高そうです。研究者以外にも、あなたの論文に関心を持ちそうな人はいるのです。

3、企画(関心を持ってくれそうな人に適した説明や伝達形式を考える)

読者候補が見つかったら、次は、その人たちに研究成果を伝える方法を考えます。専門用語を入れすぎないように気をつけて、言葉と発表方法を選びましょう。例えば、文章だけより図表やイラストを使うと分かりやすくなります。効果的なイラストやプレゼンを作成するのを助けてくれるグラフィックソフトが多数あるので、活用するとよいでしょう。

4.ユーザーテスト/ユーザビリティテスト(ユーザーの観点で確認する)

研究の内容や成果、発表方法について、論文の読者(ユーザー)の視点から意見をもらう機会を持ちましょう。ユーザーテストを行うことにより、研究成果の発表法や強調する点、コミュニケーションの取り方など、ステップ1と2で考えていたことが覆されこともあります。ユーザーにフィードバックを求めることは、この5ステップの中でも特に重要です。

5.情報拡散(ユーザーからのフードバックも踏まえ、情報拡散に努める)

研究成果を多くの人に伝えるには、研究に関わってくれた人や関連機関・団体などと協力して拡散することも必要です。メディアや専門サイト(学術論文の共有サイトなど)、口コミなども利用するとよいでしょう。

なぜ一般の人の関心を引く必要があるのか

なぜここまでして一般の人の関心を引く必要があるのか、疑問に思う研究者がいるかもしれません。最近の傾向として、資金提供者は研究助成金を提供する前に、その研究成果がいかに人々に貢献するかを知りたがります。そのため、研究者は自身の研究を、一般の人々にとって興味深く、理解しやすいものにする必要があるのです。研究助成金を獲得するのは大変です。その上、研究費は限られており、競合する研究者も多数います。資金提供者が一般の人に関心の高い研究に助成金を提供するのであれば、そこに時間と労力をかけることは価値のあることです。

一例では、EUの行政執行機関である欧州委員会は、研究内容やデータを公開し、研究成果に簡単にアクセスできるようにすることを強く奨励しています。研究をオープンにすることは、これまで研究とは無縁だった人の関心を引くことにも役立つからでしょう。このことからも、研究分野に関わらず、一般の人にも研究に興味を持ってもらい、理解してもらうことを重視する傾向が強まっていると言えます。

研究に関心を持ってもらうことで得られるもの

一般の人が研究に関心を持つことで得られるメリットは、研究助成金の獲得に留まりません。研究の背景と内容を理解してもらうことで、地域社会や学校、政府機関などに知見が共有されます。わかりやすい例としては、医学研究の成果が新たな病気治療・予防に役立つのをはじめ、多様な研究の成果が日常生活に多くの恩恵をもたらすことになるのです。その結果、研究者はより多くの助成金を獲得することができるかもしれませんし、同じテーマについてさらに深く研究する機会を得られるかもしれません。さらに大学にとっては、研究成果がこれまでより広く認識されることで大学自体の評価も高まり、追加の資金援助を受けられる可能性も生まれます。

学術研究の成果と一般社会とのつながりを意識する機会は、そう多くはないかもしれません。ただ上記の理由から、一般の人の関心を高め、研究への理解を得ることが推奨されています。あらゆる研究に携わる研究者は、Sense About Scienceのガイドラインなどを参考に、一般の人の関心を引き、自分の研究がより広く知られるよう、努めてみてはいかがでしょうか。

 

参考記事
Sense About Science:Public engagement: our approach and why it really matters

Useful Tips for Creating Impressive PowerPoint Presentations

聞き手を引き込むプレゼンのコツ

研究成果を発表するプレゼンテーションにおいて、説得力のあるスライドとともにメッセージを伝えることはとても重要です。スライドがあれば、聞き手に聴覚だけでなく、視覚でも研究の重要なポイントを印象付けることができるからです。研究成果について興味を引き、理解してもらうことが目的ですから、スライドはこの研究内容のポイントを端的に伝え、聞き手をプレゼンにぐっと引き込むためのツールとして機能するように作成するべきです。

とはいえ、あくまでスライドは発表内容を効果的に伝えるサポートをしてくれるツールです。スライドに書かれた内容を見ながらそれを読み上げるだけでは、あたかもスライドが主役のようです。先ほども述べた通り、目的は発表内容について興味を持ってもらうことなので、聞き手と向き合い、語りかけ、コミュニケーションをとることを心がけましょう。

ここでは、効果的なスライドの作成方法とプレゼンの仕方についてのポイントを紹介します。

■ プレゼンを成功させるための3つのポイント

1.スライドはあくまでもシンプルに
研究内容は細かくすみずみまで説明したくなるものですが、スライドに文字が詰め込まれすぎていたら、果たして聞き手は読みきれるでしょうか。文字ばかりでは興味が失せてしまいますので、一目で言いたいことが伝わるよう、簡潔にまとめる必要があります。

Useful Tips for Creating Impressive PowerPoint Presentations_2

[スライド作成時のポイント]
・スライドの向きは横向き
・スライドの枚数は極力少なめに。フォントや色使い、テーマ(デザイン)は統一。
・フォントは読みやすい大きさで。
・書き込みすぎには注意。
・データはテキストで示すより、見やすい図表に加工。
・図表は強調したい箇所を反対色で示すなどして注目度を上げる
・(反射して見えづらくなる可能性があるため)明るすぎる色は使わない
・紛らわしい図表、不要なアニメーションを使わない

2.スライドを読み上げない
スライドの内容を一目でわかるようシンプルに仕上げることができれば、聞き手は見た瞬間にメッセージを理解できるようになります。そのスライドをそのまま読み上げただけでは、聞き手の興味はつかめません。発表者は、スライドを目にした聞き手にさらなる興味を持ってもらえるよう、内容を補足しながら語りかけるように話を進めていきましょう。その際は、はっきりと聞き取りやすい言葉で伝えることを心掛けることも忘れずに。また、1枚のスライドに時間をかけすぎると聞き手が飽きてしまう可能性もあります。テンポよく進めていきましょう。

3.不測の事態に備える
特に初めての研究発表などの際には、誰でも緊張するものです。ただでさえ緊張しているのに、いざ始めようと思ったらPCが作動しない、プロジェクターでうまく投影できない、といった事態が起こっては大変です。事前にきちんと操作できるか確認しておきましょう。レーザーポインターの操作方法(スライド送りの機能が付いているものもあるので)も確かめ、予備のものを持っておくと一層安心です。また、重い画像データや動画を入れ込んでいるような場合は特に、それらがきちんと表示されるか、また発表時間内に収まるかなどを確認しておくことをおすすめします。それでも発表中に何か起きてしまったら、落ち着いて設備担当者などサポートスタッフの助けを借りましょう。

いかがでしたか。ぱっと目に飛び込むメッセージ性のあるスライドを活用しながら、効果的に聞き手に意図を伝えるためには、十分な準備が必要と言えそうです。また、繰り返しになりますが、発表の目的は、研究内容について興味を引き、理解してもらうことです。時間配分通りに発表を終えることも重要ですが、聞き手からの質問に答える時間にも配慮しましょう。根拠となるデータなどを示しながら、丁寧に回答することが大切です。

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