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以前は、オープン・アクセス雑誌というと、主流の有名学会誌には掲載されないような、特殊なトピックやアプローチを取った論文の出版先と考えられがちでした。しかし昨今では、「より多くの人に論文を読んでもらうのも学会誌の使命のひとつ」という考えが広まりつつあり、今後は多くの学会誌が何らかの形でオープン・アクセス化していくと予想されます。では、学会誌がクローズド・アクセスからオープン・アクセスになると、研究者および学会に、どんな利益がもたらされるのでしょうか。

どんなに特殊な分野においても、一つの学会誌だけ読んでいれば最新情報を網羅できるという研究者はいません。そのため今までは、自分の読みたい論文の有無にかかわらず何冊もの学会誌を定期購読したり、自分の研究分野との関係が薄い学会誌に関しては、購読を諦めざるをえませんでした。先進国の大学や研究機関に所属し、一部とはいえ学会誌の購読費が支給される場合でも、このような出費や制限は、より効果的な研究を行ううえでの足かせとなり得ます。しかしこれが後進国の研究機関や定年などの理由で独自で研究を進める研究者の場合、研究継続の是非に関わる大きな障害となっていました。

今後多くの学会誌がオープン・アクセス化することで、世界中のどんな小さな研究機関に所属している研究者でも、インターネットさえあれば、最新の情報を迅速に確保することができるようになります。また、どんなに小さな学会誌に掲載された論文でも、学界全体に大きなインパクトを与える可能性が高くなります。加えて、今までの雑誌形式の論文に比べると論文の一般公開がかなりスピードアップしますので、オープン・アクセス化は、学会全体の質の向上に大きな影響を与えると考えられます。

一方、学会誌のオープン・アクセス化は、各研究者にも大きな変化を促すでしょう。参考文献を探す時、今までは学会誌の目次を読んだり、学会誌のウェブサイトを一つずつ訪れて検索しなければいけませんでしたが、今後は、グーグルやビングなどの一般のサーチエンジンを使うことで、自分の研究に関係のある論文を一括検索することが可能になります。また、どの論文を引用するか検討する際、オープン・アクセス雑誌の各ウェブページのヒット数(論文のダウンロード回数)を参照することで、論文の注目度を簡単に調べられることも魅力です。逆に、自分の研究がどの程度の注目を集めているかも、学会誌の人気度に頼ることなく、的確に判断することができるでしょう。

まだまだ解決されなくてはならない問題が多くありますが、今後多くの学会誌がオープン・アクセス化することで、研究の便宜化、迅速化が促され、学界全体の潤滑化が促されることは間違いありません。

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閲覧が無料でできるオープン・アクセス雑誌ですが、その「オープン」度にはかなりの格差がみられます。ここでは、よくあるタイプを幾つかあげてみました。参考文献を探すとき、または自分の論文を発表する媒体を探すときには、これらを参考に自分のニーズにあった学会誌を選んでください。

1. 完全にオープンなもの
オープン・アクセス雑誌というと、多くの人が想像するのがこのタイプの雑誌ではないでしょうか。実際に、近年創刊された新しい学術誌には、雑誌の内容をその巻頭から巻末まで、全てオンラインで閲覧できるようにしているものが少なくありません。しかし同時に、雑誌発行のための運営費の確保などを理由に、オープン・アクセス雑誌とはいえ、以下のような制限を設けているケースもみられます。

2. 投稿された研究論文のみオープンなもの
投稿された研究論文のみ閲覧でき、新しい出版物のレビューなど、論文以外の掲載記事へのアクセスを制限するタイプです。自分の研究に関係のある最新の研究結果を探すのには、十二分だと言えるでしょう。

3. 投稿された研究論文の一部のみオープンで、他の論文にはアクセスできないもの
限られた研究論文のみオンラインで閲覧できるというタイプです。関心のある論文がたまたまオープン・アクセスになっていればいいのですが、そうでなければ、今までどおりに雑誌を購入しなければ閲覧できません。どの論文がオープン・アクセスになるかは、論文の筆者ではなく雑誌の編集者が決める場合が多いようですので、このような雑誌に投稿する場合は、オープン・アクセスの選出方法を事前に編集者に確認したほうがよいかもしれません。

4. 発行当初は投稿された研究論文の一部のみオープンで、後日、全ての論文にアクセスできるようになるもの
前述のタイプと似ていますが、雑誌の発行当時には自由に閲覧できなかった論文が、一定期間を経てすべて閲覧できるようになるという点が違います。このタイプには、1年から数年以上経った古い雑誌が公開対象となる場合が多いようです。どのくらいの期間を経てオープンになるかは雑誌によって違いますので、最新の論文を探す時や自分の論文を投稿する際は、その点に十分気をつける必要があります。

5. 発行当初はオープンでないのが、少し遅れて雑誌全体がオープンになるもの
最新の論文は購読者しか読めなくても、一定の期間を経て、雑誌全体が全て無料で閲覧できるようになるタイプで、長年にわたって発行を続けている学会誌に多く見られるようです。こちらも上述のタイプと同様に、どのくらいの期間を経てオープンになるかは雑誌によって違います。

6. 雑誌自体はオープン・アクセスではないが、雑誌に掲載された論文を作者が何らかの形でオープン・アクセスにすることに関しては許可をおろしているもの
今までは、投稿した論文が学会誌に載ると、同じ論文を他の場所に掲載することはできませんでした。しかし昨今、学会誌の中では、その雑誌自体はオープンではないものの、研究者本人が採用された自分の論文を、他のオープン・アクセス・ウェブサイトに掲載することを許可するケースがみられてきました。インターネットで選考文献を探すとき、「ああ、この論文はオープン・アクセスじゃないんだ」とすぐに諦めず、他の所に掲示されていないか探してみましょう。

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アメリカではこの数年で、有名な新聞社が次々と休刊に追い込まれていますが、この「紙離れ」は、ジャーナルの世界にも大きく影響を及ぼしています。足早に進むオンライン化の先にはどのような世界が待っているのでしょうか。研究者は、どうすればこの変化に乗り遅れず、有効的に活かすことができるのでしょうか。

つい数年前まで「やっぱり印字したものを出版していないと一流のジャーナルとは言えない」という声が大多数でした。しかし、一流のジャーナルになればなるほど、その読者は全世界に広がり、郵送代だけでもかなりの負担になります。このため、多くのジャーナルが「依頼があった場合に限り、印字したものを送ります」という方針を取り始めました。そして、新進気鋭の研究者たちによる新しいジャーナルは、インターネット上のみの“出版”になるケースが増えており、将来的にはすべてのジャーナルが紙離れをし、インターネットへ移行していくと思われます。私のように、お風呂につかってワインを片手に論文を読むのが週末の楽しみと言う人は、プリンターが不可欠となるでしょう。

では、ジャーナルのオンライン化のその先には、何が待っているのでしょうか。現時点では、オンライン出版といっても、紙で出版されるものとまったく同じものがコンピュータ上で見られるというだけの話です。しかし近い将来、私たち研究者は「オンラインだからこそ」という論文の投稿を求められると考えられます。例えば、バクテリアの成長に関する論文など、ある物質の変化過程や反応に関して論じる場合は、従来のような写真ではなく、ビデオを求められるようになるかもしれません。音声に関する論文の場合は、言葉を使って説明するだけでなく、音声ファイルをつけての発表が可能となるでしょう。出版するために、音声ファイルや画像ファイルを圧縮したり論文に添付したりする知識が当たり前のように要求される日も近いかもしれません。

ジャーナル編集者の中には、「ある論文から、そこで使われた参照文献へ、コンピュータのキー操作ひとつで移動できたり、自分の論文のタイトルをクリックすると、その論文を参照した研究の一覧表ができたりする」、と将来を予測する人達もいます。早くそんな日が来て欲しいものです。

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