‘論文執筆’ カテゴリーのアーカイブ

学術ジャーナルに論文を提出して発表してもらう場合、その論文の著者は、そのジャーナルの指定する文体やフォーマット、執筆ガイドラインに従うよう求められます。言葉とプレゼンテーションの両面でそのジャーナルの求める品質を保つため、こうした掲載記事のガイドラインが定められています。こうしたガイドラインは多くの場合、そのジャーナルの「投稿者の方々へのお願い」(あるいは、「投稿してくださる皆様へ」など)のページに掲載されています。ですから、論文を発表するための第一歩は、こうしたガイドラインを確認することになります。(check the requirements specified by the chosen journal)
論文の書き方一般に当てはまる要件や慣行もある他、特定の分野に固有の書き方というものも存在します。こうした要件や慣行は、言葉遣いやプレゼンテーションのあり方、規約、表記の規約、引用の方法、その他各種の面に関連します。通常、こうしたガイドラインについて該当する各分野での経験を積んだ著名な編集者たちが会合を開き、ガイドラインを定期的に更新しています。論文執筆で広く採用されているガイドやマニュアルの一部を、下記に紹介します。

論文のスタイル ガイドの例
分野・種類 組織・団体 スタイル ガイド
全般 Modern Language Association
(米国現代語学文学協会)
MLA Style Manual: 3rd Ed.
全般 American Psychological Association
(米国心理学会)
APA Style Manual: 6th Ed.
全般 University of Chicago Press
(シカゴ大学出版局)
Chicago Manual of Style: 16th Ed.
物理学、天文学 American Institute of Physics
(米国物理学会)
AIP Style Manual: 4th Ed.
化学 American Chemical Society
(米国化学会)
ACS Style Guide: 3rd Ed.
生物学 Council of Science Editors
(科学編集者評議会)
CSE Manual: 7th Ed.
数学 American Mathematical Society
(米国数学会)
AMS Handbook
工学 Institute of Electrical and Electronics Engineers
(電気電子技術者協会)
2009 IEEE Style Manual
医学 American Medical Association
(米国医師会)
AMA Manual of Style: 10th Ed.
気象学 American Meteorological Society
(米国気象学会)
AMS Style Manual

このリストは代表的な例をまとめたものであり、スタイル ガイドすべてを網羅する意図はありません。

上記のガイドラインなどから適切なものを選び、それに準拠して論文を執筆します。その上で専門的な編集サービス(professional editing services)に依頼して、クロスチェックならびに言葉遣いとプレゼンテーションの両面での推敲(crosscheck or improve on both language and presentation aspects)を行ってもらいます。これにより、編集と査読(peer-review process)の両プロセスが迅速化するとともに、その論文が出版用に承認される可能性も高まります。

この記事の著者は、米国出身のエナゴの英語担当エディターです。

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「英会話にも慣れ、アクション映画程度なら英語で観られるようになったのに、英語の作文能力がまったく向上しない」という話をよく聞きます。ここで考えたいのが、「日本人だからと言って、日本語で学術論文が書けるわけではない」という事実です。一般社会で使われる言語と、学術論文執筆の際に使われる言語では、大きな違いがあり、それは日本語も英語も同じです。そこで今回は、学術英語の特徴について何点か挙げていきたいと思います。

1.一人称の回避
英語の論文を読んでいてまず気が付くのは、一人称の使用の少なさでしょう。特に主語としての一人称は回避される傾向にあります。
例えばある実験のために被験者を200名集めたとしましょう。その説明として、‘We had 200 subjects.’と書くことは十中八九ありません。

代案のひとつとしては、‘There were 200 subjects’ など、thereやitなどの無生物の仮の主語が用いられることが考えられます。この無生物主語構文は、動詞の選択にも影響を及ぼします。例えば、‘I found a different effect…’ を無生物主語構文にし、‘This experiment ____ (me) a different effect’とした場合、動詞は‘find’ は ‘present’や‘propose’ などに変更されなくてはいけません。この際、主語によっては使えない動詞(本例の場合‘tell’や‘speak’)もあるので注意が必要となります。

2.受身文
学術英語では受身文が好んで使われます。前述の‘We had 200 subjects.’ を例に挙げて考えると、‘Two hundreds subjects were participated in the experiment.’ となります。この場合、本当の主語である‘we’はまったく表現されませんので、他の人の論文を読む際には、全体の流れを踏まえ、気をつけて判断する必要があります。

「一人称を使わず、無生物主語構文や受身文を使う」と書くと、さほど難しくは感じられません。しかし、いつ無生物主語構文を使い、いつ受身文を使い、それらの主語は何にするかなど具体的に考えていくと、なかなか一筋縄にはいかないものです。

また、学術英語とはいっても、生きている言語のひとつです。時代と共に使われる表現は変わっていきます。例えば前述の「一人称の回避」ですが、この数年、ソフトサイエンスと言われる言語学や人類学の分野では、使ってもよいという新しい流れが見られ始めました。いつかその影響が、生物学や物理学などのサイエンスの分野にも現れるかもしれません。

学術英語を習得するには、これらの要点を踏まえながら、最近出版された、英語を母国語とする研究者の論文を声に出して読むことをお勧めします。英語のリズムを体で感じ、文の構造を全体の流れの中で理解する手助けになるからです。

学術英語の大きな特徴としては、他にも「文の名詞化」などがよくあげられますが、説明が長くなるのでまたの機会にお話したいと思います。

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7月27日のブログ記事「失敗しない学術論文翻訳者の選び方ー5つの基準ー」で、上級の翻訳者の判定条件として、1) 翻訳に係わる専門的な訓練を受けている2) 翻訳に必要な専門知識を備えている3) 翻訳の実務経験がある4) 英語論文の出版経験がある5) 言語学の知識を備えている、という5点を指摘しました。しかし、このような点に気をつけて選んだ翻訳者だからと言って、翻訳されてきた自分の論文をそのまま学術雑誌に送るべきではありません。最終的には、すべてがあなたの名前で出版されるわけですから、翻訳された内容の正誤確認および英語論文としての品質管理を、責任を持って行いたいものです。では、自分の論文が上手に翻訳されているかどうかは、どのようにして判断したらよいのでしょうか。

まず、英訳された論文が簡潔・明解・正確であるかを確認しましょう。日本語の学術論文をそのまま英語に翻訳すると、どうしても文が長く複雑になってしまいがちです。そこで、日本語の饒舌な文に引きずられることなく、簡潔に短文で表現されているかチェックする必要があります。また、原文の主語に固執するあまり、翻訳した英文の明解さに欠けるケースもよく見られます。このような場合は、主語を変えて受身文にしたほうがよいかもしれません。これらを自問自答しながら、英訳された論文を原作と照らし合わせて読むのではなく、まずは、まったく新しい論文として読み直すことをお勧めします。

また、翻訳をする際にtheやaなどの冠詞の選択を間違えると、原本がまったく意図していなかった意味に豹変してしまう可能性があります。つまり、自分ではちゃんと英訳を読み直して納得したつもりでも、間違って使われたtheのせいで、自分のケーススタディーの結果を、思いのほか大きな一般論として提示することになる危険性などが考えられるわけです。予防策としては、翻訳を依頼する際に、「少しでも疑問に感じる場所があったら、コメントを入れたり文字の色を変えておいてください」とお願いすることができます。また、お願いしなくてもそのような指摘が翻訳に書かれていたら、それはよい翻訳だと少し安心してよいのではないでしょうか。

最後になりましたが、ここで「余り聞かないけれど・・・」という、私の「よい翻訳文を見破る秘策(?)」を一つご紹介したいと思います。

英語では、同じ動詞を繰り返し使わないほうがよいとされています。同じ動詞の多用は、実験方法を紹介する段では避けられないかもしれませんが、自分の研究結果の重要性を訴えたい時などには、特に避けたい事項の一つです。しかし、英文に翻訳されることを考慮せずに書かれた日本語の論文を翻訳する際には、内容の正確さに気が集中せざるを得ず、“英語の美しさ”にまで時間が避けられない場合があります。そこで、摘要やまとめなどで、”propose”とか”prove”とか”suggest”など、同じ動詞だけが繰り返し使われていたら、ご自分の予算と時間の余裕を考慮しながら、他の翻訳者に動詞に繰り返しのみに集中して、もう一度読み直してもらうと、より説得力のある、読みやすい英文にレベルアップできるでしょう。

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論文を書き上げた後にチェックしたいこと

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前回のブログでは、どのようなペースで論文を書くのが理想的なのか、一緒に考えてみました。では今回は、その理想を現実に変えるにはどうしたらよいか考えてみたいと思います。

ここでのキーワードは、「毎日“論文する”」ということです。この“論文する”には論文を執筆することはもちろんのこと、先行文献を探したり、今まで集めたデータの整理をしたり、コンピュータのファイルのバックアップを取ったりといった作業も入ります。つまり、「毎日論文を書く」ということではありません。ちょっと安心しましたか?

ただ重大なのは、毎日1時間(子育てや家族の介護などでどうしても時間が割けない人は30分でも結構です)、必ず論文に関する作業をするということです。この「毎日」には、新年会の日や友達が泊まりに来ている日も含まれます。「明日忙しいから、今日2時間しておこう」などという言い訳はせず、忙しくなると分かっている日は、前日早めに就寝して朝早く起きて時間を作るぐらいの心意気で頑張ってください。

毎日必ず1時間を論文作成に割くというのは、コツコツ努力するという日本人の精神に訴えるというよりも、より合理的な理由に基づいた提案です。その理由は2つあります。

①物忘れをしなくなる。
毎日論文のことを1時間考えることによって、自分の中でやるべきことが明確になり、物忘れがぐんと減ります。
反対に、1週間も論文から遠ざかっていると、「あれ? 何だったかな?」と思うことが必ず出てきます。それを解明するだけで時間の無駄というものです。

②集中力がアップする。
論文を書くという作業は、論理的に物事を端的にまとめる作業で、そのためには集中力が欠かせません。
この大敵となるのが、イライラや不安感。「毎日している」という自負があれば、精神的なプレッシャーがずいぶん薄れ、たとえ他のラボの進捗状況を聞いても、それに一喜一憂することなく、自分の論文に集中しやすくなるでしょう。

毎日必ず1時間、論文に集中する人は、1週間以内に原稿を仕上げることはできないかもしれませんが、必ず数ヶ月程度で原稿を完成することができます。「数ヶ月もかかるのか」と思われるかもしれませんが、もし続けられれば、1年に1本から2本の論文を書くことが可能になるという計算です。この実行力と継続力の有無が、1年後、5年後にどんな大きな差になって表れるかは説明の余地もないでしょう。

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気にするなと言われると余計に気になるのが、「他の人はどのようなペースで論文を書いているのか」ということではないでしょうか。「個人差がある」とか「研究分野によって違う」とか、色々な慰め(?)を聞けば聞くほど、いったいどのようなペースで論文を書くのが理想なのか? 自分は頑張っているほうなのか? どんどん不安がつのります。

物議をかもすような助言を避けるのならば、上述のウンチクをここでも繰り返すべきなのですが、ここはエナゴの私達が本音で話すブログです。私見になりますが、論文を書くペースに関して、ちょっと腹を割って、少し合理的に考えてみたいと思います。

まず、「他人の評価は問題ではない」という綺麗ごとは忘れるべきだと思います。より理想的な環境で自分のしたい研究をし続けるためには、研究費の捻出も必要でしょうし、キャリアアップも必要です。「質の低い論文を多く書いても意味がない」と言われるかもしれませんが、論文の質の良し悪しは、査読審査のある学術誌に出せば、客観的に判断してもらえます。本当に優れた芸術的ともいえる論文を書くことも大切ですが、そのために研究が継続できなくなってしまっては意味がありません。「good enough (十分いい)」という判断を下す思い切りを持つよう、常に意識しておいてください。

ではここで、論文を書くスピードを具体的に、段階を踏んで算出してみましょう。

第一段階 : 研究者として順調に事が進んだ場合、どのような過程を経るのか、自分が将来期待する道順を考えてみる
それには、就職、昇給、昇進、助成金の獲得、留学などという言葉が並ぶかと思います。

第二段階 : その一つ一つのステップに最低限必要な論文数を横に記入してみる
特に制限がなければ、何も書く必要はありません。

第三段階 : 最後に、それぞれのステップにかかると思われる年数を記入する
後は簡単な計算で、自分がどのくらいのスピードで論文を書いていくべきなのかが算出できるはずです。

ただしここで重要なのは、「この5年間で3本の論文を書かなければならない」という計算結果がでた時、それにどう対応するかということです。5年後に3本の論文を一斉に投稿できるよう、3つの研究を平行して行うのも手です。

しかし実際には、1本ずつ少しでも早めに論文を発表したほうが、色々な面で得だと思われます。
それはなぜか?2つの理由が挙げられます。

①論文の執筆は5年待ったから上手になるというものではない
1本ずつ書くことによって、学術論文を書く作業にも慣れ、次の実験の際、研究ノートの取り方などに新しい知識を反映し、より時間に無駄のない研究ができるようになります。

②論文が1本でも掲載されると、他の人の印象が変わる
印象が変われば、共同研究など、思わぬチャンスが転がり込む可能性もでてきます。また、次の研究に対する意見を聞いた時でも真剣に対応してもらえるでしょう。

つまり大切なことは、自分が最低限捻出しなければいけない論文の執筆ペースを把握した後は、ホームランを狙わず、コツコツ定期的に論文を投稿する予定を立てるということです。
次回のブログでは、その予定を現実に変える方法について考えてみたいと思います。

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