音楽や映画などの娯楽の世界と学問発表の場としての学術雑誌の世界。まるで接点がないように思われますが、実はその根底に、「デジタル化による仲介役の排除」という大きな共通点が見られます。
ごく少数のお金持ちの所有物であった「最新のデータ」や「より深い知識」が、興味を持つ不特定多数の人達へと行き渡るようになったのには、専門の学術専門雑誌の功績があげられます。このため学術雑誌の出版は、歴代、多くの研究者たちのボランティアで支えられてきました。そして、学会誌出版の多くが資本主義に飲み込まれ、一介の企業が行うようになった今でも、査読は、選ばれた同業の研究者による無料奉仕によってまかなわれるのが一般的です。
しかし、インターネットが家庭で当たり前のように使えるようになった今、よりすぐれた研究結果を、より早くより多くの人達に読んでもらう最適の方法は、大きな転換期を迎えています。
音楽業界や映画界が、その独占的利益本位主義に対し非難を浴び、不本意ながらビットトレントなどの無料ダウンロードサイトの普及に拍車をかけてしまったのと同様に、現在、学術雑誌出版業者へも、出版権を独占し利益本位と化しているとの批判が日々高まりつつあります。そしてその反発として、学術出版のオープンソース化が注目を集め始めました。
多くの研究が、何らかの形で税金から捻出された助成金や補助金を使って行われています。それにもかかわらず、その研究結果が、資金の豊富な大学や企業に所属した選ばれた人達にのみ閲覧できるのでは不公平ですし、学問の進化を妨げていると批判されてもしかたがないでしょう。しかもその費用が、有名大学ですら捻出できないほど高騰しているとあっては、学問の進化が止まってしまうのではないかという危惧も、一笑に付せなくなってきています。そのためアメリカでは、大きな大学の図書館が主体となって、学術研究論文のオープンアクセス化が急速に進んでいます。著名な学者による学術誌の査読ボイコットなども後押しして、この流れはこれからどんどん加速していくと思われます。
音楽業界や映画界が体験したように、学術研究発表の世界でのデジタル化も多くの反対や抵抗を体験し、その世界で活動するすべての人達に大きな変化を強要することになるでしょう。将来への道を模索する中、多くの失敗もあるでしょう。しかし現時点でいえることは、オープンアクセス化は回避できないということです。流れに乗り遅れぬよう、大学の図書館員と情報を共有しあいながら、いつも最新の動きに敏感でありたいものです。
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