今回は、学術論文を出版するさい、特に気をつけたなければならない道徳律について考えてみたいと思います。
1. Authorship: 著作者の権利
学術論文を書くにあたり、誰の名前をどのような順番で標記するかということは、今後の予算獲得などにも影響を及ぼす重大な問題です。そこで、研究を始める前から、誰がどのような形で研究に参加または助力したかを書きとめておく癖をつけましょう。また学術雑誌によって、principal investigatorやsenior researcherなどという表現を使って、その研究の責任者を明示するよう求めてくる場合があります。特に共同研究をする場合は、誰がどのような責務を負うのか、適宜話し合いを繰り返し、誤解のないよう進めたいものです。
2. Duplicate Publication: 重複出版
同じ研究の結果を使っても、論点や主旨が違えば複数の学術雑誌に投稿・掲載が可能です。しかし、英文校閲を行って言葉使いを大幅に変えたり、グラフや写真を追加しただけでは、違う論文とは言いかねます。もし同じ研究結果を元に論文をいくつか執筆する場合は、問題を避けるためにも、先に出版された論文があることおよびその論文との相違関係を明示することをお勧めします。
3. Plagiarism & Fabrication: 盗用とでっち上げ
一般に”出版における道徳律”と聞くと、一番に頭に浮かぶのが盗用やでっち上げのデータのことでしょう。この点に関しては以前お話しましたので、詳しくお知りになりたい方は、当ブログの盗作って?をご参照ください。
4. Image Integrity: 映像の信憑性
X線写真などをデータとして使用する場合、映像が見やすいように色をつけたり、明るさを変えたりすることがありますが、行き過ぎると、自分の論旨に沿うようにデータをでっち上げたことと余り変わらなくなります。映像にどのような変更を行ったか、またその際映像にどんな変化が現れたか、読者に簡単に説明するよう心がけてください。
5. Conflict of Interests: 利害対立
研究者の利害対立に関しては、以前お話ししました。詳しくお知りになりたい方は、当ブログの思わぬところに見られる「利害の対立 」をご参照ください。
6. Confidentiality: 守秘義務
実験の被験者を募り何らかの形でデータを集めた場合、その被験者の身元が外部に漏れないようにしなければなりません。そのため、多くの大学や研究所では、被験者の個人情報とデータを全く別に保存し、研究の責任者が特別なコードを参照しない限り、被験者と採取したデータが照合できないようなシステムをとっています。また、特に予備的研究などの小規模な研究の発表をする場合は、名前を明示しなくても、書き方によってはどの被験者のことを言っているのか、周囲の人にわかってしまうケースもあります。「名指しにしなければいい」というのではなく、被験者の立場に立って、被験者の個人情報の管理には十分気をつけたいものです。
なお学術研究の道徳律や、現実に研究を行う際にどのように気をつけたらいいのかを詳しく知りたい場合は、The Committee on Publication Ethics (COPE)という非営利団体が詳しいホームページを作っていますので、ご参照ください。












